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JR九州 817系2000番台電車~賛否両論の混雑対策車

2012-07-31 | 鉄道[九州・JR]

今月MAKIKYUが韓国~中国へ足を運ぶ際には、お馴染みのJR九州高速船「BEETLE」と共同運航を行っている未来高速「KOBEE」を利用した事もあり、福岡(博多港)からの出国となったものでした。

出航時間が午後だった事もあり、福岡近郊を動き回る時間も確保できましたので、福北ゆたか線(篠栗線~筑豊本線)にも足を運んだものでした。

その際には今年春から同線で走り始めた新型車・817系2000番台にも乗車できましたので、取り上げたいと思います。

この車両は福北ゆたか線で活躍中の既存817系と外観は類似しており、勿論既存817系や813系電車との連結運転も行っていますが、単線でホーム長さも限られ、ラッシュ時間帯における輸送力増強も限界状態の同線におけるラッシュ対策として、収容力確保の為に座席をオールロングシートとしているのが最大の特徴です。

JR九州では既にオールロングシートの一般型車両として、熊本地区や大分地区で活躍している815系が存在しており、既存817系もデザインと客室設備を除くと、ほぼ815系と同様の車両と言えますので、今回オールロングシート車を敢えて817系として導入したのかは、少々不思議に感じます。


外観は既存817系と大差なく、やたらと大きい単色LEDによる種別・行先表示なども、最近のJR九州らしい雰囲気ですが、既存817系はアルミ地無塗装であるのに対し、2000番台では白塗りとなっているのが特徴で、両者が併結して運行している際などは、見比べると違いが明確です。
(写真も2000番台2両の前に、既存817系が連結された4両編成です)


また2000番台の車内はオールロングシートだけあって、革張りの転換式クロスシートが並ぶ既存817系とは大違いで、客室照明で今流行のLEDを採用している事も大きな特徴ですが、このLEDによる照明はデザインに拘るJR九州にしては、あまりデザイン面で意識していない様にも感じられたものです。

そして輸送力対策でオールロングシートなった座席は、木材を多用した某デザイナーの最近の流行が存分に感じられ、JR他社や大手私鉄の通勤型車両であればまず考えられない、JR九州らしい雰囲気に満ち溢れており、座席モケットの柄が幾つも存在する辺りも、デザイナーの遊び心が感じられます。


この座席はロングシートでありながらも背もたれが大きく、関西の某大手私鉄が混雑対策で特急車(特別料金不要)の一部座席をロングシート化した際に、クロスシートに負けない座席を…という事でハイバックタイプとして、「スーパーロングシート」と謳っている座席を連想させる造りとなっているのも大きな特徴です。

しかしながら木製ベンチの座面と枕部分にだけクッションを取り付けた格好の座席は、腰掛けた際に背もたれの腰に当たる部分にクッションがなく、しかも湾曲してせり出す形状になっており、個人的には木製の背もたれが腰に当たり、着座している際に少々違和感がありましたので、混雑対策でオールロングシートにしている事と合わせ、この新車は賛否両論が大きく分かれる様です。

個人的にも乗車した博多~篠栗間位ならまだしも、筑豊方面からの通勤で博多まで1時間程度この座席に座り続けるとなると、やや厳しい「痛勤」になってしまうのでは…と感じ、関西の某大手私鉄が導入している「スーパーロングシート」と比べると、見栄えはともかく、実際に乗車した際の座り心地は、随分見劣りが否めないと感じたものでした。
(それでも首都圏の標準軌某大手私鉄が最近導入している「ブカブカ」した座席などに比べれば、個人的には程度はずっと良いと感じていますが…)

無理にハイバックタイプに拘るよりは、これならローバックタイプでも腰部分にクッションが付いた座席の方が…と感じ、他車種と併結編成で運行している列車で双方に空席がある場合、MAKIKYUは転換式クロスシートか813系中間車(ロングシート)の方を選びたいと感じてしまったものです。

今後も福北ゆたか線の混雑対策でロングシート車が導入される場合、この座席の車両が増殖するのか否かも気になる所で、福北ゆたか線は特急バスなどとの競合もありますので、JR側がこの点もどれだけ意識しているのか気になります。

この他に3両編成の同種車両も、少数ながら鹿児島本線などで活躍しており、乗車機会こそなかったものの、活躍する姿を目撃したものでしたが、既存813系と共通運用で快速などに充当し、たまたまロングシート車だけで構成される編成が組みあがった場合、個人的には長時間乗車は少々厳しいのでは…と感じたものです。


中国高速鉄道(CRH)の概要

2012-07-28 | 鉄道[中華人民共和国]

今月MAKIKYUが中国へ足を運ぶ最大の動機となった中国高鉄(CRH)乗車ですが、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中には、中国へ足を運んだ事がない方や、中国へ足を運んだ事はあってもCRHの状況は…という方も居られるかと思いますので、如何に現段階におけるCRHの概要や、MAKIKYUが乗車した際の印象などを記したいと思います。
(中国在住の方や、CRHを幾度も利用している方には当り前過ぎる事かもしれませんが、ご了承下さい)

また中国鉄路関係のリンクサイトには、更に詳細な案内などが出ていますので、興味のある方は合わせてご覧頂くと共に、比較的最近刊行された「中国鉄道大全」という書籍(「MAKIKYUのページ」リンク先サイト管理人のborgen氏&はいらーある氏の共著です)にも記されていますので、こちらをご覧頂くのも良いかと思います。


・車両面

日本の新幹線タイプ(東北新幹線E2系タイプ=CRH2)をはじめ、ドイツICE3タイプ(CRH3/CRH380B)など大きく分けて5タイプが存在し、北京南や上海虹橋などの大ターミナルでは、様々な車両が肩を並べるのは魅力的です。

新幹線とICEが同じホームで並ぶ事などは、各車両の本家・日本やドイツでは考えられない事で、日本の新幹線の様な完全に独立した高速鉄道ではないだけに、既存客車列車とCRH2が肩を並べるシーンも一見の価値があります。

CRH各種は概ね白に青帯の装いとなっており、某島国の高速鉄道を意識している様にも感じられるものの、どの種類の車両にも似合う装いで、CRH2の装いは本家E2系よりも見栄えがするのでは…と感じる程で、CRHのロゴも個人的には好印象を受けます。

車両の出来栄えとしては、CRH2とCRH3/CRH380Bが双璧をなす感があり、一度ICE3に乗車してみたかったMAKIKYUとしては、SIEMENSの車両を大量導入し、念願を叶えてくれた中国鉄路に「謝謝!」

独自開発を大いに謳っているCRH380Aも、新幹線とICEの美味しい所を寄せ集めた雰囲気があってか、如何にも中国的な印象を受ける前面スタイルとは裏腹に、乗車した印象はまあまあという感があります。

アルストームのペンドリーノタイプ(CRH5・同種車両はイタリアなどで使用)は余り期待していなかったものの、思ったより良い車両と言う印象があり、酷寒地や低床ホームに対応している点でも有用な車両です。

ボンバルディア(CRH1)は様々な面で他の車両に比べて…という印象があり、高速鉄道車両の実績と言う点でもまだまだの車両ですので、今後の改良に期待したい所で、各車種共に8両編成か16両編成、或いは同種車両の8両2編成を併結した16両で運行しています。

独自開発を大いに謳っている中国オリジナル車両・CRH380A以外の各国で活躍している各車種も、本国で製造された車両はごく僅かで、大半は部品輸入や技術移転による中国の国内製造となっています。


・設備面

開業から日が浅い路線ばかりで、外国の技術に依存する部分も大きいとはいえ、設備面は全体的に新しい事もあってか、高速列車専用線を走る列車に乗車すれば、新幹線と遜色ないレベルという印象があります。

高速列車専用線だけでなく、従来の客車列車や貨物列車が走る線路を運行する列車や、両者に跨って運行する列車も存在します。

また北京や上海、広州などの大都市では、既存ターミナル駅ではなく、CRH専用に新設・改装されたターミナル駅(北京南・上海虹橋・広州南など)を発着する列車が大半を占めており、これらの駅の規模の大きさも圧巻です。

路線長も既に1国の高速鉄道においては世界最長となっており、列車本数も1400本を越えるなど、短期間でここまでの高速鉄道網を造り上げたのは大したもので、北京~天津・上海~南京・広州~深セン間では、複線の高速列車専用線を2路線建設しているのも驚異的です。

ただ今後の更なる発展を見越した先行投資的意味合いも推測されるとはいえども、駅の規模が大き過ぎる上に、基本的に駅構内は従来通り一方通行で改札や出口の場所が限られていますので、乗車車両や利用駅によっては、乗下車の際に駅構内を歩く距離や移動時間だけでも馬鹿にならない有様で、移動だけでもかなり疲れます。

この点日本の新幹線は限られた設備をフルに活用し、多数の列車を捌いている事は大したものという感があり、駅構造も利用客本位に作られていると感じます。


・乗車券

全席指定席制となっており、一部列車では列車指定の無座(立席)券発売も行っているものの、自由席の設定はなく、列車番号が「G~次」「D~次」(「G~次」の方が格上ですが、運賃も割高に設定されています)、或いは「C~次」(「G~次」とほぼ同等:現在は北京南~天津方面のみ運行)となる列車がCRHです。
(その他の「T~次」(特快)、「K~次」(快速)、「~次」(列車番号の前にアルファベットなし:普快など)は、殆どが客車列車での運行となる一般列車です)

「G~次」と「D~次」の運賃格差は、東海道・山陽新幹線の「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(=「のぞみ」の回数券バラ売り価格と、「こだま」の「ぷらっとこだま」利用)以上に開く事もあり、その代わり「G~次」列車が多数走る区間における「D~次」列車では、長時間運行となる列車での大幅遅延リスクなどもあります。
(上海虹橋~南京南間を利用した場合、「G~次」の2等座では140元程度となりますが、「D~次」では100元で若干のお釣りが出ます)

また中国では日本や韓国とは異なり、改札近くで乗車券を購入できず、基本的には駅舎に隣接、或いは駅舎入口付近に設けられた乗車券売場で乗車券を購入してから駅構内に足を運ぶ事になります。
(街中にある乗車券発売所で購入する事も可能ですが、その場合は若干の手数料を要し、旅行会社に購入を依頼する場合、結構な金額の手数料がかかります)

そして乗車券を持って駅構内へ足を踏み入れると、金属探知機等による所持品チェックなどが行われ、列車毎に指定された改札から入場して乗車する事が殆ど、それも発車3分前位に検票(改札)締切となる仕組みは、一般列車と相変わらずで、JRやKORAIL(韓国鉄道)に乗り慣れた身としては、列車に乗るまでが随分面倒に感じます。

改札はCRH発着駅を中心に自動改札化が進み、薄緑色の乗車券は自動改札に対応していますが、ピンク色の乗車券は自動改札に対応しておらず、係員対応となりますので要注意です。

おまけに最近、ダフ屋による転売などを防ぐために乗車券が実名制(要身分証明書・外国人の場合はパスポートを提示し、氏名は印字されずにパスポート番号が乗車券に印字)となり、乗車券購入時に提示が必須となっている上に、検票の際にも本人確認で再度身分証拝見となる事もあります。

乗車券売り場の窓口も大勢の旅客が列を作り、購入まで結構な時間を要する事もしばしばで、基本的に中国語以外はまず通じません。
(北京駅や上海駅などの主要駅では、英語対応窓口が設けられているものの、日本語対応を期待する事は絶望的で、中国語会話が出来ない場合、乗車日や乗車区間・列車番号や乗車車両を記したメモを、係員に手渡すのが最も妥当な方法かと思います)

一部駅に設置された自動券売機も、ICカードになっている人民身分証が必須で、観光で訪れた非居住外国人が利用できないのは痛手です。
(この機械は乗車券購入だけでなく、空席照会にも活用でき、この機会で空席のある列車を見つけてから窓口へ足を運べば、長い行列に並んでようやく自分の番が訪れ、乗車列車を伝えたら「没有」と言われて追い返されるリスクが軽減できるメリットはあるのですが…)

CRHは一般列車に比べて運賃が割高(それでも2等座(普通車相当)であれば、日本のJR普通運賃より割安です)な上に、CRH運行区間では列車本数がそこそこ確保されている事が多く、乗車前日や当日でも空席のある列車が多数存在しますので、CRH運行開始前の中国鉄路の状況を知る身としては、中国の列車にしては随分乗車券が買い易い印象があります。
(長距離寝台列車などは、乗車券売場にある乗車券発売状況を示す電光表示で、発売開始当日でも寝台車は「無」のオンパレードになっている事が当り前の状況で、当日の列車などは硬座の無座すら「無」になっている事もあります)

CRHがなければ、今回の旅行自体が成立しなかったと感じる程で、中国鉄路も随分便利で快適になったと感じますが、それでも日本の新幹線の様に思い立ったら「すぐ買ってすぐ乗れる」状況ではありません。

最高速度こそCRHの方が上ですが、乗り易さ・正確さの面では、日本の新幹線には遠く及ばない印象があり、ハード面で幾ら最先端の技術や設備を導入しても、それだけでは便利な高速鉄道とは言えず、ソフト面での改善が今後の課題と感じます。


・座席

新幹線タイプ(CRH2)は、座席はおろかモケットまでE2系そのものを採用しており、2等座では座面スライド機能も装備しています。

他の車両では座面スライド機能こそないものの、CRH2の座席は評判が良好で、中国鉄路も気に入ったのか、1等座・2等座共に他車種でも一部を除き、ほぼ同レベルの回転式リクライニングシートを装備しています。

そのため日本の新幹線やJR在来線特急と遜色ないレベルと感じる車両が大半で、ほぼフランスTGVそのものの車両を走らせ、一般席(普通車相当)では狭い上に、方向転換不能な座席で不評を買っているKORAILのKTXと比べると、居住性の面ではCRHに軍配が上がります。

ただCRH2がE2系ベースである事や、輸送力確保が至上命題と言う事もあってか、CRH2やほぼ同等の座席を装備する他車種2等座のシートピッチは、東海道・山陽新幹線普通車よりはやや狭く感じます。

またMAKIKYUが広東省の広州~深センで乗車したボンバルディアタイプ(CRH1)は、硬座車より若干マシといった雰囲気の方向転換・リクライニング機能なし座席となっており、この車両の座席は他車両に比べて見劣りが否めません。
(見た限りでは、1等座でも他車種の2等座より見劣りする雰囲気でした)

各車両共に1等座(グリーン車相当)もあり、こちらは2+2列配置で2等座よりゆったりとしているものの、MAKIKYUが乗車した限りでは物凄く豪華な印象とは言い難く、新幹線N700系の山陽~九州新幹線直通用車両や、山陽新幹線の700系「レールスター」指定席車によりやや上等と感じる程度です。

とはいえ在来線区間を走る区間が長い列車も多く、「D~次」の列車番号が付与されているCRHの中では格下の列車(列車によっては、途中駅で「G~次」の列車に追い抜かれる事もあります)では、1等座と2等座の価格差が少ない列車・区間もあり、この場合は結構値頃感があります。


