大正ドームのレギュラーシーズンとしては日曜日最後の試合となった7日の対ファイターズ戦。
何でも日曜日のバファローズは10連敗である。最後に勝ったのが6月8日のマツダスタジアムでのカープ戦。そして連敗がスタートしたのは翌15日のドラゴンズ戦。いずれも私は観戦しており、それ以降日曜日に勝てなくなったのが不思議な気がする。もっとも責任投手を見れば、佐藤達也が勝ち越し打を浴びて白星を逃したことはあるが、それ以外の先発はディクソンと吉田一である。別に2人だけのせいではないが、巡り合わせというのかな。
私も7月と8月の2回、チケットを持っていたにも関わらず日曜の観戦を見送っていた。観戦自体も球宴明けの7月21日以来である。別に私が行って連敗を止めてやろうというおこがましいことは言わないが、優勝争いにここまで加わっている中で、日程的に来られるのがこの日が最後ということで現地参戦することにした。
9月に入り多少はしのぎやすくなったが、この日は久しぶりに暑さを感じる。ヤマダエス・バイ・エルの冠試合である。観客の出足も良いようで、多くの席種で「満席」の表示。ホークスとは4.5差と、優勝には厳しい数字であるがファンの期待をここまで持たせるとは。ここ数年、9月の試合ともなればスタンドにも秋風が吹くことが多かっただけに・・・。
開門前にBsGirlsのステージを見る。今やこちらの人気も上昇しており、私は知らなかったのだがメンバーそれぞれに背番号があり、ステージを見るファンの中にもその背番号をあしらったユニフォームを持ったり着たりというのがいる。彼女たちの存在もバファローズのここまでの進撃を支える一つになっているのは、間違いないだろう。
今シーズンの「3位」がほぼ確定的な日本ハムだが、ファンの注目度は高い。まずはやはり大谷。大谷は投手として10勝(防御率もリーグ2位と立派なもの)を挙げており、5日の試合で9号本塁打を放っている。日本プロ野球史上最速のストレートも投げるし、二刀流はどこまで進化するのだろうか。
そしてもう一人が先日今季限りの現役引退を発表した稲葉。確か関西での試合はこの日が最後である。レフトスタンドには稲葉の旗や横断幕も出ているし、コールされた時はライト側、一塁側のバファローズファンからも大きな拍手が送られる。ヤクルトと日本ハムの2球団で5人の監督を胴上げするという功労者である。ヤクルトをFAしてメジャー入りを希望していたが不調に終わり、半ば拾われる形で日本ハムに入団したわけだが、今思えばそれが良かったのだろう。
さて試合。打順を見ると、スタートダッシュに成功したシーズン序盤の形に近い流れである。ここは「原点回帰」というところだろうか。いやいや開幕には確かキューバ出身でメジャー経験もあり、鳴り物入りで入団した何とかいう外国人がいたが。ペーニャの評価は「当たれば飛ぶ」という程度でさほど高くなかったはずである。それがパワーだけではなく最近は激走も目立つし、最近は孤軍奮闘と言ってもいいだろう。
オリックス先発は問題の吉田一。ここまで5勝4敗というのは、1年目としてはまずまずなのだろうが社会人ナンバー1の呼び声に比べれば物足りなさを感じる。先週はリリーフ登板も行っており、正直先発として生き残れるかの瀬戸際だろう。ただ立ち上がりはなかなかよく、陽に内野安打を打たれるものの、この日5番DHの大谷、大観衆に迎えられた7番稲葉も難なく打ち取る。
先制はオリックス。2回、日本ハム先発の上沢に対して先頭のペーニャがコンパクトに振った当たりが弾丸ライナーでレフトスタンドに飛び込む。リーグトップに並ぶ29号。よく思い出せばペーニャの本塁打をナマで見たのは初めて。
3回には打者一巡の猛攻。一死一・三塁から平野恵の犠牲フライで1点を追加。糸井のヒットで再び一・三塁としてペーニャの当たりは三塁への深いゴロ。「走れ走れ!」というファンの声が飛び、小谷野の送球もよかったがペーニャの爆走が早かった。内野安打。これで3点目が入る。この後T-岡田の死球で満塁となり、坂口の合わせた打撃がレフト前のヒットとなる。これで5対0。ここまでの鬱憤を晴らすかのような攻撃であった。
序盤で大きくリードしているし、これで日曜日の連敗も止まるだろう。そう安心して見ていたが、4回表に先頭の陽が左中間への文句なしの一発。反撃ののろしを上げる。
そして迎えた大谷。振り抜いた打球はライナーでセンターへ。そのまま伸びてフェンスを越えた。これで10号本塁打。同一シーズンで10勝、10本塁打を達成したのは日本プロ野球史上初めて。アメリカでもベーブ・ルースの記録があるくらいである。本塁打だけが数字ではないが、誰でも狙って打てるものではない。野球というもともと分業要素の強いスポーツ、まして現代野球では投手ですら先発、中継ぎ、抑えと分業化が進んでいる。その中にあっての快挙である。これにはバファローズファンも驚きの声を挙げていたし、そんな場面に遭遇できてよかった。
