中国四十九薬師めぐりは益田から浜田に向けて、国道9号線を行く。思わぬ形で雪舟関連の見学をしていたので、益田を出発したのは10時前である。ここから浜田に向かい、広浜鉄道跡の散策、宇都井にて江の川鐡道のトロッコ乗車、そして口羽での札所めぐりと、石見地方を横断していく。こう並べると結構スケジュールが立て込んでいるように見える。
国道9号線は山陰線に沿う区間でもあり、日本海に近いところも行くのだが、このところは最短ルートで結ぶ山陰道の整備が順次進んでおり、遠田~三保三隅間の「三隅・益田道路」も2025年度の開通に向けて工事が進められている。三保三隅から先は浜田まで続いており、益田、浜田両市のアクセス向上につながるという。
これから目指す長福寺は浜田市街の手前にあり、三保三隅から山陰道に乗ればそのぶん早く着くのだが、そのまま在来の国道9号線を走る。
立ち寄り地としたのは、「道の駅ゆうびパーク三隅」。名前にもあるように夕日のスポットであるが、山陰線の列車の撮影スポットとして知られる。折居~三保三隅間、日本海を背景として走る列車の写真をどこかでご覧になったことがある方も多いのではないだろうか。
ちょうど道の駅には展望スペースが整備されており、撮影目的でなくても列車を見物するには絶好の位置である。この場所の列車通過予定時刻も示されている。これによると、間もなく10時29分、益田行きの「スーパーまつかぜ1号」がやって来るとある。せっかくなのでその走りを見ることにしよう。
江木蒲鉾店の赤天などを土産で買い求め(全国旅行割引でついてきたクーポンはここで使用)、展望スポットにてしばらく待つうちに浜田方面からエンジン音が少しずつ聞こえてくる。「スーパーまつかぜ1号」益田行きである。鳥取から益田までの長距離運転だが、2両編成。
「スーパーまつかぜ1号」から間もなく、後続の益田行き鈍行が10時42分にやって来た。こちらはキハ120の1両編成。本来ならあの列車の中に身を置きたいのだが、こうしていい景色をバックに走る列車を外から見るのもいい感じである。これらの写真は今や珍しくなったコンパクトデジタルカメラによるもので、スマホのほうがより鮮明な画像になるのだろうが、天候に恵まれた。こうした一瞬をカメラに収めたくなる撮り鉄の気持ちも、多少わからないでもないな・・。
その数分後の10時49分、今度は益田方面から「スーパーおき2号」がやって来る。ちょっと角度を変えようと、道の駅から下の集落へ続く道に出て、先ほどより低い位置で列車を間近に見ることにする。こちらの道端で三脚を立てる撮り鉄がいて、その人の視界の妨げにならないと思われるところに陣取る。単線区間で予定より数分遅れたようだが、通過を見届ける。
道の駅で時間を過ごした後、国道9号線を進み周布駅近くの交差点から県道に入る。浜田市の美川地区というところである。
カーナビの案内で長福寺に到着。ただ、駐車場が見当たらない。その中で、寺の門前に美川保育園の建物があり、寺の案内板などからそこも含めて寺の境内だと思われた。そこで保育園の敷地の隅にクルマを停め、山門をくぐる。
そこは本堂前の境内でもあり、保育園のグラウンドでもあった。遊具がここかしこに置かれており、アンパンマンやバイキンマンもいる。保育園は寺が経営しているのかな。さすがに日曜日ということで園児の姿は見なかったが、平日だと境内で園児たちが元気に過ごしている中を訪ねることになったのかな。まあ、美川地区にあって心安らぐ場所であることには違いないだろう。
お参りということで本堂の扉に手を掛けると開いたので中に入る。書き置きの朱印も置かれている。
長福寺が開かれたのは鎌倉時代、周布兼正によるとされる。当初は天台宗の寺として護国院という名前だったが、室町時代に大通和尚が招かれて臨済宗に改められた。護国院という名前から、安国寺の意味合いもあったのではないかと言われている。
寺を後にして、山陰道に合流。バイパス道であり、浜田駅近辺を迂回する。これから広浜鉄道跡を経由して宇都井に向かうが、その前に、浜田から1駅出雲市寄りの下府駅に向かう。以前、中国観音霊場めぐり(第22番・多陀寺)で訪れたところである(その時は列車ではなく路線バスだったが)が、広浜鉄道の跡地めぐりとしてはここが起点でもある。