1953年の映画である。
原作は、樋口一葉、短編三作をオムニバス形式で。
当然舞台は明治時代、白黒の飾りのない映像は、その時代を浮かび上がらせる。
主人公は女性、いずれも、貧しい社会の理不尽を背負っている。
そして、相手の男性に翻弄される。
今井正は、この貧しい中で生きる女性像を描かしたら一品だ。
この映画がその真骨頂といえるかも。
出演者は、 丹阿弥谷津子、久我美子、淡路恵子。
脇は、文学座の面々が固める。
中で、一番感じたのは、
貧しい一家の娘が、残飯を店に買いに行き、帰る途中、ぬかるみに転び
ご飯を台無しにし、帰るに帰れない。そこえ母が見つけてくれる。
なにもいわずに。一緒に帰る。
このシーンがあるおかげで、娼婦屋で幅を利かせる女の心が覗け
ラストの顛末へと結びつく。
貧しさの中に清貧に生きる女たちのいきざまに共感する。