まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第14回九州西国霊場めぐり~大相撲九州場所千秋楽観戦記・3(そして優勝決定巴戦へ・・)

2022年12月23日 | 九州西国霊場

大相撲九州場所千秋楽は幕内の土俵入りである。この時間になるとさすがに館内も多くの客が訪れ、満員御礼となる。土俵入りはまずは東方から。2敗で単独トップの高安、そして3敗で追う大関貴景勝が最後に土俵に上がる。

続いては西方の土俵入り。先頭は平戸出身の若手・平戸海ということで館内から拍手が起こる。特に、私が座っていた席の右手には応援団らしき方々がいたのでより大きな拍手である。その次は期待の新入幕・熱海富士だがこちらは残念ながら大負けである。

そういえば、他の力士の写真はあるのに、優勝争いしている阿炎の土俵入りは撮っていなかったな・・。今思うと、高安が本割で勝ってすんなりと優勝を決めると踏んでいたのだろう。

本来ならここで横綱土俵入りのはずだが、照ノ富士は休場。この先、照ノ富士の土俵入りをナマで観る機会は訪れるだろうか・・。

場内は中入。正面の実況席には北の富士さん、向正面には舞の海さんの姿が見える。テレビ観戦だと中入の時間は結構あるように感じるのだが、現地だとその時間も館内のざわめきの中であっという間に過ぎるように思う。もう?というタイミングで中入後の取組の拍子木の音が響く。碧山と隠岐の海の一番から始まる。

遠藤の一番には今も永谷園の懸賞がかかる。永谷園は変わらず応援しているということだろうが、このところ、遠藤が大相撲の話題にのぼることもめっきり減ったように思う。

一山本と熊本出身・佐田の海の一番は7勝7敗同士。このところ、千秋楽の取組は14日目の打ち出し後に編成するので、7勝7敗同士の取組も結構多い。それだけガチンコ勝負をお楽しみに・・ということだが、この一番も激しい相撲で、佐田の海の押しに一山本が土俵下まで吹っ飛んだ。物言いがついたが、結果は佐田の海の勝ち。敗れた一山本は頭を打ったようで、最後は車椅子で花道を下がった。大事にならなければいいが・・。

照強と逸ノ城。名古屋場所で優勝した逸ノ城だが、場所中に、部屋のおかみさんに暴力をふるった疑いが報じられている。合わせて親方とも口をきかない、弁護士を通してしか話さない・・というトラブルが報じられていて、そのこともあってか今場所は成績が振るわない。その逸ノ城の対戦相手が、ここまで14戦全敗の照強。時間前の塩撒きは客席を喜ばせたが、相撲は一方的に敗れた。これで15戦全敗。千秋楽まで土俵に上がったのは本人のプライドだろう。その後、照強に関してもいろいろ報道が出ているようだが・・。

幕内前半の取組が終わり、小休止の後に登場したのが平戸海。ここまで10勝していることもあり、千秋楽の対戦は奄美出身の明生。九州勢同士の一番に、私の横の平戸海応援団も盛り上がる。熱戦となったが、最後は実力者の明生が突き出して勝利。それでも健闘に大きな拍手があった。

そして高安が登場。対戦相手は阿炎。高安が勝てばその時点で初優勝が決定する。これまで何度も優勝争いに顔を出しながら、そしてもうすぐ優勝というところで敗れてしまう・・・。兄弟子だった稀勢の里と同様、そのもどかしさも人気の一因である。さすがに今場所はスムーズに優勝を決めるだろうという雰囲気だった。懸賞の垂れ幕が何度も土俵上を回る。

しかしながら、阿炎が思い切りよく出て、そして高安はまたも硬くなって、阿炎がそのまま突き倒す。場内は歓声よりもため息のほうが多かったように思う。敗因はその後いろんな親方が解説していたが、ともかくこれで両力士が3敗で並び、結びの一番で貴景勝が勝てば優勝決定戦は3人の巴戦にもつれることとなった。最後の最後で、全く分からなくなった。

これより三役。東方からは霧馬山、北勝富士、そして貴景勝が土俵に上がる。

そして西方からは豊昇龍、正代、若隆景が登場。横綱不在の中、本来なら貴景勝と正代という大関同士の千秋楽結びの一番となるところ、ご承知のような成績なので・・。初場所は1横綱1大関となることが確定だが、照ノ富士は初場所も休場が濃厚で、千秋楽結びの一番でその横綱大関戦も組めないという事態である。

これより三役、まずは前半優勝争いをリードしていた豊昇龍が霧馬山を破る。終盤崩れたが関脇で11勝ということで、まずは大関昇進に向けての第一歩となった。

続いては正代と北勝富士という負け越し同士の対戦。北勝富士が押し出して正代は6勝9敗。大関陥落に花を添える一番となった(言葉の使い方としては誤っているが、皮肉を込めて)。これで来場所、御嶽海もできなかった関脇での10勝で復帰するとは思えない。

そして結びの一番は貴景勝と若隆景。若貴対決、上杉景勝と小早川隆景の一戦は懸賞の垂れ幕が何度も回る。スポンサーを読み上げるだけでほぼ時間いっぱいである。

勝負は意外にもあっさりと貴景勝がはたき込みで勝ち、これで高安、阿炎とともに3人による優勝決定巴戦となった。こうなると、番付順で貴景勝が優勝という予想も多くなるだろう。で、もし優勝したら来場所は綱取りか・・。

優勝決定戦を前に、まずは聡ノ富士による弓取式。確か今日、11時頃に相撲を取っていたよな。それから6時間以上間が空いて再び土俵に上がっている。職業=弓取式といってもいいくらいのキャリアを持つ。

