富岡製糸場と絹産業遺産群がこのたびユネスコの諮問機関であるイコモスによる「世界遺産登録勧告」の対象になったということで、この夏にも世界遺産に登録されることが確実となった。
こちらには東京在住時代に一度行ったことがある。その記事はこちら(前編) とこちら(後編) に書いたのだが、当時は暫定リストに入ったということで地元でも盛り上がりを見せており、アクセスとなる上信電鉄の車両にも「富岡製糸場を世界遺産に」という塗装が施されていたり、場内のガイドにも力が入っていたことである。
当時の感想としては「やはり、いかにも『日本らしいもの』が推薦されるのでは」ということで、平泉とか鎌倉が先行して、富岡とか石見銀山というのは世界遺産にはならないのではという思いがあった。一方で、今は亡き大和人さんのコメントに「日本にとっても、世界各国にとっても、日本のさまざまな姿を知る点において、富岡製糸場の世界遺産登録がきっかけになればいいなあと思います」というのがあったのを思い出す。
あれからどうなったか。平泉と石見銀山は世界遺産に登録されたが、鎌倉はまだである。そして富岡も機が熟してきたということか。これまでのような寺社仏閣や城郭という、いかにも日本史的なものではなく、こうした「近代化遺産」「産業遺産」が登録されるというのは、世界遺産というものの位置づけが次の局面を迎えることになったのかと思う。個人的には世界遺産の濫発はその価値を下げるのではないかという思いがあるのだが、「近代化遺産」となると、日本のこうした面が世界に認められるということで、話は別である(さすがに、当時は世界遺産登録を目指していた旧信越本線のめがね橋などの鉄道関連施設は結局対象から外れたが)。
この動きで盛り上がるのは富岡だけではなく、山口、九州の人たちだろう。同じく近代化遺産として、炭鉱に関するスポットが中心であり、長崎の軍艦島も含まれる。ただ富岡も世界遺産登録の意義を明確にするために対象スポットを絞ったこともあり、山口、九州についても戦略を考えたほうがよいのではないかと思う。今の状態ではあまりにも対象が広がり過ぎているように思うし、直方や田川、大牟田の炭鉱群にするのか、軍艦島を前面に出すのか。
それはさておき、久しく群馬県に足を踏み入れていない。富岡製糸場を含めて、また訪れてみたいものである・・・・。