一部の列車には1等座の更に上を行く「商務座」も連結されており、MAKIKYUは乗車していないものの、こちらは東北新幹線E5系の「グランクラス」並みのシェルタイプ1+2人席が並んでいます。

物価の割にはかなり高額な事(日本の新幹線普通車利用に匹敵するレベルです)もあって、見た限りではガラガラ、乗りたい列車の2等座や1等座が満席の時や、資金に余裕があって極上の旅をしたい方などは、こちらに乗車されるのも悪くないかと思います。


・車内設備と食事情

車内設備は概ね日本の新幹線レベルといった印象があり、MAKIKYUが乗車した限りでは、各列車でワゴンによる車内販売も行っていましたが、日本と同様に飲料水などは市価より割高な価格設定です。

在来客車と同様に、CRHでも各車種共に給湯設備を備えている辺りは中国的で、お茶を飲んだり、方便面(カップラーメン)を食べる為に利用する乗客の姿をよく見かけます。

またブッフェや食堂などの設備を備えている辺りは、日本の新幹線と比べると羨ましい限りで、8両編成のCRH2でも、半室・テーブル4机と
カウンターを設けた空間が設けられています。

車内では弁当の販売も行っているものの、長距離客車列車の様に車内で調理した弁当を販売するのではなく、予め調製した弁当を積み込むか、レンジで加熱するタイプの弁当となっています。

販売価格も概ね25~40元程度(写真の弁当は35元)と、客層を見越してか長距離客車列車より割高に設定されており、列車の乗り心地だけでなく、車内の物販価格まで日本に近い印象があるものの、それでも結構弁当を買い求めている旅客の姿を見かけました。

またMAKIKYUは乗車機会がなかったものの、CRH1とCRH2の一部は、両先頭車を除いて寝台車(軟臥・2段ベッド)となっている編成も存在しており、以前温州南駅付近で発生した追突事故の際に損傷し、事故廃車となったCRH2はこのタイプです。

MAKIKYUが乗車した各列車の乗車記や、車両毎の詳細に関しては、追って別記事で取り上げたいと思います。


暫くの間、CRH(中国高鉄)視察に出向いていました

2012-07-26 | Weblog


ここ最近更新頻度が減少し、皆様から頂いたコメントへの返答も遅れがちになっていた「MAKIKYUのページ」ですが、管理人MAKIKYU
は今月に入ってから暫くの間、目覚しい勢いで躍進を続ける中国の高速鉄道(CRH)や都市鉄道(地鉄など)の視察に出向いていました。


MAKIKYUの中国訪問は約5年ぶりで、暫く足を運んでいない間に高速鉄道だけでなく、訪問した各都市などは大きく様変わりしており、浦島太郎状態と言っても過言ではない状況、市内移動で北京や上海、広州など各都市の地下鉄(地鉄)に乗車する際には、地図などが必須という有様でした。

停滞が続く島国に身を置く立場からすると、中国の現状はまだ充分とは言い難いものの、次々と新路線の開業が相次ぐ状況は羨ましい限りです。


中国への航路はかなりの時間を要し、空を飛ぶのは…というMAKIKYUとしては、国内各地や韓国の様に気軽に足を運べる地ではありませんが、今回の旅行では海況も良好で、幾つか利用した国際航路での快適な船旅も楽しめたものでした。

中国の旅行事情は、日本国内や韓国などとは勝手が異なり、特に個人旅行でふらりと訪れ、各地を周遊するとなれば結構な労力を要する
事もあるのですが、スケールの大きさなどは日韓の比ではなく、日頃身を置く島国の中では堪能できない事も多々ありますので、機会があれば再び足を運びたいものです。

また中国ではCRHだけでなく、長距離寝台列車の旅が手頃に堪能できるのも大きな魅力で、今回の旅行でも1度乗車する機会がありました。
(その代わり硬座車への乗車機会は全くなく、これはMAKIKYUの中国訪問では初めての事です)

 
そして今回の旅行ではウエイトこそ小さいものの、中国大陸本土以外の地域も訪問しており、MAKIKYUらしく国内旅行も少し混じっています。


まだ帰宅後の荷物整理も…という段階ですので、今回の旅行で乗車した交通機関などを取り上げるのは暫く先になり、何処まで取り挙げられるか…といった状況ですが、CRHなどの中国関連記事と共に、順次記事公開を進めて行きたいと思っています。


三宅村営バス(3)~大型車両編

2012-07-23 | バス[首都圏]

先日も「MAKIKYUのページ」で取り上げた三宅村営バスですが、三宅村営バスの路線バスは中型車による運行が主流となっており、時折マイクロバスによる運行となる事もある様ですが、大型車両も在籍しています。


現在活躍中の大型路線車はフリー乗車券の券面にも印刷されており、大都市圏では排ガス規制によって淘汰された古参の富士重工製車体(7Eボディ)のいすゞ車ですが、装いは前事業者の塗装を生かして一部を塗り替えただけですので、一目で神奈川県内の某民間事業者からの移籍車両と識別できる状況です。


複数台が導入されたものの、三宅島は離島で塩害の影響を受ける上に、火山ガスによる影響も甚だしい事から、ナンバープレートこそ残存しているものの、運用離脱と見受けられる車両の姿(整備すれば再起可能なのかもしれませんが…)もありました。

MAKIKYUはこのタイプの車両に乗車できれば…と思っていたのですが、稼動可能な車両も収容力はあるものの、燃費などの関係で稼働率が低いらしく、また劣化も結構目立つ状況と見受けられたものでした。


また自家用車両の中古車と思われるいすゞキュービックのトップドア車は、三宅村営バスに関してネット上で検索すると、稼動している画像などが幾つも出てきますが、こちらもナンバープレートこそ残存しているものの…という状況で、このバスよりも古参の中型車が主力として活躍する様を見ると、三宅島の過酷な車両使用条件の一端が伺える気がします。


大型車は路線車以外にも、スクールバス用として在籍している車両も存在しており、こちらは稼動している姿も目撃できたものでしたが、
過酷な使用条件で車両劣化の進行が早い事を踏まえると、中古車での導入が主体となり、またMAKIKYUが三宅島を訪問する機会があるならば、その頃にはバスの顔ぶれが大きく変化しているのでは…と感じたものでした。


中国鉄路乗車記・D7095次(乗車日:2012年7月16日/CRH1・ボンバルディアタイプ)

2012-07-16 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ足を運んだ際には、様々な種類の高速列車(CRH)に乗車していますが、CRH5・CRH3・CRH380A・CRH2Aと主なタイプに一通り乗車し、最後まで残ったのがCRH1でした。

ボンバルディアはシーメンス・アルストームと並ぶ欧州系鉄道車両製造メーカーの御三家で、欧州などで多数の車両が活躍しています。

中国国内でも地鉄車両などは、シーメンスやアルストームと並び、様々な都市で活躍している姿を見る事ができ、MAKIKYUも幾つかの都市でボンバルディアと中国メーカーの合弁製造した車両に乗車した事があります。

しかしながら高速鉄道に関しては、シーメンス(ICE→CRH3)やアルストーム(TGV・ペンドリーノ→CRH5)と日本勢(新幹線・E2系→CRH2)が世界の主流を占めており、ボンバルディアはイマイチといった状況です。


その劣勢を取り戻すかの如く、既に他国で実績のある高速列車と共に、高速鉄道の急速な発展が見込まれる中華人民共和国の高速列車用に投入された車両がCRH1です。

CRH1は欧州の近郊型車両(それでも最高200km/h程度の設計ですので、標準軌とはいえども在来線規格の車両にしては上等です)をベースにしており、車体材質もステンレス製であるなど、他のCRHシリーズ各種と比べ、異色の存在と言えます。

近郊型の2ドア車をベースにしており、扉数を各車両1箇所に減らして、その分座席を増やした設計にしていますので、奇妙な雰囲気を受ける扉位置となっています。

ドア位置は元々近郊型気動車として導入されたものの、後にムグンファ号用に格上げ改造(座席交換など)と共に扉数削減(2扉→1扉)を行った韓国鉄道(KORAIL)の9501型都市通勤型ディーゼル動車・CDC→RDC化改造車を連想させられます。

MAKIKYUがこのCRH1に乗車したのは、CRH運行開始前から中国鉄路では屈指の高頻度運転区間となっている広州(広州東)→深圳間で、MAKIKYUが広東省を訪問し、同省の2大都市間を列車で移動するのは2回目です。

以前同区間を乗車した際には動力集中方式ながらも、プッシュプル式の電気機関車と客車の固定編成ながらも、CRH以外の中国鉄路では珍しい「電車(EMU)」扱いとなっている車両に乗車し、この車両は次々とトラブル続きで使い物にならない国産EMU(中華之星・中原之星など)を登場させては停運を繰り返してきた中国鉄路にしては珍しい、EMUの成功作と言われる車両でしたが、この車両はCRH台頭後、貴陽省方面のローカル列車に転用されています。

広深間では、この車両の後継として広州・広州東~深圳間を線増し、CRH1の頻発運転を行う他に、北京~天津間・上海~南京間と共に、もう一本高速鉄道線が敷設されています。

大都市間で高速鉄道を複数併設して建設・運行に供するのは、日本では考えられない事ですが、もう一方は広州南~深圳北間を運行しており、こちらの方が所要時間は短く、広州南では武漢方面などの高速鉄道にも接続・乗り入れも行っています。

とはいえ両都市のターミナル立地が郊外で不便、本数が限られる事もあり、こちらは主に深圳から遠方への旅客向け、広州東~深圳間は主に近距離旅客向けという感があります。

MAKIKYUが広州に滞在した際には、中心部に宿泊していた事もあり、深圳へ向かう列車に乗車する際には、本数も多い広州東駅へ向かい、同駅で乗車券を買い求めて乗車したものでした。

広州東駅では需要が旺盛な広深間列車専用窓口もあり、同区間列車でも相変わらず身分証(外国人はパスポート)の提示が必要であるなど、日韓程気軽に乗車券を買えるとは言い難いものの、広深間列車の本数は頻発している事もあり近郊列車感覚、当日の乗車直前に乗車券を買い求めた場合でも、2~3本後の列車への乗車は容易な状況です。

また乗車券も現在中国鉄路では一般的な青緑色・新幹線→CRH2の絵柄が描かれた磁気券ではなく、非磁気化券に良く似たピンク色ながらも、ICタグが埋め込まれた広深鉄路専用の乗車券が用いられているのも大きな特徴ですが、この区間だけわざわざ他に類を見ない乗車券を採用するメリットは一体どれだけあるのか気になる所です。

列車別改札や、発車時間が近づかないと駅台(ホーム)に入場できないシステムなども相変わらずで、ダイヤを見ると近郊列車感覚で乗れそうな区間にも関わらず…という気がします。

そして発車時間が近づき改札を開始、ホームへ向かうと既に列車は停車しており、近郊列車感覚で列車を頻発させている区間と言う事もあるのか、輸送需要の旺盛な区間にも関わらず列車は8両、設備的な余力なども踏まえると、列車両数を増やし、そろそろ広州・深圳両都市の交通カードに対応し、列車指定なしで乗れる都市鉄道化しても…と感じる程です。

列車に乗り込むと、MAKIKYUが乗車する2等軟座は3+2列、片持ち式のクロスシートが並んでおり、背もたれには若干の傾斜が付けられています。

座席下の空間は広く確保され、背面テーブルも付いているなど、一応優等列車の体裁は整えているものの、座席の方向転換は出来ず、リクライニング機能も装備していません。

CRH2などでお馴染みの回転式リクライニングシートとは比べ物にならない劣悪品、それどころか客車列車の軟座と比べても見劣りが否めない代物で、MAKIKYUが今までに乗車した高速鉄道車両の座席では最も劣悪と感じた韓国・KTXの一般室(普通車・2等座相当)で用いている座席の方がまだマシと感じた程です。
(KTX一般室の座席はフランスが太鼓判を押したTGVタイプで方向転換不可、半数は逆向きとなりシートピッチも狭い上に、リクライニング
も座面と共に背もたれが1段階前にせり出すタイプで、現地でも非常に不評です)

元が近郊列車用車両ベース、そして使用路線も所要1時間程度の近郊列車感覚とはいえ、広深鉄路は中国大陸本土では最も物価の高いエリアを走る事もあって、ただでさえ割高な高速列車(CRH)運賃よりも更に割高な運賃を設定していますので、割に合わない設備と言っても過言ではありません。
(それでも香港のKTTや東鉄頭等などに比べれば、支払った金額に見合う対価としてはまだマシかもしれませんが…)

また座席の出来栄えだけでなく、車両全体の出来栄えもイマイチという感があり、所詮近郊型車両ベースである事に加え、大窓の両脇に
ピンを設け、下ろす際にはこのピン(2箇所)に引っ掛ける事で半閉・全閉の2段階しか調節できない粗雑な構造のブラインドなども、ボンバルディアの高速鉄道車両製造実績が乏しい事も影響しているのかもしれませんが、非常に頂けない気がします。

外観デザインも決して格好良いとは言い難く、車両導入費用や運行コストなどの面で営業的メリットが存在するのかもしれませんが、MAKIKYUが乗車したCRHシリーズ動車組車両では、最悪のワースト車両と言わざるを得ない駄作車両と感じたものです。

MAKIKYUが乗車した際には、3人がけ逆向き座席の通路側と言う、非常に有り難くないポジションに加え、車内は常に混雑して立席客の姿を散見する状況だった事も災いしているかもしれませんが、一部では「服務員からお客様ではなく華蓄扱いされる」とも言われる客車硬座のボックス席よりは幾分マシとはいえ、広深間程度ならまだ許容範囲ながら、長時間乗車は避けたい車両と感じたものです。

新幹線→CRH2と乗り比べる事で、新幹線車両の良さを再認識するのには絶好の存在かと思いますし、日本人を含めた外国人の利用も比較的多い路線と見込まれますので、この車両に乗車した事で「中国の高速鉄道は所詮…」と言った印象を持たない様に願いたいものです。

出来る事ならこの車両はD~次(動車組列車)ではなく、短距離の空調普快など格下列車での運用に鞍替えさせるか、さもなければ動車組列車にも硬座運賃の設定を行い、他車両に比べて大幅に設備が劣る分、2等軟座→硬座への等級格下げを行うなど、設備格差に見合った運賃設定を行うなど、営業面での工夫を望みたいた感じてしまったものでした。


三宅村営バス(2)~貸切・小型車両編

2012-07-15 | バス[首都圏]

先日「MAKIKYUのページ」では、三宅村営バスの一般路線で、主力となっている中型路線車に関して取り上げましたが、今日はその続編で、貸切・小型車両に関して取り上げたいと思います。

三宅島は離島でフェリーも就航していない土地柄もあってか、車両数が限られており、現段階で村営バスには、厳密に貸切専用車と呼べる車両は存在していない模様ですので、一般路線に充当する機会がまずない車両と言うと、せいぜいスクールバス用車両程度と言った状況です。

そのため貸切用の車両と言っても、他の路線車より設備が優れた車両を、路線と貸切の兼用車にしていると言った状況ですが、MAKIKYUが試験就航を行ったジェット船「セブンアイランド 愛」で三宅島・伊ヶ谷港に到着した際には、2台の村営バスがジェット船から乗り換える団体客の客待ちをしている状況でした。


