MAKIKYUのページ

MAKIKYUの公共交通を主体とした気紛れなページ。
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黒部ルート公募見学会(4)~地下式の黒部川第4水力発電所

2011-10-29 | 日本国内その他

先日「MAKIKYUのページ」では、MAKIKYUが今月初めに参加した黒部ルート公募見学会で乗車したインクラインに関して取り上げましたが、インクラインで黒部川第4水力発電所(くろよん)に到着した後は、見学会の目玉となるくろよん見物となります。

くろよんは冬場に雪崩が多発し、険しく過酷な環境の黒部峡谷に位置する事もあって、発電所設備は全て地下式となっている事が大きな特徴で、地上に顔を出しているのは、関西方面へ向かう送電線が伸びる部分だけ、それも雪崩覆いが付いた姿となっています。


黒部ルート見学会でも送電線が伸びる部分に足を運ぶことは無いため、地上から姿を見る機会はなく、インクラインや上部軌道線の乗り場近くにある地下の入口から発電所内に入る事になりますが、発電所内に入るとまず会議室の様な所に案内されます。

 
ここでは円状に並ぶ机の内側に、くろよん周辺の様子を表した模型が設置されており、公募見学会では参加者毎に座席が割り振られており、氏名を示した札と共に、見学会参加記念品として「黒部の氷筍水」と称した関電関連会社が発売しているミネラルウォーター(関電トンネル内の湧水)が1本ずつ振舞われます。

そして見学会参加者が揃うと、部屋内に設置された模型や、モニターによるビデオ放映などでくろよんの概要説明が行われ、その後水力発電所としては国内4番目の規模を誇る事でも知られる発電所設備の見学となります。


発電所設備見学の際には、まずは地下200m近い地中にあり、ネット上などでよく見かける巨大で整然とした発電機室に案内され、人里離れた険しい峡谷の奥地に、よくこれだけ大規模な設備を作ったものと感心させられます。

 
この発電機室には超重量で欅平方面からは運送できず、扇沢方から関電トンネル~黒部トンネル~インクライン経由で搬入したという巨大なペルトン水車の歯車(以前使用していたもので、現在は予備品を兼ねているとの事でした)も展示されている他、記念撮影用の名標(日付表示あり)も用意されており、一般人は滅多に足を運べない地とはいえ、関電側も定期的に行っている黒部ルート公募見学会を随分意識していると感じたものでした。

 
その後更に下のフロアに案内され、実際に爆音と共に回転している水車の様子や、現在は無人化されている操作盤室などを見学した後、再び最初に訪れた会議室の様な部屋に戻ります。

黒部ダム出発コースでは、昼食休憩の時間が確保されており、この会議室の様な部屋で食事を取ることになりますが、通常は一般人が訪問する事はまずなく、人里離れた峡谷だけあって飲食物の販売などは当然無く、関電側が用意する訳でもありませんので、食事は事前に持参する様に案内されており、MAKIKYUもここで事前に調達していた軽食を広げたものでした。

MAKIKYUは一応飲み物も用意していたものの、見学会参加記念品のミネラルウォーター以外に、暖かいお茶の準備もありましたので、飲み物は事前に用意しなくても…という状況だったのは予想外で、お陰で持参の飲み物は公募見学会終了時まで開けずに済む有様でした。

ただ黒部ルート公募見学会は、ダイヤに従って運行している関電専用の交通機関を乗り継ぐ関係で、くろよんの見学滞在時間は、黒部ダム出発コースでは食事休憩の時間を含め、僅か70分程しかありません。

その上くろよんから乗車する上部軌道線のトロッコ車両撮影希望者は、少し早めに支度を…と案内される程ですので、会議室の様な部屋の隣にある資料展示も充分に見れず、足早に移動しないといけないのは惜しい限りでした。

それでも欅平出発コースでは、くろよんでの食事休憩時間が確保されておらず、僅か43分のくろよん滞在で出発する事を考えると、まだ恵まれているのですが、一般人は訪問機会自体が滅多にない所だけに、もっと見学時間があっても…と感じたものでした。

くろよんからは高熱隧道を走る事で有名な、関西電力上部専用軌道に乗車する事になりますが、この列車に関しては近日中に別記事で取り上げたいと思います。


黒部ルート公募見学会(3)~急勾配のインクライン

2011-10-26 | 鉄道[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、黒部ルート公募見学会に参加した際に乗車し、関西電力の専用施設である黒部トンネル内を走る、北アルプス交通の小型バスに関して取り上げました。


黒部トンネル終点の作廊谷に到着し、このバスを下車した後は、インクラインに乗り換えて公募見学会の目玉である黒部川第4水力発電所(くろよん)へ向かう事になります。

インクラインという言葉は余り聞き慣れないかもしれませんが、実態はケーブルカーで、通常専ら旅客輸送を目的に観光地などで営業している鉄道と大差ありませんが、こちらは鉄道事業法に基づく旅客輸送ではなく、事業用の従業員や貨物輸送を目的としているもので、管轄する官庁も異なる事から、この様な名称で呼ばれています。

このインクラインは作廊谷のインクライン上部駅と、くろよんの間の815mの距離を運行していますが、路線長は1kmにも満たないにも関わらず、起終点間では456mもの高低差が存在しており、このインクラインは34度(675‰)という、とてつもない急勾配になっています。

日本国内で旅客営業を行っているケーブルカーの中で、最も急な勾配が存在する高尾登山鉄道(高尾登山ケーブル)でも、最大勾配は608‰ですので、こんな急勾配を走る鉄軌道に乗車する機会自体が希少で、その凄まじさがお分かり頂けるかと思います。

この急勾配を時速2km程度と言う、かなりの低速で運行しており、1kmに満たない距離でも、所要時間は20分程度を要し、全線が地下トンネル内で外の景色を見る事も叶いませんので、乗り物好きでなければ少々退屈してしまうかもしれません。
(その事もあってか車内にはテレビも設置され、関電の案内員による説明・案内以外に、過去にくろよんから生中継した紅白歌合戦のビデオ放映や、その際の裏話など、乗り物好きでない見学者も飽きない様な配慮がされていました)

