おすすめ度 ☆☆☆★ (劇場鑑賞)
見てほしい度 ☆☆☆☆★
2018年2月に急逝した俳優・大杉漣の最後の主演作にして初プロデュース作で、6人の死刑囚と対話する教誨師の男を主人公に描いた人間ドラマ。
教誨師は、受刑者の道徳心の育成や心の救済につとめ、彼らが改心できるよう導く。本作では、キリスト教牧師だが、仏教者のほうが多いのでは。
6人の死刑囚それぞれに、違った形での対話が用意され、最後には、教誨師自身の幼いころの犯罪が描かれ、重いものがある。
中には、烏丸せつ子扮する死刑囚のように、大阪弁で、漫才みたいな雰囲気を醸すシーンもあったりして楽しい。
ほかに、全然、黙して語らない男や、気のいいやくざの親分とか、字を知らないホームレスの男に字を教えるシーンとか。
だが、一番力の入っているのが、相模原障碍者殺人事件を思わせる死刑囚。高圧な態度で、教誨師を揺さぶるが、この男は刑を執行される。その時の態度まで。それが、教誨師自身の幼い頃の思い出と重なり、より深い感動をもたらす。
刑務所での対話劇が映画の大半を占め、まさに劇的展開だが、音楽すら拒絶してぐいぐいとひぱっていく。
この映画を勧めていいものか迷うが、人生について思い悩む人にとっては格好の題材だ。
死刑囚役に光石研、烏丸せつこ、古舘寛治、玉城玲央。「ランニング・オン・エンプティ」の佐向大が監督・脚本を手がけた。