その内の1台が、恐らく現在三宅村営バスで活躍する車両の中では、最もハイグレードな車両なのではと感じる中型トップドア車で、見た目は貸切というよりも自家用バスに近い印象がありますが、この日は試験就航のジェット船で三宅島を訪れた議員視察団の貸切となっていました。


その後ろに停車していた車両は、旅行会社が団体客向けに貸切で仕立てたマイクロバス(日野リエッセ)で、この車両も路線バスとして充当される事があるそうですが、余り乗客が居ないと見込んでマイクロバスを路線に充当し、グループ客などが大勢乗り込んだ時等は結構大変な様です。

またこの車両は三宅村営バスの象徴とも言えるアカコッコのステッカーも貼られておらず、装いも村営バスの主流となっている白と青系統の装いではありませんので、事業者名標記を見なければ村営バスとは…という雰囲気を感じます。


三宅村営バスのマイクロバスはこの車両以外にも、三池地区にある企業課(車庫)内で三菱ローザを目撃しており、こちらは装いなどを見ると如何にも三宅村営バスと言う雰囲気ですが、設備的に見ても比較的少人数の団体利用にも適していそうな反面、路線バスとして充当するとなると、リエッセ以上に収容力の問題がありそうです。

三宅村営バスではこの他に大型路線車も存在しており、こちらに関しても近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。


中国鉄路乗車記:D3027次(乗車日:2012年7月13日/CRH2A・新幹線E2系タイプ)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

北京~武漢間で、硬座以外の直通列車乗車券が手配できなかった事もあり、南京南站乗り継ぎで高速列車を駆使して移動する事になった今回の旅行、列車遅延を見越し、乗継駅の南京南站で約2時間程度の余裕を確保していました。

しかし北京南~南京南間で乗車したG117次はほぼ定時運行、この心配は杞憂に終わりましたが、同区間でも運賃がやや安いD~次(
動車組列車)の場合は、優先順位が低く結構遅れる事もあり、日本の様に接続列車遅れの接続待ちはありませんので、ギリギリの乗り継ぎは避けるに越した事はありません。

空いた時間にはじっくりと南京南站の様子を観察すると共に、開業当初は南京南站にも達していなかった南京地鉄1号線が、更に南郊の中国薬科大学(CPU)まで延伸されており、列車待ちの空き時間を活用し、末端で地上区間もあるこの延伸区間乗車に出向きます。


地鉄でCPUまで往復し、南京南站へ戻るとD3027次の発車時間が近づいており、既に改札中と言う状況でした。


南京南站は途中駅ながらもホームが20番線を越える程あり、日韓の高速鉄道駅でこれだけの大きさを誇る駅はないだけに、CRHの凄まじさを実感させられます。

そしてホームに降りると、列車は既にホームに待機しており、CRH2Aには走り始めたばかりの2007年以来久々の乗車、そして列車に乗り込むと程なく発車となります。

列車は南京南站を出発すると、暫くは北京南から乗車してきたG117次で通った経路を折り返す格好となりますが、北京~上海間高速鉄道の線路と合肥・武漢方面の線路が並行する形で、南京南站からずっと複々線となっています。

長大な長江を跨ぐ区間は複線、その後分岐と言う形でない辺りは、随分設備的に贅沢で、将来の発展を見越して大々的な設備を造り上げていると感じます。

ちなみにD3027次は8両編成、車両は武漢鉄路局所属車両で、CRH2の中でも最も初期に導入され、日本の新幹線に最も近い仕様のCRH2Aで、D~次(動車組列車)はG~次(高速動車)とは異なり、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当)の価格差が小さい事もあり、瀋陽~北京間で乗車したD12次(CRH5)と同様に、少々奮発して1等座を利用したものでした。

南京南~漢口間は高速列車専用線ではなく、在来線区を高速運転するために、最高速度は200km/hに押さえられており、一般の客車列車や貨物列車と同じ線路を、フル規格新幹線車両で駆け抜けるのは、日本の新幹線に乗り慣れている身としては、新鮮に感じます。

在来線でも標準軌(軌道幅1435mm)で200km運転できるのは、改軌してもミニ新幹線用の小柄な在来線規格車両で、最高速度も在来線区間では130km/h程度の島国と比べると、羨ましい限りです。

在来線区間を走る事もあって、500km程度の南京南~漢口間を、途中駅の停車時間を含めて約4時間と、高速動車に比べると、随分遅い道程になりますが、その分車両の乗り心地を堪能するには絶好のチャンスです。

1等座と2等座の価格差は40元程度、日本の指定席料金(普通車)程度の金額にしかなりませんので、現地物価を考えると決して安い出費ではないものの、この程度の追加でE2系グリーン席を試せるのは絶好の機会とも言えます。


特にCRH2Aではせいぜいシートカバーに「和諧号」ロゴが印刷されている程度で、座席自体はおろか、1・2等座共にモケットまで全く同じ柄を使っており、2等座(写真)では座面スライド機能も装備しています。

ほぼ同グレードの座席を用いており、車内の構造などが大きく異なるCRHシリーズ他車両と比べ、一層「グリーン車」に乗車しているという雰囲気が堪能できます。

MAKIKYUは日本では運賃・料金が高い事もあって、E2系は普通車しか乗車した事がなく、E2系グリーン車の座席には大陸で初乗車という事になりましたが、乗車券購入時に6号車で指定されていたのは、乗車券を手にした時から少々気になっていたものでした。

というのも、E2系8両編成では7号車1両がグリーン車となっており、CRH2も確か同様の編成だったはず…と思っていたからで、実際にCRH2Aも過半数の編成は半室の食堂車が設置されている事を除くと、本家E2系と同様の編成になっています。

しかしCRH2は後に寝台車など様々な派生形が登場しているだけでなく、初期型のCRH2Aでも編成構成が異なる編成が混在しており、MAKIKYUがD3027次で乗車したCRH2Aは、6・7号車の2両が1等座になっていました。

しかしながら外見上は、7号車1両が1等座となっている編成と大差なく、6号車の窓割は大窓の真ん中に、ブラインド用レールが挟まる普通車タイプとなっており、この窓割に合わせて座席を設置しているために、前後の座席間隔は2等座(普通車)と同じ、定員も7号車より20名近く多いハズレ車両になっています。

そのため1等座で6号車の乗車券が発券されると、7号車に比べて見劣りが否めず、少々損した気分になりますが、それでも任意の車両・座席を選べるシステムはなく、料金的にも同一と言うのは如何にも中国的な話で、それどころか6号車は内装の壁面まで2等座と同じと言う有様でした。

 
それでも中国にしては短い8両と言う編成で、合肥辺りまでは列車自体が混雑しており、無座(立席)客も多数と言う有様では、1等座で座れるのはかなり上等な話で、新幹線グリーン車に乗車しているというよりは、山陽・九州新幹線直通N700系などの普通車指定席車両(横4列席)に乗車している様な気分でも、料金差やE2系の座席を堪能できるというメリットなどを考えれば、一度試乗する位なら…といった所です。

南京南から1時間程走ると、安徽省の省都・合肥に到着し、ここで結構な数の乗客が降りますので、合肥から乗り込む乗客も居るものの、車内は幾分空いてきます。


その後は列車はその後更に六安・金寨・麻城北に停車し、漢口へ向かいますが、赤土やレンガ造りの建物が散見される平野や、なだらかな丘陵地帯が延々と続く大陸の車窓は、日本とは異なる遠い異国に来た事を感じさせられます。


途中停車駅の麻城北は、複線の通過線+両側線に相対式ホームの新幹線途中駅スタイルとも言える駅で、ここではCRH2充当のD~次(動車組)列車同士の退避が行われ、D3027次列車は後続列車の通過待ちとなるために、暫くの間停車します。

列車内は一応全て禁煙となっており、喫煙人口の多い中国だけあって、この停車時間に車内からホームへ出て、喫煙する乗客の姿も多数見られる状況です。

MAKIKYUも乗車記念を兼ね、写真の撮影に出向きますが、相対式ホームの反対側ホームへ行こうとしたら、係員の制止指示が出てアウト!というのは如何にも中国的で、日韓であればこの程度の事は…と感じます。

麻城北を出発すると、現地時間でも既に19時頃(日本時間20時)だけあって、そろそろ外は暗くなり、車窓を楽しむのは…という状況に
なります。


丁度腹が減った事もあり、日本の新幹線では姿を消してしまった餐車(食堂車)へ出向き、カウンターで発売している車内販売の弁当を購入して夕食とします。

本格的な調理設備を備えていない事もあり、客車列車の食堂車の様に、車内で調製した弁当ではなく、長期保存可能(パッケージによると、常温遮光保存 保質期 90天)な弁当をレンジ加熱して提供するスタイルで、購入した弁当は35元、他にインスタントのカップスープ(5元)と合わせて40元でした。

この弁当を販売している係員は、日本語こそ全く使えないものの、簡単な英語(中国ではそれすら通じない事もザラです)が使える事もあり、弁当の注文などで漢字の筆談と共に簡単な英単語を並べ、意志の疎通をしていました。

MAKIKYUはまともに中国語を勉強した事もない有様で、単に漢字を並べているだけですので、一応それでもある程度意味は理解しながらも「Your Chinese is poor.」と言われてしまう始末で、この列車に日本人が乗車する事は?と尋ねると、「殆どない」との事でした。

中国の大陸本土を走る高速鉄道はおろか、わざわざ離島の高鉄に乗りに行く日本人もしばしば…という状況ですので、上海発着の比較的乗り易い列車にしては少々意外な気もしますが、乗っていても見た目では現地人と識別がつきにくく、食堂車を利用する頻度が余り高くない事も影響しているのかも…と感じたものです。
(一応この列車の始発となっている上海は、日本との間を直結するフェリーも発着する街で、東海道新幹線で活躍する新幹線車両をベースとした高鉄車両を走らせている離島などに比べれば、日本人にとっては遥かに足を運び易く、メジャーな都市と言う印象があり、高鉄に関しても同様と言う気がするのですが…)


肝心の弁当は、パッケージに「方便 美味 安全」などと書かれており、上海市内で調製したものですが、内容は白米や牛肉の煮込みなどのおかずとなっています。


衛生面での安全性は、街中で売っている弁当などよりずっと上と言う印象を受けたもので、ネット上でもこの弁当の評価に関しての情報が流れていますが、肝心の味は個人的にはまあまあといった印象を受けたものでした。

ただ中国の街中では、1回の食事で35~40元を支出するとなれば、結構良いモノが食べれる気がしますし、物凄く高級な弁当と言う印象ではない気がします。

そのため弁当の価格は「列車の乗り心地と同様に日本並み」と言っても過言ではなく、CRHに乗車する客層を見込んで強気の商売をしている印象がありますが、それでも結構この弁当を買い求める乗客の姿が見受けられたものでした。


この弁当を食べ終えて少しすると、暗闇の中に街明かりがボチボチと見え始め、まもなく終点の漢口站到着となりますが、一般の客車列車
も発着するドーム上屋根のホームに、新幹線型車両が発着する様は、システムを含めて日本スタイルそのままの在来路線とは独立した高速鉄道ではなく、新幹線型車両を独自の方法で活用する中国鉄路流運行スタイルを象徴している光景の様に思えたものです。

D3027次をはじめ、上海虹橋~南京南~合肥~漢口間などを運行するD~次(動車組)列車は多数運行しており、大半がCRH2Aでの運行となっていますので、初めての中国旅行で是非「新幹線車両」に乗りたいと考える方にもおススメです。

また数日後には上海から日帰りで南京へ出向き、その帰りにも武漢~上海虹橋間を運行するD~次列車を利用したものでした。

列車本数が頻発している上海~南京間(両都市共に発着駅が複数あります)でも、G~次列車(高速動車)に比べると停車駅が多く、最高速度が低い事もあってか、運賃はG~次列車に比べてかなり割安に設定されています。

安い事もあってか無座(立席)客が多く見られ、車内環境は若干…といった状況でしたが、設備的にはG~次列車と遜色なく、運賃格差も新幹線「のぞみ」と「こだま」の実勢価格(前者がバラ売り回数券やEX-IC割引・後者がぷらっとこだま利用など)を上回る程です。

そのためこの列車は上海~武漢間を移動するだけでなく、上海~南京間を少し安く高速鉄道で移動したい場合や、北京~武漢間を南京南乗り継ぎで移動する際などにも活用でき、色々な使い方が出来る有用な列車と感じたものです。

(その後12月末には北京~武漢間で高速鉄道が開業し、早くもこんな乗り方をする必要性が薄れているのは、著しい発展と共に次々と新線が開業する中国らしい話です)


中国鉄路乗車記:G117次(乗車日:2012年7月13日/CRH380A)

2012-07-13 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は列車乗車日を記事投稿日扱いとして、後日公開したものです)

MAKIKYUは7月に久々に中国を訪問した際には、出来れば北京到着後に列車で武漢へ抜け、その後武漢~広州間高速鉄道に乗車して華南へ向かい、その後華南から列車で上海周辺へ…という大まかな計画を立てており、ダメなら北京から上海まで、本数が多く、乗車券も買い易い高速列車で直接…と考えていました。

この計画だと北京~武漢と、華南~上海間の火車票(列車乗車券)手配が問題となるのですが、北京到着日に華南~上海間は乗車券手配に成功し、後は武漢への火車票をどうするのか…という状況でした。

北京~武漢間は北京西站から漢口站や武昌站へ向かう夜行列車(寝台+座席や全車寝台)が何本か運行しており、他に武漢以遠へ向かう列車も多数存在するのですが、各列車の寝台は数日先まで「没有」の嵐が吹き荒れる状況でした。

発売当日で全列車完売と言う程ではないにしても、乗りたいと思った時に乗れない程、この区間では需要に対して供給が追いついていないのが現状で、それどころか在来線を走る昼行CRH(D~次の動車組)ですら、数日先の列車で空席がようやくという有様でした。

こんな状況であれば、一般の中国人民なら諦めて硬座で10~12時間程度我慢して…という所で、多数の火車票購入希望者がひしめく乗車券売り場では少しでも安く目的地へ行きたいがために、1000km以上の距離を移動する際にも、最初から硬座の火車票を求める人民も多数見受けられる程で、当日の無座票などを買い求める人民の姿を見ると、MAKIKYUはとても…と感じてしまいます。

日本人でも硬座乗車こそが中国鉄道旅行の醍醐味と感じていたり、運賃の安さに魅力を感じて、他列車・車両に空席があっても、長距離の列車移動で敢えて硬座・無座を選んで乗車する人物も存在しますが、長時間の硬座乗車は車両の居住性や車内環境など、特快空調車でも日本の青春18きっぷによる普通列車乗り継ぎなどとは比べ物にならない程劣り、非常に疲れます。
(MAKIKYUが帰国の際に乗船したフェリー内では、昆明~上海間を硬座で移動したという方や、成都~ウルムチ間を硬座で移動したという方(共に日本人女性の一人旅)も居られ、どちらも全然平気と言ってましたので、相当な猛者と感じたものですが、中国鉄路に関する書籍を出版される様な事情通の方を除き、日本人一般には硬座での長時間乗車はおススメできません)