おまけにこのインクラインは、くろよんで使用している巨大ペルトン水車などの資材を輸送する際、大きさや重量の関係で欅平方からのエレベーター・上部軌道での輸送は不可能な事もあって、扇沢方から関電トンネル~黒部トンネル経由で輸送する際にも用いられたとの事です。


そのため公募見学会参加時には客室が存在したものの、銀色1色で見るからに機能重視といった雰囲気の車体は、吊り上げて取り外す事が可能となっています。

車内も床面はケーブルカーでは一般的な階段状ではなく、資材運搬のために段差のないフラットな造りとなっており、座席も乗り物の座席とは程遠く、すぐにどかせるモノが置かれています。


かなりの重量がある資材を運搬する関係もあり、やたらと車体幅が広いのも特徴で、車内は乗り物と言うよりは、建物内にいる様な雰囲気というのも異色です。

また車体幅が広いだけでなく、軌道幅が2000mm(2m)もあり、日本国内のケーブルカーにおける軌道幅は、JR在来線と同じ1067mmやそれより狭い軌間が多く、広くても新幹線などと同種の標準軌(1435mm)という事を踏まえると、このインクラインは極めて特異です。


これに加え、車体を取り外して資材運搬用に用いる事もあってか、集電装置(パンタグラフ等)が屋根上ではなく、車両前方から出っ張る形で取り付けられているのも特徴です。


交走式ケーブルカーの類では定番と言える中間地点での行き違いでは、旅客輸送用ケーブルカーとは大きく異なり、無骨で異様な風貌も目にする事ができ、何処までも特異な乗り物と言えます。


しかも一般人がなかなか足を踏み入れる事ができない所を走っているのも、更にこのインクラインの乗車価値を高めていると言えますが、こんな路線でもしっかりと駅名標や時刻表が用意されているのも注目で、定期運転だけでも土地柄の割には結構な本数が走っています。

黒部ルート公募見学会ではこの後にも、くろよん見学や高熱隧道を走る上部軌道線乗車など、まだまだお楽しみが満載で、この続きは後ほど別記事で取り上げたいと思います。


黒部ルート公募見学会(2)~黒部トンネルを走る見学者専用バス

2011-10-24 | バス[北陸]

先日「MAKIKYUのページ」では、関西電力(関電)の黒部第4水力発電所(くろよん)見学をはじめ、その周辺を関電専用交通機関を利用して移動する「黒部ルート公募見学会」に参加した事と、その概要に関して取り上げました。

今日はその続編として、黒部ダム出発コースでは最初に乗車する乗り物でもある、黒部トンネル内を走る見学者専用バスに関して取り上げたいと思います。

黒部トンネルは、有名な関電トロリーバス(関電アメニックス)が運行している扇沢~黒部ダム間の関電トンネルと、黒部ダム駅近くの地中で繋がっており、ここからくろよんへ向かうインクラインの乗り場(インクライン上部駅)までの延長は、10㎞強となっています。

トロリーバスによる旅客輸送が行われている関電トンネルとは異なり、黒部トンネルは完全な関電の事業用で、通常一般人は足を踏み入れる事も叶いません。


黒部ルート公募見学会参加者は黒部ダム駅の裏口で暫く待機した後、旅客営業のトロリーバスが黒部ダム駅に到着したのを待って関電トンネルを少しだけ歩き、黒部トンネルの分岐点まで向かうと、そこには北アルプス交通(関電アメニックス)の小型バスが1台待機しており、このバスに乗車する様に案内されます。
(このバスはトロリーバスで黒部ダム駅到着前にも姿を目撃する事ができ、見学会参加前から恐らくこのバスに案内される事が予想できる状況でした)


黒部トンネルは素掘りの箇所もあり、道幅は所々にある行き違い箇所を除くと、バス1台分程度の比較的狭いもので、トンネルには結構厳しい車高制限も存在している様です。

この事もあってか、黒部トンネルを通行する公募見学会参加者や、関電関係者を乗せて走るバスは、一般路線(扇沢線)や貸切輸送用の車両は、主に三菱ふそう製が導入される北アルプス交通において、現在専用の小型車両(日野MELPHA)が専属になっている模様です。

MAKIKYUを含めて29名の公募見学会参加者(1回の定員は30名で、MAKIKYUの参加日には諸事情による参加辞退者が1名発生したとの事でした)と、関電の見学会案内人が乗車すると、この小型バスだけにほぼ満員といった状況になります。

車内も狭く長時間の乗車は…という雰囲気ですが、おまけに黒部ルート公募見学会では、案内員の指示がある場合を除き、見学者はヘルメットの着用が義務付けされていますので、ヘルメットをかぶった乗客(?)ばかりの車内は、一般の路線バスや観光バスとは異なる独特な雰囲気です。

そしてこのバスに乗車し、黒部トンネルを進むのですが、そう簡単に足を踏み入れる事が叶わない黒部トンネルを通行する事を考えると、バスファンとしても興味深い存在です。

黒部トンネルでは概ね1km程度間隔毎に、車両同士のすれ違いに備えて道幅が広くなっている箇所がありますが、10km強もの距離を走りながらも、対向車両が全く見かけないのは特殊なエリアならではで、黒部ダム駅を出発した後、乗車した北アルプス交通のバス以外の車両を見たのは、このバスの終点となるインクライン上部駅付近に駐車している関西電力の社用車(自家用車とマイクロバス)という有様でした。

またこのバスに乗車している間には、公募見学会参加者向けに用意された音声案内が流されると共に、案内員が車内備え付けの非常用酸素マスク(JR石勝線火災事故などを受け、万が一に備えて準備したとの事でした)の使い方説明(開封すると15分程度しか使えない使い捨てにも関わらず、1個当り万単位の金額が嵩むそうです)などもありました。


このバスがインクライン上部駅に向かう途中には、何箇所かトンネル横坑があるのですが、その内の一つであるタル沢横坑の前で停車し、ここで案内員の誘導により一旦バスを降りて横坑を少し歩き、短時間ながらも地上にある出口から外の様子を眺められるというお楽しみもあります。


