今年も秋のシーズンに合わせて、芸備線の「庄原ライナー」が、広島~三次の快速1本を備後庄原まで延長する形で運転されている。緊急事態宣言も解除されており、これを受けて庄原市、庄原観光推進機構が主催しての各種日帰りツアーが企画されている。昨年はこのうち、庄原ライナーと熊野神社、そして備後落合駅から木次線のスイッチバック体験というコースに参加した。広島に転居して間もない頃だったが、久しぶりに広島県北を訪ね、ガイドからさまざまな話を聴くこともできた。木次線に乗ることができたのも大きい。
そして今回、同じ木次線コースも設定されているが、別のコースが目に留まった。備後庄原を出発し、かんぽの郷庄原での昼食は同じだが、帝釈峡(下帝釈)の神龍湖の遊覧船での紅葉見物と、東城の町並み散策というものである。いずれもこれまで訪ねたことがないスポットで、東城にしても芸備線や中国自動車道で通過はしているものの、町中に入ったことはなかった。日帰り9800円だが、往復の交通費(復路は東城駅からの高速バス)、庄原からの貸切バス代、昼食代、神龍湖の遊覧船、ガイド費となるとこのくらいで妥当なところだろう。
さて、出発の数日前に最終旅程案内、広島~備後落合の乗車券が自宅に郵送されてきた。乗車券の金額が16900円とあり一瞬ドキッとするが、これは回数券をバラで配付したものだ。その中に、芸備線三次~備後落合~新見での臨時便運行に関するJRからのお知らせも入っていた。10月23日~12月5日の土日祝日限定で、ちょうど冬の青春18きっぷの期間前までである。自治体と連携した芸備線利用促進策の一つというが、ただこれで目立った効果がないとなると、また部分廃止の話もちらほら出るのかなと思う。
11月3日、10時05分発の「庄原ライナー」に乗るべく広島駅に向かう。キハ47の2両編成のボックス席はすでに先客で埋まっていて、ドア横のロングシートに腰掛ける。お出かけスタイルの人も目立ち、同じツアーに参加する人たちに見える。
天気のよい中、北東方向に走る。下深川から先は快速運転ということで途中の小駅は通過するため、結構スピード(と揺れ)を感じる。
三次に到着。ここで下車する人が多い。3分停車の間に先頭部に「庄原ライナー」のヘッドマークがかかる。この先、備後庄原まではノントップで走る。三次~庄原間は路線バス、高速バスの両方が走っているし、本数も圧倒的に多い。広島からの利用客を見越してのことだが、こちらも高速バスが走っている。
11時56分、備後庄原に到着。ツアー参加のほか、一般の観光で来た様子の客がほとんどである。改札口では名物ガイドの熊本「隊長」がお出迎えで、ツアー参加者は待合室で受付を行う。また一般の観光客にも、市内のコミュニティバスの案内があった。個人で帝釈峡などに向かうのかな。
貸切バスに乗り込んだのは20名あまり。一人参加は私だけのようで、あとはご夫婦、カップル、友人連れ、家族連れ、子ども連れ。まずは昼食会場であるかんぽの郷庄原に向かうが、遊覧船の時間の関係で滞在時間は40分しかない。「庄原ライナーがちょうど昼前に着くので、どうしても後のスケジュールが慌ただしくなって・・」とは熊本隊長。東城からの帰りの高速バスの発車が16時21分(これが最終)で、その時間までに観光スポットを消化しなければならないから結構慌ただしくなるようだ。芸備線だけでなく、地元の備北交通バスの利用活性化の一つでもあるので・・・。
かんぽの郷に着き、早速昼食である。メニューは松花堂弁当で、これなら食べるにもそれほど時間はかからない。食事を終え、ほとんどの人が土産物コーナーをのぞく余裕もあった。
さてこのかんぽの郷、昨年来た時にも日本郵政から庄原市への事業譲渡の話が出ていることに少し触れたと思うが、それから1年経つ中、正式に庄原市が取得して運営管理を行うことが決まったそうである。それにともない、今年の12月中旬でいったん閉館し、改修工事を行っって来年の春を目標にリニューアルオープンするとあった。県内ながら一度泊まりに来てもいいし、日帰り入浴でもまた来たいものだ。
13時、貸切バスで帝釈峡を目指して出発。のどかな車窓を見ながら、熊本体調のガイドを聞く。ところどころに親父ギャグが入る。テレビの取材なども受け、自らもYouTubeでの動画配信をするだけあってお手のものだ。庄原および周辺エリアのツアーとなるとほぼ間違いなく隊長がついてくる。
国道432号線から県道23号線に入る。熊本隊長から「日本ピラミッド」の案内がある。葦嶽山という山だが、昔から神武天皇陵と言い伝えられていたそうで、どの方向から見ても三角形に見えることから日本ピラミッドと呼ばれるようになったという。パワースポットということでたまにテレビの企画でタレントも来るそうで、その時も熊本隊長がガイドを買って出たとか。
神石高原町に入る。この日の天気は晴れの予報だったが、山間に入るといわゆる「天気雨」になった。この先大丈夫だろうか。また道幅が狭い道路に入るが、対向車も多い。「10年分くらいのクルマがいっぺんに通ってます」と隊長は言うが、やはりここは庄原方面からの最短ルートなのだろう。
幸い通り雨だったようで、帝釈峡に着く頃にはまた回復した。駐車場は多くのクルマでごった返している。さてこれからこの日メインの神龍湖の遊覧船である・・・。