美容院へ行った。
「さあてどうしましょうか?」と美容師さんのいつものひと言。
そうはいっても、こうしてああしてと言えるご面相じゃないから、
「ちょっとでも美しくして」って。
ちょっと美しくしてもらって仕上げのなんだかんだをアシスタントの若い男の子が。
ご飯食べてるのかしらと思うような華奢な今風の彼よ。
鏡の前の台には婦人雑誌。重くて高級感ありありで教養もどうぞふうな婦人誌。
表紙の文字が滲んで老眼の私にはもやもやとしか見えない、読めない。
「読める?」
彼に聞いた。微妙な間が空くのよね。えっ?難しいこと聞いたかしら。
「はい読めます」って。
「漢字、読めます」って。
いやあ謝った謝った、謝って大笑いした。悪い悪い私が悪い。
主語も述語もない前後の脈絡もないいきなりの質問、ごめん。
「僕漢字苦手なもんで、でもどうにか読めました」ですって。
雑誌の表紙の文字はいちばん小さなそれまでクリアに見えるんですって。そうかい。
自分の間の抜けた質問は棚に上げてひがむ。
ついでにもうひとつ、勘違いとは言わないけれど。
大手ドラッグストアにシャンプーを買いに行った。棚を探しても目当てのシャンプーがないの。
ちょうどそばにいた店員さんに聞いたのよ。指差して。
「このシャンプーでノンアルのはないのかしら」
すでに店員さんの顔が崩れている。
「ノンシリコンですか?」と聞き直してくれて。上手に訂正。
「そうそう、ノンシリコン。シャンプーにノンアルなんて聞いたことないものね」
はい、二人して肩たたいて旧知の間のごとく笑い崩れました。そういうことです。