福王子神社でのおみくじ代わりのサイコロは・・・「3」の法善寺。比叡山や生駒山といった選択肢もあったが、ここは再び大阪に戻る。
とその前に、せっかく嵯峨方面に来たのである。この企画では乗り換え以外の途中下車はNGなのだが、歩いた結果別の駅から乗るのはOKである。ということで、隣の駅にある世界遺産の仁和寺にも行くことにする。歩いても知れている。「徒然草」を著した吉田兼好が庵を結んだとされる双ヶ丘を横に見て、御室仁和寺駅に着く。木造の御殿風の駅舎に風情を感じる。駅からまっすぐ伸びた道の先に仁和寺の堂々とした山門が見える。嵯峨野の山林をバックに、ゆったりとした造りの寺院である。これだけの境内ながら、普通に金堂や五重塔を拝むだけなら無料である。
徒然草、仁和寺・・・と来れば、徒然草の中に仁和寺の法師の話が出てくる。私が仁和寺という寺を知ったのも徒然草からだと思う。ただ、そこに出る法師というのが、「岩清水八幡宮に行き、途中の寺や神社が岩清水八幡宮だと思って、そこだけ拝んで山に上らず帰ってきた」とか、「酔っ払ってふざけて頭に鼎を被って抜けなくなり、やっと抜けたら血だらけでひどい顔になった」とか、「稚児にサプライズをしようと地面に重箱を埋めたのはいいが、後で見つからなくなった」とか、ボケをかましてくれる法師たちをネタにした段である。仁和寺というのはそんな寺かと思いきや、宇多天皇が開いた由緒ある寺院である。
吉田兼好がネタにしたのも、それだけ由緒ある寺と法師のボケぶりのギャップに面白さを感じたからだろう。あるいはエリートに対する批判とか。「なんぼ偉い言うても、人間やからそんな面もあるわ」と好意的ならいいが、「仁和寺の法師ともあろう者が、所詮うわべだけのエリートよ」と批判的に取るか。文章が短いだけにいかようにも読める。それは読者自身の思いが反映するのだろうか。
さてここから柏原の法善寺に向かう。同じ道で阪急で梅田に戻るのも芸がなく、趣向を変える。御室仁和寺から帷子ノ辻まで戻り、四条大宮行に乗り換える。途中の天神川で地下鉄に乗り換え。さらに烏丸で乗り換えて京都に出た。ここで近鉄に乗り換えようというのである。近鉄なら地下鉄で竹田まで行けば、乗り換えの距離も短くて済むのだが、そこは始発から乗りたいのと、たまにしか来ないので特急に乗ろうというものである。奈良行の特急は外国人の客もそこそこいる一方で、時間短縮とゆったり着席で大和西大寺まで移動しようという人も多い。阪急や京阪の無料特急は混雑するが、料金のかかる近鉄や南海の特急の2人がけシートなら、車内で飲食しようがメイクアップしようがとやかく言われることもない。
次から次へといろんな行き先の列車が入り乱れる大和西大寺駅のうどんで小腹を満たした後、神戸三宮行の快速急行に乗る。2人がけシートで快適・・・と思っていたら、あるボーンヘッドに気づく。これから向かう法善寺は大阪線の駅。ならば奈良線と合わさる布施で乗り換えなのだが、快速急行は布施を通過して鶴橋まで行ってしまう。で、鶴橋で折り返そうとしたら階段を上がったところに鉄道グッズの店があったから思わず覗いてしまう。結果、大阪線の列車を1本逃す・・・。まあ、急ぐようで急がない、のんびりなようで結構焦るのがサイコロしりとりで・・・・。法善寺に到着。改札口は掘り下げたところにあるいわば「逆橋上駅」のパターンである。周囲は昔ながらの邸宅と新興マンションと町工場がいっしょくたにされた感じの佇まいである。どうしても「法善寺」と聞くと、「包丁い~ぽん、さらしに巻~い~て」で始まる藤島桓夫の「月の法善寺横丁」とか、それでなくてもミナミでちょっと値段の張るスポットだなという部分がある。ちなみにここ柏原の法善寺は水かけ不動とは全く関係ないそうだが、駅前商店街や居酒屋が洒落で「法善寺横丁」等と名乗っていたら面白い。そんな便乗商法をやってもさほどの儲けにはならないだろうが。
静かな昔ながらの住宅地にある壺井寺。融通念仏宗という、聞いただけでは大変ユルそうな周波の寺であるが、ここにかつてその名も「法禅寺」という寺があったとされている。南北朝の戦乱で焼け落ちたのが、江戸時代になって融通念仏宗の寺として建てられたとか。
さて次の行き先はこの法禅寺、いや壺井寺でのサイコロ。その出目は「し」または「じ」から選ぶ。
1.十条(近鉄京都線)・・・先ほど近鉄特急に乗って高速で通過したが。
2.十三(阪急京都線)・・・淀川北の庶民的な繁華街、ええなあ。
3.夙川(阪急神戸線)・・・以前に桜を観に行ったことがある。
4.正雀(阪急神戸線)・・・車庫、工場がある駅。
5.庄内(阪急宝塚線)・・・こちらも庶民的な商店街があったような。
6.白庭台(近鉄けいはんな線)・・・いかにもニュータウンという響き。
6つのうち4つが阪急である。この企画、駅数の割合で見ても阪急の駅が少ない。たださすがにここでは出るかな。
そしてその結果は・・・・「4」。正雀である。個人的には十三がよかったが、まあ、これも巡り合わせである。法善寺から上本町行に乗車して、鶴橋で大阪難波行に乗り換えて日本橋で下車する。上手く高槻市行に乗り換えればそのまま正雀に行けるわけで・・・・。