先日「MAKIKYUのページ」では、長崎県新上五島町を運行している新上五島町営バスに関して取り上げましたが、現在新上五島町か五島市のいずれかに属する五島列島の島々は、全て本土とは陸続きでない非架橋離島となっています。
五島列島の島々の中で、面積・人口共に最大の福江(Fukue)島に限れば、五島福江空港もありますので、空を飛ぶのが大嫌いのMAKIKYUとしては、余程止むを得ない事由がない限りは真っ先に選択肢から除外するとはいえ、航空利用によるアクセスも一応可能です。
それ以外の島へ足を運ぶとなれば、比較的大規模な中通島でも、上五島空港が廃港となっており、福江島でも五島福江空港を発着する航空便の便数や輸送力は限られたものですので、本土~五島列島各島へのメインアクセスは船となります。
五島列島各島は離島ながらも、本土とは遠く離れた島ではありませんので、福江島や中通島へは、本土から高速船で比較的手頃に足を運ぶ事ができ、時間はかかっても割安に移動したい方などは、フェリー利用と言う選択肢もあるなど、船旅を楽しみながら手頃に島巡りをしたいという向きには、比較的楽しめるエリアかと思います。
本土からのアクセスは、現在は五島市となっている下五島(福江島など)へ向かう場合は長崎港発着が大半を占めています。
これに対し現在新上五島町となっている上五島(中通島)へ向かう場合は、利用航路によって長崎港発着か佐世保港発着のいずれかという状況で、島側の発着港も福江島の対本土航路は福江港に統一されているものの、中通島の対本土県内航路は利用航路によって有川(Arikawa)・鯛の浦(Tainoura)・奈良尾(Narao)に分散しているなど、余所から訪問する旅行者にとっては、少々分かり難い状況になっています。
また五島列島へのアクセスは、各島が長崎県に属し、長崎県本土の西側に位置する事もあってか、旅客航路の大半は県内航路となるのですが、これ以外に九州の中核都市・福岡(博多)と五島列島を結ぶフェリーも1日1往復就航しています。
(1隻のみ就航の航路ですので、概ね月1回程度定期休航なる点は要注意です)
このフェリーが野母商船が運航するフェリー「太古」で、航行距離も長くなりますので、所要時間の面では陸路(JR特急や高速バス)+高速船の最速乗り継ぎに比べると、劣勢は否めません。
ただ博多発は乗り換えなしで五島列島各島へダイレクトアクセス可能なだけでなく、夜行運航で五島列島各島には朝到着であるが故に、時間を有効に活用できる利点もあり、MAKIKYUが五島列島へ足を運ぶ際には、博多→中通島の往路でこのフェリー「太古」を利用したものでした。
中通島でのフェリー「太古」発着港は、長崎や佐世保へ向かう各航路が発着する港とは異なり、島の中心地に程近い青方(Aokata)港となっており、事情を知らない人間には非常に分かり難いのですが、更に中通島とは若松大橋によって実質的に陸続きとなっている若松島にも寄港しており、有川・鯛の浦・奈良尾に加えて青方と若松も…となるとという状況で、島の規模の割に旅客航路の発着港数がやたらと多いのも、中通島の大きな特徴と言えます。
(ちなみに太古の最終寄港地・福江島では、他の対本土航路と同じ福江港発着です)
このフェリー「太古」は現在、建造から20年を超えた船を用いており、大きさも1200tクラスであるなど、スペック的には外海を長時間航海する船にしては…という印象があります。
併食設備も自動販売機と売店物販のみであるなど、こじんまりとした印象のフェリーながらも、経年の割には船内も比較的綺麗と感じたのは評価できるものでした。
(それでも航路の性質を考えれば必要な設備は備わっており、「車内販売の営業はありません」と盛んに案内している一部のJR夜行列車などに比べれば、この点は遥かに上等です)
船内にはランプ点灯式の現在航行位置案内もあり、現在は付近を航行するだけで寄港しない生月などの表示も見受けられるのも、特徴的と感じたものでした。
客室設備も通常運賃のみで利用でき、フェリーでは恒例の雑魚寝大部屋(カーペット敷き)以外に、個室などの上級客室も存在していますが、MAKIKYUは雑魚寝大部屋よりもワンランク上級の2段寝台を利用したものでした。
この寝台は通常運賃に+2000円で、JRの開放室B寝台レベルの設備を利用できるとなれば比較的値頃感があり、他の交通機関には追随できない夜行船ならではの魅力的な設備と言えます。
大抵「2等寝台」などと称されるこの寝台を、野母商船では「グリーン車」ならぬ「グリーン寝台」と称しているのは独特で、この呼び名は他では余り聞きませんので、物珍しく感じたものでした。
(通常運賃のみで利用可能な雑魚寝大部屋よりワンランク上級の客室としては、区画や占有空間の面で優遇されるカーペット敷きの小部屋を、野母商船では「グリーン和室」と称しており、こちらは通常運賃に+1500円となります)
フェリー乗船券は高速バスなどと同じく、下船時回収となりますので、鉄道乗車券の如く乗車記念として手元に…とは行かないのは残念な限りで、画像で記録を残すしかないのが現状ですが、「グリーン寝台」利用時にはグリーン料金込みの乗船券1枚ではなく、通常運賃の乗船券+区画指定のグリーン寝台料金券の2枚が発券されるのも大きな特徴です。
またフェリーの上級区画は上層階に設けられており、この点はフェリー「太古」も他のフェリーと同様ですが、上下船口は下層階に設けられており、上級区画が存在する上層階へは、上級客室の乗船券(もしくは料金券)を所持している乗客のみ…というフェリーが多い中で、「太古」は上層階から上下船となり、通常運賃のみで雑魚寝大部屋を利用する場合には下層階へ下る(下層階から上がる)構造となっている辺りも、独特と感じたものでした。
このフェリー「太古」は輸送力の関係などもあってか、今年中には一回り大型の新造船に置き換えられる予定となっており、現行船が就航する期間も残り少なくなっていますので、MAKIKYUが再びこの船に乗船する機会は恐らく…という状況かと思います。
とはいえ先月の乗船では旅程の関係で青方(中通島)下船、朝6時頃では下船時もまだ外は暗い状況でした。
その先のある無数の小島を眺めながらのクルージングは堪能できず、最終寄港地である福江島も、一応足を運んだもののまだ未訪地が幾つも…という状況ですので、機会があれば新船就航後に再び「太古」に乗船し、今度は博多~福江の全区間航海でも堪能できれば…と感じたものでした。