地上の出口では関電関係者を除くと、黒部ルート公募見学会に参加しない限り、手馴れた登山家が険しい山道を辿らないと目にする事ができない、険しい黒部峡谷からの山並みを眺めるという、一般人にとっては非常に貴重な経験ができ、晴れた日には剣岳の見事な景観を堪能できる様ですが、MAKIKYUの訪問日は天気に恵まれなかったのは少々残念でした。
(黒部ルート公募見学会に参加できるだけでも、贅沢過ぎる話ですが…)

そしてタル沢横坑から再び小型バスに乗り、暫くすると作廊谷にあるインクライン上部駅に到着し、今度はインクラインに乗り換えて、有名な黒部川第4水力発電所(くろよん)を目指す事になりますが、インクラインに関しては続編記事で取り上げたいと思います。


黒部ルート公募見学会(1)~特殊なエリアに立ち入るだけにボディチェックも…

2011-10-22 | 日本国内その他

少し前の話になりますが、MAKIKYUは今月初めに関西電力(関電)の「黒部ルート見学会」に参加しており、今月MAKIKYUが「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」を購入したのも、この見学会へのアクセスにJRを利用する事が主な目的でした。
(この往復で2回分を利用しており、残り1回分を山梨方面への日帰り旅行に充てています)


黒部ルート見学会は、有名な黒部川第4水力発電所(以下くろよんと記します)を見学すると共に、公共交通機関や一般車両が通行できる道路が存在しないくろよん周辺を、通常一般人が乗車できない関電の事業用交通機関(写真のルート案内にある黒部ダム~欅平駅間が該当し、MAKIKYUは一般交通機関も含め、信濃大町~宇奈月間をこの経路で移動したものでした)を乗り継ぎ、黒部ダム~くろよん~欅平駅間を移動するものです。
(黒部ルート移動は黒部ダム・欅平駅いずれかの集合場所から片道のみとなり、黒部ルートの来た道を辿って集合場所へ戻る事はできません)

参加に当たっては、HPなどで公開される要綱に従い、見学会開催日時の中から希望日時・集合場所・参加人数などを記して葉書で応募する必要があり、運良く1回30名の抽選に当選した場合にだけ参加可能、それも1年間で複数回の参加(当選者の辞退後再応募も含む)は不可能となっています。

そのためくろよんは思い立ってすぐに行ける所ではなく、関電の関係者や余程の有名人(以前有名な年末の紅白歌合戦で、くろよんから生中継で参加したアーティストがいた事は、ご存知の方も多いかと思います)などでない限りは、この見学会に参加する以外の方法が存在しません。

くろよん見学や黒部ルートの交通機関乗車を別としても、黒部ダム~欅平駅間をくろよん周辺を経て移動するには、他には水平歩道や日電歩道と呼ばれる険しい山道を移動するしかなく、これは相当山歩きに慣れた登山家でも難儀すると聞きますので、MAKIKYUの様な一般人にとっては、黒部ルート見学会参加が、くろよん周辺を訪問する唯一の手段となります。

この様に非常に訪問し難い所ですが、くろよん自体が非常に有名な施設である上に、周辺の事業用交通機関も非常に魅力的ですので、以前から是非一度足を運びたいと思っていたのですが、8月末に黒部ルート見学公募委員会から当選を伝える通知が届き、それから見学会の日が待ち遠しいものでした。


この通知はメール便で送付され、見学会参加者向けのしおりや黒部ダム・黒部峡谷周辺の観光案内パンフ、見学会参加後のアンケート用紙やアンケート送付用封筒などが入ったものでしたが、一人での参加とした事も、当選に貢献したかも…と感じたもので、MAKIKYUが参加した黒部ルート見学会では、いつもより単独参加が多かったとの事でした。

そして見学会開催当日は、MAKIKYUは黒部ダム集合のコース(他に欅平駅集合の逆ルートもあります)の参加でしたので、前泊地の松本市内からJR大糸線で信濃大町駅へ向かい、そこからトロリーバス扇沢駅行きのアルピコ交通(川中島バス)で扇沢駅まで抜けた後、関電トロリーバスで黒部ダムへアクセスしたものでした。

10時30分の集合時間に間に合わせるには、松本からでも7時台の電車に乗らないと間に合わず、少々早起きを余儀なくされますが、信濃大町駅は周辺での食料調達も限られる有様ですので、宿泊場所となると一応駅近くに小規模なビジネスホテルはあるものの、選択肢はかなり限られてしまうのが現状です。

信濃大町駅~扇沢駅間バス路線の途中にある大町温泉郷も、余裕ある日程で観光も兼ね、複数人での参加なら良いのかもしれませんが、見学会前日に仕事が終わった後に首都圏から列車で移動し、単独行動での手頃な素泊まり宿を求めるには厳しいものです。

公共交通機関利用で首都圏から、黒部ダム集合の黒部ルート見学会に参加するには、松本での宿泊がベストとはいえ、最近多発している列車の輸送障害などに見舞われると接続交通機関に乗車できず、交通機関共に本数が少ないため、1本早くとなると相当早い時間に動き出さなければならないのは難点です。


そのため見学会自体の中止と共に、交通機関の輸送障害が発生しない事を願っての参加でしたが、大きなトラブルも無く無事集合時間までに黒部ダムへたどり着く事ができ、トロリーバスの乗り場付近には「黒部ルート公募見学会 参加者集合場所」の案内も出ていましたので、扇沢駅からのトロリーバス下車後は、迷わずすぐに辿り着けたものでした。
(余談ながらこの看板を見つけた時にはまだ若干時間の余裕がありましたので、MAKIKYUは一旦トンネルから外へ抜け、黒部ルート程の秘境ではなく以前にも一度訪問した事があるとはいえ、決して行き易い場所とは言い難い黒部ダムを見学していました)


10時30分の集合時間になると、参加者は黒部ダム駅の裏方へ案内され、ここでまず免許証などの身分証明書による本人確認が行われると共に、特別なエリアに足を踏み入れるだけに、続いて所持品検査と警備員による金属探知のボディチェックが行われ、ボディチェックは裁判所の刑事裁判傍聴以来でした。


ボディチェックの後は関西電力のマークが入ったヘルメットが渡され、見学会参加者は関西電力の案内人が外しても構わないという指示を出した時を除き、ヘルメットの着用が義務付けられるのは、特殊なエリアに立ち入る見学会ならではですが、見学会参加者は白色のヘルメットを着用し、関電関係者は黄色いヘルメットを着用する事で、見学会参加者を識別できる様になっています。


