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絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

愛すべき「すかたん」

2020-07-18 19:03:47 | 好きな本

こんな感じの、面白そうな表紙だし。
題名だって、すかたん=(見当違いな人、間が抜けたことをする人)
なので、しっかり力を抜いて読み始めたところ‥。


やはり、浅井まかて作品はすごいなあと、すっかりやられてしまいました。
「まかてさん、こんな本書かれたら、惚れてまうやろ」笑です。

時は江戸時代だけど、場所はお江戸ではなく、「天下の台所」の大阪です。
主人公の知里は饅頭屋の娘。藩士の夫に見初めまれてお武家へ嫁ぎ、
夫の任務に従い共に大阪暮らしが始まって間も無く、夫は不運にも病死。
嫁ぎ先には居られず、されど実家へも帰れず、子供に手習を教えて暮らしを
立てていましたが、仕事先はクビになり、空き巣にも入られ、途方に暮れて
いたところに、たまたま居合わせた「若旦那」。ちょっとした口喧嘩の
売り言葉に買い言葉が「縁」で、青物問屋のご寮人さん付きの上女中という
新たな就職口が見つかります。

何もかも目新しい大店での暮らし。ご僚人さんには叱られ続けですが、
次第に大阪の旨いものに知里が目覚めていく様子と、人は良いけどどこか抜けてる
「すかたん」の若旦那との、付かず離れずの気持ちが、とてもいい具合に
描かれ、あともう少し、あと1ページと、手が止まらず、気がつけば
あっという間に読み終わってしまいました。

若旦那がただの「すかたん」ではなく、青物馬鹿で、品種改良を試みて、
新しい「蕪」を作ろうとしたり、農家と問屋と小売店の関係を考え直して見たりと
いうあたりもとても話を魅力的にしているし、色街の芸妓が、知里と若旦那の
関係に関わっているだけでなく、旦那様とご僚人さんの長らくこじれた糸の
発端もそうであったことが下地にあったり、と、とにかく上手いんですよね、
この度のまかてさんも。


::: :    ::: :


つかえていた胸の中の何かが、読んでいるうちに溶けてきて、流れていくのが
わかるようで、小説ってこういう効用もあったのだなーというか、まあ、
効用なんかなくたって、面白ければそれで良いのですが。

ああ、面白かった。
生きていれば何か新しく、何か面白いことが起こるかも、ってまた思いました。



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