さて前の記事ではゴルフ場にいたるまでのことだったが、今回はコースを回ってみてのこと。
ただ、先に書いたように場内は撮影禁止(本来であればカメラを持って来るのもご法度である。大会によっては手荷物検査も行われるそうだ)ということで、選手やコースの画像はなし。撮影できるのは許可されたカメラマンだけということで、その画像はネットや雑誌で見ることはできる。もちろん携帯電話のカメラもだめで、以前にも大事はパットの前だったか、携帯カメラの音がしたために選手の集中力が殺がれ、大切な一打を外し、それが順位を左右して賞金の金額も何百万と損したというのがある。「プロだったらどんな状況でも集中しなければならない」と言う向きもあるだろうが、ゴルフというのはメンタル面が大きな要素を占めるスポーツであるし、(ヘボゴルファーがエラそうに言うのも何だが)プロになればなるほど余計繊細になるのであろう。
ギャラリーゲートをくぐるとフードコートが設けられ、朝早くから賑やかに営業している。また少し進むとゴルフグッズの販売とか、オリジナルグッズが当たるチャリティーのダーツもやっている。クラブハウスは選手専用となっており、ギャラリーはこうしたところで楽しむ。こういうアウトドアの風情もいいものである。
2日目までの予選を終えたところで、トップは鈴木愛の-7、穴井詩が-3で続き、-2に4人が並ぶ。昨年の優勝者で、今回も初日にホールインワンも出たイ・ボミは-1の6位タイ。予選通過の60位タイは+6で13人いる。合計24組となると第1組が7:00スタート、最終組は10:50スタートである。順位が上だとゆっくり始動となるのはいろんなスポーツに当てはまる。特定の選手について行こうという観戦方法を取るギャラリーは、その時間に合わせて始動することになる。
「ぶらり途中下車の旅」観戦の私は、本来なら第1組から見るくらいのほうがいいのだが、アクセスの関係でそれは無理。私が1番のティーグラウンドに着いた時には、8:00スタートの7組目から。選手の名前とこれまでの主な成績がコールされ、拍手が送られる。まずは1組、ティーショットのところを見る。続く福田真未、北田瑠依、服部真夕の組のところではティーショットを見て、私も選手とともに動き出す。普段であればカート道だったりラフだったりというところが通路になっている。
コースに沿って多くの関係者が配置されている。多くはボランティアだろうか。また「ルーキー」という腕章をした女性も多い。この大会はプロなら誰でも参加できるというものではないので、経験の浅い選手などはこうした裏方仕事もこなすのかな。そういう人たちが、選手がショット前の仕草に入ると、「プレー入ります。停まってください」と言って「お静かに」の札や手を挙げる。静かにするのは当然として、横を歩いたりするのもいけない。周りも「だるまさんが転んだ」状態とまではいかないが、手元でゴソゴソするのもはばかられる雰囲気となる。そんな静寂の一瞬があり、ショットを放った後のうなる声、拍手、「ナイスショット!」の声に弛緩が訪れる。緊張と弛緩のクロスも面白い。
その後、だいたい1ホール~2ホールごとに見る組を変える。ある組がグリーンまで来てパットを沈めて次のホールに向かうと、私はしばらくそこにいて次の組の到着を待ったり、あるいはティーショットを放って花道を歩き出すとそれを見送ってまた次の組を待つ。そこにずっといる人もあれば、選手とともに動く人波もある。後から来る選手の名前を記した揃いの帽子やシャツに身を固めたグループもいる。知人に同じように「女子プロゴルフ観戦のすゝめ」でゴルフ観戦を始め、今やとある韓国の選手を追いかけるまでになっている人がいるのだが、その選手が後ろからやってくると、果たしてその人もいた。私が来ることは知らせていないので、後ですれ違った時に声をかけると驚いた様子。「誰を追いかけているんですか?」と訊かれるが、「いや、今日は初めてなのでいろいろとブラブラと。行ってらっしゃいませ」と見送る。ホールアウト後にその選手の成績を見たら下位に沈んでおり、ちょっと苦しい展開のようであった。
さてその中でもっともギャラリーの群れが大きかったのが、森田理香子、香妻琴乃、原江里菜の組。やはり昨年の賞金女王ともなると人気もあるが、この辺りで全体の中位。森田自身も昨年と比べては今季の成績もあまりよろしくないようで・・・。
ホールによっては通路のすぐ横がティーグラウンドということがある。そことなると選手が実に近く、手を伸ばせば届きそうだ(もちろん手を伸ばしてはいけませんが)。キャディーとの会話も聞こえるし、コースの攻略法を書いたメモの中身も見える。なかなか他のスポーツではないことである。ならば間近で見られるプロのプレーを私のゴルフ改善に生かせればいいのだが・・・ショットは一瞬である。ただ、ショットに入るまでのルーティンやリズムの作り方などは参考になるかもしれない。