そして参加者全員のボディチェックやヘルメット貸与・装着が済むと、黒部ダム駅裏手のくろよん方面へ向かう関電専用トンネル(黒部トンネル)内に停車しているバスに案内されるのですが、この続きは近日中に続編記事で取り上げたいと思います。


最近の山梨交通路線車~異色の移籍車両も…

2011-10-20 | バス[甲信越]

先日「MAKIKYUのページ」では、山梨交通の古参路線車に関して取り上げましたが、山梨交通グループは国際興業系列と言う事もあってか、一般路線車は殆どいすゞ車ばかりで占められています。

そのため複数メーカーの車種を導入する傾向の事業者に比べると、どうしても車種のバラエティは見劣りしてしまうのですが、それでも年式に幅があるために結構な種類が存在しており、古参車ばかりではなく最新型も存在しています。

最新車種は専らいすゞ車を導入しているためにERGA(大型)とERGAMIO(中型)になり、国際興業塗装で導入している事もあってか、会社名表記を除けば池袋や浦和の駅前でゴロゴロしているバスと雰囲気は余り変わりなく、首都圏在住の身としてはやや面白みに欠けると感じてしまいます。


そのためバリアフリー対応などの機能点では優れているものの、MAKIKYUが個人的に乗車するならば、古参車の方が…というのが現状ですが、新しい車両は山梨県の補助施策が功を奏して天然ガス車の比率が高く、低床の天然ガス車は天井に大きなガスタンクを装備しているのが大きな特徴となっています。
(ちなみに写真のERGAは、山梨交通グループの路線車では新しい部類に入るものの、V8エンジンを装備するERGAでは初期車の部類で、大都市圏のバスでは中堅レベルの車両です)

また古参車や新車以外にも、地方のバスでは典型とも言える大都市圏からの移籍車も多数が活躍しており、親会社の国際興業から移籍した路線車もポピュラーな存在です。

国際興業からの移籍車は甲府市内だけでなく、山間部の身延などにも存在し、それどころか山梨交通グループの飛び地路線で、沼津ナンバーの山交タウンコーチ静岡営業所管内(富士宮駅~富士川駅~蒲原病院)にも在籍しています。


MAKIKYUが甲府から身延線と列車代行バスで富士宮市内へ抜けた後、静岡県内の路線で充当されている国際興業移籍車両にも乗車したものですが、個人的には古参車と共にこちらも是非乗車したい車両の一つです。
(写真は身延線列車代行バスの記事で掲載した、山交タウンコーチ身延営業所所属車両画像の再掲です)

他事業者からの移籍車は、親会社の国際興業以外からも存在しており、事業規模がさほど大きくない事もあってか、岩手の国際興業系事業者の様にゴロゴロ(おまけに東日本大震災の影響による沿岸部車両不足→復興支援の無償譲渡車などもありますので尚更です)とは行きませんが、こちらは自社発注車や国際興業移籍車とは異なり、いすゞ車ながらも純正車体以外の富士重工や西日本車体工業製も混在しています。

 
MAKIKYUも先日甲府駅前では、西日本車体工業製の中型車を1台目撃しており、この車両は前後扉でやや短い上に、少々豪華な仕様が異彩を放つ特徴的な車両で、京阪間の公営事業者から移籍した車両の様です。

この車両は大手スーパーのラッピング車両となっており、甲府駅前からこのスーパーの郊外型大型店舗へ向かう直行路線に専属で用いられている様でしたが、山梨交通グループでは決して古い車両ではないものの、なかなか興味深い車両です。

この路線は距離や所要時間、運賃面でも比較的手頃ですので、今度甲府を訪問する際には試乗するのも…と感じたものでした。


山梨交通の古参路線車~豪華な座席を装備した車両も…

2011-10-19 | バス[甲信越]

先日MAKIKYUが鉄道の日記念きっぷを利用し、山梨県内へ足を運んだ際には、甲府市内で山梨交通グループの路線バスにも乗車する機会がありました。

MAKIKYUが甲府駅前で何台かの路線バスを視察していた際に、中央本線の南側を走り甲府駅の西隣にある竜王駅を経由してから、山梨交通の運行拠点ともいえる敷島営業所(甲府駅からの路線は様々な経由が存在し、各系統を合わせると結構な本数になります)へ向かう便がやって来た際には、比較的古参の大型路線車がやって来たものでした。


MAKIKYUは以前にも何度か山梨交通グループのバスを利用した事があるのですが、当たった車両は主力の中型車ばかりと言う状況で、距離や所要時間的にも手頃な路線と言う事で、隣の竜王駅まで乗車したものでした。
(それでも所要20分弱の竜王駅まで330円を要しますので、JRに比べると割高なのは致し方ないのですが…)

乗車した車両は今流行の車体ラッピングが施されていた点は、車両撮影の点でやや難ありとも感じたものでしたが、いすゞキュービックの前後扉車自体が、今では大都市圏ではあまり見ない存在となっており、地域によって差異はあるものの、地方でも徐々に数を減らしています。

おまけに平成2年式という20年以上活躍している車両(P-LV314K?)でしたので、日頃新しいバスばかりに当たる大都市圏(12年以上経過した車両は、大都市圏特定地域では車検が通りません)に居る身としては、この様な車両に当たるだけでも御の字で、最近MAKIKYUが地方各地を廻って路線バスに乗る際には、古い車両を選んで乗る事がしばしばです。


ちなみにこの車両は年式が古いだけではなく、座席が2人がけのハイバックシートがズラリと並ぶ豪華な仕様となっていたのも嬉しい限りで、しかもギア比が加速型仕様になっているのか、首都圏周辺では余り聞かない走行音を奏でていたのも注目点と感じたものでした。
(首都圏やその周辺では、三菱ふそうや日野の加速型仕様は結構活躍しており、三菱車は大型路線車だけでも1000台以上使用している事業者が存在する程ですが、いすゞとなると結構少数派です)

また甲府駅前を発着する山梨交通グループの路線バスは、この車両以外にもラッピング車両が目立ち、最近では国際興業グループの路線バス塗装統一施策の一環で、国際興業塗装のバスも目立っているのが現状です。

