2月9日、まだ夜が明けない朝の5時にホテルのロビーに下りる。今回宿泊した「アーバイン広島エグゼクティブ」だが、5時から朝食のサービスがある。メニューは簡単なもので、ごはん、パンの他はボタンで機械から注がれる味噌汁、ハンバーグ、焼き魚、肉じゃが、サラダなどシンプルなところだが、それでも朝5時からというのはありがたい。平日はだいたいこの時間に朝食を取っているから同じようなリズムだ。
広島6時24分発の岩国行きに乗る。この日は宮島の大聖院に向かうのだが、それにしても早い時間である。少しずつ明るくなるうちに広島市から廿日市市に入り、6時52分に宮島口に到着する。駅の内装もシックな感じに改装されたようだ。
宮島に渡るのも久しぶりで、ブログ記事で振り返ると2013年の正月以来となる。この時は青春18きっぷで米子~津和野~湯田温泉~宮島~大阪と回る旅の途中だった。その時はJRのフェリー乗り場の建物のすぐ向こうに桟橋があったように思うが、実は2014年からリニューアル工事が行われており、フェンス越しに新たな建物が出来つつあるのが見える。完成後は宮島口のフェリー乗り場は「厳島港」という名前に改められ、現在JRと松大汽船が別々の桟橋から出ているフェリーも同じ場所になるそうである。新たな商業施設もできるそうで、二つのフェリーが共存して盛り上げようというところか。
フェリー乗り場に向かう途中に「かき祭り」の立て看板を見つける。2月8日、9日の両日とあり、正にこの当日だ。今回この2日で中国観音霊場めぐりとしたのは、翌10日から宮島ロープウェーが点検のため運休となるからだが、その結果がかき祭りとはラッキーだ。昼食はかきで決まりかな。
次のJRの7時05分発のフェリーは朝の第2便。この時間から結構多くの人が乗っている。やはり観光地である。
遠方に厳島神社の大鳥居が見える・・・はずだが囲いで覆われている。現在の大鳥居は1875年に建てられたものだが、損傷や老朽化が進んでいることから、昨年6月から「令和の大改修」が行われている。どの程度の改修作業が必要なのかを調査するところから始められたため、現時点でいつまで工事が行われるかは未定とのこと。まあ、今しか見られない宮島の景色なのかもしれない。
宮島に着くと、かき祭りのステージやかき料理のテントがお出迎えである。「かきうどん」や「かき土手鍋」という文字が並ぶ。かき祭り自体は10時頃から開催とのことで、大勢の人が訪ねることだろう。
海沿いに厳島神社を目指す。先ほどフェリーに乗っていた人の全てが観光客というわけではなく、途中で路地に入ったり、もみじ饅頭の店の通用口の扉を開ける人もいる。要は宮島に「通勤」している人たちだ。確かに、店や旅館はたくさんあるが、そこの従業員すべてが宮島に住んでいるわけではなく、住むなら本土側という方も大勢いることだろう。
朝の7時半頃、厳島神社の境内に続く石の鳥居をくぐったのはこの時点で10数人。広島駅を早朝に出発したのは、朝早く空いている時間帯で厳島神社を参拝しようということもあった。
さすがに早朝の参拝者というのは少ない。おかげで回廊を回り、建物の写真を撮るのにも人が入る心配がほとんどない。
厳島神社の潮の干満についてはネットでも日々示されているが、ここは事前にチェックせずに、訪ねたその時の姿を見るのも良いと思う。満潮、干潮、それぞれに違った景色があるが、この時は干潮から満潮に向けて少しずつ潮位が上がりつつあるところだった。
ただ拝殿の裏手のほうまでは潮が来ておらず、「鏡の池」を見ることもできる。
本殿に向けて手を合わせた後で、平舞台に出る。この日は少し寒かったこともあり、水に濡れた床が所によって凍っている。ちょっとすべりそうになる。改めて、工事中の大鳥居を見る。覆いで囲われているのは景観として残念にも見えるが、この位置から見る大鳥居の先の本土側で目立って見える宗教団体の施設の建物が気にならなくて済む。
いろいろ写真も撮りながら、ゆっくりとお参りして回廊を抜ける。
回廊を出たところにある山門は大願寺。鎌倉時代には開かれていたとされる寺院で、かねてから厳島神社との関係が深かった。宮島は江ノ島、竹生島と合わせて日本三大弁才天の一つとされており、厳島神社の中心的な神である市杵島姫神(イチキシマヒメカミ)は神仏習合で弁才天と同一とされていた。それが明治の神仏分離で弁才天が厳島神社から移されたのが大願寺である。
前回厳島神社に来た時には札所めぐりというものを始める前のことで、あまりこうした神仏習合、神仏分離ということを気にすることもなく、単に同じ敷地に寺があるなという程度でしか見なかったが、こうして中国観音霊場めぐりで来るといろいろなものが気になる。大願寺には弁才天の他に阿弥陀如来、如意輪観音、薬師如来、釈迦三尊、不動明王(護摩堂)、弘法大師とあらゆる仏がズラリと祀られている。また中国四十九薬師霊場の第22番、さらには広島新四国八十八ヶ所霊場の第1番でもある。
ちなみに広島新四国八十八ヶ所でいえば、前日訪ねた三瀧寺は第15番、そしてこれから訪ねる大聖院は第87番。さらに第88番は弥山の本堂である。別に狙っていたわけではないし朱印をもらうわけではないが、安芸の国を回る八十八所の最初と最後を訪ねることになるのも面白い。この後、海に面した清盛神社を回ったり、厳島神社の宝物館にて平家納経などを見て、宝物館の奥に続く大聖院に向かう。この先は初めてのゾーンだ・・・。