今日から日本国内における付加価値税(消費税)の税率が5→8%に上昇し、これに伴ってあらゆる商品やサービスの購入などにおいて支払総額が上昇するという、庶民にとっては余り芳しくない状況となります。
(中には消費税率が上がる事で、税金をより多く支払う事が出来ると歓迎している方も居られるかもしれませんが、少なくとも「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中で、その様な考え方をお持ちの方は極めて少数かと思いますし、MAKIKYUにとっては決して有り難いとは言い難い話です)
少子高齢化の急速な進行に伴う社会保障費の増大や、諸外国に比べて付加価値税が低率であった事等を踏まえると、MAKIKYUの個人的見解としては、税率改定は決して歓迎できる事ではないものの、今後の事も踏まえると致し方ないのでは…と感じています。
(付加価値税は隣国・大韓民国でも既に10%となっており、他国の中には更に高額の税率となっている国も少なくありません)
ただ公的支出の無駄がゴロゴロ、という状況で安易に国民の税負担を増大させるのでは叶いませんので、政治や行政を担う方々には、増税相応かそれ以上の意識を持って公務に取り組んで頂きたいと思います。
(「MAKIKYUのページ」は政治や政策に関して議論する場ではありませんので、消費税率改定の是非や使途を巡る議論をコメント投稿する事はご遠慮下さい)
今回の消費税率改定では、ICカードの普及が進行し、今までに比べて少額決済が容易化した事もあってか、交通系ICカード普及率の高い首都圏を運行する鉄道やバス事業者の大半で、交通系ICカード利用時における1円単位の「ICカード運賃」が導入され、現金等で乗車する場合の運賃(事業者側は現金等運賃・きっぷ運賃などと案内)との2重運賃体系となります。
この2重運賃体系も、既に隣国・大韓民国などでは、交通カード運賃と現金運賃の2種類が設定され、彼の地の交通機関も幾度も利用している身としては、さほど違和感は感じず、個人的には日本でもやっと導入か…と感じています。
韓国では交通カード運賃が概ね1割程度割安に設定され、地下鉄との通算運賃設定や、都市・路線によっては乗継1回無料といった、多大な恩恵も受けられるのに対し、日本の首都圏では路線バス利用における「バス特」ポイント付与を除くと、一部を除きせいぜい1円単位の割引と、カード登録者などに対するほんの僅かなポイント付与(都営交通のToKoPoなど)しかないのは残念な限りです。
日本の路線バスでは運賃支払い時に小銭の持ち合わせがなく、乗車区間によって運賃が細かく変動する整理券方式の運賃後払い路線では、両替のために支払いが手間取り、運行遅延の大要因となる事もしばしばですので、この様な事を減らすためにも、もっとICカード利用での恩恵を強化しても…と感じています。
首都圏の鉄道やバス事業者においては、今月から今まで日本では導入事例のなかった2重運賃となる事もあってか、その事を盛んにPRしており、この事を周知宣伝する車内広告などもよく見かける状況です。
写真は首都圏路線バスの最大手、神奈川中央交通(神奈中)における車内告知ですが、特に強調してPRしている事は…
・同一区間に2種類の運賃が設定(IC運賃/現金等運賃)
・IC運賃は全額を1枚のICカードで支払った場合に限定して適用
・全ての区間においてIC運賃は現金等運賃より低額若しくは同額
と案内されています。
神奈中の横浜市内均一運賃路線における運賃は、税率改定前210円(小児110円)が、今日から大人IC運賃216円/現金等運賃220円となり、小児運賃はこの金額からそれぞれ半額となる事から、小児IC運賃は216÷2=108円となり、運賃改定によって一部では逆に値下がりとなる事例も存在しています。
環境定期券利用における100円運賃や、ちびっこ50円キャンペーンなどは今まで通りとなりますので、こちらも消費税分を除いた実質運賃では値下がりとなっており、他事業者でも類似対応となっている事例が数多いと思います。
肝心のIC運賃に関しても、神奈中の親会社・小田急電鉄や小田急グループの対象交通事業者をはじめ、他私鉄や路線バスなどでも上記3項目を満たしている事業者が大半を占めているかと思います。
しかしながら首都圏の鉄道最大手・JR東日本では嫌らしいペンギンのイラストと共に、電車特定区間・山手線内を除く幹線・地方交通線では「IC運賃は、きっぷの運賃と比較して、高い場合も安い場合(一部同額)もあります」という案内が告知されています。
ICカードの普及は、事業者側にとっても長期的に見ればコスト削減に繋がる事案であるにも関わらず、IC利用で利用者が損をする場合もあるという、とんでもない状況になっています。