そのため山梨らしさを存分に感じるアイボリーとぶどうを連想させる色彩のバスも減少し、一昔前は嫌と言う程見られた塗装のバスも少数派となっており、甲府市内を走る路線バスの殆どが経由する甲府駅前で暫くバスを視察していた際にも、数台見かける程度でした。


この如何にも山梨交通グループといった雰囲気のバスは、側面に山梨の特産品とも言えるぶどうのイラストが描かれている点も好印象ですが、最近の国際興業塗装のバスでも、MAKIKYUとしてはこのイラスト位は…と感じてしまうものです。


JR東海371系・あさぎり号運用から撤退~小田急線での活躍はもう間もなく見納めに

2011-10-18 | 小田急グループ

大手私鉄とJRの優等列車相互直通運転と言う、異色の特急列車として知られる小田急線~JR御殿場線直通運転の特急「あさぎり」号ですが、来年春にJRが使用している371系電車を、この運用から撤退させる事になり、ネット上のニュース記事やブログ等の個人サイトで多数取り上げられていますので、ご存知の方も居られるかと思います。
(371系のあさぎり号運用撤退に関してのニュース記事は、こちらをクリックするとご覧になれます)

371系は小田急側が同時期に製造したあさぎり号用の20000形RSEと、編成両数や車内設備などの仕様をある程度合わせつつも、RSEとはただの色違いではなく、様々な面で仕様の違いが見られるのが興味深いものです。

1編成しか存在しない事から、検査時などに時折RSEによる代走が行われるのも特徴で、様々な面で扱いが特殊な列車である上に、あさぎり号自体の小田急~JR直通需要が振るわず、小田急・JR東海共に御殿場線と競合関係にある東名高速道路で系列会社が高速バスを走らせ、運行本数や運賃などの面で見劣りする事も考えると、JR側のあさぎり号運行撤退は致し方ないのかもしれません。


個人的には小田急線内よりも、JR線内で乗車する機会の方が多かった車両ですが、小田急ファンのMAKIKYUとしても、個人的に気に入っていた車両の一つですので、来年春以降は写真の様な姿を見る事ができなくなるのも惜しい限りです。

ただ371系自体は登場から20年が経過し、そろそろ更新か置き換えの時期となる中で、あさぎり号撤退後に団体列車用に改装し、秋に再登場すると発表されているのはせめてもの救いです。

再登場の暁には、現在と同様のダブルデッカー2両を組み込んだ7両の堂々たる編成で再登場するのか、それとも短編成化されての再登場となるのかも気になる所ですが、来年秋の再登場時にどの様に姿を変えるのかも気になる所です。

あさぎり号自体は、来年春以降は昔の気動車やSSE車(旧3000形)時代に逆戻りするかの様に、小田急側の片乗り入れとなる模様ですが、RSE自体も371系と同世代の車両だけに、そう遠くない内に何らかの大きな動きがあると考えられ、RSEの今後の動向も気になります。

また現行の小田急側あさぎり号充当車両であるRSEのみで、今後あさぎり号を運行するとなれば、車両編成数(2編成)やあさぎり号の直通利用状況なども鑑み、運行本数の見直し(減少)は必須かと思います。

とはいえ御殿場線はただでさえ運行本数が少なく、神奈川県内では極めて不便な路線として突出する存在で、県境を跨ぐ区間は運転間隔が1時間以上開くことも当り前という状況、おまけにダイヤもパターン化されていないなど、非常に利用し難い状況です。
(一般車両のグレードだけならば、神奈川県内のJR線では他線よりかなり優れており、この点は評価できるのですが…)

来年春のあさぎり号からのJR側運行撤退時には、同時にダイヤ改正を行う事になるはずですが、あさぎり号の運行本数が減るならば、普通列車のテコ入れを行う事で補い、御殿場線全体の運行本数や輸送量を確保するなどの施策にも期待したいものです。
(一般車両を共用している身延線の災害復旧状況にもよりますが、土地柄や現行設備などを考えると、全線通し列車と国府津~山北間列車をそれぞれ毎時1本程度走らせ、昼間時間帯の完全パターンダイヤを構成する位は期待したいのですが…)


(お断り)371系自体はJR東海に所属する車両ですが、今回のあさぎり号撤退は小田急線における大事案である事もあり、「小田急グループ」カテゴリーでの取り扱いとさせて頂きます。


JR身延線・山梨県内の現状~373系も1編成が残留

2011-10-17 | 鉄道[甲信越]

数日前MAKIKYUは山梨県内へ足を運び、現在一部区間が台風の影響による土砂災害により不通となり、バス代行輸送が行われている身延線を利用する機会がありました。

その際に利用した列車代行バス(西富士宮~身延間)は、先日「MAKIKYUのページ」でも取り上げていますが、今日はその続編として、現在列車運行が行われている山梨県内区間(甲府~身延間)の現状を取り上げたいと思います。

この区間はローカル列車が甲府盆地内の鰍沢口までは概ね毎時1本、鰍沢口以遠の山間部は2時間に1本程度となり、通常はこれに加えて身延線全線を踏破し、更に東海道本線に乗り入れて静岡まで運行する特急「(ワイドビュー)ふじかわ」号が7往復運転されています。

しかしながら特急は県境付近一帯が不通となった影響で、全面運休となっており、甲府周辺~東海道新幹線沿線(名古屋・大阪方面)の列車移動は、現在東京都心や新横浜を経由する大回りルートの方が至便な状況となっています。

普通列車も元々運行本数が少ない山梨県内では、ごく一部の列車が運休となっている程度で、列車減便は比較的本数の多い富士~西富士宮間で間引きが目立つのですが、それでも身延周辺では列車や代行バスが2時間に1本程度しか運行されていません。

おまけに身延周辺の身延線以外の公共交通機関は、身延駅~身延山間の山交タウンコーチが運行する路線バスを除くと、一般路線・高速バス共にかなり限られていますので、現在公共交通機関を利用して身延周辺を訪問するのは、非常に不便で厄介な状況となっています。

