「MAKIKYUのページ」では、先月MAKIKYUが乗車したJR九州・日南線の特急「海幸山幸」号で用いられているキハ125形400番台の様子を、2回に分けて取り上げましたが、今日はその続編として「海幸山幸」号に乗車した際の、車両以外の写真などを「乗車編」として取り上げたいと思います。
特急「海幸山幸」号は起点こそ宮崎駅で、南宮崎までの1駅間は日豊本線を走りますが、その後終点の南郷までは日南線を走り、南宮崎~田吉の1駅間のみ宮崎空港アクセスの関係もあって電化されていますが、以遠は終点志布志までずっと非電化区間が続き、全線が単線区間という典型的なローカル線です。
非電化区間は宮崎近郊の青島辺りでも、列車本数は毎時1本もない状況で、青島や折生迫(Oryuzako)などと南宮崎・宮崎駅間の移動は、運賃や所要時間を別として、運行頻度だけなら併走する宮崎交通の路線バスに軍配が上がる程です。
非電化区間の運行列車も不定期列車の特急「海幸山幸」号を除くと、1往復の快速「日南マリーン」号以外は普通列車のみ、快速や普通列車も1~2両でのワンマン列車が大半を占めています。
こんな路線ですので、特急列車が走る路線らしくないといっても過言ではなく、当然ながら沿線も鄙びた雰囲気が漂っていますが、幾つもの駅構内などで見かける椰子の木などは、如何にも南国の鉄路に乗車している事を実感するものです。
また日南線は比較的海に近い所を走る区間が多いにも関わらず、車窓からオーシャンビューが楽しめる区間は限られ、特急「海幸山幸」号の運転区間では青島を過ぎた内海周辺と、油津を過ぎて南郷へ向かう区間で見られる程度(それ以外でも志布志手前で見られる位です)です。
「海幸山幸」号はこの区間で徐行や一時停止を行い、観光列車らしい配慮と言えますが、「鬼の洗濯岩」とも呼ばれる内海周辺での一時停車は、春のダイヤ改正で下り列車だけでなく、上り列車にも拡大される程です。
MAKIKYUが乗車した日には天候にも恵まれ、「鬼の洗濯岩」の絶景が楽しめると共に、ここで客室乗務員による案内と共に「海幸山幸」号のBGM(CDを車内でも販売)まで入るなど、演出が良く出来ていると感心したものでした。
それとMAKIKYUが乗車した「海幸山幸」号では、記念撮影タイムも兼ねた青島駅での長めの停車(お陰で反対ホームから列車の撮影が出来た程です)や北郷駅でのマスコットキャラクターによる出迎えをはじめ、野球球団のキャンプ開催にあわせ、車内で運玉による抽選を行い、当たり玉を引くと野球グッズを配る期間限定イベント(MAKIKYUは残念ながらハズレでした)もあり、JR九州の観光列車に対する意気込みの一端を感じたものでした。
過半数の乗客が下車する途中の飫肥(Obi)駅では、下り列車は10分程の停車時間が確保され、飫肥以遠まで乗車する乗客も、駅構内での物産販売に立ち寄る事が出来るように配慮されているのも、観光列車らしいといえます。
ただ相次ぐ一時停車や徐行運転、長い停車時間のお陰で宮崎~南郷間の約55kmを1時間半以上要しており、「海幸山幸」号は車両だけでなく、運行ダイヤも特急らしかなる有様で、運転距離の割には長時間乗車となります。
とはいえ趣向を凝らした車両に様々なイベントを盛り込むなど、特に列車好きでなくても乗り飽きない列車といえ、南郷まででなく日南線終点の志布志まで延長運転する(現行設備・ダイヤでは難ありです)など、MAKIKYUとしてはもっと乗っていても…と感じる程でした。
そして終点の南郷駅に到着すると、南郷駅は委託駅員が在勤しているものの、交換設備すらない特急発着駅らしかなる小規模な駅だけあり、車両留置の関係で下り列車は南郷到着後、2つ宮崎寄りの油津に引き上げ(上り列車も留置場所の油津から回送)ます。
日南線はただでさえ運転本数が少ない上に、下り「海幸山幸」号は南郷駅一つ手前の大堂津(運転停車のみでドア扱いなし)で反対方向の列車と行き違いとなり、「海幸山幸」号の南郷到着後上り列車の到着までは2時間程間隔が空きます。
