昨日MAKIKYUはこの時期恒例の格安なJR普通列車乗車券・青春18きっぷを使用し、小海線沿線の清里・野辺山辺りへ足を伸ばしていましたが、その際にはまだ走り始めて間もない新型車両・キハE200形気動車にも乗車する事が出来ましたので、今日はこの車両に関して取り上げたいと思います。
この車両はキハE120系シリーズと称される(らしい)JR東日本の最新鋭ディーゼルカーの部類に属し、現在活躍しているこのシリーズの車両としては、他に水郡線で今年に入ってから走り始めたキハE130系列(先日「MAKIKYUのページ」で取り上げた記事はこちら)がありますが、共に既存のキハ110系列との併結が可能になっている点も特徴です。
キハE200形は両開き3扉という扉配置が特徴のキハE130系列とは異なり、ローカル線区用車両では一般的な片開きドアを両端に配置したドア配置ですが、デザインは扉配置や帯色などを除くとキハE130系列とほぼ同様ながらも、側面に張られたブルーのカラーテープはHIBRID TRAINという表記があり、車両の特性を大きく強調しているのが特徴で、営業運転に際しては『こうみ』という名称も与えられています。
車内は座席配置やモケットの色こそ異なりますが、これも概ねキハE130系列をはじめ、最近のJR東日本各形式と大差ない仕上がりで、ボックスシートの頭が当たる部分がやたらと硬い事や、随分質素な印象を受ける化粧板、真っ黒で異様な感を受ける最近の同社車両で流行のつり革などは相変わらずですが、蛍光灯の取り付け部分は最近の他形式とは異なる形状となっており、天井部分も質素な感を受けるFRPのパーツでない事や、ドア部分全体をキハE130系列と同様に黄色く塗装した仕上げとなっている点(某形式の様にドア端だけ黄色いラインが入っているのはどうも中途半端な感じですので…)は好感が持てますし、快適な居住性が評判となっていながらも、窓が固定式で開閉不可能である事が惜しまれていた既存のキハ110系列の弱点を踏まえ、一部の窓を開閉可能な構造とした点も評価に値する気がします。
また車内にはLED表示器とLCDモニター、運賃表示器が設置され、LED表示器は1段式で6文字表示という最低限のものながらも、キハE130系列と同様に行先などをスクロール表示する機能を備えており、「空にいちばん近い小海線へようこそ!世界初のハイブリッド鉄道車両『こうみ』です!!」といった案内も頻繁に流されるなど、この点では駅名だけを漢字・カタカナ・ローマ字で交互表示するだけのプログラムしか組み込まれていないモノより遥かに優れていますが、トイレ脇に設置されたLCDモニターはこの車両の宣伝だけを流しており、あまり有効活用されていない点は惜しまれます。
(最近は運賃表示器にもLCDモニターを用いている鉄道車両や路線バスが存在する位ですので、いっそのこと旅客案内と運賃表示を兼ねてLED表示器の代わりにLCDモニターを設置しても良かった気がします)
あと車両の大きな特徴として、車内のLED表示器でも案内が頻繁に流される「(営業用としては)世界初のハイブリッド鉄道車両」という事が挙げられ、その事もあって搭載機器が多いのか、床下だけでは載せきれない機器が冷房装置と共に屋根上に搭載されているのは独特な感があり、下回りも最新鋭とはいえ一般的なディーゼルエンジンを搭載したキハE130系列とは大きく異なっています。
そのためキハE200形の動力は電車とほぼ同様のモーター(同社恒例の非力なモーターが1両に2台)を使用しており、パンタグラフからの架線集電の代わりに発電用エンジンから蓄電池に蓄えた電力を用い、これと共に減速時のエネルギーを蓄電池に蓄えて活用している状況(単に発電用エンジンを用いている電気式とは異なり、2つのエネルギーを混血(ハイブリッド)している点がこの車両の最大の特徴です)ですので、メカニズム的には気動車(ディーゼルカー)というよりも電車に近いものとなっており、乗車していると走行音も既存の気動車とは大きく異なります。
発車時や停車時には新型電車の様な音がかすかに聞こえる程度、乗車中の乗客からも「これは電車だ…」という声が聞こえる程でしたが、走行中に発電用のエンジンが動き出し、一定のエンジン音が響き渡る(これも蓄電池にエネルギーがある程度充足されているとアイドリングを停止するなど環境負荷に考慮しており、鉄道車両でアイドリングストップ機構を採用している事自体が異例です)事で、辛うじてこの車両が「電車」ではない事を感じさせる状況で、また車両自体も既存のJR東日本車両に比べて防音性を強化しているのか、比較的高速で走行している際もモーターの音は比較的静か(乗車していると殆ど音が聞こえないJR某社の気動車併結対応通勤型電車程ではないですが…)に感じられるものでした。
ただ機構上の関係で搭載機器が他車両に比べて多い事も影響してか車両は比較的重たく、これは走行時の安定性はあるものの、エネルギー効率の面ではマイナスに作用(それでも制動時のエネルギー活用などで、既存のキハ110系列より1割程優れている様ですが…)しますし、既存の車両とはメカニズム的に大きく異なり新機構を多数搭載した車両ですので、これから暫くの間3両が小海線で営業運転に用いながらコスト面などの検証を行い、今後この車両を増備していくか否かが決まるようですが、せめて今年に入ってから千葉地区に新機構を多数導入して鳴り物入りで登場しながらも、不調であっという間に稼動不能な状況となってしまった同社某形式の2の舞にだけはならず、今後末永く活躍する事を期待したいものです。
ちなみにこの新型気動車・キハE200形『こうみ』ですが、9月2日までは小淵沢~野辺山間の臨時列車・八ヶ岳高原列車(その間合いで運行される一部列車も含む)で運用され、その後一般の小海線定期列車に既存のキハ110系列と合わせて運用される見込みですが、八ヶ岳高原列車の運行期間は格安な青春18きっぷの使える時期でもありますので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方で、首都圏など小海線へ足を伸ばすのが比較的容易なエリアに居られる方は是非この「世界初のハイブリッド鉄道車両」に乗車され、従来の気動車とは大きく異なる乗り心地を一度体験されてみては如何でしょうか?
写真はキハE200形の外観と車内、先頭部のドア付近の様子と車内に設置されたLCDモニターです。