MAKIKYUが今月半ばに名古屋・岐阜方面へ出向いた際には、青春18きっぷを用いていた事もあって、途中の列車乗換駅の一つ・豊橋で途中下車したのですが、豊橋は規模はさほど大きくないものの、路面電車が走る街の一つとして知られています。
この路面電車は豊橋周辺で鉄道(渥美線)や、路線バス(現在は豊鉄バスに分社化)も運行する豊橋鉄道(豊鉄)によって運行されていますが、同社は名鉄グループである事もあって、近年廃線となった名鉄岐阜600V線区(揖斐線・美濃町線など)からの比較的新しい転属車両によって、既存車両の過半数が取り替えられており、数年前とは随分様相が変化しています。
名鉄から移籍した車両の大半はモ780形と呼ばれる車両ですが、1両だけモ800形と呼ばれる車両が含まれており、駅前で路面電車が発着する様子を眺めていたら、丁度この1両だけの珍車がやってきましたので、名鉄時代にはMAKIKYUが乗車する機会は無かったこの車両に、初めて乗車してみました。
モ800形は2000年に美濃町線用に3両が製造された部分低床車で、片側3つの扉の内中央扉付近のみがノンステップとなっており、車内も中央扉付近から両端に向かうにつれてスロープ状になっているなど独特な雰囲気でしたが、台車も運転台側と中央扉側で車輪径が異なる特殊なモノを用いているなど、他に類を見ない異色の車両です。
またモ800形は日本の路面電車では結構よくある旧型の車体更新(機器流用)ではなく、VVVFインバーター制御(IGBT)を用いた純新車ですので、この車両が導入された際は、美濃町線は暫く安泰と感じたものですが、不運にも導入から僅か5年で美濃町線は廃線となっています。
名鉄では他に転用可能な路線も存在しない事から、まだまだ新しい車両にも関わらず、あっさりと廃車の扱い(最近の名鉄は苦境にも関わらず、さほど古くない車両でも結構廃車になっている事は、この車両に限った事ではありませんが…)になっていますが、僅か5年しか使用おらず、日本の路面電車においては最新鋭の部類に入る車両という事もあって、3両全てが解体は免れ、名鉄グループで軌道線を運行している豊鉄に1両と、福井鉄道(福鉄)に2両が譲渡されています。
その内豊鉄にやって来た車両がモ801号車なのですが、「TOYOTETSU」ロゴなどが追加されただけでほぼそのままの装いで用いられており、またモ800形と共に豊鉄に移籍したモ780形や、福鉄に譲渡された岐阜600V線区車両各形式は大きく装いを改めている事から、この車両は岐阜の路面電車を偲ぶにも、うってつけの存在と言えます。
ただ車体長の関係などで、井原から運動公園前方面へ分岐する急曲線を曲がる事が不可能な事もあって、運用は駅前(豊橋駅)~赤岩口間に限られているのは残念な話で、使い勝手も決して良い車両ではない様ですが、今後豊鉄では低床の新製連接車の導入も予定されている事(電停に告知が貼られていました)から、この車両との低床車競演が見られる日が来るのも待ち遠しいですし、第二の活躍の地となった豊鉄では、末永く活躍する事を期待したいと感じたものです。