10月30日、早朝の新幹線で熊本入りし、8時43分発の肥後大津行きに乗り込む。「スーパー早特きっぷ」の乗車券は熊本までだが、乗り継ぎ時間がわずかで券売機できっぷを買う時間がなかったので、ICカードをタッチして改札を抜ける。肥後大津まではICカードの有効区間である。
2両編成のロングシートの車内は部活動の生徒らを中心に混んでいた。その中で空席を見つけて着席する。そのまま熊本近郊を進むうち少しずつ下車があり、肥後大津に着く頃には空席が目立った。
9時16分、終点の肥後大津に到着。下車した客の中にはキャリーバッグを手にする人もちらほら見える。そういえば肥後大津は阿蘇くまもと空港の最寄り駅である。それにしても、熊本駅や中心街から直通のバスもあるだろうに、あえてここまで鉄道に乗るとは。案内を見ると、肥後大津からのバスである「空港ライナー」、なんと予約不要かつ無料で運行されているとのこと。空港までは15分かかるが、熊本駅から1時間、中心街の桜町バスターミナルからは50分かかるそうだから、豊肥線経由でも引けは取らないようだ。
空港ライナーが出る側の建物は大津町の案内所のもので、JRの窓口は構内の反対側にある。そこで急遽ネット予約を変更して確保した「あそぼーい!」の指定席特急券を受け取る。その前にいた客が「あそぼーい!」の空席を尋ねていたが、満席とのことだった。この「あそぼーい!」は全車指定席。よく、先ほど新幹線の中での思いつきで肥後大津からの空席が見つかったものだ。なお、阿蘇からの帰りもいったんここで改札を出ることにして、待合室で見つけたコインロッカーに宿泊用の荷物を預ける。
「あそぼーい!」は定刻の9時40分から5分ほど遅れて到着。指定席券を持っているのでその席に行けばいいのだが、隣の通路側の席にはすでに(同じようなタイミングで入手したと思われる)客が座っている。それは問題ないのだが、車内を回るのに立ったり座ったりでは気を遣う。幸い、車端にベンチ式のフリースペースがあり、窓も大きく眺望が効くのでここに陣取る。
この「あそぼーい!」だが、平日は「九州横断特急」として、オリジナル型のキハ183系で運行されている。温シーズンの土日祝日は全車指定の観光特急として、熊本~阿蘇~別府を結ぶ。この名前は、かつて豊肥線を走っていたSL列車「あそBOY」を受け継いだものである。車両はキハ183系の改造で、かつては「オランダ村特急」、「ゆふいんの森」、「シーボルト」などの名称で、長崎線や久大線などを走っていた。
外観の特徴は何と言ってもパノラマシート。こちらの席はネット予約では取り扱っておらず、JR九州の窓口での販売とのことである。
車内はJR九州の観光列車に共通するいわゆる「水戸岡デザイン」である。「あそぼーい!」には黒犬をモチーフにした「くろちゃん」というマスコットキャラクターが車内のあちこちにあしらわれている。阿蘇を流れる白川水系の黒川(ややこしいな)の近くで生まれたという設定でつけられた名前だという。阿蘇の駅舎が黒く塗られたのも「くろちゃん」に合わせてのことかな・・?
その「くろちゃん」の名前をつけた「白いくろちゃんシート」(小さな子ども連れを前提とした造りの座席)や「くろカフェ」というのもあるし、子どもたちが遊べるスペースもある。この日も家族連れの乗客が目立ち、そりゃ満席になるのもうなずける。
車内を一回りする間に高度を上げ、立野に到着。しばらく停車した後、三段式スイッチバックで上っていく。アテンダントからスイッチバックの紹介のアナウンスが入る。
この後は阿蘇の外輪山、そして阿蘇五岳の景色を眺める。この時点では、阿蘇中岳が噴火した様子というのは全く分からなかった。
10時25分、阿蘇に到着。40分あまりの乗車だったが、観光列車の雰囲気を楽しむことができた。阿蘇でしばらく停車することもあり、ホームでは撮影の一時となった。阿蘇で下車した人は思ったより少なく、多くは九州を横断して、大分、別府まで乗るようだ。
さて、阿蘇にやって来た。目指す札所の西巌殿寺は駅から歩いて10分ほどのところにある。一方で、噴火の影響で火口および奥の院には行けないにしても、草千里折り返し運転のバスの時間も気になる。さて、どうしようか・・・。