日南・飫肥観光と共に「海幸山幸」号の全区間乗車を楽しみたいと考える乗客も決して少なくないと思いますので、この回送も営業扱いにすれば…と感じてしまったものです。
(ただ南郷~油津・飫肥方面へは毎時1本程度ですが、宮崎交通のバス便もありますので、列車の運転間隔が開く時はバス利用も検討価値があると思います)
また「海幸山幸」号を終点の南郷駅を降りると、駅前では地元観光バス会社による南郷周回観光のマイクロバスが待ち受けており、観光で駅を拠点に短時間で動き回るのは困難な南郷の街中に点在する名所や飲食店などを、容易に廻れるようになっています。
地方での列車旅の難点ともいえる目的地到着後の手段を、「海幸山幸」号運転日の列車到着にあわせ、乗り放題500円という比較的安価な運賃で確保しているのは評価すべき点で、時間があればこのバスで南郷観光も…と感じたものでしたが、MAKIKYUが「海幸山幸」号に乗車した際はその後の予定などもあり、1時間後の下り快速列車に乗車する必要があり、南郷観光を堪能できなかったのは少々残念なものでした。
それと南郷周回観光バスと共に、駅前には丁度宮崎~南郷間を、「海幸山幸」号運転日に運行している宮崎交通の観光路線バス「にちなん号」も姿を現し、レトロ調の外観に「海幸山幸」号の兄弟分といった雰囲気の装いは、見ているだけでも大いに観光気分を盛り上げるものです。
「にちなん号」の運賃は1乗車2000円と決して割安ではありません(ただ宮崎~日南間の宮崎交通路線バスも、区間によって運賃が若干異なるものの、宮崎駅~油津駅間で1800円以上になりますので、路線バスの運賃相場を考えると決して割高な運賃設定ではありません)が、JR九州が設定している「海幸山幸観光きっぷ」(指定席用の宮崎~南郷間往復で2800円)では、片道分を「海幸山幸」号や日南線普通列車の代わりに、「にちなん号」を利用する事も可能です。
また「にちなん号」は日南線が北郷経由の山沿いルートを走る区間で、海沿いのルートを取り、鵜都神宮などでの下車観光も設定されていますので、宮崎を拠点に日南・南郷観光を楽しむ場合に、往復で趣向の異なる経路や手段を選択できますので、MAKIKYUはこのバスにも乗車していませんが、「海幸山幸観光きっぷ」を使う機会があるならば、是非片道は「にちなん号」を利用したいものです。
あと南郷は「観光で駅を拠点に短時間で動き回るのは困難」だけあって、列車待ち時間が1時間程度という場合、街中に出向いて食事するのも難しく、駅周辺は飲食店の数なども限られてしまうのは残念ですが、駅から徒歩で5分もかからない所(駅前から油津方向に道なり)にはコンビニがあり、最低限の食料調達は可能です。
その途中には弁当屋(観光案内を兼ねた委託駅員の方から情報を頂きました)もあり、一応宮崎らしい食物といえるチキン南蛮弁当などが比較的安価(写真のミニ弁当は350円)で入手できますので、南郷駅で「海幸山幸」号を下車した後、1時間後の快速で志布志方面へ向かう際の列車待ち時間で食料を調達する場合には利用価値は大です。
「海幸山幸」号に乗車した感想としては、趣向を凝らした車両だけでなく、様々なイベントや接続バスの運行など、列車を走らせるだけに終わらない辺りは、様々な観光列車を走らせ、高い評価を得ているJR九州ならではと感じた反面、南郷駅で下り快速列車に乗り継ぐ際に発生する1時間程の中途半端な待ち時間は、「海幸山幸」号本来の列車設定目的である日南・南郷観光から見れば想定外の利用方法とはいえ、何とかならないかと感じたものでした。
(下り快速を見送り、その次の下り列車を利用すれば南郷観光も堪能できますが、本数が少なく南郷発16時台になりますので、日南線完乗の後に志布志からバスに乗り換える場合などは、行先次第では困難です)