今月MAKIKYUが関西を訪問した際には、阪急京都線で今年春に走り始めた6300系「京とれいん」と呼ばれる観光用車両にも乗車する機会がありました。
6300系は京都線特急と言う第1線から退き、この用途は現在、主に最新型の9300系が担っているものの、一部は4両編成に短縮されて嵐山線用に改造され、現在の嵐山線主力車両として活躍している事はご存知の方も多いかと思います。
嵐山線用に改造された車両に関しては、以前MAKIKYUも2回程乗車した事があり、「MAKIKYUのページ」でも取り上げた事がありますが、客扉が車端に寄った特殊な扉配置故に、花形から退いた車両でよくある扉増設改造は行われず、優美な外観を保っています。
設備的にも元々が一般車両にしては高級な部類に入る車両である上に、用途変更も影響して座席数こそ減少したとはいえ、座席は改造前と同じく転換式クロスシート(座席は別物に取り替えられています)を装備するなど、乗車時間の短い嵐山線内での運用では勿体無い位と感じてしまう程です。
そのため嵐山線で現在活躍する6300系は、デザインだけでなく設備的にも現代で充分通用し、それどころか下手な新型車両よりもずっと良いと感じる位です。
(少なくとも関西の狭軌某大手私鉄で走る一部指定席特急の、自由席車として運用される最新型車両よりはずっと良い気がしますし、首都圏で最近増殖している「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、これに準じた車両は比較に値しない程です)
こんな車両ですので、嵐山線用の車両に乗車した際には、2編成併結した再び京都線特急で走らせてくれれば…とも感じた程でした。
嵐山線の6300系に乗車し、この様な事を感じるのはMAKIKYUだけではないと思いますし、阪急側も6300系には相当な思い入れがあるのか、一度は京都線から完全に退いた6300系を、嵐山線用とはまた別の形でリニューアルして再投入したのが「京とれいん」です。
「京とれいん」への改造に際しては、車内設備を観光用車両に仕立て直すと共に、編成も8両編成から中間付随車2両を外した6両編成に改められ、嵐山線への入線も可能になっており、現在の通常運用で入線する機会こそないものの、過去に嵐山線での運行実績もあります。
外観は「京とれいん」のロゴや、「和風」をイメージさせる扇子などのイラストが金色や銀色で追加された他は、美しいマルーンの装いを保っており、阪急らしい優雅な雰囲気を保ちつつも、一般車両との差別化を図っているのが特徴です。
外観は特に大きな形状変更などを伴わずとも、登場から30年以上が経過した今日でも見劣りしないのはさすがで、比較的完成度が高い車両の多い関西においても、際立っていると感じます。
車内に足を踏み入れると、6両編成の「京とれいん」は2両毎に車内の雰囲気を変えているのが特徴で、両端の2両ずつは設備的には従前と大差ないものの、座席モケットや化粧板、照明色などを変える事でイメージチェンジを図っています。
1・2号車と5・6号車では座席モケットの色彩を変えているのが特徴で、緑系モケットはともかく、朱色のモケットは阪急電車の一般的印象とは異なりますが、「木目の内装+グリーン系座席モケット」とは異なる内装でも、優雅な印象を感じるのは阪急ならではです。
この車両は京都線特急時代の座席をそのまま使用しているため、座席の足元が狭いのが難点で、見た目は古さを感じない6300系も、30年以上前に製造された車両と痛感させる部分ですが、少し前までの阪急電車(と系列をはじめとする一部鉄道)ならではともいえるアルミ製の鎧戸式日よけなども存置されています。
設備的に大幅なリニューアルが図られ、素人目には新車と見間違う程の嵐山線車両では見られない原型の要素が色濃く残っており、現在の運行形態が観光列車に特化している事を考えると、グレード的には新鋭の9300系には見劣りするとはいえ、往年の活躍ぶりを思わせる京都線の疾走が堪能できる事と共に、一部車両で原型の設備を存置する事も大きな付加価値かと感じたものです。
また2扉車でドア間にズラリと座席が並ぶレイアウトだけあり、座席数も確保され、ドアに近い端部以外は全て進行方向を向けられると共に、グループ利用の際には任意の座席を向かい合わせにできるなど、観光列車としては絶好の条件が揃っていると言えます。
そして「京とれいん」の目玉と言えるのが、京町屋風に改造された中間の3・4号車で、座席は2+1列のボックス席に改められ、座席定員は大幅に減少していますが、このお陰で座席は非常にゆったりとしており、この様な設備が設定できるのは観光列車ならではです。
この車両の座席は一部に畳を用いると共に、客室へのエントランスとして木製の格子状飾りが設けられるなど、原型とは大きく異なる変貌を遂げています。
木材を多用して「和風」を強く感じさせる内装は、どことなくJR九州などの車両を手がける某デザイナーが手がけた車両を連想させますが、このデザイナーならではの特徴と言える派手なロゴや英文字などはなく、某デザイナー関連以外で和の雰囲気を強く感じさせる内装も悪くないものです。
MAKIKYUは大阪梅田行快速急行始発の河原町駅からこの車両に乗車し、終点が近づき車内も空いてくる淡路を過ぎてから前方の車両に移動したものでしたが、大変貌を遂げた独創的な車両と、原型の雰囲気を色濃く残した車両のいずれかを選んで乗れる点は大きな魅力です。
また設備的には非常に優れ、居住性の良い車両に安価に乗車できるとは言え、同じ様な車両ばかりで京阪間の競合線区に比べて面白みが…という京都線特急に付加価値を付けると共に、快速特急として一部特急に続行する形で運行し、多くの着席機会を確保するという点でも、慢性的に混雑している京都線特急の補完的存在として、非常に有用な列車と感じたものでした。
6300系の車両規格故に、神宝線方面や地下鉄堺筋線への直通運転が出来ないのは惜しい限りですが、京町屋風のボックス席は設備的に優れているだけでなく、非日常的な独特の雰囲気を堪能できる事も考えると、多少の追加料金を課しても良いのでは…と感じた程です。
そして観光列車らしく車内には京都観光に関連したパンフレット類を設置したり、ワンマン列車以外の阪急電車では異例の自動放送(外国人観光客向けに4ヶ国語放送となっており、日本語はJRのワンマン放送を連想させる雰囲気で、中国語は全く理解できませんが、韓国語は彼の地と同じく次駅を「이번역」と放送していた点も評価できます)を流す点も評価できる所です。
関西では地下鉄以外の鉄道で普及が遅れている自動放送は、今後他の阪急電車にも普及する事を期待したいものですが、車内にLCDモニターなどの文字による次駅案内などを行う設備が見当たらなかったのは少々気になったものです。
京阪間を乗り通しても片道400円足らずで乗車できる車両にしては破格の設備と感じたもので、規格は大差ないにも関わらず、10分に満たない乗車時間で500円以上の高額運賃を徴収する事もしばしばという首都圏の辺境・北総監獄(千葉ニュータウン)を走る「開発を止めた某鉄道」(元○○開発鉄道)などとはえらい違いですが、土休日の快速特急での運転や貸切対応だけでなく、機会があれば嵐山線用車両の検査時代走などでの登板にも期待したいものです。
また再び「京とれいん」運転時間に阪急京都線を利用する機会があれば是非再び乗車したいと感じたものですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方も乗車機会がありましたら、是非一度「京とれいん」へ乗車してみては如何でしょうか?