3月にMAKIKYUが関西へ足を運んだ際には、先日取り上げた大阪市営地下鉄・御堂筋線の31系電車と共に、昨年末から阪急電鉄で走り始めた神宝線(神戸線・宝塚線とその支線を合わせた総称)用の新鋭車両・1000系電車にも初めて乗車したものでした。
阪急電鉄はJR某社の如く、新車導入では「某社レンズ付きフィルムによく似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、これに類似した電車を怒涛の勢いで導入するのではなく、独特の個性を放つ拘りの車両を少しずつ導入していく傾向もあってか、登場から日が浅い今日では神戸線と宝塚線で8両1編成づつが運行しているのみとなっています。
そのため検査時や予備車などに回された場合などは、1日中待っていても姿を見る事が出来ず、ラッシュ時のみの運用に充当された日の昼間なども同様ですので、なかなか捕まえ難い存在で、特にMAKIKYUの様に沿線とは遠く離れた遠方から訪れた人間にとっては尚更と言う状況です。
そんな中でもMAKIKYUが先月阪急電車を利用した際には、利用時間帯もデータイムだったものの、運良く宝塚線の運用で1000系が運用されており、同線の急行で初めて1000系の乗り心地を堪能したものでした。
1000系導入の報を初めて聞いた際には、神宝線用の9000系電車導入からさほど年月を経ておらず、9000系自体も他社最新型車両と比較しても見劣りしないどころか、国内の通勤型車両としては最高水準の部類に入る車両と感じている程ですので、わざわざ9000系とは異なる新形式を…と感じたものでした。
また構想図を見た際には、7000系リニューアル車にも何となく似た様な雰囲気を感じ、9000系よりも簡素なイメージを受けたものでしたが、実際に実車を目にしたら、確かに9000系の様な豪華さは感じなかったものの、LEDを用いた前面ライト形状など、一見シンプルに見える車両ながらも、良く見ると特徴的と感じる部分もあります。
(最近首都圏では、「某社レンズ付きフィルムによく似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、これに類似した車両など、やって来ても見ただけでウンザリという新型車両がゴロゴロしており、関西でも他大手私鉄では似た様な状況の路線も存在しているのですが…)
車両側面を見ても、ドア窓は一時新車だけでなくリニューアル車などでも導入された下方拡大タイプではなく、通常サイズに戻っており、客窓も阪急では主流のドア間の各窓が独立したタイプではなく、9000系などと同様の連窓となっています。
そして行先表示器は種別と行先それぞれを別個に表示する阪急では主流のタイプではなく、一部の古参車両の如く種別と行先を一つの表示器で同時に表示するタイプに改められているなど、こちらも阪急電車にしてはややシンプルな印象を受けたものです。
車両の機器配置も近年の阪急電車では標準的な、両端に電動車を配した編成ではなく、電動車は中間に集約した編成となっているのも、古参車両に近い編成構成に逆戻りしていると言っても過言ではない状況ですが、MAKIKYUの知人の中には、「先頭電動車でモーター音を聞きながら前面展望を楽しむ事が…」と嘆いている者も居り、どの様な意図で編成構成が変更されたのかも気になる所です。
車内に足を踏み入れると、木目の化粧板にオリーブグリーンの座席モケットといった特徴は、マルーン1色の塗装にアルミの窓枠といった外観と共に、阪急電車らしさを感じさせる特徴は従来車と同様です。
1000系デビューを告知する中吊りなどが随所に見受けられる辺りは、まだ運行開始から日が浅い新形式車両ならではの光景ですが、新型車でもこの様な告知を余り行わない車両も多いですので、阪急側の1000系に対する思い入れや力の入れ様を感じたものでした。
