既に何度か取り上げている寝台特急・はやぶさ/富士号に関する記事ですが、今日は両列車における連結車両の過半数を占める開放室B寝台に関して取り上げ、またMAKIKYUの感じている事なども少々言及したいと思います。
両列車の編成はそれぞれ6両(併結時は12両)で、その内A寝台とB寝台の個室車両が1両ずつという事は以前にも記し、これらの車両に関しては既に「MAKIKYUのページ」内でも取り上げていますが、残り4両(併結運転時は8両)とはやぶさ/富士号両列車の過半数を占めている車両が、俗に開放室と呼ばれる一般的なB寝台車で、その内両列車の熊本・大分方1両のみは喫煙車、個室車2両を挟んで東京方に連結されている3両が禁煙車となっています。
このB寝台車は一応座席(ベッド)のモケット交換など、多少のリニューアルは行われており、以前客車外観編で取り上げた車両の外観だけでなく、車内のモケットなどにもバリエーションが存在しています。
寝台は上下2段が枕木方向に並び、2つの寝台が向かい合う構造(ごく一部向かい合わせとならない寝台もありますが…)となっており、昼間は下段を座席としても使用しますが、個室車と異なり片隅に寄せられている通路部分にも折り畳み椅子が設けられており、これは個室車(特に天井空間に制約があるB寝台「ソロ」)にもあったら…と感じます。
(MAKIKYUが寝台車両に乗車した際には、通路に設けられている折り畳み椅子に座りながら、ゆっくりと車窓を眺めるのも好きですので…)
国鉄時代末期に寝台の2段化が進められ、頭上空間が狭い3段式(日本ではごく一部にしか存在しませんが、鉄道博物館の展示車両などでその様子が見学できますし、今でも寝台列車が大活躍している中国などでは多数が活躍しています)に比べると居住性は格段に優れ、座面もそれなりの広さがあり、クッションもそこそこ入っています。
定員も1両当り30名を少々超える程度ですので、設備的には寝台列車大国・中国の軟臥(格付は日本のA寝台相当で、一部列車を除くと編成内に1~2両程度連結という事が多いですが、設備的にはB寝台開放室とほぼ同レベル)とも言え、中国を走る長距離列車の硬臥車(格付は日本のB寝台相当ですが、カーテンもない3段寝台がずらりと並んでおり、1両の定員は60名を超えます)に何度か乗車し、硬臥車に車中2泊・40時間弱に渡って乗車した事もある身(それでももう少し乗っていても…と感じた程です)としては、車中1泊となるはやぶさ/富士号程度であれば、MAKIKYUとしては車両自体はそこそこ快適に過ごせる空間なのでは…と感じます。
ただ国鉄時代末期から時が止まったかの如く、設備的には大差ないまま現在まで運用されており、車内には最近姿を見る事が少なくなった冷水機まで設置されている程(ただ車両によっては故障中となっているものが幾つかあり、他車両をご利用くださいという張り紙が出ていましたが…)ですので、昔ながらの汽車旅を雰囲気を楽しむには絶好ですが、就寝時にカーテンで自身の寝台を通路などと仕切れるとはいえ、個室ではなく車中で1泊を過ごす間をずっと見知らぬ乗客と相席になる事自体、現代の日本においては少々厳しいものがあります。
料金的にもB寝台料金(2段式)だけで6300円とビジネスホテル1泊の宿泊料並み(或いはそれ以上)ですので、昔から寝台列車に乗り慣れている年配者や、列車旅が好きな人間を除いて、広く一般客に歓迎される設備とは言えないのが現状で、はやぶさ/富士号の運転区間であれば、新幹線の高速化が進んだ事などもあって、両列車の出発時刻頃に出発する昼行列車(新幹線や在来線特急:乗り継ぎも含む)を利用しても、車中で夜を明かさずに目的地へ到着できて所要時間の面では圧倒的に優位ですし、これらの列車や、鉄道以外の競合交通機関を利用しても運賃面で大差ないか、或いはむしろ優位になっています。
そのためMAKIKYUがはやぶさ/富士号に乗車した際も、開放室B寝台車は空席が目立っており、その上に使用車両も塗装が剥がれている箇所などが見受けられ、見るからに草臥れた感のある有様では、とても多くの人々に「いつかは乗りたい」と思わせる列車とは言えませんし、B寝台開放室の一部車両は、多少の防音・振動対策は施してあるとはいえ、ディーゼル発電機を搭載した車両になっており、この車両(スハネフ14形:喫煙車を利用する場合、通常の編成では必然的に当ります)は一部の酔狂な方は別として、一般的に考えて車中で夜を過ごすには相応しくない環境となっていると言わざるを得ません。
まして近年は利用不振などもあって、列車内の併食空間(食堂車)が廃止され、車内販売も朝のみの乗務という状況ですし、車内には長距離フェリーの様なインスタント・レトルト食品の自動販売機すら設置されていません(ジュース程度ならありますが…)し、列車の性質上急ぎの乗客は余りいないであろうにも関わらず、東京発の列車では夕方~夜にかけての各駅での停車時間などは切り詰められていますので、列車の乗車前に食料を買い忘れると大変な事になってしまうといった、列車設定を一工夫(静岡県内の何処かの駅辺りで5~10分程度の停車時間を設け、ホーム上で駅弁等を販売するなど)すれば何とでもなりそうなソフト面での問題もあり、この観点でも何も知らずにふらりと一般客が乗り込んだ場合、一度の乗車で懲りてしまいそうな点も問題です。
この様にはやぶさ/富士号、特に開放室B寝台に関しては問題点が山積していますので、来年での列車設定廃止も、車両の老朽取替・或いは更新が必要な状況ともなれば、遂に来るときが…という感がありますが、車内でゆっくりと時を過ごせ、目が覚めたら遠方の景色が車窓に広がる寝台列車での旅は、他の列車では味わえない味わいがあります。
現に北海道方面の寝台列車などは、所要時間がかかる事からビジネス利用は限られるとはいえ、観光客に使いやすい様な運行形態や設備を供する事でそれなりに繁盛していますし、寝台列車大国・中国で今でも多数の列車が多くの乗客を乗せて大繁盛している状況なども見ている身としては、このまま朽ち果てる様にはやぶさ/富士号が列車消滅となるのは惜しい限りで、何とかして時代のニーズに合わせた寝台列車を、せめて週末運行などの臨時列車でも良いので、首都圏~九州方面に1本程度は走らせて欲しいと感じますが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様は如何感じられるでしょうか?
画像ははやぶさ/富士号開放室B寝台の様子(寝台モケットに注目)と車内に設置された冷水機(以上記事最上部掲載)と、瀬戸内海を見ながら迎える朝の景色(東京発のはやぶさ/富士号に乗車した場合、目が覚めたらこの様な景色が待っています)、記事中で若干触れた中国を走る硬臥車の様子(参考:既公開記事での使用画像)です。