日韓の快適な鉄道旅行に慣れきったMAKIKYUにとって、空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)位ならまだ無座でも…とは感じるものの、出来れば北京~武漢間を硬座で移動するのは避けたいと感じ、他に妥当な方法はないのだろうか…と感じたものでした。

そこで鉄道旅行のバイブルとも言える時刻表とご相談になるのですが、上海(上海虹橋)~武漢(主に漢口站発着)の動車組列車(D~次)はそこそこの本数が運転されており、乗車券も比較的買い易そうな気がしましたので、北京南駅の乗車券売り場でこの列車の空席状況を尋ねると、2日前の段階で空席ありとの事でしたので、北京南~上海虹橋間の高速動車(G~次)と、上海虹橋~漢口間の動車組列車(D~次)を、途中の南京(南京南站)で乗り継ぎ、武漢へ移動する事にしたものでした。
(北京南~南京南間の高速動車組乗車券購入は、列車が頻発している事もあって楽勝、特に運賃が割高な上級席ともなれば、余程の事がない限り当日購入でも大丈夫かと思います)

南京を経由して武漢へ向かうとなると、直接京広線を南下して武漢へ向かうよりは、距離にして300km程遠回りとなり、まして運賃面でも割高な高速動車などを利用するとなると、かなり割高(新空調硬臥の直通列車利用と比較し、高速動車+動車組2等座乗車でも2.5倍程)になりますので、普通の人民が移動手段として鉄道を利用するのであれば、まず考えられない経路になります。

とはいえCRH視察を最大の目的として訪中したMAKIKYUにとっては絶好の方法で、現地物価を考えると高過ぎるものの、日本の物価に比べれば激安な運賃設定(1500km強を移動しても、日本円に換算した金額は4桁で収まります)もあり、北京~武漢間で硬座や航空機利用は避けたいけれども、寝台が満席で買えない…という時には、鉄路迷(レールファン)以外の日本人旅行者一般にもおススメの方法かと思います。

そして乗車当日、上海虹橋行き高速動車の発着する北京南駅へ向かうと、駅構内に入場する際に金属探知機による荷物のセキュリティチェックがあり、その後列車別に指定された改札から入場する際には、係員から実名制(外国人の場合は旅券番号)が記された乗車券と身分証(外国人の場合は旅券)を提示する様に求められ、本人確認を行ってから自動改札機に乗車券を投入(改札)と、日韓の高速列車に比べて随分面倒で不便な印象が否めません。


改札を経てホームに向かうと、既に乗車するG117次は入場しており、北京~上海間の高速列車は主に2形式(CRH380A/CRH380B)が用いられているのですが、MAKIKYUが乗車するG117次はCRH380Aの方でした。
(高速動車(G~次)ではなく、運賃は安いものの所要時間が長い動車組列車(D~次)を利用した場合などは、別形式に当たります)

CRH380Aは新幹線タイプのCRH(CRH2)の改良増備版とも言える車両で、CRH380B(ドイツICE3タイプ・CRH3の改良増備版)と混用されています(一応運用は決まっている様ですが、同一路線・区間を走る列車でも、乗車列車によって車型が異なります)ので、1本前の上海虹橋行きはCRH380Bが充当されており、天津へ足を運ぶ際にCRH3に乗車した事もありますので、CRH380Aの方に当たれば…と思っていたMAKIKYUとしては念願通りの巡り合わせです。

このCRH380Aは新幹線タイプの改良版だけあって、見た目は何となく日本の新幹線を連想するものの、CRH3と大差ない外観のCRH380Bとは異なり、塗装や前面デザインなどがCRH2とは大きく異なっているのが大きな特徴です。

前面デザインや塗装は、抜群の高性能とデザインを誇りながらも、座席数や乗降口位置などが他車両と異なる事で運用し難く、近年東海道~山陽新幹線直通のぞみ号という花形からは退役を余儀なくされ、現在は編成を短縮して山陽新幹線内で細々と活躍している車両を連想させるものがあります。


ただ車体断面は丸っこいこの車両特有のものではなく、CRH2(=E2系)に近い形状となっている事もあって、複数種の新幹線を継ぎ接ぎした様な奇妙な雰囲気となっており、個人的にはデザイン面で余り格好良い車両とは感じないのですが、これに中国ならではとも言える釣り目形のヘッドライトが配されています。

他国の技術や実績をふんだんに用いながらも、数本はベース車の開発国から直接輸入したCRH2やCRH3・CRH5などの動車組列車用車両や、ほぼドイツ風の雰囲気が漂うCRH380Bとは異なり、一応中国ならではの車両という事になっており、中国側も独自開発車両である事を盛んに謳っています。
(実際にホームに入線しているこの車両を目にすれば、何処かの島国で活躍している高速列車の2番煎じ的な印象が否めないのですが…)


車内に足を踏み入れると、客ドアやデッキ周辺などはCRH3やCRH5、韓国KTXなどの欧州系高速車両の雰囲気ではなく、これまた何処かの新幹線と錯覚してしまいそうな雰囲気が漂っています。


客室もMAKIKYUが乗車する2等座(普通車相当)は2人がけと3人がけの、背面テーブル付き回転式リクライニングシートがズラリと並び、CRH2の進化系車両ならではといった感がありますが、座席モケットはベース車そのもののCRH2とは異なり、座面スライド機能は廃され、モケットも新幹線N700系普通車の色彩を濃くした様な印象を受けます。

ただ天井や半透明ガラスを用いた荷棚の造作、ミラー仕上げで装置本体が目立たない様になっている車内LED文字案内装置などは、CRH3(ドイツICE3タイプ)に類似しており、様々な高速車両の美味しい所を寄せ集めた雰囲気があります。

しかし側面窓は2席で1つの大窓、そしてブラインドは各窓毎に上げるか下げるかしかできない構造は頂けないもので、後発だけに様々な車両の利点を寄せ集めるチャンスがあるにも関わらず、大窓の中央にブラインドレールがあり、各席毎にブランドを任意の位置で下ろせる構造とする事で、様々な旅客のニーズに細やかに対応できる構造を採用しなかった点は、少々に残念に感じます。

この2等座席は結構盛況で、見た限りでは8割以上の座席が埋まり、3人がけの中間席でも埋まっている箇所が多く見られるなど、北京~上海間の高速鉄道は結構な本数・両数で運行している事も考えると、高速鉄道開業前は需要に対して供給が大幅に不足していた事が露呈されているとも言えます。


その一方で上級席に関しては運賃の高さもあってか、比較的空席が目立つ状況で、日韓の物価よりは安いとは言っても、MAKIKYUが乗車券を購入する場合でも決して安くは…と感じてしまう程、まして高速動車(G~次)では1等座と2等座の価格差(日本の普通車とグリーン車の様な感覚です)が結構大きく、2等座でもJRの新幹線・特急普通車レベルの設備を有する事(客車列車の軟座でも、日本の普通列車レベルかそれ以下と感じる事が多いです)を踏まえると、2等座をもう少し増やした方が…と感じてしまいます。

この1等座は、座席が新幹線グリーン車レベルのモケット違いと言った印象があるのですが、CRH380Aではただでさえ乗車率の振るわない1等座に加え、更に上級の「商務座」と呼ばれる車両も連結されており、しかも中間の1両全室がこの商務座となっているのは、資本主義国の民営鉄道ならまず考えられないと言っても過言ではない気がします。


商務座は革張り・バックシェル付きの2+1列座席が並び、東北新幹線E5系「グランクラス」の中国版とも言うべき存在ですが、設備・運賃共に破格で、日韓に比べて大幅に物価が安い中国といえども、北京南~上海虹橋間をこの座席で乗り通せば、日本の新幹線普通車で首都圏~九州間を移動出来てしまう程、物価が高い日本に住む人間の感覚でも決して安い金額ではありません。

まして中国の物価を考えると、北京南~上海虹橋間で商務座の乗車券を片道分購入するだけでも、一般労働者の月給かそれ以上という有様で、日本のグランクラスの様に少し奮発して一度(それでも結構高いですが…)と言うレベルの金額ではないだけに、利用出来る客層は極めて限られています。
(当然ながらこの車両の乗車券購入は、余程の事がない限りは当日でも楽勝かと思います)

1等座でも空席が目立つ状況でしたので、こんな車両はほぼ空気輸送状態と言っても過言ではなく、今後の経済発展で上級席需要が高まる事を見越した先行投資的要素があるのかもしれませんが、需要に対して供給が追いついていない中国鉄路の現状を踏まえると、こんな座席はJR九州787系電車のDXグリーン車の如く、せいぜい先頭車両の一部区画程度で…と感じてしまいます。


そして列車が北京南站を出発すると、MAKIKYUが降車する南京南站までは約4時間の道程、そして終点の上海虹橋站までは所要約5時間となりますが、車両・軌道共に真新しいだけあって、最高速度は温州の事故以来若干引き下げられ、所要時間が増大しているとは言っても300km/hを少々超える程度を出しており、車内に設置されたLED表示でもその運行速度が表示されます。

日本の新幹線は、大動脈の東海道新幹線は設備が古く、今日の超高速運転を見越していない設備が災いし、最高速度270km/hに押さえられ、それも車体傾斜などを駆使して最高速度で走れる区間を…という状況を踏まえると、何とも羨ましい話です。

北京~南京間は1000kmを越えており、高速鉄道開業前は列車の手配、移動共に結構な労力を要していたものの、CRHで移動する両都市間は、日本の新幹線で東京~広島間を往復する程度の手軽さで、中国鉄路の旅も随分変わったものと実感させられます。


ただ中国ならではの発車時間直前のホーム別改札のお陰で、途中各駅も列車入線時刻が迫っていないと人影が見当たらず、駅のつくりがやたらと大きいのは、日本の新幹線とは大きな違いで、軌道設備も柵等はやや簡素な印象を受けたものでした。


また日本の新幹線と同レベルの最新鋭高速列車でありながらも、給湯設備は客車列車と同様にしっかりと設置されている辺りは中国らしく、MAKIKYUも車内で方便面(カップラーメン)を食すために利用したものでした。

列車内では車内販売は勿論、食堂車の連結もありますので、食事情は新幹線やKTXといった日韓の高速列車より優れており、ブッフェなどを連結するとまではいかないにしても、日本の新幹線も車内に給湯設備のサービス位はあっても…と感じます。

そしてCRH380Aの約4時間の列車旅は、異国の車窓が広がる非日常の世界と言う事もあってあっという間、多少の遅延は見込んでいたものの、ほぼ定刻で南京南站に到着、今度は約2時間後の漢口行き列車へ乗り継ぎ、目的地の武漢を目指します。

南京南~漢口間で乗車したD3027次に関しては、別記事で取り上げたいと思います。


中国鉄路乗車記:C2213・2282次(乗車日:2012年7月11日/CRH3・ICE3タイプ)

2012-07-11 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUが中国へ出向いた際には、大連から入国し、上海から出国する行程だけは手配済みだったものの、急な旅行だった事もあり、それ以外の列車や宿泊は成り行き任せという状況でした。

東北から北京へ抜け、その後上海へ…という大まかな計画を立てており、7月10日の北京到着時点では、北京市内での滞在日数すら未確定と言う状況でした。

そのため北京からは直接上海へ向かう(高速鉄道開業のお陰で、この乗車券の確保は容易です)か、それとも華南(広東省・香港)方面へも足を伸ばせるかは、列車の空席状況次第と言う状況でしたが、華南方面の火車票(鉄道乗車券)手配も北京で無事に済ませる事ができ、これで華南方面へも足を運ぶ事が確定し、大まかな旅程が完成したものでした。
(中国の火車票は、基本的には出発都市で購入する事が原則となっており、他都市発着の乗車券発券もシステム的には可能なものの、係員次第では断られる事もあり、発券可能な場合でも異地票発券の手数料を請求される事があります)

華南方面への乗車券手配が済んだ事で、北京での宿泊は3泊、11・12の2日間が北京滞在となり、この間は以前MAKIKYUが北京を訪問した際に利用した事がある北京站近くの賓館(ホテル)にも空室がありましたので、この賓館を拠点に北京市内や周辺部へ足を運んだものでした。

その内11日は、北京站近くから日本では珍しいものの、北京ではありふれた存在とも言える2両連結の市内公交汽車(路線バス)に乗車し、高速鉄道が発着する大ターミナルに改装された北京南駅へ向かい、同站を視察する事にしたものでした。


日本の新幹線駅とは比べ物にならない、北京南站の大規模な設備は圧巻というほかなく、今後更に輸送需要が増える事を見越しているとはいえ、よくこれだけのものを短期間で…と感心させられ、ここまで大きく造らなくても、効率的な運行をすれば……と感じてしまい、大き過ぎて却って使い勝手が悪いと感じる面もあるものの、社会体制や国力の違い、そして中国が急速な勢いで発展している事を強く実感させられたものでした。

この巨大な北京南站を見ていると、MAKIKYUは駅舎を視察するだけでなく、高速列車に乗車も…と思い、急遽日帰りで距離も近く、列車本数も多く手配が容易な天津まで足を運ぶ事にしたもので、その際に乗車した列車がC2213次(往路)とC2282次(復路)です。

北京~天津間の高速鉄道は、両都市間のみを結ぶ目的で建設された路線と、天津から更に済南・除州・南京などを経て上海方面へ至る高速鉄道の2路線が、それぞれ複線で建設されており、高速鉄道発祥の国・日本の新幹線でも、2都市間を結ぶ路線が複数存在する事例はまだありませんので、駅設備だけでなく路線網と言う観点でも圧巻です。
(中国では他に上海~南京間と広州~深セン間でも、2都市間で2路線の高速鉄道が運行しています)

その内今回乗車したC2213次とC2282次は、北京~天津間のみを運行する高速鉄道を走る列車で、列車番号がG~次(高速動車組列車)やD~次(動車組列車)ではなく、現在北京~天津市内間を結ぶ高速列車のみが用いているC~次(城際動車組列車)となっているのが特徴です。

このC~次は、列車自体の最高速度や使用車両はG~次と大差なく、高速動車の中でも短距離のシャトル列車的存在である事が、G~次との僅かな相違と言っても過言ではない状況で、高速列車が頻発している上海~南京間(途中駅発着を含む)などでも、C~次を名乗る列車が存在しても不思議でない気がします。

ちなみに北京~天津間の高速列車に用いられる車両は、以前は新幹線E2系タイプ(CRH2)も一部列車に用いられていた様ですが、日本側が想定している設計上の最高速度を越えての運用が問題となり、同区間の運用から外されて他区間での運用に転用されていますので、現在は専らCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)が担っており、現在は同車が最高速度300km/h強で運行しています。
(以前は350km/h程度での運行も行っていた様ですが、温州南站付近での追突事故以降に最高速度が若干引き下げられています)

そのため乗車する列車は必然的にCRH3が充当され、東アジアから外へ出た事がないMAKIKYUにとっては、初のICE3タイプ車両乗車になります。


ICE3は個人的にはデザイン的に好印象があり、書籍やネット上の画像などで取り上げられている内装なども結構良さそうな雰囲気ですので、是非一度は乗車してみたい高速列車の筆頭格で、今回の旅行でもこの車両にだけは何とかして乗車したいと思っていましたので、北京~天津間CRH日帰り旅行決行で、晴れて念願を達成する事が出来ました。