6番ホールでナ・ダエ、大山志保、中村香織の組を見て、7番ホールへの通路を歩いていると左側から大きな拍手が起こる。そこがちょうど1番ホールで、ようやく最終組の鈴木愛、穴井詩、成田美寿々の3人がスタートというところだった。打球の行方は木に遮られてわからないが、見ていて気持ちのいいスイングである。
9番まで見終えたところで昼食ということにする。フードコートに戻るとちょうど12時近くということでごった返している。とりあえず席だけ確保して列に加わる。
折り返しとなるINの10番。残りは7組で、ちょうどやってきたのは表純子、カン・スーヨン、諸見里しのぶの組。その後では順位を伸ばしてきた李知姫、大江香織、そして上田桃子といったところも見る。
このペース配分で進み、14番のグリーンでイ・ボミ、イ・ナリ、申・ジエの最終1組目前の韓国勢を見ることにしてグリーン横に座る。改めてメンバー表を見て韓国勢の多さを実感する。ふと、日本の大相撲におけるモンゴル勢を連想する。一方で、上田桃子のようなアメリカツアー経験者には、野球のメジャー帰りの選手を連想したり。いやどうしても鉄道や野球、相撲に置き換えてしまうのがまつなる流である。真のゴルフファンからすれば「何を言っているのか」と言われそうだが。
そして待つ14番で、その組がやってきた。ただ、選手の横で成績のボードを掲げているのを見ると1名抜けているのが見える。誰かいない。それがイ・ボミだということでファンからざわめきが起こる。途中棄権ということか。
次の15番に移る。前の組が詰まっておりしばしここで待機となる。その組について回っていたらしき人が周りに話していたのによれば「11番の3打目か何かでミスショットした」「その後で急にいなくなった」「申・ジエと長い間抱き合って何か話をしていた」というもの。「足でも痛めたんかいな」などと言っていたが、後でニュースを見たところでは「一身上の都合」ということで棄権したそうである。韓国で闘病中の父親の容態が急変したとの情報もある。その情報がプレー中に入るとは考えにくい。そんな状態であることを知っていて本来ならプレーどころではなかったのが、前回優勝の大会で連覇もかかっているし、今回もパンフレットの表紙になったり事前にテレビ出演もしていたりということもあって、無理にでも参戦しなければならない状態だったと考えるのが自然だろう。それが、ミスショットで集中力が切れてしまったとか。
やはりプロというのは厳しい世界である。
さてそうなると15番以降はせっかくなので最終組につくことにする。前半でWボギー2つなどで-7から-3までスコアを落とし、首位からも陥落した鈴木、15番のショートでもショットはグリーンの奥へ。ただここから10メートル以上のパットをねじ込みバーティー。これで大きなガッツポーズが出る。これで勢いを取り戻したか続く16番でも連続バーディー。再び首位に浮上した。一方で2位の穴井は3連続ボギーで順位を後退させる。
最終18番には特設スタンドがあり、せっかくなのでそこに上がってみる。 最後は3人ともパーで締め、これで3日目のプレーは終了。結局鈴木が首位をキープ。昨年プロデビューして、まだ優勝経験もないそうだが、スタンドからは「このまま優勝してほしいな」という声も結構上がっていた。優勝すれば大会最年少(20歳)という。こういう新星が出るのもいいだろう。2位タイで大江、上田が続き、4位タイに成田、申・ジエ、黄・アルムが続く。果たして最終日はどうなるか。
「プロゴルフ観戦のすゝめ」では、クラブハウスの前で待っていたら選手も気軽にサインに応じてくれるよ・・・とあったが、1日回って疲れたし、今日は生のプレーを見られただけで十分満足したのでそのまま帰る。本当はご法度なのだが、プレー終了後ならいいだろうとフードコートにあるスコアボードを撮る。
帰りは新三田までバスに揺られる。せっかくなので次の三田で途中下車して一人打ち上げである。うう、こういうのも遠征の楽しみになってくるのかな。
今回初めてのゴルフ観戦となったが、事前に思っていたより楽しめた。まだ特定のこの選手につく・・・とまではいかないが、私の場合は気軽に場の雰囲気を楽しむのがいいのかなと思う。でも、プレーヤー一人につくことで、その選手の順位の変動を同時に感じることもできるし、自分も同じように一日プレーする感覚になれるのではないかとも思う。次の機会がいつになるかというところではあるが、またいつか行ってみたい、観戦対象のスポーツの一つに加えてもいいのかな?と思った次第であった・・・・。