まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第15番「家原寺」~近畿三十六不動めぐり・15(行基ゆかりの智恵の文殊)

2020年02月27日 | 西国四十九薬師

2月24日、新型コロナウイルス関連のニュースが続く中で、また私の体調も今一つだったのだが、無事に快方に向かったので、家にこもるのもどうかと外出する。今回は遠方に出るわけではなく、人混みや密室に長時間いるわけではないから、まあいいだろう。

今回目指すのは堺市の家原寺(えばらじ)。西国薬師めぐりがきっかけで初めて目にした名前で、私は最初「いえはらでら」と間違って読んでいた。「えばらじ」とわかったのは、前回のサイコロで行き先が決まってからである。最寄り駅はJR阪和線の津久野で、普通のみ停車である。

時刻は午前中のゆったりした頃合いで、快速で行っても乗り換えになるからと、天王寺の頭端式ホームから出る普通列車に乗る。途中、特急「はるか」や関空快速などに何回か抜かれ、天王寺から30分ほどかけて到着する。

家原寺へは駅から徒歩10分とあり、新旧のマンションや商店が続く通りを歩く。

交差点の角に親子の象の像が立つ。何の建物かと見ると、堺市総合医療センターとある。何でまた病院の前に象がいるのだろうか。堺市の資料では、「生命の尊さと愛を伝えたいという気持ちを、大自然の象徴であるアフリカゾウの親子の姿に表現した」とある。医療センターが以前別の場所にあった1996年に制作されたそうだ。

この医療センターの先に進むと、漢字で「家原」と丸くデザインした模様が書かれた門がある。砦を模した造りだなと見るに、「家原城跡」とある。時は戦国時代、今年の大河ドラマ『麒麟がくる』にも登場する三好長慶や松永久秀の頃である(ドラマ観てないけど)。松永久秀の軍勢「泉州衆」と、三好長慶の後を継いだ「三好三人衆」の争いの舞台にもなったという。

石碑の前に池があり、体育館もある公園になっているが、かつて濠としても使われていたのではないかとされる。

さて家原寺に着く。道路に面して駐車用のゲートがあり、500円コインで開くという。逆にいえば500円玉がなければクルマで入ることはできない。

山門があり、門の内側の通路を向いた仁王像が出迎える。その壁には多数の落書きの跡があるが、さまざまな学校への合格祈願の文字が目立つ。結構前に書かれたようなものもあれば、この1~2年というのもある。

仁王門をくぐったところの駐車場の向こうにフェンスがあり、「行基宗 家原寺」の看板がある。行基と言えば奈良時代の高僧で、全国各地の寺にも「行基ゆかり」のところが結構見られるのだが、「行基宗」とはまた大胆な名前である。行基らしいイラストの看板で、拝観料500円、本堂受付横で支払うようにとある。

寺が開かれたのは奈良時代、行基の出自がこの地にあることからだとされている。その後、鎌倉時代に再興され、多くの塔頭寺院を有していたこともあったが、復興と衰退を繰り返していて歴史はよく伝わっていないところもあるようだ。

正面の本堂を見ると、扉や縁側に何やら白いものが多くついている。本堂の横に賽銭箱があり、拝観料はこちらに入れるようだ。ちょうど500円あったからよかったが、細かいのがない場合はどうするのだろうか。横に寺務所があるのでそこで両替してくれるのか、いやいや賽銭箱形式だったら拝観料を踏み倒すこともできそうだ。先ほどの駐車場が500円玉限定だったり、小銭は必須である。

その白いものだが、「志望校合格」「◯◯大学合格」といった合格祈願の文字が書かれたハンカチである。家原寺の本尊は文殊菩薩。地元では智恵の文殊さんとして親しまれているそうで、昔から学力向上や合格祈願に訪れる人が多いという。場所によっては二重、三重にも貼られている。

いつの頃からか、そうした合格祈願の文字というのは先ほどの仁王門と同じく、本堂の壁や天井に直接書かれていたそうだ。そのため「落書き寺」とも呼ばれていたが、寺の方で願掛け用のハンカチを用意し、それを貼りつける形をとった。特に今はちょうど受験シーズンの終盤戦。下の層のハンカチに書かれた日付を見ると昨年の年末や今年の正月のものが目立つので、二年参りや初詣の時季くらいから貼りつける人が多いのかなと思う。これだけ多く貼られているのを見るとご利益はあるのだろう。

本堂に入る。堂内撮影禁止のため画像はないが、確かに壁や柱に祈願の文字の跡が見える。高い位置にあるものは、わざわざ脚立でも使って書いたのだろうか。ここは文殊菩薩を祀っていて、薬師如来は別にあるようだがともかくお勤めとする。

その間、本堂の外の廊下から足音がずっと聞こえる。本堂を回るお百度参りで、賽銭箱の横にはお百度参りの札を入れる箱がある。本堂を一周すると札を納めて手を合わせて・・・を繰り返す人が何人もいる。これも「行基宗」独特のものかなと思うが、行基宗といっても別に怪しいものでも何でもなく、元々は高野山真言宗の寺だったのが、2018年に独立して単立の寺院になったものである。お百度参りは以前から行われていたものだろう。

では薬師如来はと言えば、本堂から離れたところに薬師堂がある。中に入ることはできず、ともかく外でもう一度お勤めとする。

他にも三重塔、四国八十八所のお砂踏みや、行基生誕の地の石碑と祠などがある。いろいろなものが雑然と建っているようだが、外とは壁や塀で厳然と仕切られているようでもなく、開放的な境内とも言える。

朱印をいただき、次の行き先を決めるサイコロである。

1.福崎(神積寺)

2.東山(雲龍院)

3.加茂(浄瑠璃寺)

4.伏見(法界寺、醍醐寺)

5.大原(三千院)

6.湖南(善水寺)

この中の四つが京都府ということで確率が高そう。一方、湖南の善水寺はサイコロに登場するのは7回目とダントツに多いのだが(出目を決めるくじ引きのアプリにも結構偏りがあるのかな)、ここまで出ていない。

サイコロの結果は「3」、浄瑠璃寺である。ここは加茂としているが、JR奈良からもアクセスすることができる。当初、3月はさまざまな予定が入っていたのだが、新型コロナウイルスの影響で中止が相次いで、ぽっかりと時間が空くようになった。春の風情を楽しみにするか。

さてこれで寺を後にして、津久野駅に戻ることにする・・・。

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