先月MAKIKYUが紀伊半島を訪問した際には、紀伊田辺~大阪方面へ向かう際にJR普通列車利用では大半が乗換えとなる御坊駅で途中下車したのですが、その際には御坊名物とも言えるミニ鉄道・紀州鉄道にも初めて乗車したものでした。
その際に乗車した車両がキテツ1形と呼ばれる気動車(レールバス)で、この車両は元々国鉄末期に廃止→第3セクター鉄道に転換し、現在も営業を続けている兵庫県の北条鉄道が、1985年の発足当初に導入したフラワ1985形と呼ばれる車両です。
北条鉄道ではその後軽快気動車を導入してレールバスの代替を行っており、2000年に北条鉄道から譲り受けた車両を就役させた車両がキテツ1形で、中古車両ながらも紀州鉄道初の冷房車であるなど、サービス向上に大きな役割を果たしています。
紀州鉄道移籍後は1両のみが主力車として活躍を続けていたものの、最近になって北条鉄道からもう1両移籍し、車庫内で整備を受けている姿も目撃したものです。
基本的に稼動車両・予備車両それぞれ1両ずつで事足りる小規模鉄道である事や、長い間使用している旧型気動車は老朽化もかなり進行している事もあって、今後紀州鉄道の稼動旅客車両は同形のみとなる日も、そう遠くなさそうな状況です。
紀州鉄道では旧型気動車が人気を集めている事もあって、それに比べると遥かに新しく、近代的な雰囲気を持ったキテツ1形は、稼働率が高い上にすぐに引退する可能性も低い事から、余り注目を集める存在ではない状況です。
とはいえレールバス自体、第3セクター鉄道の設立が相次いだ国鉄分割民営化(JR発足)前後には幾つかの鉄道で導入されたものの、第3セクター鉄道各社ではバス並みの輸送力の小ささや寿命の短さもあって退役が相次ぎ、今や2軸のレールバスで営業用として稼動している車両は国内では他に類がないだけに、非常に希少な車両と言えます。
(2軸のレールバス車両自体も、国内で他に稼動可能な車両は路線廃止後も古参レールバスを動態保存している青森県の南部縦貫鉄道程度しかありませんので…)
この車両はバス用のパーツを多用している上に、デザインが同時期の富士重工製大型路線バス(5E形)に類似しており、車内もバス並みの小柄さと言う事もあって、列車に乗車しているものなのか?という錯覚を感じてしまう雰囲気があります。
乗り心地も小型の2軸車だけあって快適とは言い難く、全長3kmに満たない路線で途中に駅が3つもある紀州鉄道線を、軌道条件も影響しているとはいえ、路面電車並みの低速で走っていてもフワフワと揺れる有様です。
これがそこそこ路線長や駅間距離があり、結構な速度で走る地方の国鉄廃止転換線だったら…と思ってしまいますが、快適とは言い難い車両も紀州鉄道の短い距離や乗車時間では、乗り心地を試すのに丁度良いと感じたものでした。
このキテツ1形はレールバスの耐用年数や、既に北条鉄道で退役した車両を譲り受けている事などを考えると、幾ら緩やかな使用条件の紀州鉄道といえども、今後暫く主力車両として活躍し続けるのか、それとも更に他の代替車両が現れるのかも気になる所です。
また紀州鉄道は市街地から離れたJR駅と、御坊の市街地間をシャトル輸送する路線である事から、各列車共1両ワンマンの短い編成ながらも、昼間毎時1~2本程度と、土地柄の割に比較的多くの本数が運行されています。
紀州鉄道はミニ鉄道だけあって全線乗り通しても片道10分足らずで運賃も200円に満たず、比較的手頃に乗車できるのも魅力的ですので、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様も御坊へ立ち寄る機会がありましたら、是非今や希少な存在となった紀州鉄道の2軸レールバス・キテツ1形に乗車してみては如何でしょうか?