北京南站での天津行火車票購入も、日本の新幹線乗車に比べると少々面倒なものの、列車本数が頻発している区間だけあってあっさりと確保でき、期待を膨らませてホームに下りると、今まで書籍やネット上の画像などでしか姿を見た事がなかったICE3タイプの車両と初対面、実際にその姿を目にしても期待を裏切らない車両と感じたものです。

白に細い青帯を纏ったCRHシリーズ共通の装いも、新幹線E2系と共に、この車両の本家(ドイツDBのICE3)よりも見栄えするのでは…と感じる程で、壮大な駅構内ではCRH3だけでなく、CRH2など様々なタイプの高速車両が行き交う様は、はるばる北京まで足を運んだ甲斐は充分にあると感じさせるものです。


車内に足を踏み入れると、木材を多用した温もり感溢れるデッキ部分が目を引き、特徴的な形状の客ドアなどと共に、新幹線とは異なる高速列車という事を強く実感させられます。


客室に足を踏み入れると、中国の車両限界は日本の新幹線並みに大きく、ヨーロッパ規格の車両よりも幅広な事もあってか、本家ドイツDBのICE3よりも車幅が広くなっており、その関係でMAKIKYUが乗車する2等座の座席は新幹線と同様に2+3列配列、一等座も2+2列配列となっています。
(本家DBのICE3は、日本の在来線特急列車の如く2等席が2+2列配列・1等席が2+1列配列です)


そのため本家ICE3に比べると、詰め込みが利く車両(交通機関の整備が発展途上で、輸送力増強が必須の中国では重要な事です)と言えますが、中国鉄路では新幹線E2系=CRH2の回転式リクライニングシートを高く評価し、他の車型も一部を除いてこの座席を若干カスタマイズした背面テーブル付き回転式リクライニングシートを採用していますので、座席定員が多い車両ながらも、韓国KTX(フランスSNCFのTGVベース)の様な窮屈さを感じる事はありません。

CRH2のモケットまで新幹線E2系そのまま、当然ながらリクライニング機能に加え、座面スライド機能まで装備した座席(ボタン位置や色までそのまま)に比べると、座席モケットやリクライニングレバーの違いなどで、座席は少々異なる印象を受けますが、着席した時の印象は日本の新幹線や在来線特急の普通車と大差なく、2等座でも充分快適に過ごせると感じ、逆向き座席が嫌いなMAKIKYUとしては、居住性も本家DBで活躍中の車両よりも良いのでは…と推測しています。
(ごく僅かに本家ドイツDBのICE3レベルの座席を装備した車両も存在しており、こちらは座席が一方向固定座席になっている様です)

またICE3=CRH3は、客室内の内装も天井のFRPが、どことなくCRH2の本家事業者が多数導入している「某社レンズ付きフィルムに良く似た名称で呼ばれる事が多い電車」などの安物通勤型車両を連想させる雰囲気がありますが、半透明ガラスの荷棚などは、シンプルながらもデザイン・機能性の両面で優れた逸品と感じます。


車端部に設置された次駅案内などに用いるLED表示器も、表示される文字色や大きさなどの点では、日本の新幹線に比べて見劣りが否めないものの、文字表示装置部分をミラー仕上げにして、目立たない様に工夫しているのも感心させられ、日本の新幹線でこの様な工夫を施した車両が存在しても…と感じさせられます。

ただCRHシリーズ各種は、概ね客窓が広幅となっており、2席で1つの窓が割り当てられる格好となっていますので、どの席が割り当てられるかによって、外の展望をどれだけ楽しめるか格差があり、中国鉄路では現在、乗客が乗車券購入時に任意の座席を選ぶ事も出来ません。

おまけにブラインド式となっている日除けは、CRH2以外は各席毎に任意の位置で止める事が出来ない構造なのは、CRH3が内外共に完成度が高いと感じる車両だけに、少々残念なものです。
(CRH2の場合は、大窓の真ん中にブラインド用のレールがあり、大窓の片方はブラインドを全開・もう一方はブラインドを全閉といった事も可能で、多様な乗客のニーズに応えられるきめ細やかな配慮は高評価できると感じます)

この様な車内を視察していると、北京(北京南站)から120km程度離れている天津站まで、途中武清站に停車するC2213次でも30分台の所要時間はあっという間に過ぎて行きます。

天津到着後は、市内交通の視察などに出向いた後、今度は天津市内でも中心部とは40km程度離れた塘沽(Tanggu)区の塘沽站から北京への帰路に就きますが、北京~天津間のCRHは北京南~天津駅間の運行が圧倒的に多いものの、一部列車は天津を越えて塘沽まで運行しており、帰りはこの塘沽始発の列車を利用したものでした。

塘沽発着の列車は、一部が北京南~塘沽間ノンストップ運行となっているものの、MAKIKYUが乗車したC2282次など過半数の列車は武清こそ通過するとはいえ、基幹駅の天津にも停車しています。

現在天津~塘沽間は在来線を走るために、北京南~塘沽間約160kmの所要時間は概ね1時間前後、それでも北京から塘沽が随分近くなったと感じるものですが、高速列車にしてはさほど早くない部類と言えます。

おまけに塘沽站は比較的小規模な駅ながらも、夕方MAKIKYUが同駅に到着した際には、乗車券売り場の城際列車専用窓口は営業終了、自動券売機も非居住外国人旅行者で人民の身分証を所持していないMAKIKYUは利用できず、一般列車も含めた窓口はかなりの混雑という状況でした。

その上多数の乗客が並んでいるにも関わらず、空いている窓口は限られており、乗車券購入希望者が大勢並んでいる列でも、平然とカーテンを閉めて窓口閉鎖を行う係員も見受けられるなど、快適で斬新な車両が走っていても、その運行やサービスに従事する服務員は依然…と感じさせられたもので、特に塘沽站発着列車は運行本数も限られていますので、同站発着列車の利用予定が予め分かっているならば、北京南站や天津站などで事前に火車票を入手しておいた方が…と感じたものでした。

ただ検票を済ませて站台(ホーム)に入り、列車に乗り込んでしまえば快適で、闇夜を駆け抜けて北京南站までの道程もあっという間、塘沽からの乗客はさほど多くない状況でしたが、天津からは結構な数の乗客が乗り込み、車内は結構賑わっている様に感じたものでした。


塘沽站では列車に乗り込んでから発車まで時間に余裕があり、空いている事もあってか、車内の様子を存分に撮影する事も出来ましたが、8両編成で所要1時間程度のシャトル列車に用いられる車両でも、一応売店スペースは確保されており、この空間のデザインも特徴的です。


2等座の中には、中央に木製のテーブルを挟み、向かい合わせのボックス配置とした区画も設けられており、リクライニングシートが並ぶ客席ばかりの新幹線に比べると、客室設備にバリエーションがあると感じるのは、D12次乗車記で取り上げたCRH5(アルストームタイプ)と同様ですが、これに加えてCRH3は先頭車運転席背後が展望空間となっているのも特徴です。


この区画は、デザインが良く似ているJR九州の振り子式特急車とは異なり、両側共に1等座の座席が設置されており、ガラス製の仕切りで閉鎖している時もあるなど、どの乗客でも自由に入って前面展望を…とは行かないのは難点と感じます。


またCRH3にはC2213次・C2282次以外にも、その後武漢~広州南間でも乗車(G1153次・2等座)する機会があり、こちらは1000km以上の距離を4時間以上かけて走る列車でしたが、再び訪中する機会があり、CRH3に乗車する機会に恵まれるのであれば、今度は1等座にも乗車してみたいと感じたものでした。

CRH3は外観・内装共にCRHシリーズ各種の中では、かなり出来栄えが良い車両と感じ、その後最高速度380km/hでの営業運転を想定した発展型車両として、CRH380Bが登場しているのも頷けるものがあります。

この車両が登場するまでは、ICE3タイプの車両に乗車するにははるばる遠くはなれた本家ドイツや、その周辺諸国へ出向かなくては…
という状況だった事を考えると、空を飛ぶのがダメでも、SIEMENSから大量に車両や部品を購入・技術移転させて、その気になれば日本からも列車や船を乗り継いで比較的容易に訪問できる土地で、ICE3タイプの車両を多数走らせてくれた中国鉄路には「謝謝」と何度もお礼を述べたい程で、塘沽から北京への帰路に乗車した車中で売りに来たCRH3型LEDライト(10元)にも思わず手が出てしまったものでした。

ただ韓国のKORAILがKTX(フランスSNCFのTGVタイプ)を走らせたのに続き、中国鉄路がCRH3(ドイツDBのICE3タイプ)・CRH5(イタリアFSのペンドリーノタイプ)を走らせ、新幹線と異なる種類の高速列車の代表格が、どれも東アジア内で乗車できる時代がやってくるとは、20世紀の頃には考えられなかった事です。

これらの車両に皆乗車してしまい、他に都市鉄道や機関車などで欧州勢の目ぼしい車両が韓中に続々と…なると、空を飛ぶのがダメなMAKIKYUは、辛く苦しい思いをして、我慢して空を飛んでまで欧州へ…という気にはなかなかなれず、まして欧州の物価高も踏まえると、MAKIKYUは東アジアと言う近場から離れられない日々がまだまだ続きそうと感じたものです。
(シベリア鉄道やシルクロード横断など、陸路と海路の乗継移動で欧州まで足を運べるだけの時間が確保できれば話は別ですが、さすがにそこまでの余裕はそう簡単には確保できそうになく、欧州に限らず不要不急の遊びで空を飛んで各地へ出かける気にはなれませんので…)


中国鉄路乗車記:D12次(乗車日:2012年7月10日/CRH5:ペンドリーノタイプ)

2012-07-10 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

MAKIKYUが7月に訪中した際に乗車した列車の中で、数年前まで主流を占めていた客車列車(今でも運行本数や比率はかなりのものですが…)への乗車は2回だけ、それも客車列車の座席車への乗車はT5325次だけと言う有様でした。

その代わり2007年に運行を開始し、その後急速に勢力を拡大している高速動車・動車組列車(CRH)は幾度も利用し、これらの列車に乗車する事が、7月の訪中における最大の旅行目的になったと言っても過言ではないのですが、その第1弾として乗車したのが、瀋陽→北京間を運行するD12次・動車組列車です。

D12次はCRHの中でも、高速専用線のみを走る高速動車(G~次)よりは一つ格下の種別で、在来線を200km/h程度で走行、また高速専用線を250km/h程度で運行する動車組列車(D~次)の一派です。

動車組列車の運賃は、客車列車に比べると大幅に高く設定されていますが、高速動車に比べると割安に設定されており、主に在来線区間を走る動車組列車の中には、1等座(グリーン車相当)と2等座(普通車相当:設備的には客車列車の軟座並みかそれ以上を誇ります)の価格差がさほど大きくない列車も多数存在します。

D12次をはじめとする北京~瀋陽・瀋陽北間を走る動車組列車も、1等座と2等座の価格差が比較的小さい列車の一つで、同区間での2等座は207元・日本円に相当すると約3000円程度になります。

現地の物価を考案すると、決して安い運賃設定とは言い難く、空調車が充当される同区間の快速列車寝台(客車列車・硬臥)よりも高い運賃設定ですが、それでも運行距離約700kmで200元強の運賃設定は、日本の馬鹿高い物価に慣れたMAKIKYUにとっては、激安運賃に感じます。
(瀋陽では市内公交汽車(路線バス)の運賃は、大半が非空調車ながらも1元均一、このバスの車中から目撃した食堂の招聘(求人)告知では、月給が概ね1500~1700元程度となっていました)

またこの列車の1等座は、2等座よりも41元高い248元に設定されており、この価格差も中国の物価としては決して無視できないレベルですが、日本円に換算すると、新幹線や特急列車の普通車自由席と指定席の価格差(指定席料金)程度となります。

そのためMAKIKYUは1等座が確保できるのであれば、この程度の価格差なら…と思い、第1希望をD12次の1等座にして、乗車前日に瀋陽站の乗車券売場に出向いて購入に挑むと、あっさりと第1希望の乗車券が入手でき、そこそこの本数が確保されている北京~瀋陽間であれば、乗車券の確保も比較的容易な印象を受けたものでした。
(ただ乗車当日の直前ともなれば、さすがに満席となっている確率も高いかと思いますし、北京~東北方面も瀋陽以北の長春やハルピンと
なると、現段階では列車本数も限られて確保も厄介、D12次乗車後に北京站の乗車券売場で見た残席案内でも、数日先まで満席御礼の表示が出ている状況でした)

瀋陽では一応動車組列車が発着しているとはいえ、まだ自動改札機を稼動させていない事もあってか、動車組列車の乗車券にも関わらず、自動改札機には対応していないピンク色の乗車券で発券されたものでした。

MAKIKYUが7月に訪中した際、このタイプの乗車券が発券されたのは、大連站と瀋陽站の瀋陽局管内のみ、現在徐々に自動改札機対応の新タイプ(青緑色)に切り替わっていますので、パスポート番号が入力(外国人の場合)される実名制乗車券で、動車組列車のピンク色地紋乗車券を手にする機会は、今後もあるのだろうか…と感じたものでした。

D12次乗車券を入手した後は、瀋陽市内の地鉄や市内公交汽車などを視察し、夜には瀋陽站近くのホテルに投宿して翌日の乗車に備えますが、北京・天津~瀋陽間を結ぶ動車組列車は、列車によって瀋陽站を発着する列車と、瀋陽北站を発着する列車に分かれ、両站間の移動は地鉄乗り継ぎや公交汽車(直通便あり)で30分程度を要します。

動車組列車の発着は、現段階では大半の列車が瀋陽北站となっており、特に瀋陽以北の長春方面へ直通する動車組列車は全て瀋陽北站発着ですが、運行本数が上下で異なっています。

特に瀋陽~北京経由~太原間を運行する列車は、太原行は瀋陽北站発なのに対し、太原発の列車は瀋陽站行となっていますので、乗車站間違いに要注意です。


ちなみにMAKIKYUが乗車するD12次は、瀋陽~北京間を運行する動車組列車の中では、少数派の瀋陽站発着で、瀋陽站舎は満鉄時代に建造され、東京駅によく似た風貌でも知られていますので、瀋陽を訪問する機会があれば、同站発着の列車を利用する機会がないとしても、是非一度はその姿を見ておきたいものです。

そして乗車当日、駅近くのホテルをチェックアウトして瀋陽站に向かうと、瀋陽站は候車室も仮設の様な雰囲気、そして検票(改札)を済ませて站構内に入ると、構内の至る所が工事現場の如く…と言う有様です。


站構内では無駄に遠回りを強いられ、階段を上がって降りての繰り返し、列車に乗るだけでも少々疲れる状況で、これでは幾ら早くて快適な列車を走らせても…という感があり、乗車券購入の厄介さとあわせ、中国鉄路の旅客への配慮はまだまだと感じざるを得ない気がします。