具体例としては、税率改定前の幹線・地方交通線における初乗り140円区間(幹線3kmまで)の改定後きっぷ運賃140円/IC運賃144円や、税率改定前320円区間(幹線16~20km)の改定後きっぷ運賃320円/IC運賃324円、税率改定前1890円区間(幹線101km~120km)の改定後きっぷ運賃1940円/IC運賃1944円などが該当し、これらの区間ではICカード利用で数円の損失となります。
逆に最もお得感を感じるのは税率改定前180円区間(幹線4~6km)のきっぷ運賃190円/IC運賃185円と、税率改定前190円区間(幹線7~10km)のきっぷ運賃200円/IC運賃195円が該当し、それ以外ではICカード利用で得をするのは1乗車で5円以下です。
JR東日本では、ただでさえ発駅から着駅(目的地)まで1枚の乗車券を購入するよりも、途中の乗換駅で一旦出場して再入場するか、回数券や定期券を分割購入した方が割安な事例も多数存在し、この事をご存知の方も多いかと思います。
(新宿~上野原間を利用する際に高尾駅で一旦出場・或いは乗車券を分割したり、品川~洋光台間を利用する際に横浜駅で一旦出場・或いは乗車券を分割するなど、一旦出場・或いは乗車券を分割した方が通し乗車より大幅に安くなる様な極端な事例(気になる方は経路検索などで調べてみて下さい)もあり、途中駅で一旦出場したり乗車券を分割した方が20~30円程度安くなる事例は数え切れない程あります)
これに加えてIC運賃が電車特定区間内相互乗車以外の場合だけ「高い場合も安い場合も」というのであれば、ICカードで入場するのと、ICカードの残額を利用して磁気乗車券を購入するのでは、利用する都度ICカード直接入場と券売機で乗車券引き換えのどちらが割安かを考えなければいけない有様というのは非常に頂けないものです。
(ICカードの便利さばかりを強調している、嫌らしいペンギンのイラストなどが描かれたJR東日本の宣伝を鵜呑みにして、気付いたら余計な運賃を支払う羽目になっていた…という事にもなりかねませんので…)
小児運賃に関しても、JR旅客鉄道線は他の国内交通機関の大半で取り入れている「10円単位端数切り上げ」ではなく「10円単位切り捨て」となっており、税率改定前大人230円区間の小児運賃は、私鉄などでは120円となるものがJRでは110円ですので、これもICカード利用で大人運賃の半額となると、IC利用で損をする事例が数多く発生します。
JR側の告知でも「大人運賃ではIC運賃よりきっぷの運賃の方が安い(高い)場合でも、小児運賃ではIC運賃よりきっぷの運賃の方が高い(安い)場合もあります」と記されており、告知広告に右上に出ている嫌らしいペンギンの表情と同様に、運賃制度も非常に嫌らしいと感じます。
JR東日本が赤字に苦しみ、北の大地で非電化閑散線区を多数運行する鉄道事業者や、濡れ煎餅の発売で繁盛している地方私鉄などの助けを借りながら辛うじて輸送維持に努め、それでも厳しい経営状況の中でもなるべく旅客への運賃負担を減らすために止む無く…という事であるならば、致し方ないのかもしれませんが、同社がその様な状況とは到底考え難いと感じます。
(JR東日本は近年京葉線用に導入した新鋭通勤型車両1編成を、まだ登場から数年で事故被災などの止む無き事情がないにも関わらず、最近になって編成丸ごと廃車回送したと騒がれている程ですので…)
ましてJR東日本がICカード普及の先頭を走る事業者である事も考えると、この様な制度の導入は理解し難く、1円でも旅客から運賃収入を余計に収受する仕組みを講じ、その積み重ねが「塵も積もれば山となる」とでも考えているのだろうかと勘ぐりたくなります。
個人的にはよくこんな運賃制度で監督官庁の許認可が降りたとも感じ、今後JR東日本の電車特定区間・山手線内を除くICカード通用エリアを利用する際には、利用する都度運賃表を見てIC運賃と現金等運賃のどちらがよいのか…と考えなければいけないというのは困ったもので、今後運賃改定の際には他鉄道やバス事業者と同様に、普通運賃は「全ての区間においてIC運賃は現金等運賃(きっぷ運賃)より低額若しくは同額」と改めるか、さもなければSuicaなどのICカードを利用した際には、一部コンビニでポイントカードを利用した際に付与される来店ポイントの如く、ICカードによる改札入場ポイントを付与するなど、ICカードを利用して損をしない施策を講じて頂きたいものです。
各駅に「きっぷ運賃で利用した方がお得な区間一欄」を掲出し、各駅の券売機周辺に掲出している運賃表でも、該当駅をマーキングする事で、該当区間利用時にはICカードで直接入場せず、自動券売機できっぷ運賃が適用される磁気乗車券に引き換える事を盛んに呼びかけるという方法も考えられますが、掲示の作成・掲出程度はともかく、こんな事の為に人員を余計に配置する事でコスト増→運賃転嫁となっても困りますし、この方法は非現実的過ぎるかと思いますので…