中日新聞の「くらしの作文」に「春よ、来い」というタイトルで、73歳の高山にお住まいの女性が投稿されていました。
氷河のように固まっていた雪が解け始めて僅かな地面が覗いた途端、クロッカスが四輪、花を咲かせた。
今日は三月二十三日、亡き夫の七十歳の誕生日だ。
私は、夫のテーマ曲と勝手に決めている松任谷由実の「春よ、来い」をピアノで弾き始めた。
四年前の初冬。
夫が癌の末期で緩和病棟に入院していた。
病棟には娯楽室があり週一回、患者と家族のために茶話会が開かれた。
部屋の中央にはキーボードがあった。
茶話会が開かれた日、キーボードを弾かせてもらった。
迷うことなく「春よ、来い」を弾いた。
夫や他の患者さんに奇跡よ起れ!と祈りながら弾いた。
私の後に栄養士の若い女性がベートーベンの「月光」を弾き始めた。
看護師さんが、夫のベッドを病室から運んできてくださった。
夫はVサインを出して、栄養士さんの演奏を称賛した。
痩せ衰えて風貌がすっかり変わってしまった夫。
せん妄も現れ、心身ともに壊れてしまうのではと恐れていた私だが、Vサインを出す夫を見て、人を思いやる持ち前の気質に何ら変わりないことを確認してホッとした。
茶話会の数日後、夫は私に「サヨナラ」も告げずに旅立ってしまった。
「春よ来い! 早く来い! 愛しい夫(ひと)を連れて来い!」
以上です。
>せん妄も現れ、心身ともに壊れてしまうのではと恐れていた私だが、Vサインを出す夫を見て、人を思いやる持ち前の気質に何ら変わりないことを確認してホッとした。
死を前にしても、人を思いやる気持ちを忘れないようにしたいものです。
>「春よ来い! 早く来い! 愛しい夫(ひと)を連れて来い!」
かみさんに、このように言われたいものです。😅
松任谷由実 - 春よ、来い