しばらくの休憩があり、東方から3人の力士が登場。抽選により、まずは高安と阿炎という本割と同じ対戦となった。本割では阿炎が長いリーチを活かした突っ張りで高安を圧倒したが・・。

立ち合い、阿炎が左に動く。変化について行けず高安はバッタリ。そして高安はその場にうずくまったまま動けない。

阿炎も心配そうに見つめる中、呼出に肩をかつがれてようやく起き上がり、土俵下に下りたが心ここにあらずという表情である。立ち合いの当たりどころが悪くて脳震盪を起こしたのではとされている。

続いて、貴景勝が土俵に上がる。阿炎が勝てば優勝、貴景勝が勝てば高安との取組だが、先ほどの状態で高安が土俵に上がれるのか。ここは貴景勝が阿炎に勝ち、そのまま半自動的に優勝となるのだろう。

・・・と思ったが、今度は阿炎が猛烈な突っ張り。そしてそのまま突き出した。先ほどの変化を見た貴景勝が思い切り出られなかったという分析のようだが、いずれも阿炎の作戦勝ち。九州場所は何とも意外な形で、本人も思わなかったであろう形での優勝が決まった。・・・のはいいとして、阿炎の優勝が決まるとともに席を立つ人が結構多かったのが印象的だった。私の席の近くでも、高安の優勝を期待していたのか「つまらん」と半ば腹を立てた様子で席を後にした人もいた。

表彰式、神送りの儀式まで見ようと来たのだから、そのまま席にとどまる。土俵に天皇賜杯、優勝旗が運び込まれ、阿炎が若者頭の花ノ国(藤井寺市出身)とともに入場する。

国家演奏の後、八角理事長から天皇賜杯の授与。伊勢ヶ濱審判部長から優勝旗の授与。そして内閣総理大臣杯(代読は誰だったか)の授与である。

この後はインタビュー。阿炎といえば新型コロナウイルス感染拡大の中、ガイドラインに違反して接待をともなう飲食店に出かけていたとして出場停止の処分を受けていた。一時は引退届を出したものの預かりの扱いとなる中、幕下からここまで戻り、そして初優勝となった。出場停止の時はボロカスに言っていた人たちも、こうなれば手のひら返しである。入院中の錣山親方からのメールによる励ましも美談となる。まあ、これはこれでよかったのでは。

この後もさまざまな表彰が続く。テレビ中継だと北の富士さん、舞の海さんによる今場所の総括で、これまでの取組の映像が流れ、表彰式はその合間に映るくらいだが、土俵上では入れ替わり立ち替わりさまざまな人が上がる。せっかくなので列挙してみると・・・

モンゴル国総理大臣賞、アラブ首長国連邦友好杯、メキシコ合衆国友好盾、日仏友好杯、タイ日友好杯、ハンガリー国友好杯、チェコ国友好杯。NHK金杯、毎日新聞社優勝額、福岡市長賞、福岡県知事賞、大分県椎茸農協賞、宮崎県知事賞、(清酒)大関賞、八女茶振興会賞

友好国の相手の顔ぶれも昔からなのだろうが、ハンガリーやチェコといった、日本にそこまでなじみがあるわけでもない国からの友好杯が毎場所提供されるのはどういう経緯があったのかなと思う。それにしても、副賞の「〇〇1年分」というのは、耳にしても豪快で景気のいい話である。私も何かいいもので「〇〇1年分」というのをもらってみたい。

優勝力士表彰の次は2022年の最多勝力士表彰。今年は若隆景が57勝で受賞。春場所に初優勝したのも大きかったが、今年の6場所すべてで勝ち越した唯一の力士という安定感も見られた。ただ、大関挑戦となるとどうかな・・。

その後は三賞の表彰式。殊勲賞・高安、敢闘賞・阿炎、技能賞・豊昇龍ということで、今場所を沸かせた力士として順当な選出である。それにしても、同点で優勝決定戦に進んだはいいものの、そこで敗れたために何ももらえないというのも気の毒だと思う。さすがに、上に並べた各賞の一つを同点力士に回すわけにもいかず、三賞の一つで我慢するしかないのかな。そうなると、三賞の対象にならない大関が一番割が合わないかな・・。

表彰式が進むにつれて客席がまばらになる中、最後は、出世力士の手打式、神送りの儀式である。出世力士とは、今場所で前相撲に合格し、来場所で初めて番付に名前が載る力士のことである。今場所は8人の出世力士が土俵に上がり、三本締めの手打ちを行う。そして最後は行司を胴上げ。土俵祭でお迎えした神様を送り返すものだ。これをもって、神事の要素もある大相撲のすべての興行が千秋万歳となる。これは本場所に足を運ばなければ観られない行事である。

福岡国際センターを後にする。外はすっかり暗くなっていた。神送りの儀式を見るのは計算していたが、優勝が巴戦になるとは予想外で、思ったより遅く出た形である。新幹線のチケットは・・・まあいいや、後続の自由席に乗れば済むこと。国際センターの前からは博多駅行き、天神駅行きの西鉄バス臨時便乗り場が設けられる。ペイペイドーム福岡での試合後と同じような光景だ。ここまで残っていた人はさすがにそこまで多くなく、次に出る便でそれぞれ捌けそうな人数のようだ。そのまま大博通りを直進し、博多駅に到着・・。

さて今回初めて九州場所に出向いたが、来年の今頃も広島に住んでいるかどうかはさておき、アクセスもいいし、イス席でも結構土俵が近くに感じて、しかも他の場所に比べて割安感があるので、また来てもいいかなと思った。仮に2023年の九州場所を観戦したとして、その時の番付の顔ぶれはガラリと変わっているだろう。せめて、もう1人くらいは新しい大関が誕生しているといいのだが・・・。

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