車両面でも、身延線の充当車両は静岡車両区に所属しており、普通列車用の車両は御殿場線などと共用していますが、不通区間発生の影響で、台風通過時に山梨県方に居た車両は、通常の経路では基地へ帰区できなくなると共に、車両基地から山梨県方に車両を送り込む事も厳しくなっています。

今回の不通区間発生では、甲府ではJR東日本の中央本線(東線)と接続しており、こちらは特に災害等による不通などはない事から、その気になれば中央本線から辰野経由飯田線や塩尻経由中央本線(西線)、或いは横浜線or南武線~東海道本線を経由する大回りルートを使う事で、他社管内を経由する事にはなるものの、静岡とはレールが繋がっており、トレーラーなどを使わなくても、直接車両を移動させる事は物理的に可能です。
(それでも頻繁に移動させる事は厳しいですが…)

しかしながら今の所山梨県内の中央東線で313系などが走ったという話は聞かず、台風通過時に山梨県内で運用されていた車両が、一部区間復旧後にそのまま使われている様で、運行車両は車庫に帰区できない事から清掃などが行き届かず、全体的に汚れた印象が目立ったものでした。

 
ちなみにMAKIKYUが甲府~身延間で身延線を利用した際には、313系3両編成(ロングシート)のN8編成に当たり、同タイプは他にN10編成が身延駅に停車している姿を目撃しています。

それ以外の山梨県内残留車両は、MAKIKYUが確認した限りですが、途中ですれ違った列車と、鰍沢口・身延両駅に停車していた車両で、以下の編成を確認しており、他に代行バス乗車中には、芝川駅でも313系1編成(行先表示はLED・編成は未確認)を目撃しています。

313系2両編成(セミクロス・ワンマン対応車) V4 V5 V6 V8
313系2両編成(ロングシート) W3 W4
373系3両編成 F4


この内MAKIKYUが身延線を利用した際に稼動していたのは、乗車した列車以外は全て2両編成セミクロスのV編成で、ワンマン運転対応と言う特性が、稼働率の高さに繋がっていると感じたものです。


これらの身延線の山梨県内運用車両は、車庫へ帰区できない事も影響してか、トイレが全て使用停止となっており、その旨を示す張り紙が見られたのは、東日本大震災で長期不通となり、その後一部区間で再開したJR仙石線の気動車(矢本~石巻間)を連想させられ、こんな所でも災害の影響を感じたものですが、甲府~身延間を普通列車で乗り通すと1時間以上は要しますので、利用の際は要注意です。

またMAKIKYUが身延線を利用したのは昼間と言う事もあってか、身延で留置となっている車両が目立ち、その一方で特急「ふじかわ」号の全面運休により、ただでさえ少ない列車本数の大幅減が行われているのは、不便極まりなく頂けないと感じたものです。


特急用の373系が山梨県内には1編成しか残留しておらず、特急の運行には限界があるとはいえ、昼間に稼動していない2両編成のロングシート車を活用し、特急のダイヤで臨時快速を設定する事はできないのかも気になる所で、現在の一部区間バス代行が長期化するのであれば、何らかの対策を望みたいものです。

 
あと特急用の373系は、F4編成1本が身延駅で留置されている姿を目撃しており、こちらは日頃まず同系では目にする事がない「(普通列車)身延」の字幕を出していたのが気になったものです。

ネット上の情報では、朝ラッシュ時に身延~甲府間を普通列車で往復している姿が取り上げられており、ピーク時の車両不足対策としている様です。

同系は設備的に優れた車両である上に、身延線沿線での列車運行区間でも減便が相次ぎ、利用客に使い難い状況を強いている状況ですので、当面特急や特急ダイヤでの臨時快速の設定が厳しいのであれば、昼間の車掌が乗務する普通列車でも大々的に運用して欲しいと感じたものです。


JR身延線・列車代行バスの様子~主に観光タイプの車両が用いられるものの…

2011-10-12 | バス[甲信越]

現在JRでは、青春18きっぷの秋版と言っても過言ではない「鉄道の日記念・JR全線乗り放題きっぷ」が発売され、もうまもなく販売・利用期間共に終了となりますが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中にも、この乗車券を利用された方が居られるかと思います。

MAKIKYUもこの乗車券を購入し、泊りがけの旅行で2回分を利用しており、この旅行の関係で今月上旬は「MAKIKYUのページ」更新もやや滞りがちになったのですが、残る1回分も消化を兼ね、昨日利用して3回分を使い切ったものでした。

昨日の旅行は急遽思い立って実行したもので、山梨方面へ日帰りで足を運んだのですが、その際にはJR身延線を利用する機会もありました。

JR身延線は先月の巨大台風襲来時に、台風の中心が富士川沿いに北上し、沿線で土砂災害等が発生したほか、身延線自体も身延以南を中心に大きな被害を受け、県境を跨ぐ西富士宮~身延間は、未だに列車の運行が不可能な状況となっています。

このため現在特急「ふじかわ」号の全列車と、一部の普通列車が運休となっているほか、西富士宮~身延間では概ね身延での甲府方面普通列車に接続する形態で、2時間に1本程度の割合で代行バス輸送が実施されています。

MAKIKYUが身延線を利用した際には、甲府から静岡県内へ向かう行程を取った事もあり、現在不通となり代行バス輸送が実施されている区間にも乗車したものでしたが、今日はこの代行バスに関して取り上げたいと思います。

身延線の代行バスは主にJR東海バスが担っており、同社は現在一般路線の運行からは撤退して高速・貸切専業状態になっている事もあってか、同社の代行バスでは、高速や貸切で用いられる観光バスタイプの車両が活躍していました。


MAKIKYUが乗車した便では、三菱ふそうエアロバスに当り、この車両は運賃箱や降車ブザーなどが設置されていない貸切用の車両で、トイレの設置も無い一般的な観光バスといった雰囲気の車両でした。


ただ途中で目撃し、逆方向の便に充当されていた日野セレガは、運賃箱や降車ブザーを装備し、トイレも設置されている東名ハイウェイバス用の高速車でしたが、こちらはトイレが使用可能なのか否かも気になる所です。
(余談ながら現在身延線では、身延以北の山梨県内を走る列車では各車両共にトイレが使用中止となっていますので、乗車の際は要注意です)