そしてようやくD12次列車が待機する一番端のホームに到着すると、8両編成の車両を2編成併結した16両編成の車両が待機し、乗車扱い中でしたので、一旦列車の最後尾へ出向いて記念撮影した後、指定された号車へと向かいますが、指定された車両は中ほどの9号車、8~9号車の間は通り抜けが出来ない状況です。


充当車両はCRH5、イタリアの高速列車「ペンドリーノ」ベースのアルストーム製高速車両を、中国内で技術移転によって製造した車両で、CRHシリーズでは唯一酷寒地対応となっている車両という事もあってか、現在東北3省(遼寧省・吉林省・黒龍江省)方面で運行している動車組列車は、基本的にこのタイプのみとなっています。

ペンドリーノは元々車体傾斜を装備し、曲線の多い線区などの運行に対応させた車両という事もあってか、車体断面はやや傾斜していますが、車体傾斜機能を省いた中国仕様では、車内空間を狭めるだけでメリットはなく、設計共通化の弊害と感じます。

車幅を拡張したCRH5ではさほど狭さを感じませんが、本家イタリアのペンドリーノは、多少圧迫感を感じるという評もある様です。

また車高が高い割には、窓の上下サイズが小さくなっており、窓下に細い青帯が入る以外は真っ白な装いですので、見た目は少々不恰好な印象があります。

車内に足を踏み入れると、JR九州で活躍するこだわりのデザイナーが手がけた一般型ワンマン電車の如く、注意喚起を兼ねて黄色1色に塗られた客扉が目を引きます。

客室に足を踏み入れると、乗車した車両は回転式リクライニングシートを装備しており、CRH全体ではこのタイプが主流派になっていますが、CRH5の中にはヨーロッパ式の一方向固定座席(座席回転不可)を装備した車両も結構な比率で存在している様で、逆向き座席が嫌いなMAKIKYUとしては、回転式リクライニングシートの方に当って良かった…と感じたものです。

指定座席に辿りつくと、列車は程なく瀋陽站を出発して北京へ向かいますが、瀋陽站を出発した直後はノロノロ運転で、瀋陽站~瀋陽北站間の路線と、瀋陽北~山海関方面高速線(客車列車などの在来列車と動車組列車が混用:最高速度200km/h)の間を短略する線路と思われる単線区間も走るなど、高速列車らしからぬ雰囲気です。

瀋陽北站方面からの複線と合流すると、列車は速度を上げ始め、瀋陽の市街地を抜けると、荒涼とした中国北部の典型と言った車窓が延々と続きます。


自席を離れ、車内の様子を視察に出向くと、9~16号車の8両中で1等座は、MAKIKYUが乗車した9号車と、最後尾の16号車の車端2両、他は2等座になっています。


座席は日本の新幹線と同様に、1等座が2+2列、2等座が2+3列となっており、個人的には2等座で瀋陽~北京間を乗り通しても、設備的には客車の軟座以上の水準に達しており、充分許容範囲という印象を受けたものです。


一部の車両には、通路が片隅に寄っており、ガラスの様な仕切りで仕切られた向かい合わせのセミコンパートメントと言った印象を受ける区画や、8両と言うさほど長くない編成ながらも、車両半室程度のブッフェが設けられているのも特徴です。

車内を視察した後は自席に戻り、東北地方の車窓とCRH5の乗り心地を堪能しますが、CRH5の1等座席は横幅こそそれなりに確保されており、座席の座り心地も決して悪くないものの、前後間隔やリクライニング角度は日本の新幹線や在来線特急の普通車レベルという印象です。


設備的にはグリーン車と言うよりは、山陽・九州新幹線直通用N700系や、山陽新幹線700系「ひかりレールスター」の普通車指定席区画(2+2列)に近い印象があり、2等座との運賃格差もさほど大きくありませんので、日本のグリーン車レベルを期待すると、少々ガッカリかもしれませんが、過大な期待を抱かず、2等座よりやや高級な空間と捉えて乗車すれば、決して悪い車両ではない気がします。

そして昼食時に差し掛かると、MAKIKYUは一応軽食類を持参して乗車した事もあってか、特に車内で販売している飲食物は購入しなかったものの、服務員が車内を巡回し、弁当の注文受付に回りますので、食料を持参せずに乗車しても空腹に耐えて…という心配はなく、また車内に給湯器の設備もありますので、方便面(カップラーメン)を持参して食べる事も出来ます。

MAKIKYUの隣に腰掛けていたビジネスマン風の乗客も、車内販売の弁当を注文していましたが、この弁当は食堂車で調製した弁当をワゴンなどで販売する客車列車とは異なり、レトルト食品を電子レンジで加熱したものとなっており、MAKIKYUが目撃した限りでは、この列車では25元と40元の2種類が存在している様でした。

街中の安食堂や露天の弁当販売を利用すれば、昼食は10元程度で済ませる事も可能な状況では、かなり強気で割高な価格設定と言う印象があり、ある程度所得水準の高い乗客が集まっている事を見越した雰囲気ですが、MAKIKYUの隣に腰掛けていた乗客以外にも、この弁当を買い求めている乗客の姿を散見し、そこそこ繁盛している様な印象を受けたものです。

ちなみにMAKIKYUが乗車したD12次は、瀋陽~北京間で途中、葫芦島北(Huludao-bei)と唐山北(Tangshan-bei)の2站に停車し、他列車も同区間で1~6站程度を千鳥停車する事で、北京や瀋陽と途中站間の利便を図っているものの、途中各駅に停車する新幹線「こだま」号の様な列車設定はなく、途中駅間での利用は余り想定していない様な印象があります。

多数の乗客が昼食を済ませた頃には、2つ目の停車駅・唐山北站に到着しますが、同駅はCRH停車駅にしては珍しく、ホームが低床となっているのが大きな特徴です。
(CRHシリーズの動車組各種は主に高床ホームに発着、特に高速専用線の各駅は、日本の新幹線の如く全て高床ホームとなっており、それ以外の停車駅もCRH停車駅の大半は高床ホームになっています)


車両も新幹線E2系ベースのCRH2などは、ベース車と同様に高床ホームでの乗降しか想定していない構造になっていますが、CRH5だけは客車と同様に乗降扉付近にステップを装備し、ステップを塞ぐ昇降式のフタ(?)が設けられ、低床ホームでの乗降に対応しているのも大きな特徴です。

そして低床ホームの唐山北站を発車すると、1時間程で北京の市街地に差し掛かり、程なく終点の北京站に到着、7月の訪中では初の動車組列車乗車となったCRH5・D12次の5時間弱の旅も終わりを迎え、MAKIKYUが乗車したCRH5は折り返し吉林行として、1時間も経たずに東北へ折り返し運行となります。

延々と乗り続ける事が当り前、そして終着地に着いてからの折り返し整備にも結構な時間を要する事が多い客車列車とは大きく異なる運行形態は、著しい発展を遂げる激動の中国を象徴している様にも感じられ、北京~瀋陽間約700kmを5時間弱で結ぶ動車組列車が頻繁に運行される現状も、数年前に特快(客車列車)の硬座で両都市間を移動した事もある身としては、画期的に感じたものでした。
(現在北京南~上海虹橋間約1400kmを、約5時間で結ぶ高速動車が頻発している事を考えると、瀋陽へのアクセスはまだ不便と言わざるを得ないのかもしれませんが…)

また主に東北方面で運用されるCRH5も、運行開始当初に初期故障が頻発するなど、余り良い評判を聞いておらず、デザイン的にも新幹線(CRH2)やICE(CRH3)などに比べると…という印象がありましたので、余り期待していなかったのですが、同じアルストームが絡み、狭い車内空間や、方向転換・回転不能の座席などで不評を買っている韓国の高速列車・KTX(TGVベースの動力集中方式車両)などに比べると、はるかに良好な居住性を誇る車両と感じたものでした。

酷寒地対応だけでなく、CRHシリーズの動車組で唯一低床ホームにも対応するなど、CRH5は意外と有用な車両と感じ、東アジアの島国・日本に住むMAKIKYUとしては、遥か遠くのイタリア(列車と船を乗り継いで行くと、一体何日かかるのやら…)まではるばる足を運ばなくても、その気になれば鉄路や海路の乗り継ぎでもさほど苦労せず、足を運べる中国でペンドリーノに乗車できるという点でも、注目の車両と感じたものです。

CRH5は高速動車としての活躍こそありませんが、その気になればベース車のイタリア・ペンドリーノの如く車体傾斜装置を装備させ、山岳線区におけるスピードアップなどにも活用できる車両かと思いますし、CRH2→CRH380AやCRH3→CRH380Bの如く、今後CRH5にも進化系車両が登場するのか否かも気になる所です。


三宅村営バス(1)~主力のトップドア中型車

2012-07-09 | バス[首都圏]

先月MAKIKYUが三宅島へ足を運んだ際には、島内の移動では唯一の公共交通機関にもなっている三宅村営バスを利用したものでした。

三宅村営バスは過疎地の公営交通だけあって、路線バスの運行本数も島内を1周する循環路線が左・右廻り共に各5本と+α(早朝に入港する定期船に接続する便で、当日の入港地によって時刻等が変動します)のみとなっていますが、それでも過疎地自治体バスの特例とも言える白ナンバー(自家用登録)ではなく、緑ナンバー(営業用登録)の車両による運行となっています。

現在の島の中心部にある雄山の活動は活発で、火山ガスの放出が続く土地柄も影響してか、車両の劣化・入れ替えが激しい様で、バスは貸切運行や緊急時の避難目的にも用いられるため、事業規模の割には車両台数を多く抱えているのも大きな特徴です。

 
その中でもMAKIKYUが三宅島を訪問した際には、フリー乗車券(2日間有効で1000円・車内で購入可能です)を利用し、村営バスを何度か利用したのですが、MAKIKYUが三宅島に滞在した2日間の間に、路線バスとして走っていたのは、2台の三菱製中型車で、この2台ばかりに何度も当たる状況でした。


2台は装いこそ異なるものの、登録番号も連続しており、トップドアで座席がズラリと並ぶ自家用仕様、都内では島嶼部などを除くと殆どの地域で登録不可能な平成7年(1995年)式ですので、何処かの自家用バスを中古で導入したのでは…という雰囲気ですが、三宅島におけるバス利用ニーズには結構適した車両の様で、稼働率は結構高い様です。


島内の路線バス自体が限られている事もあり、車両に行き先や経路を示さず、口頭での案内としている事や、車内放送類の設備を設けていない事(信用方式運賃前払い(多区間)で、乗車時に行先を申告する方式ですので、乗り過ごしの心配はまずありません)、運賃箱も両替機能などのない簡素なものとなっている点などは、如何にも過疎地の離島を走るバスならではと感じます。
(三宅村が所属する都道府県が運営する路線バスで、同じ運行形態を取ったとすれば、誤乗の続出などで大変な事になるかと思います)


また三宅島にも多数が生息し、国の天然記念物にもなっている「アカコッコ」のイラストが、車外に貼られているのも大きな特徴となっています。
(このアカコッコは雄の成鳥の様で、MAKIKYUも三宅島内で実際にアカコッコの姿を見ていますが、腹の赤い部分は個体差もあるものの、やや強調し過ぎの感があります)

三宅村営バスでは、他にも幾種もの車両が活躍しており、近日中に別記事で追って取り上げたいと思います。


中国鉄路乗車記:T5325次(乗車日:2012年7月8日/RZ25Z型客車他)

2012-07-08 | 鉄道[中華人民共和国]

(この記事は記事投稿日を列車乗車日に合わせた過去ログ投稿です)

7月にMAKIKYUは5年ぶりに中華人民共和国(中国)へ足を運ぶ機会がありましたが、その際には高速鉄道(CRH)をはじめ、機関車牽引による客車列車や、都市内を走る地鉄など、様々な鉄道を利用したものでした。

その中でも中国鉄路(国鉄)の列車で、7月にMAKIKYUが中国を訪問した際に最初に乗車した列車がT5235次でした。


T5325次は遼寧省の2大都市、大連(Dalian)と瀋陽(Shenyang)を結ぶ特快列車3往復の1本で、大連站を夕方18時台に出発し、およそ4時間程で瀋陽站に到着、そして同市内にある瀋陽北站が終着となる列車で、大連~瀋陽間はノンストップ運転となりますので、現在の瀋大間では最速列車の部類に入ります。

同区間ではこの列車の他にも、快速列車や瀋陽以遠の都市まで運行する長距離列車の設定もあり、長距離列車の中には運賃の安い非空調車が充当される列車もあり、また大連站前からは瀋陽行長途汽車(高速バス)も発着していますので、所要時間や設備・運賃の面では様々な選択肢が存在します。

その中でもMAKIKYUがT5325次を選んだ理由としては、韓国・仁川(Incheon)からのフェリー(大仁フェリー)で大連に入国したMAKIKYUが、大連での滞在時間を確保しつつ、当日中に大連を離れて瀋陽か、或いは瀋陽以遠の都市へ足を運べれば…と考えていたものの、瀋陽以遠へ向かう列車は硬座(無座を含む)以外は殆ど「無」の状態だったにも関わらず、比較的乗車券の買い易いこの列車は残席が多数あったからです。


大連では港に到着後、大仁フェリーが仕立てた無料シャトルバス(他に路線バスもあります)で直接大連駅に向かい、乗車券売り場で乗車券を購入していますが、乗車券売り場は結構な行列が出来ておりかなり騒がしいものです。

幾ら東北とはいえ暑い真夏の最中、空調も入らない蒸し暑い売り場(ガラスで仕切られた服務員のいる空間は、空調が入り快適そうなのですが…)に平然と乗車券購入で旅客を並ばせ、おまけに並んでいる客がいるにも関わらず、時折勝手に窓口を平然と閉じてしまう服務員もいるなど、乗車券購入だけでもウンザリして鉄道利用はもう2度と…と感じる人間も出そうな有様は、中国へ来た事を強く実感させられ、日韓の快適さとは程遠い世界です。

この乗車券売り場では電光表示による乗車券残数の案内も行われ、これは中国語(=漢字)ですので、簡字体といえども中国語が全くダメなMAKIKYUでも容易に判読できるのですが、夕方の特快どころか昼頃の瀋陽北行特快でもまだ残席があり、他に快速(空調車・軟座なし)にも空席がある状況でした。

とはいえ乗車券売り場は結構込み合う上に、発車直前になると売り切れで希望の乗車券が購入できない、場合によっては無座すら売り切れで列車自体に乗れないという事もあり得ますので、予定が決まっている様なら早めに動くに越した事はありません。

そして行列が少しずつ前に進み、MAKIKYUが乗車券を購入する番になると、中国語会話が全く出来ないMAKIKYUは、予め用意しておいた漢字で記したメモを服務員に手渡して乗車券購入となりますが、中国では近年火車票(列車乗車券)が実名制になった事もあり、身分証の提示を要求されます。

そこで100元札と共にパスポートを渡し、ようやく乗車券が発券されるのですが、大連はまだCRHも通っておらず、自動改札機も運用していない事から、出てきたのは以前からお馴染みのピンク色地紋の非磁気化券、そして入力ミスで数字を一つ間違えたパスポート番号(中国人民の場合は、身分証番号だけでなく旅客氏名まで印字されます)が印字されている有様でした。
(大連站では没問題でしたが、CRHなどでは検票(改札)時に火車票と身分証の照合を行っている場合もありますので要注意です)

