先月MAKIKYUが北近畿方面へ出向いた際には、豊岡で「はまかぜ」号を降りてから、宮福線開業20周年を記念し、来年3月までの期間限定で発売されている「ぺアきっぷ」(購入日から1ヶ月以内の任意の2日間(或いは2人で1日)、北近畿タンゴ鉄道全線が乗り放題で、別途料金を支払えば特急利用も可能)を使用し、北近畿タンゴ鉄道(KTR)沿線を廻っていました。
その際には「はまかぜ」号が山陽本線内で発生した人身事故の影響で、豊岡には30分以上の延着となり、予定していた豊岡でのKTRの接続列車(普通列車)とは不接続となった事もあり、MAKIKYUは約1時間後に豊岡を発車する特急「タンゴディズカバリー」号に乗車する事になったのですが、この特急で使用されている車両が列車名にもなっている「タンゴディスカバリー」の名称を持つ気動車・KTR8000形です。
この車両は1996年に2両5本が製造された特急用気動車で、第3セクター鉄道で5編成もの特急用車両(その上KTRには、この形式以外の特急用車両も存在しています)を擁するのは、JR在来線のバイパス的な役割を果たす高速化された鉄道(北越急行や智頭急行など)を除くと、極めて異例と言えます。
2両1編成で構成されるこの車両は2両共に普通車で、回転式リクライニングシートが並ぶ車内は、特急用車両では一般的な設備と言えますが、座席のカバーに「丹後ちりめん」を用い、その事を表記している辺りは丹後半島に拠点を置く鉄道ならではと感じると共に、豊岡方の先頭車両運転席寄りに展望スペースを設けている事も、この車両の設備面における大きな特徴と言えます。
車内は座席間隔等もそこそこ確保されている様に感じられ、落ち着いた雰囲気の車内は現代の特急車両に相応しい設備を備えていると言え、国鉄時代からの旧年式車ばかりが走る、北近畿エリアのJR特急車両などに比べると、同じ特急料金で乗車できる特急列車にしては、外観・設備などのあらゆる面で、随分な格差があるものと感じさせられます。
現在はKTR線内の他に、JR線に乗り入れて京都へ向かう特急(それどころか列車によってはJR線内のみ、その上全線電化区間のみを走行する列車も存在しています)にも用いられていますが、以前は豊岡から山陰本線の乗り入れて城崎温泉まで至る列車(この区間は快速扱いで運行し、以前MAKIKYUも乗車した事があります)や、183系電車(485系からの改造車)にぶら下がる格好(KTR8000形は動力非稼動・一部車両のみが電車併結に対応)で新大阪までの列車に用いられた事もあります。
前面には貫通路も設けられている事から、2編成併結で車両間に貫通路を構成した状態で運行する事も可能になっているなど、運用の柔軟性が高い車両というのも大きな特徴ですが、現在電車との併結を行う運用は存在しておらず、現在城崎温泉(乗り入れ取り止め)や新大阪(充当車両変更)へ乗り入れる運用にも充当されなくなっています。
ただ最近では通勤・通学時間帯の列車を充実させる背策や、西舞鶴~宮津間で特急として運行する列車の設定を取りやめた事なども影響してか、KTR線内では俗に「開放扱い」と呼ばれる普通・快速列車扱いで運転される列車に充当されるケースも多くなっています。
この中には西舞鶴~豊岡間の宮津線全線に跨って運転され、通過駅は久美浜~豊岡間にあるホーム1本のみの無人駅・但馬三江駅以外のみという、実質的に普通列車とほぼ同等の快速列車(朝に運転されますが、列車番号の番号帯が他の同区間を走るローカル列車と大きく異なりますので、時刻表上でも容易に判読できます)でも運用される状況です。
こんな列車が走っているとなると、開放扱いとなる列車に当った際には乗り得感を感じて嬉しい反面、豊岡~天橋立間を走るKTR線内特急「タンゴディスカバリー」号に豊岡から野田川まで乗車した際には、通過駅が僅か2駅のみ(野田川以遠では、天橋立までの間に岩滝口駅も通過)で、所要時間も普通列車と変わらない状況でした。
そのためMAKIKYUが乗車した際には「タンゴディスカバリー」号の乗車率は低く、指定席(2両しかない編成にも関わらず1両設定されており、設備的には自由席と同等ながらも、特急料金は100円割高になります)に至っては空気輸送という有様でしたので、軽快気動車がワンマン運転を行っている普通列車でも、比較的グレードが高い車両を用いているKTRにおいては、JR直通以外のKTR線内特急の必要性自体に疑問を感じたもので、特に指定席の存在意義は大いに疑問符が付くものでした。
とはいえ車両自体はかなりの意欲作で、この車両の姿を見れば、日本三景の一つとして知られる著名な観光地・天橋立をはじめとするKTR沿線に足を運ぶ機会があれば、是非この車両に…と感じる車両の一つです。
もっと京阪神方面などからKTR沿線に観光客などを呼び込むためにJR直通列車での充当を増やすなど、優秀な車両だけに運用面での工夫次第でもっと活用策があるのでは…と感じたものです。
(そうすれば特急車両にしては質が劣ると言わざるを得ない旧年式車ばかりがゴロゴロ走る、北近畿方面特急の惨状も、多少は改善されますので…)