代行バスは基本的に1便に付き1台運行の様でしたが、学生の通学などでバス1台で捌けない事態を想定してか、身延駅では途中の内船(Utsubuna)までの区間便用に一般路線車を用いた2号車を待機させていました。


こちらは地元身延の駅前に拠点を構える山梨交通の子会社・山交タウンコーチ身延営業所が担当しており、この2号車は輸送力確保を目論んでなのか、それともたまたま空いていた車なのかは分かりませんが、親会社の国際興業から移籍した古参の大型車が用いられていました。

このバスは途中の内船までの運行と言うだけでなく、1号車だけで足りてしまう際には運行せず、1台だけでは輸送力が確保できない時だけ運行している様でした。

そのため残念ながら乗車機会には恵まれませんでしたが、バスは観光タイプよりも路線車の方が好みなMAKIKYUとしては、このバスで身延~西富士宮間を通して乗車できたら…と感じてしまったものでしたが、代行バスの運行経路は幹線道路から外れ、所々で狭い箇所もあるだけに、長尺の観光バス車両では乗客としては乗り応えはあるとはいえ、大型2種免許持ちのMAKIKYUが見ても、運転の負担は相当と感じたものでした。

ちなみにJR代行バスは現在本州旅客3社全てで運行が行われ、この様を見ると今年は災害が余りに多い年である事を実感させられますが、今年は東日本大震災関連のJR東日本代行バスにも乗車しています。

 
この身延線の代行バスは、復旧に向けて動くこともままならない東日本大震災関連の代行バス運行区間に比べると、長期化しないと見込んでいる事も影響しているのか、バス停や停留所の案内、行先表示などもJR東日本の代行バスに比べると簡素な印象に感じたものでした。


また身延線代行バスに乗車した際には、途中身延町と南部町の境界地点で、大規模に山肌が崩壊して軌道が損壊した箇所がバスからも眺められ、その後線路上を走る復旧工事のトラック(仮設の車輪を装備)も目撃していますが、被災規模は結構大きく、鉄路の復旧までどの程度の期間を要するのかも気になる所です。


南海12000系「サザン・プレミアム」(2)~車内編

2011-10-10 | 鉄道[近畿・スルッとKANSAI加盟社局]

今月初めに取り上げた南海の特急「サザン」座席指定車用の最新型車両・12000系「サザン・プレミアム」ですが、今日は先日の外観編に続き、続編として車内の様子を取り上げたいと思います。

「サザン・プレミアム」は見るからに特異な雰囲気の空港連絡用特急車・50000系「ラピート」とは異なり、見た目は実用本位の印象が強い車両ですが、車内に足を踏み入れても、デッキ付近などは比較的シンプルな雰囲気となっています。

 
床材が客ドア付近だけ黄色く色分けされ、車椅子対応の大型トイレを備えているのは、今日の最新型車両らしい所で、白を基調とした壁面も、ドア部分だけ薄い青色で色分けしているのは、単調な印象になるのを避けるためにも良いアクセントと感じます。


客室に足を踏み入れると、こちらも「ラピート」の様な特異な雰囲気ではなく、一般的な特急車両と言う雰囲気が強く感じられたものですが、照明を天井中央と荷棚下部に配置するレイアウトが特徴的で、行先や次駅の案内が最新型にも関わらず、3色LEDによる文字案内なのは少々惜しい所です。


座席は特急車両では一般的な、背面テーブル付きの回転式リクライニングシートとなっており、座り心地は悪くないと感じたものですが、ヒーター配置の関係もあってか、最近の新型特急車では珍しく、座席下の足元が詰まっています。
(それでも最下部まで足元がカバーで覆われている他の特急車よりはまだ良いのですが…)


そのためシートピッチこそそこそこの広さが確保されているものの、足元が少々狭く感じてしまうのが難点で、難波~和歌山市・和歌山港間を乗り通しても1時間程度ではさほどの実害はないとは言え、今後「サザン・プレミアム」車両が増備される機会があるとするならば、ヒーター形状や配置を見直し、座席下の空間が広く確保される事に期待したいものです。

ちなみにMAKIKYUが「サザン・プレミアム」に乗車した際には、電動車狙い+海沿いの景観を楽しむ事を目論み、窓口で座席指定券を購入する際に、先頭車右窓側座席の空席を照会したら、時間帯の関係でガラガラだった事もあり、係員の方が気を利かせて最前部という特等席で発券してくれたものでした。


「サザン・プレミアム」では先頭車の乗降口が後側になり、乗務員室との間の仕切り部分も、客室側は一般車両と同じ様に乗務員室扉をはじめ、その両側もガラス窓がありますので、そこそこの前面展望を楽しめます。


ただ最前部に座っても、乗務員室内の機器配置などは特に前面展望を重視した雰囲気ではない上に、助士席側では前面窓付近に乗務員用カバンが置かれるなど、存分に展望を…という雰囲気ではなかったのは残念な所ですが、特急「サザン」は観光列車的要素が乏しい上に、運行形態が一般車併結で、難波行きでは一般車が先頭に立つ事などを考えると、偶然の産物でそこそこの前面展望が楽しめ、しかも先頭車が電動車であるだけでも上等かもしれません。

 
また「サザン・プレミアム」乗車中には中間車2箇所の扉増設準備が施されている区画も気になり、途中で様子を覗きにいったものでしたが、こちらは2号車が客室とは仕切られたフリースペースの様な雰囲気になっているのに対し、3号車は客室端に如何にも扉を増設できる事をPRするかの様な雰囲気となっており、様相が異なるのは意外でした。


MAKIKYUはなるべく電動車に乗りたい事もあり、「サザン・プレミアム」では出来れば2・3号車ではなく、両端の車両に乗りたいものですが、和歌山方面行き列車の3号車最前座席は壁面との間に結構なゆとりがあり、足元の広い座席を望むのであればお買い得区画とも感じたものですので、付随車(モーターなし)車両の方が好きな方には、この座席はおススメとも感じたものでした。

「サザン・プレミアム」に乗車した感想としては、車内には現代のニーズに応えたコンセントや空気清浄器も設置され、所要1時間程度の特急で用いる車両としては、実用面では申し分ないかと思いますので、座席下の足元空間確保の問題を別とすれば、居住性の面でも悪くないと感じたものです。