ただ吉田にとっては面白くないことで、これで日本ハムも攻撃にプレッシャーをかけるようになったか、5回二死一・三塁のチャンスをつくる。勝利投手まであと一人というところで、5対2とリードしているが吉田は降板、比嘉が登板する。うーん、この展開一度観たぞ。確か本拠地開幕カードの西武戦の第3戦、プロ初先発の吉田は5回二死までこぎつけたがここで比嘉に交代。後続を打ち取り、比嘉が「ごっつぁんです」の今季1勝目を挙げた。それと同じような展開である。まさか9月になって同じようなことになるとは。やはりまだ監督から信頼されていないのだろう。
比嘉は陽に対して遊ゴロを打たせるが、安達の二塁フォースアウトを狙った送球はセーフ。これでさらに1点返される。まさか安達に緩慢プレーがあったとは思わないが、ちょっと嫌な展開である。それでもまあ、5対3とリードを保つ。これってまた、比嘉が「ごっつぁんです」で勝利するパターンか。まあ、当初から予定されたイニングに出るだけでなく、こうした中盤のピンチにパッと出てサッと後続を断ち切る。これぞ文字通りの火消し投手だろう。その分、勝ち星がつくくらいはいいか。
ピンチを断ち切った直後の5回裏。日本ハム2人目の鍵谷から糸井が死球、ペーニャがライトへの当たりでまたも激走を見せて二塁打とする。T-岡田が敬遠気味のストレートの四球で満塁となり再び坂口。左中間に鮮やかな打球を飛ばし、走者一掃。坂口も三塁まで激走してガッツポーズ。8対3と再び5点リードとなる。日本ハム側からすれば、T-岡田への四球が悔やまれるところだろう。歩かせるという判断をしたのなら。
こうなると終盤以降は落ち着いて観ることができる。6回は岸田、7回馬原はパターンとして、5点差があることから8回マエストリ、9回に至っては昨年日本ハムを自由契約となってオリックスにテスト入団した榊原を投入。その9回、一死二塁で稲葉が打席に入る。レフト側からは関西最後となる稲葉ジャンプが起こるが、その時である。ライト側下段のバファローズファンも総立ちになって稲葉ジャンプを始めた。そして「かっ飛ばせ稲葉!」のコール。結局は二ゴロに終わったが、ベンチに引き揚げるその後姿に惜しみない拍手が送られた。まだ試合は残っているし、ひょっとしたらクライマックスシリーズで再び大阪で相まみえる可能性もある。それでも、大きな功績を残した選手には拍手を送る。
稲葉のゴロが進塁打として生き、続く途中出場の谷口のタイムリーで1点返すものの反撃はここまで。8対4と、終わってみれば快勝の形でバファローズの勝利となった。日曜日のジンクスからもようやく解放された。
お立ち台は5打点の坂口と2打点&激走のペーニャ。まだまだ優勝に向けてあきらめない頼もしいインタビューもあり、この9月をどう戦うか。本当に最後のチャンスとなる中旬のソフトバンクとの直接対決。もちろんそこまでに差を詰める必要があるし、直接対決では3つ勝たなければならない。厳しい試合が続くが、せっかくここまで来たのである。まだまだ、熱い戦いを見せてほしい・・・。
・・・とまあ、いろんなことがあって素晴らしい試合だったし、観戦できて大満足だったのだが、一つ「不快な」ことがあったのであえて書かせていただく。あくまで試合とは関係のない余計なことだが・・・。
それは試合前にさかのぼるのだが、始球式である。試合前イベントの最中、一塁ベンチ前で白髪の男性が投球練習をしていた。先に書いたようにヤマダエス・バイ・エルの冠試合だからそこの社長か役員の方が始球式を務めるのかなという感じで何の気なしに見ていたのだが、背番号が「1179」とある。これって、MBS毎日放送のラジオの周波数と同じ。何?と思っているうちに始球式の案内。マウンドに上がってコールされたのは・・・「唐渡吉則」。思わず、「へ?」と言ってしまった。唐渡といえば、大阪朝日の道上洋三と並ぶ、毎日放送を代表する「ミスター・トラ」でしょ?六甲おろしのCDも出しているほどのトラキチだし。それが何でまたここで始球式?しかもバファローズのユニフォームを着て??
いつもなら始球式といえばどんな人であれ大きな拍手が起こるものだが、この日に限っては拍手もまばらだったように思えた。本人も何しに来たのかわかっていないのでは。どうせ、始球式終わったらとっととドームを後にしてナゴヤの中継にでもかじりついたんでしょう。
毎日放送って、バファローズを応援する気なんてさらさらない放送局。正直「じゃがポテ仮面」も何のために試合前のスクリーンに出てくるのかわからないし。番組の罰ゲームか何かですかね。始球式をするほうもするほうだが、こんなのにオファーを出すほうもどうかしていると思う。何でこういうことをやったのか、どなたか事情をご存知の方がいれば教えていただきたい・・・。