
佐野洋子さんの「シズコさん」を読み終わってから数日経つ。数日経ってようやく気持ちが軽くなった。読後感が重かったわけではないけれど。むしろ、爽快感さえ覚えたほどだけれど・・・
娘はここまで母を憎むことができるのだろうか。
4歳のころ、母の手をつなごうとして、チッと舌打ちされて手をふりはらわれてから、身体を触ったことがなかったという。
友人が「母の首を絞めたくなる」と言うが、この人の方が母の首を素手でさわることができるからましだ、という。
これでもかというような火の玉のような言葉がビシビシ飛んでくる。
佐野さんと一緒に生活する人は大変だなと思うくらい。
佐野さんの母、シズコさんは呆けた。
老人ホームで一緒に「ねんねんよう・・ 」とうたいながら、母の白い髪の頭をなでていたとき、佐野さんの心の中に予期せぬことがおきる。
それは佐野さんにとっては、劇的なことだったのだろう。
何十年もこりかたまっていた嫌悪感が、氷山にお湯をぶっかけた様にとけていった。と書いてある。
私はほとんど五十年以上の年月、私を苦しめていた自責の念から解放された。
と書いてある。
人を憎むには膨大なエネルギーがいると思う。憎む分だけまた自分に跳ね返ってくるのだから、生きていくのがつらくなると思う。
いい加減な私には、そんな熱い熱いものは抱えていられない。
佐野さんのエッセイは、
「役にたたない日々」とこの2冊で当分いいかなと思っている。