南海線特急「サザン」は一般車が4両しかない事もあってか、混雑が常態化しており、おまけに関西私鉄の一般車両の中では、新旧どちらもグレード面で芳しくない印象がありますので、「サザン・プレミアム」が充当されるのであれば、500円の座席指定料金も阪和間を乗り通すのであれば許容範囲で、南海電車で和歌山へ足を運ぶ際には、また利用しても…と思ったものでした。

とはいえ「サザン・プレミアム」以外の「サザン」は、座席指定車と一般車の双方共に草臥れた印象が強く、これではJR阪和線の新型車攻勢に対して劣勢も否めないかと思いますので、今後どの程度のペースで古参車が淘汰されるのかも気になる所です。


南海12000系「サザン・プレミアム」(1)~外観編

2011-10-02 | 鉄道[近畿・スルッとKANSAI加盟社局]

先月MAKIKYUが関西へ足を運んだ際には、南海電車で先月に営業開始したばかりの特急「サザン」座席指定車の最新型車両・12000系にも乗車する機会がありました。


12000系は2本が製造され、従来から走っている南海線の阪和間特急「サザン」(難波~和歌山市・和歌山港)用車両・10000系よりもあらゆる面で進化した新型車両と言う事で、「サザン・プレミアム」を名乗っています。


前面貫通扉にこの名称を配しているのに加え、車体側面にも大きく「SOUTHERN Premium」と表記して新車をPRしていますが、これに加えて運行区間の南海線をイメージしたデザインが施されている点も特徴的です。

 
フルカラーLEDによる行先表示も従来車より見やすく好感が持てますが、日本語との交互表示で出てくる英語表示で、和歌山港を「WAKAYAMA-PORT」ではなく「WAKAYAMAKO」と表示している辺りは改善が必要かと思いますし、「関西空港接続(泉佐野乗り換え)」という交互表示可能なLEDの特性を生かした表示も、不慣れな利用客にはかえって混乱を招くかもしれません。
(関西空港接続の案内も、直通列車が無い泉佐野よりも和歌山方では有用かと思いますが、行き先を大きく表示した上で、下に小さい文字で「関西空港方面は泉佐野乗り換え」程度の表示が妥当な気がします)

この12000系の導入により、10000系だけでは座席指定車の編成数が不足し、阪和間で結構な数の全車自由席が走っていたのを解消し、昼間時間帯の阪和間一部特別車特急毎時2本化に貢献していますが、それでも運用上の関係などもあってか、まだ何本かの全車自由席特急が残存しています。

阪和間定期特急列車の全列車座席指定席車連結には、もう少し12000系の増備が必要な様ですが、既存「サザン」用車両は決して新しい車両とは言い難く、設備的にもやや難ありの様ですし、おまけに古参車両の下回りを流用した車両で老朽化も進んでいるかと思いますので、既存車両の取替えも含めて増備が進むのか気になります。

ちなみに12000系は既存「サザン」10000系とは異なり、完全な新造車である上に、最新型車両だけあって、メカニズム面でも新型の一般車両・8000系と同種のVVVFインバーター制御や電気指令ブレーキなどを採用しています。

この事もあって既存「サザン」の一般車(自由席・特別料金不要)として連結されている7000系や7100系といった古参一般車との連結はできず、代わりにメカニズム面で同等の8000系を一般車として併結して運行しています。

しかしながら運行途中で増結や解放を行わない事もあってか、運用面では既存「サザン」と同等に扱われているのが特徴で、同じ時刻の列車でも日によって既存「サザン」が充当される場合と、「サザン・プレミアム」が充当される場合があるのは要注意です。

現段階では土休日の運用を固定化すると共に、平日の「サザン・プレミアム」充当車両の時刻をHPで公開していますが、この扱いもいつまで続くのか気になる所です。

また「サザン・プレミアム」充当列車の一般車として運用される8000系は、1000系列との併結も日常的に行っており、9000系とも物理的には併結運転が可能な様ですが、現段階で8000系以外の車両が12000系と併結し、一部特別車特急の一般車として連結された話は聞いた事が無く、今後1000系などとの併結が実現するのかも気になります。
(個人的には単独運用を極力避けているために、持て余し気味となっている9000系4両編成を併結した編成が実現すればと思っていますが…)

ちなみにこの12000系はメカニズム的には8000系と同様で、車体も南海の特急専用車としては初のステンレス製となっているのが特徴で、南海に限らず大手私鉄全体を見渡しても、有料特急車でステンレス製車体を採用した車両自体が他に見当たりません。

とはいえJRの特急車でステンレス製車体を採用した車両は多数存在していますので、観光向けに特化した車両は別としても、汎用特急車でステンレス車はもっと増えても良さそうな気がします。

ステンレス車でも金属地無塗装の冷たい印象を和らげるためか、12000系では同じメーカーが手がけた首都圏の標準軌某大手私鉄最新型車両(一部は別のメーカーでも製造されていますが…)の如く、窓下はカラーテープで覆われ、ステンレスの冷たい印象を出さない様にしているのが特徴で、一般車との差別化にも貢献しています。


また12000系はメカニズム的には8000系と同等で、専ら一部特別車として運用される汎用特急車だけあって、前面は貫通扉付きの実用本位な形状となっており、中間車は将来の客扉増設が容易な様に、JR西日本の新型単行電車を連想させる準備工事が施されているなど、全体的に機能重視の雰囲気が漂っていると感じたものです。

そのためデザイン面では関西や大手私鉄界だけでなく、日本の鉄道界全体を見渡しても強烈過ぎる印象の関西空港アクセス特急用車両・50000系「ラピート」には遠く及ばない気がしますが、併結される一般車・8000系の見るからに機能本位な前面形状に比べると、デザイン面では随分見栄えする気がします。

大手私鉄界では南海と共に、座席指定車と一般車を併結した一部特別車特急を多数走らせている名鉄では、最近の新型特急車では両車を組み合わせた固定編成としている違いはあるものの、前面デザインを特別車と一般車で共通化しており、そこそこの見栄えがする事を考えると、今後8000系を増備する際には、12000系に準じた前面形状にでもした方が…とも感じたものでした。

車内の様子などに関しては、近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。