ロングシートの座席は数名分毎に仕切りを設けて定員着席を促進しているものの、各地で流行している窪みを設けたバケットタイプではなく、従来車と同様にふかふかとした座り心地を誇り、軟らかめな座席ながらも安定感のある座り心地は、非常に上質感を感じるものでした。
(ただ近年硬い座席が増えている中で、これに対抗するかの如く、単に柔らかければ良いとばかりに、首都圏の標準軌某大手私鉄では「ブカブカ」した感触のバケットシートを続々と導入していますが、これは安定感に欠け非常に不快と感じており、個人的にはこんな代物ならまだ合板の背ずりが前後に軋むJR某社最新鋭一般車両座席の方がまだマシと感じています)
座席脇の袖仕切りが大型化されているのは、近年の首都圏では一般的ながらも、関西ではまだ少数派で、阪急では1000系が初となりますが、この袖仕切りも木目の化粧版が貼られている辺りは、阪急の拘りが感じられる気がします。
天井を見渡すと、京都線用の特急車両・9300系ベースの2重天井・間接照明を用いた先代車両・9000系の様な華やかさはなく、それどころかそれ以前の各車両の様な蛍光灯グローブ付きでもない直接照明となっていますので、通勤電車でも高級な印象が強い阪急電車にしては随分簡素と感じる向きもあるかと思います。
しかしながらグローブ付き蛍光灯に近い見つけの形状をしたLED蛍光灯を採用していますので、グローブ付き蛍光灯に比べてやや細い事を除けば、シンプルな構造ながらも見栄えの点では大差ない仕上がりとなっており、他社でも今後もっと同種のLED蛍光灯が普及すれば…と個人的には感じたものです。
(東武野田線の新鋭車両・60000系のLED蛍光灯が比較的良く似た雰囲気となっており、簡素な印象が強い韓国・KORAIL広域電鉄の通勤車両なども、割合この蛍光灯とよく似た印象のLED蛍光灯を用いている事で、車内の見栄えが随分良くなっていると感じます)
また最新鋭車両ながらも、自動放送装置は装備しておらず、次駅案内などは車両によるマイク案内となっている辺りは、関西ならではという気もしますが、ドア上にはLCDモニターによる案内装置も装備されており、多言語表示対応で外国人利用などもある程度想定した案内が行われています。
阪急電車のLCDモニターは、9000系などで用いているLCDモニターも比較的特徴的なモノでしたが、1000系ではこれとは異なる横長のLCDモニターが採用され、各地で様々な車両に乗車し、LCDモニターを装備した車両にも多数乗車しているMAKIKYUでも、この様なLCDモニターを見たのは初めて…と感じるものでした。
このLCDモニターは形状が特徴的なだけでなく、4ヶ国語表示となっているのも特徴で、日本の鉄道における韓国語表示では次駅を「다음」と案内する事が多いのですが、到着前の案内表示は韓国内の表示と同様に「이본역」と表示している辺りも評価できると感じたものでした。
近年路線バスでもLCDモニターを用いた運賃表示器が多数導入され、モニターを2つ連ねたタイプも良く見ますが、今後阪急1000系のLCDモニターに類似したタイプが出回っても…と感じ、他鉄道の新鋭車両でも同種LCDモニターの採用例が続く事はないのかも気になる所です。
1000系電車に乗車した際の総体的な感想としては、先代9000系列の様な豪華さは薄れてシンプルな印象ではあるものの、さりげなく個性を感じる部分も見られ、時代の流れに合わせた新機構を取り入れつつも、安っぽく貧相な印象は感じない阪急電車ならではの特徴を踏襲した新時代の通勤車両と言う印象を受けたものでした。
近年貧相で安っぽく、個性に乏しい「某社レンズ付きフィルムによく似た名称で呼ばれる事が多い電車」や、これに類似した電車に乗車する事が多くウンザリしているMAKIKYUとしては、久々に嬉しいと感じる通勤型の新形式車両とも感じたものです。
機会があれば兄弟分とも言える京都線の新鋭車両・1300系にも乗車してみたいものですが、首都圏在住で関西へ足を運ぶ機会自体が限られる事もあり、MAKIKYUがこちらに乗車するのは、もう暫く先の事になりそうです。