まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第33番「七宝瀧寺」~近畿三十六不動めぐり・13(滝修行は・・・)

2018年03月26日 | 近畿三十六不動
すっかり春の気候となった3月下旬、およそ1ヶ月ぶりでの近畿三十六不動めぐりである。今回訪ねるのは七宝瀧寺(しっぽうりゅうじ)。もっとも、七宝瀧寺というよりは犬鳴山(いぬなきさん)という名前のほうが知られているだろう。また、これは私も初めて知ったが、犬鳴山という名前の山があるわけでなく、灯明ヶ岳をはじめとした周囲の山の総称である。

この寺には行者の瀧というのがあり、今でも修験者が滝に打たれている。テレビ番組でも芸能人がここで滝に打たれる体験をしてみたりというのがある。ただ、七宝瀧寺のホームページによると、誰でも勝手に滝に打たれてもいいわけではなく、行者と認められた者だけができる。初めてという人は、行者の1日体験などでプロの指導を受ける必要があるが、この体験は毎月第3日曜日限定で事前予約が必要。また滝修行だけの体験は不可で、険しい行者道を歩いたり、崖の上から下を覗き込んだりと一通りこなす。要はさまざまな修行ががあり、滝修行はその中の一つに位置付けられる。テレビでやっていたのはあくまで寺の特別な許可をもらってのことで、行者の資格?がなければ一般の参詣者やハイキング客が滝に入ることはできないし、また行者道を歩くこともできない。

私は犬鳴山に行くのは初めてである。近畿三十六不動めぐりを始めるに当たり、七宝瀧寺が当たったら滝に打たれないといけないのか・・・?と多少ビビっていたのだが、これを知って安心したような、逆に物足りないような気持ちになった。ならば行者体験に参加するか・・とも思ったが、その日の都合が悪い。ただ待っていても先に進まないので、とりあえずは普通に参詣して、今後行者体験に挑むかどうかはまた考えることにする・・。

犬鳴山には南海の泉佐野からJRの日根野を経由する路線バスで行く。バスが1時間に1本のためあらかじめ時刻を確認して行くことになる。今回は行きが南海、帰りがJRとわざと変化をつけてみる。当日乗るのはゆっくりめの泉佐野10時10分発のバス。新今宮から特急ラピートに乗り込む。

ラピートの車体には大阪万博誘致に向けた南海電鉄の応援メッセージが書かれている。関西空港を利用する外国人にも向けたPRである。今年の秋に開催地が決まるそうで、大阪が他の都市をリードしているという情報もあるが、国内全体として万博誘致の気運というのはどれほどなのか疑問視する向きもある。万博もいいがもっと他にお金を使うところがあるのでは?という意見も無視できないだろう。そう言うと、万博で大阪、関西から日本を元気にする、景気を良くするという声が返って来るのだろうが。

ラピートの車内はアジアからの観光客らしいので半数以上の席が埋まっている。日本語、英語、中国語、そして韓国語の字幕が入れ替わり流れる車内案内を眺めながら進む。特にハングルはどう読むのやら、駅名を見ては「この文字はこう発音するのか」と暗号を解いているようだ。

新今宮から25分で泉佐野に到着。高架のホームから下りる。

コンコースにはこのような広告がある。作家の家田荘子さんである。作家としてだけでなく高野山真言宗の僧侶としても活動しており、四国遍路や近畿三十六不動めぐりのPRにも力を入れている。四国遍路では公共交通機関を活用する「つなぎ遍路」を提唱し(私の四国めぐりも、このおかげでずいぶん気が楽になっている)、近畿三十六不動では霊場会のホームページで各寺院の紹介文を書いている。それにしても広告になるとはね。それだけ、三十六不動の中でも家田荘子さんが特にお薦めということだろう。

駅前のバス乗り場には犬鳴山に向かう人の列ができている。並んでいると着物姿の力士が駅に入っていくのを見かける。こんなところにも大阪場所の宿舎があるのだろうか。難波まで南海電車1本で行けるから意外に便利なのかもしれない。

バスは立ち客も出る賑わいである。参詣というよりはその奥へのハイキングらしい客もいれば、どこの国の方か、日本人も交えて英語で会話するグループもいる。賑やかな会話が飛び交う中、日根野で何人か乗客が入れ替わり、犬鳴山に向かう。少しずつ上り坂になり、周りに緑が増えてくる。

泉佐野から35分で犬鳴山のバス停に到着。七宝瀧寺へはここから1.5キロほどの道を歩く。30分ほどかかるとあるが、この距離が長くなく短くない、ちょっとしたハイキングコースとしても人気があるところだ。まずは温泉街を抜ける。日帰り温泉もやっているようで、場合によっては帰りに入るのもいいだろう。

川沿いの道になり、神域というのか、しめ縄が下がる石の門に出る。ここから犬鳴山七宝瀧寺である。一礼して中に入る。

少し歩くと役行者の像に出迎えられ、「従是行者道、願有佛守護」と記された石の柱を抜けると、一の滝とも呼ばれる両界の滝に出る。両界とは密教の金剛界、胎蔵界を指すが、この辺りはかつての修行の伝説が残る奇岩もあちこちにある。また滝の向こうの岩肌に不動明王の眷属三十六童子の像があるのも見える。一方で、この後も含めて滝や川はあくまで修行の場であり、飛び込みや水浴びを禁じる立て札が見られる。

行者迎えの門と呼ばれる朱塗りの瑞龍門をくぐる。ここまで何段階かの門をくぐり、少しずつ深みに入って行く感じがする。この先には不動明王の護摩場や虚空蔵菩薩を祀るお堂もある。この一角はちょっと荒れ果てたような雰囲気だが・・。

この後もさまざまなお堂や石像に出会う。長い歴史の中でさまざまな信仰が入り交じっているように感じる。本当にこれら一つ一つに手を合わせて祈りを捧げていると、本堂にたどり着くまでどのくらい時間がかかるだろうか。

一つ残念だったのが、修験資料館。残念だったのは中身ではなく、入れなかったこと。修験道のことを少しでも知るのに面白そうだったし、七宝瀧寺のホームページで特に休館日もなかったので訪ねることにしていたが、こちらの札では、休館がいつではなく、3月の開館がいつという案内だった。開くのは週1日、それも週によって土日が替わる。私が訪ねた時で言えば、前日の土曜日なら開いていた。開館日以外の見学は事前予約だという。季節によって開館日が異なるのかもしれないが、これにはがっくり来た。まあ、そこは役行者のからくりかと納得させる。

気を取り直して進むと出たのが、塔の滝。ここまでの滝と同じく、高低差で見るものを圧倒させるものではないが、自然の営みを感じさせる優しい雰囲気である。この塔の滝は毘沙門天や不動明王をはじめとして、さまざまな信仰が集まっている。参道から最近整備された石段を下ると滝の近くまで行くことができる。これもうなるところだ。

ちなみにこの塔の滝の復興にはさまざまなところからの支援があったようだ。宗派を越えて、犬鳴山には支援をしたくなるような何かがあるのだと感じる。

ここは本来なら一気に書き進めるところなのだろうが、ブログとしては参道の途中で息切れかもしれない。本堂を前にした続きは、申し訳ないですが次の記事にて・・・。
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