正直に言うとトキには特に関心は持っていなかったのよ。ごく普通に新聞記事など読んでいただけ。父はカレンダーにメモしていたけれど、それだってね。
でも、今日、10時半、秋篠宮ご夫妻が放鳥予定のトキが入っている箱のテープを切って、最初は戸惑っていたように見えたトキが堂々と羽ばたいて飛んでいく姿を見たら、不覚にも涙が出そうになったわ。
それは、テレビニュースやドキュメンタリーでトキが122羽まで増えたことについては、たくさんの人が関わっていたことは知っていた。
国が政策としてトキ保護に乗り出す前から、地元の人たちがコツコツと保護活動をしていたことも知っていた。けれど、知っていたつもり、それだけだったのね。
高野さんが、お父さんの遺志を継いで、トキのえさ場作りの運動を推し進めているお話を聞いて、実際現場も見て、途方もなく地道な努力をしている姿にようやく少し関心が出てきたところぐらいだった。
けれど、研究者でもなく飼育員でもなく、ただトキ捕獲を頼まれた人がトキと仲良く接しているビデオを見たのは、今日が初めてだった。
トキ子(おじさんはそう名付けた)と遊んでいるおじさん、座っているおじさんのそばでトキ子は何の警戒心もなくえさをついばんでいるのよ。おじさん、どじょうかなんかトキ子の口に入れてあげてるの。我が子のようにいとしがっているおじさん・・・
おじさんがトキ子を捕まえて抱きかかえて涙を流している写真は胸を打つ。
「俺は、トキを裏切った」って。トキ子はおじさんの名前からキンと名付けられたそう。
このエピソードが涙出そうになった遠因だ。
同級生の父上で母校の高校教師の佐藤さんは、戦後すぐからトキのすべてに尽力を尽くした方。その佐藤さんが、トキの野生復帰の成功には
えさ場の周りが静かなこと
冬になった時のえさの確保
がカギ、とおっしゃった。私にできることって、ずかずか見に行かないことぐらい。
mannmoさん、ふざけないでください!とお叱りの声が聞こえそう。黒い点のようなものはとんび。トキよ、とんびには気をつけて!
で、こんな風に悠々と大空を飛んでいる姿をごく日常のように見たいのよ。
昨日の空