無事T5235次の火車票を入手した後は、夕方まで市内交通の視察に出向き、18時頃再び大連站に戻ってきて列車に乗車するのですが、站に足を踏み入れるとまず金属探知機等によるセキュリティチェック、そして検票口は列車毎に分かれ、発車時間が近づいてようやくホームへ…といった状況は相変わらずで、検票開始と共に待ち構えていた乗客が次々と站台(ホーム)に駆け下りていきます。


ホームに足を踏み入れると、東北地方は中国の中で比較的冷涼な気候である事や、所得水準も決して…という状況もあってか、緑色に黄帯の非空調車(通称:緑皮車)の姿が幾つも見受けられます。

中国鉄路通の方からは、「緑皮車が走っているなら、是非選んで…」という声も出そうですが、MAKIKYUが乗車する特快は白と青に赤帯の装い、そして隣に停車している快速は空調車と言う事もあって、グレーとオレンジの装いとなっており、どちらが快適な鉄道旅行を堪能できるかは、言うまでもない事です。

ホームに下りると、MAKIKYUが持っている乗車券で指定された座席は13号車とかなり後ろの方ですが、発車まで時間がありますので、一旦最前部まで足を伸ばし、牽引する機関車の撮影に出向きます。


牽引機は東北地方ではよく見かけるSS9型で、MAKIKYUが7年前に初めて中国鉄路を利用し、同区間の特快に乗車した時はSS9G型でしたので、牽引機という点では以前よりやや格落ちです。
(SS9型とSS9G型は装いこそ大きく異なるものの、スペック的には大差なく、またSS9型は東北方面以外では余り見かけない機関車ですので、決して悪くはないのですが…)

機関車の撮影を済ませた後は、連結されている客車を視察しながら13号車へと向かいますが、以前同区間の特快に乗車した時に連結されていた双層車(2階建て車両)の姿こそなく、客車の装いは特快色に統一されていますので、見た目は比較的整った印象を受けます。

しかしながら機関車の後ろに連結された客車は硬臥(3段寝台)、その後ろには硬座が連結され、8号車~13号車が軟座、そして14号車には軟臥が連結されているなど、中国にしては短距離列車だけあって食堂車の連結こそないものの、構成車種は非常に豊富なのが大きな特徴です。


特にMAKIKYUが乗車した13号車を含む6両の軟座車は、8~11号車がRZ25K、12・13号車がRZ25Zと形式が異なり、RZ25Zはやや車高が低いため、RZ25Kと隣り合う部分を見ると違いがはっきりと分かる程です。


RZ25Kの中には「RZ25K 111111」という凄い番号の客車も連結されており、これは狙っても簡単に捕獲できる車両ではないと思いますので、注目の存在と言えます。


13号車の指定座席へ向かうと既に先客が居り、座席を変わって欲しいという仕草と共に、後ろの座席が指定された乗車券を見せられ、MAKIKYUは一つ後ろの座席に移ったのですが、どちらの座席も進行方向向きとはいえ、指定座席は窓柱に邪魔されて車窓が楽しめない上に通路側、それに対し後ろの座席は車端部になるものの、車窓を存分に堪能できる窓側でしたので、こちらも当たり席に変えてもらってラッキーという心境です。


座席に腰掛けると程なく列車は発車、客車列車で機関車から随分離れた後部車両だけあって静かに発車する様は、動力分散方式の車両ばかりが活躍する日本の鉄道とは大きく異なり、広い線路幅(標準軌1435mm)に大柄の客車、そして駅によっては高さの低いホームなども、大陸の鉄道ならではの雰囲気が漂います。

列車は暫く大連の市街地を走り、20分程すると減速し、随分派手に工事を行っている箇所に差し掛かりますが、ここは現在建設中の大連北站で、瀋陽方面への高速線が開業した暁には、この站が起点となります。


街外れの立地は随分不便な印象が否めず、地鉄(建設中)などでのアクセスが整備されない限り、中心部の好立地にある大連站に比べて…と感じます。

日本的に考えればホームを若干増設し、折り返し時間の短縮や引き上げ線整備などで対応する事になるかと思いますが、中国ではその様な考えは通用せず、広大な用地を要する高速鉄道站を各都市の郊外に次々と開業させており、まとまった用地の確保を考えると、空港の如く中心部から離れた立地に高速鉄道駅が存在するのは、当たり前の状況になっています。

建設中の大連北站を過ぎると、所々で高架線となっている高速新線の姿を目撃する事ができ、日本のJR在来線車中から、新幹線の高架線を眺めている様な雰囲気ですが、架線も張られている状況は、開業もそう遠くないと感じます。

大連北站を出て暫く走ると金州に差し掛かり、金州站では大連站を少し前に出発した緑皮車の普快を通過追い抜きしますが、この時点で既に19時を過ぎており、金州站を過ぎて暫くすると日が暮れて、車窓を楽しむ事も厳しくなります。

あとは瀋陽まで延々と闇夜を掛け抜け、時折通過する途中站やその周辺の市街地が見える程度となります。

日が暮れた辺りで夕食を摂りますが、この列車には食堂車の類は連結されておらず、車内販売も菓子類や方便面(カップラーメン)、飲料水程度で弁当類の販売すら見られない状況ですので、持参の方便面などで夕食とします。

幾ら食堂車の連結されない短距離列車(400kmは日本の感覚だと、結構長い部類に入りますが…)とは言えども、余程のローカル列車(普慢など)でない限り、中国鉄路では給湯設備が装備されており、高速列車CRHでも給湯設備が存在する程ですので、MAKIKYU以外にも車内で方便面を食す乗客の姿は至る所で見受けられ、また茶葉を入れた茶筒にお湯を注ぎ、お茶を飲む乗客の姿もしばしばです。

夕食が済んだ後は、他車両の様子を覗きに行きますが、後ろの軟臥車は服務員用の控車になっているのか、鍵がかかっていて立ち入る事はできず、前の方に連結されている軟座車を視察します。


MAKIKYUが乗車したT5325次では、各車両車端部にLEDによる文字表示装置が装備されており、これを有効に活用すれば、中国語の会話や聞き取りが出来ないMAKIKYUの様な外国人には非常に有用で、「下一站 沈陽 Next Shenyang」などと表示して欲しいものですが、プログラムを設定していないのか、まともに活用しているのは号車表示部分だけで、あとはずっと「祝大家旅途愉快!」という表示が出たままです。

こんな表示を見ても全然愉快ではありませんので、LED表示器を使う気がないのであれば、無表示状態にでもしておいた方がまだマシと感じます。

 
軟座車は外観や形式だけでなく、車内の座席も2+2列のボックス席となっている車両と、一方向きリクライニングシート車の2種類が存在しています。

YZ25Zでも隣の12号車はボックス席、8~11号車のYZ25Kも11号車だけがリクライニングシート車となっており、リクライニングシートも集団見合い式(真ん中より前の方が逆向き)で一方向きに固定されています。
(リクライニングシートは固定座席と言うよりも、回転式座席の回転ペダルを撤去し、一方向きに固定した様な雰囲気です)

各車両で定員も異なるなど、軟座車で同じ運賃を支払っても、当り外れがかなり激しいのがT5325次軟座車の大きな特徴で、天井周りなどの内装も客車によって異なるなど、軟座車の見本市化しています。

中国鉄路では希望座席はおろか、2人で利用する際に隣り合った席を指定する事や、窓側・通路側の座席を選ぶ事、進行方向座席を選択する事すら出来ませんし、早めに乗車券を購入したら当り席が割り当てられる訳でもありませんので、どの号車・座席に当るかは完全に運次第です。

7年前にMAKIKYUが大連~瀋陽北間の特快軟座に乗車した際には、定員96名のボックス席、硬座の横幅が広くなって肘掛が付いた程度と言う大ハズレ席に当り、「一等硬座」とでも呼びたい状況でした。

こんな軟座に乗る位ならば、運賃の安い硬座でも…と感じた程で、設備的には日本の普通列車並みかそれ以下という印象を受けたものでしたが、今回乗車した13号車のRZ25Z 110653はリクライニングシートで、ボックス席車よりも定員は少なく、その分シートピッチが広くなっていますので、当たり車両に乗車できて良かったと感じたものです。

乗車区画も進行方向・窓側と、個人的に当りと感じる場所でしたので、そこそこ快適に過ごせ、日本の新幹線車両そのものの座席を装備したCRH2や、CRH2とほぼ同レベルの座席を装備した他のCRH各車種には及ばないものの、中国鉄路が運行する客車列車軟座の中では、何度か乗車した中で最高レベルだったと感じたものです。

大連~瀋陽(瀋陽北)間では、両都市間を結ぶ特快や快速だけでも複数列車が設定され、城際列車がCRH主体となっている今日では、客車列車による城際列車が手頃に楽しめるという点でも注目です。

とはいえ近い将来大連北站が開業し、瀋陽・ハルピン方面への高速線経由CRHが走り始める事が予想されますので、この列車の活躍もそう長くないと思われ、その暁には「大連から瀋陽まで、特快で4時間かけていった」と思い出話を語る事になりそうです。

空を飛ぶ(=航空機に搭乗する)のがダメなMAKIKYUにとっては、遼寧省もかなり遠い土地で、再び訪問する機会に恵まれるのかどうか…という所ですが、発展著しい中国の事ですので、もし再び瀋大間を走る列車に乗車する機会があれば、今度はどの様な列車に乗るのだろうか…と感じたものでした。


東海汽船のフラッグシップ「さるびあ丸」(2)~多様な船内設備

2012-07-07 | 船舶[日本国内]

先日「MAKIKYUのページ」で取り上げた東海汽船のフラッグシップ「さるびあ丸」ですが、今日はその続編として、船内の様子を取り上げたいと思います。

さるびあ丸はジェット船「セブンアイランド」とは異なり、時速30km台の速度で航行する貨客船ですので、足は決して速いとは言い難いもので、船舶が錯綜する浦賀水道での減速航行(船長50m以上の大型船が対象となり、全長が30mに満たないジェット船「セブンアイランド」はこの対象から免れています)も強いられるとなれば尚更です。
(それでももう1艘の大型客船「かめりあ丸」に比べると、エンジン出力の関係などで、若干足が速い様ですが…)

充当航路もそれなりの乗船時間となる事が多いですが、その代わり船体が大柄な事もあってか、船内空間は「セブンアイランド」とは比べ物にならない程広く、設備も充実しており、運賃が最も安い2等席を利用した場合でも、座席自体のグレードや空間の広さは、「セブンアイランド」とは比べ物にならない程です。

「さるびあ丸」などの東海汽船が運航する大型客船の2等席は、長距離航路では一般的なカーペット敷きの大部屋だけでなく、リクライニングシートの椅子席も設けられているのが大きな特徴です。

一応全席指定制ですので、乗船券購入時にどちらか任意の座席を選ぶ事になるのですが、どちらも運賃は同額で、MAKIKYUはカーペット敷きの方を選んだのですが、カーペット敷きの2等席はさるびあ丸客席の中では最下層のフロアに位置しており、エンジンに近い区画では結構な騒音と振動を感じます。


船の等級による料金格差は空間の広さや設備だけでなく、居住性の良い空間を充当しているか否かも関連している事を強く実感させられるものです。

指定された区画は余り居住性の良い所ではなかったものの、三八航路(東京~三宅島~御蔵島~八丈島)は、昼行となる東京へ向かう便の方が乗船率が悪いと言われている上に、閑散期で船自体の収容力もかなりのものですので、2等の他座席にも空席が多数あり、他の2等席を利用したり、デッキへ出て外の景色を堪能したりしたものでした。

そのため2等の椅子席も利用したのですが、こちらは鉄道車両の様な回転機構は備えておらず、入出港時以外の進行方向が一定している事も考えれば当然と言えますが、リクライニングの角度は結構あり、足置きも装備しているなど、JRグリーン車や3列席の夜間高速バス並みのグレードを誇っています。


1人づつ独立した座席になっていない事や、背もたれがフラットな形状になっている事などを見ると、東京発の航路は夜行運航となり、この座席で夜を越す事も多い割には…と感じてしまう面もあり、昼行利用時も窓際座席の窓が締切となっており、外の景色を楽しめないのもマイナス点です。
(2等カーペット敷き区画は、椅子席よりも下のフロアにありますので、当然ながらこの区画から外の景色を楽しむ事は出来ません)

この様に2等席利用となると、欠点が幾つか伺えてしまう「さるびあ丸」ですが、ジェット船「セブンアイランド」の様なモノクラスではなく、様々な利用客の予算やニーズに対応するために、多様な設備を備えているのは大きなウリで、2等寝台(東海汽船では特2等と呼称)の様子も伺えましたが、こちらは三八航路の東京行きが昼行となる事から、利用客の姿は余り見受けられないものでした。


ただカーテンで仕切る事ができ、横になれるプライベートな空間を確保出来るという事は、夜行での長時間航海ではかなり価値があるかと思いますので、MAKIKYUはまだ未踏の地ですが、八丈島へ足を運ぶ機会があるならば、是非さるびあ丸か、同等グレードを誇る東海汽船の大型客船の特2等席を利用出来れば…と感じたものでした。


また客席空間だけでなく、食堂(レストラン)や展望デッキが設置されているなど、付帯設備面での充実振りもジェット船「セブンアイランド」とは比べ物にならないウリで、今回の乗船で食堂などは利用しなかったものの、この手の船舶では価格上乗せを行っている事もある自動販売機も、飲料水に関しては市価同等の価格に設定されていた辺りは良心的と感じたものです。


展望デッキも、時化やうねりで大きく揺れる時はとても…と言う場所ですが、自動車を自走で船内に乗り込むフェリーでは、最後尾にこの様な空間を設けている事は余りないかと思いますので、フェリーではない貨客船だからこその空間とも言え、最後尾が丸みを帯びた外見と共に、「さるびあ丸」の大きな特徴と感じたものでした。

国際航路などに比べれば、設備的には物足りない面もありますが、設備的にはそこそこ充実しており、「さるびあ丸」は長時間の乗船を前提にした船ならでは…と感じたものです。

時間的に余裕があり、ゆっくりと船旅を楽しみたいという向きには、ジェット船よりも「さるびあ丸」などの大型客船の方がおススメで、ニーズに応じて両者を選択利用できると…と感じますが、伊豆七島への航路はどちらか一方しか利用できない事も多いのは難点です。


特に大型客船は乗船時間が長くなり、船に弱い方には少々厳しいかもしれませんので、船舶の構造上高速での航行が困難なのは致し方ないのかもしれませんが、東京湾の入口に近い久里浜港か、片航路(東京~大島~神津島)便が一部運航日で乗船可能となっている横浜港などに寄港させる事(写真は船内設置の現在位置を示すモニターで、この状態から東京(竹芝桟橋)到着までに、2時間以上を要しています)で、本土~島嶼部の移動時間短縮を図るか、三八航路を大島に寄港させ、ジェット船に乗り換える事が出来る様になれば…と感じたものでした。


