11月3日が文化の日だからというわけではないが、芸術の秋にちなんでアートのことを書いてみる。
このところマスコミでもCMが流れることが、あちこちの美術館で行われる展覧会というのはどこも長蛇の列、混雑という。ただその一方で地方の自治体の運営する美術館などは閑古鳥が鳴くありさまで、美術館や博物館が「ハコモノ行政」の悪の象徴であるかのように言われることも多く、これもまたいろんな意味での都市と地方の格差、情報社会の格差という現代日本の諸相の一つかなと思わせる。
そんな中で「アートで町おこし、地域活性化」を掲げ、それに成功している地域もある。本書『観光アート』(山口裕美著、光文社新書)はそんな事例を挙げ、アートの可能性やアートに出会うための旅の面白さを説く。
最近の地方の美術館として有名なのが金沢21世紀美術館。ここは私も2回足を運んだことがあるが、兼六園や伝統文化あふれるエリアにあって斬新な建物で、象徴的なモニュメントのプールもそうだし、開放的な空間の中で現代のアートを楽しませてくれる。
また、この夏に行われた瀬戸内国際芸術祭も、直島、男木島など島の豊かな自然とアートの組み合わせということで、こちらは結局行くことがなかったが大賑わいだったという。ツイッターやブログでの投稿によれば早朝のフェリーに乗るのにも長蛇の列ができたとか、「直島に行かないようなやつは人にあらず」といわんばかりの内容もあり、逆に行く気がそがれたというほどのものである。
このように美術館の建築、そして現代アートというようにこのところのブームになっているのだが、ただそれらの展覧会をのぞいても自分では上手くほめることができないし、「この辺がすばらしい」という解説をすることができない。やはり鑑賞眼がないのかな。それともやはり現代アートは難しいものなのだろうか。
本書はアートでの地域活性化がテーマなので残念ながらこのような問いかけに答えてくれるところはないが、それでも「アート鑑賞のための旅」というのも面白いかなとも思うし、どこかに鉄道やドライブで出かけたおりにそういうところをプランに盛り込むのもいいかなと思う。
「現代アートとは同時代に生きるアーティストの作品のことを指すため、当然、中世や近代のアートと違って解釈も評価も定まっていない。すると、鑑賞者は、その作品がカッコいいのか悪いのか、面白いのかそうでないのか、価値があるのかないのか、将来性があるのかないのかなどを、自分の頭で考え、分析し、判断しなければならない。しかし、これが、評価の定まった美術作品と違って自分で楽しめる点であり、同時に魅力的な点である。」
著者はこのように説く。まあそうやって楽しむだけの鑑賞眼がないといけないと思うのだが、となるとやはりあちこちの美術館をのぞいて「番数をこなす」しかないのかな。
そういうアートが似合う男にならないとね・・・。