おすすめ度 ☆☆
演劇好き、仲代達也好き ☆☆☆★
小林政広監督が、「春との旅」「日本の悲劇」に続いて仲代達矢を三度、主演に迎えて描いた作品。
もし、仲代達也が、認知症になったらという設定のような映画。
娘夫婦に認知症の介護ホームに入所させさせられた桑畑兆吉(仲代)。
彼も仲代のように大男優で舞台に立っていたという設定。
彼が、寝衣にコートで、トランクを引きずりながら、海の方へ歩いていく姿から映画は始まる。
途中、若い女性と出会う。
実は、娘は、兆吉が、妻とは別の女に産ませた娘伸子だ。
彼女は、父の元を訪れ、自殺しようとやってきた。
前半、この娘が、兆吉に恨みをぶつけるシーン。だが、兆吉は娘を認知できない。
そして、長女の夫で、劇団志望で兆吉に弟子入りした男。兆吉を一旦は施設に連れ戻るのだが。
一方、長女は兆吉を厄介払いしたくて、不倫もしている。
後半は再び海辺で、リア王を演じ、伸子をコーネリアに見立てる。ここはまさに、仲代のリア王だ。
そして長吉は観客に向かって繰り言を。
まさに、演劇家仲代の遺作のような作り。
まだ、演劇も予定されている仲代だが。
かように、仲代節満開の映画。演劇に興味がないとつらいかも。
伸子を黒木華、長女の夫を阿部寛が演じている。
背景となる、ずっと人っ子一人いない、石川県千里ガ浜の景色が美しい。