東海汽船のフラッグシップ「さるびあ丸」(1)~フェリーではない貨客船だけあって…

2012-07-05 | 船舶[日本国内]

先日「MAKIKYUのページ」では、東海汽船が三宅島へ試験就航させた高速船(ジェットフォイル)「セブンアイランド」に関して取り上げ、MAKIKYUが先月三宅島へ出向いた際には、往復共に試験就航のジェットフォイルに乗船する予定でした。

しかしながらMAKIKYUが三宅島から首都圏へ帰島する日は、天候こそ決して悪くなかったものの、島内を走る村営バスで伊ヶ谷港へ向かおうとしたら、運転士氏が電話でジェット船就航に関するやり取りをしており、その旨を尋ねたら「欠航」との事でした。

運転士氏からは「飛行機は?」とも尋ねられたのですが、日頃首都圏に身を置きながらも、韓国へ足を運ぶ際にもJR九州高速船「BEETLE」を愛用する程空を飛ぶのがダメなMAKIKYUとしては、幾ら所要時間が短いとは言っても、船で充分移動可能な所で、問題多発のボンバルディア製プロペラ機に搭乗するのは論外です。
(おまけに運賃も、東海汽船より大幅に割高と言うオマケ付きです)

飛行機がダメな事を運転士氏に伝えると、定期船に乗船する場合は、錆が浜(阿古)港には必ず東海汽船の係員が居り、朝の定期船(東京発八丈島行)は錆が浜港に入港している事から、東海汽船の事は詳しくは分からないが、今日の天候からすると恐らく錆が浜港出航との事でした。
(ジェット船が試験就航で予定通り運航した場合は、ジェット船とその日の午後に三宅島を出航する東京行定期船の双方が、伊ヶ谷港発着となる様です)

ただ「三池港出航となる可能性はまずないと思うが、今朝の貨物船は伊ヶ谷港に入港したので、もしかしたら伊ヶ谷港かもしれない。その場合でも錆が浜港周辺に居れば、比較的容易に移動できる」との事でしたので、村営バスで錆が浜港まで移動したら、定期船はやはり錆が浜から出航する旨の掲示が出ており、係員に乗船券の払戻・変更に関して尋ねると、乗船券発券時間が限られている(12時30分~14時)ので、発券時間になってから再度足を運んで欲しいとの事でした。

そのため現在の三宅島における中心地域ともなっている錆が浜港周辺(阿古地区)で食事などを済ませ、再度錆が浜港に足を運ぶと、ジェット船の乗船券無手数料払戻と、定期船の乗船券発券が行われ、東海汽船HPのジェット船試験就航案内に記されていた「復路欠航時に三宅島にいらしゃる場合は、三宅島14:20発大型客船(20:30東京竹芝着)のご利用となります。(2等7020円~をお求めください)」という事態になってしまいました。

そのためジェット船に乗船し、大島寄港時における島内プチ観光堪能(ジェット船は大島到着後、熱海まで往復して大島へ戻り、その後館山・東京へ向かうダイヤでした)や、館山港の初利用計画は頓挫する事になったのですが、往路欠航で三宅島に足を運べない事に比べれば…といった所で、想定範囲内の予定変更です。

時間的余裕もありましたので、ジェット船とは趣が異なる大型客船に乗船するのも一つの楽しみで、2等利用では運賃も安くなるというオマケ付き(房総半島の館山周辺在住者にとっては、かなり迷惑な話ですが…)ですので、計画外の大型客船乗船となりましたが、MAKIKYUが東海汽船の大型客船に乗船するのは、今回が初めてでした。

現在東海汽船で運航している大型客船(貨客船)は、さるびあ丸(通称さる)とかめりあ丸(通称かめ)の2艘があり、後者の方は結構古い船だけあって置き換えが確定しています。

スペック的にも新しいさるびあ丸(それでも既に就航から20年経つのですが…)の方が優れており、利用客からの評判もこちらの方が良好の様です。
(どちらの船が充当された場合でも、同時期の同じ等級では同一運賃となります)


三宅島~八丈島方面への航路(通称三八航路)は、時期によって使用船舶が入れ替わるのですが、MAKIKYUの乗船日は大型客船による大島~神津島航路(通称片航路)が運休(ジェット船運航はあり)となっており、大型客船が1艘しか稼動していない事もあり、東海汽船のフラッグシップ的存在と言える「さるびあ丸」での運航でした。


さるびあ丸は全長が約120m、総重量も5000t近い大型船で、ジェット船などと並ぶと、その差は歴然としています。


離島航路の大型客船では珍しく、フェリーではない貨客船(貨物は船体前方にコンテナ収納スペースがあり、車が直接船内へ乗り入れる構造にはなっていませんので、車両航走は行っていません)という事もあり、船体後部が丸みを帯びた展望スペースの様になっているのは、この船の大きな特徴と言えます。
(かめりあ丸も外見は類似していますが、製造時期などが異なる事もあり、2艘の写真を見比べると、幾つもの差異が見受けられます)


そしてさるびあ丸に乗り込むと、程なく三宅島(錆が浜港)を出航となり、次に訪問する機会は何時なのだろうか…と感じたものですが、往復で違う港を利用できたのは、予定変更がもたらした予想外の収穫、また訪問する機会があれば、今度は火山ガスの影響で枯れた痛々しい姿の木々が元の姿を取り戻し、活発な火山活動を続けている雄山(現在山頂周辺は火山ガスが大量に放出されており、立入禁止区域となっています)の活動が沈静化している事を願いたいものです。

三宅島をして暫くすると、MAKIKYUのさるびあ丸乗船日はジェット船が欠航となる様な海況でしたので、時化とうねりで船体は大きく揺れ、MAKIKYUは船酔いこそ免れたものの、新島の東方辺りを航行する際の揺れは相当なものでした。
(三八航路では八丈島近海もかなり揺れる模様で、船内の係員から伺った話でも、「今日八丈島周辺は結構揺れた」「凪の時でも揺れる」との事でした)

出航から2時間程度で大島周辺まで来ると揺れも大分収まり、その後東京湾に差し掛かると、殆ど揺れずに快適なクルージングを堪能できたものでした。


ただ18時頃には既に3本の煙突が特徴の久里浜沖を通るものの、東京湾は船舶が錯綜しており、浦賀水道では全長50m以上の大型船は減速航行が義務付けられているという案内放送が流れ、この辺りで下船できれば…とも感じてしまいます。


減速航行の影響もあり、久里浜沖から東京港(竹芝桟橋)まで2時間以上を要するとなると、遅い事で定評ある京急の普通車(各駅停車)に浦賀~品川間を乗り通す方がまだ早く(浦賀~品川間を普通車で乗り通す乗客は、かなり稀かと思います)、レインボーブリッジの下を通り、ほぼ定刻で竹芝桟橋に到着する頃には外は真っ暗という有様でしたので、クルーズ気分で乗船する分には良いかと思いますが、この様な運航形態も、三宅島を「近くて遠い島」にしている気がします。

東海汽船では片航路の大型客船が時期限定で、一部運航日に横浜寄港を行っている事や、ジェット船が久里浜寄港を行っている事等を踏まえると、三八航路も久里浜か横浜に寄港すれば…と感じたものでした。

さるびあ丸船内の様子に関しては、近日中に続編記事で取り上げたいと思います。


三宅島に試験就航した「セブンアイランド」~片道無料モニターも…

2012-07-03 | 船舶[日本国内]

今月18日と25~27日には、日頃東海汽船が大島などへ運航している高速船(ジェットフォイル)「セブンアイランド」が、試験的に三宅島まで運航しており、「MAKIKYUのページ」をご覧の皆様方の中にも、ご存知の方が居られるかと思います。

三宅島までの高速船試験就航は、昨年も行われており、今年で2回目になりますが、三宅島は東京から180km程度しか離れていないにも関わらず、通常1日1便運航の東京(竹芝)~八丈島間を運航する大型客船では6時間以上を要し、東京発は夜行運航となっています。

1日1便運航している航空機(ANA)も、トラブル続出で悪評名高いボンバルディア製プロペラ機である上に、火山ガスの影響で空港閉鎖となる事も多く、欠航率が高く使い勝手が悪い事でも知られています。
(空を飛ぶのがダメなMAKIKYUの事ですので、ジェット機で欠航率が低いとしても、余程の事がない限り利用する気にはなれませんが…)

そのため三宅島は、距離の割には非常に足を伸ばし難い「近くて遠い島」になってしまっているのが現状で、大島やその先の新島・神津島方面への運航実績がある高速船「セブンアイランド」が三宅島に就航すれば、所要時間も大型客船の半分程度で済み、非常にアクセスしやすくなります。

 
試験運航は定期運航に向けたデータ収集的要素が大きいかと思いますが、この試験運航では三宅島行きの無料モニター(東京発片道のみで途中館山からの乗船も可・復路は自己負担)をHPでも募集しており、MAKIKYUもこのモニターに応募し、晴れてモニターに当選して東海汽船から通知が送られて来たものでした。
(MAKIKYUがこの手の応募に当選したのは、過去に交通系試乗では九州新幹線新八代~鹿児島中央間開業前の片道試乗当選(熊本~新八代間接続列車込み)があり、他には某大手私鉄の卓上カレンダー当選や、某大手飲料メーカーが主催する有名アーティストライブのペアチケット当選がありますが、どれも生活圏の首都圏とは異なる地域に関連したものばかりです)

HP無料モニター当選者は事前に乗船希望日こそ選べるものの、「往路欠航時は、東京・館山~大島までの無料モニターとなります」「復路欠航時に三宅島にいらっしゃる場合は、三宅島14:20発大型客船(20:30東京竹芝着)のご利用となります(2等7020円~をお求めください)」という条件付になっていました。

そのため往路で欠航となってしまい、大島で足止めされて三宅島に行けなくなる事(現在大島から三宅島へ直接向かう定期航路は存在しておらず、一旦東京へ戻るか、1日1便だけで定員が少なく、運賃も高額なヘリコプターを利用する事になり、非常に不便です)だけは…と思っていたのですが、MAKIKYUが往路で乗船した25日は、天候こそ決して良くはないものの、無事三宅島まで就航したものでした。

HP無料モニターとしての乗船だけあって、マル優印の押された¥0乗船券と共に、モニターアンケートの用紙(両面)が渡され、下船時までにご協力を…との事(アンケート用紙は船の出口付近にあるアンケート回収箱へ投函)で、この他に大島出航後も各乗客に対し、三宅島試験就航に関するアンケート依頼がありましたので、合計2枚のアンケートを船内で書く事になったものでした。


乗船日は途中寄港地の大島・岡田(Okata)港や目的地の三宅島・伊ヶ谷(Igaya)港では、「海況不良のため船が揺れますので…」という案内があり、艇走体制では船体がかなり大きく揺れていた他、翼走体制時も大島を過ぎてからはかなり大きく揺れる状況でした。
(写真は三宅島到着前の船内から撮影した、海上と三宅島の様子です)

条件付運航が常態化している利島が、セブンアイランドの「欠航確定」という、海上は時化とうねりで荒れている状況でしたので、アンケートを書いている途中で少々船酔い状態になり、下船後にも回答できる体制であれば…と感じたものでした。

アンケートの内容は、伊豆諸島や三宅島への訪問回数や乗船動機、、運賃や時刻設定、その他要望についてなどがあり、MAKIKYUとしては、「無料モニターとして乗船したが、定価で1万円を越える運賃は…」という印象がありますので、運賃は「高い」の項目を選んだものでした。

大島航路の一部で実施している久里浜寄港か、熱海発着(これらの航路と大島で相互接続を確保し、通し運賃で乗船可能な形態でも可)にして乗船時間・運賃両面でもう少し手頃感が出れば悪くないのでは…と感じたもので、この旨もアンケートにも記したものです。

ちなみに東海汽船の高速船「セブンアイランド」は「愛」「夢」「虹」というそれぞれ異なった名称と装いの3艘があり、MAKIKYUが5月に同社の高速船を利用して伊豆大島へ出向いた際には、往復共に「夢」に当たりましたので、出来れば他2艘のどちらかに…と思っていました。


どの船に当たるかは当日の配船状況次第で、東海汽船HPの運航状況を見ても、大型客船の様に船舶名が記される事もありませんので、実際に港へ足を運ばなければ…という状況ですが、出航地の竹芝桟橋へ足を運ぶと、今回の三宅島行きに充当されるのは「セブンアイランド 愛」で、ほぼ同時刻に東京(竹芝)を出航する神津島行きは「セブンアイランド 虹」が充当される旨が出ていました。


竹芝で乗船当日にモニター当選の無料引換証から引き換えた乗船券(乗船時と下船時に回収され、手元には残りません)にも「1240便愛」と記されていましたが、復路分は翌日で配船が確定しないのか、単に「ジェット船」とだけ記されている有様でした。
(実際には「愛」が充当された模様ですが、この便は大島~三宅島間が欠航になってしまい、残念ながら復路乗船券は無手数料払戻となりました)


5月に乗船した「セブンアイランド 夢」でなかったのは、少々嬉しいものでしたが、船内設備などは「愛」も「夢」と大差なく感じたもので、乗船時間も1時間程度の久里浜や熱海から大島へ向かう便なら問題ないレベルとは言えども、乗船時間がJR九州の国際航路「BEETLE」の福岡~釜山間(約3時間)を越える程(セブンアイランドの三宅島試験運航は、館山・大島と途中2箇所の寄港地があり、運航距離はBEETLEの福岡~釜山航路より短いです)にも関わらず、決して広いとは言い難いリクライニングなしの座席しか選択肢がないのは、本格運航となれば少々問題ありと感じます。


「セブンアイランド」の定期運航便では、寄港地到着前に「われは海の子」のメロディーに続いて案内放送が流れ、三宅島行きでも館山と大島到着時にはこの放送が流れたのですが、三宅島到着時にこの放送が流れなかったのも、試験就航ならではと感じたものでした。
(写真は通常ジェットフォイルが姿を見せる機会が限られる三宅島・伊ヶ谷港を出航する「セブンアイランド 愛」です)


また到着地となった三宅島の伊ヶ谷港は、漁港と僅かな集落以外には何もないと言っても過言ではなく、食料調達や島内バスへの接続なども芳しくない上に、MAKIKYUが帰路乗船予定だったジェットフォイルは欠航(他の試験運航日は全て就航した模様)になり、その場合は大島へ向かうのが極めて困難になるなど、運航体制にもまだまだ課題があると感じたものでした。

今後三宅島へのジェットフォイル本格運航を実施するとなると、改善点は山積していると言わざるを得ないのが実情で、神津島などの様に海の向こうに見える島へ直接向かう定期航路も整備されていない事を踏まえると、新路線として三宅島航路を運航するのではなく、既存の神津島航路延伸も検討した方が…と感じたものです。

今回のジェットフォイル試験運航実績を踏まえ、実際に定期就航に向けて動き出すのか否かも気になる所ですが、三宅島が首都圏からは大型客船とプロペラ機でしか行けない「近くて遠い島」ではなく、ジェットフォイル定期就航によってもっと身近に感じられる日が訪れれば…と感じたものでした。