初めての観戦となった広島マツダスタジアム。独特の形状をした球場の姿が目に入ってきた。
スポーツニュースなどで映像が流れるエントランスのスロープは既にチケットを持っている客用ということで、この日、球場での当日引き換えを選んでいた私は正面の入口に向かう。旧広島市民球場では、一応禁止されていたものの、缶・ペットボトルの持ち込みは事実上フリーだったのだが、こちらでは手荷物検査もちゃんと実施する。それも、大阪の大正にあるドームのように「形だけ」(それやったら最初からするな)という検査だけではなく、係員がバッグに手を突っ込んでの念入りなもの。するとペットボトルが「摘発」の対象となり、移し変えコーナーに移動される客が多い。ビン、缶はともかくペットボトルはNPBの球場によって持ち込み可否の扱いが異なっており、客としても戸惑うところである。
この日指定されたのは「スカイシート三塁寄り」というところ。二階席というか、中二階のようなところへ案内される。上段スタンドの中でグラウンドにせり出したところ。ここで3000円である。もっとも、旧市民球場の上段席の真ん中寄りも3000円だったと思うので、そんなものかな。いずれにしても、グラウンド全体を見渡すにはなかなかよいところである。席の前は、スコアやアウトカウントを表示する電光掲示板になっていた(試合途中でスクリーンに映し出されたので気づいた次第)。
新球場はとにかくありとあらゆるシートを備えており、おそらく、現在の日本の球場で考えられる種類の席を持っているのではないかと思う。
今や定番となったグラウンドレベルのシート。これがネット裏とベンチの間にも設けられるとともに、レフト後方にも掘り下げ式のシートが見られる。
あるいは、このようにグループで料理などを囲みながら楽しめるシートもある。家族連れなどにはいいだろう。
ニュースでもよく取り上げられるのは、右中間にある寝そべりシート。うーん、20年くらい前のパ・リーグなら、外野席で寝そべるのは当たり前だったけどね。最近では「寝そべるのはマナー違反」という面もあるが、外野席といえば寝転がるものでしょう。いつからかな、外野席が騒然とした応援の場と化してしまったのは・・・・。このようにシートで保護してやらないといけないのが、時代の流れを感じさせる。
その応援の場は「パフォーマンスシート」というのが用意されている。もっとも、ライトスタンドと三塁内野後方という非対称な位置に設けられている。日曜日のこととて、大阪からの応援団や、関西からのファンも多く詰め掛けていた。ここマツダスタジアムでも、あの岡本太郎の猛牛マークが翻った。応援する人はここで思う存分に声を出せる。ただ内野席後方のため、「ここまで飛ばせ、○○!」というコールはできなさそう。
コンコースも開放的で、どこからでもグラウンドを見ることができるのも気持ちよい。最近のドーム球場などとは全く違う光景である。野球の風を思い切り楽しむことができる。
心残りがあるとすれば、今回はクルマでの移動のためにビールが飲めないこと。また、球場に来る前に昼食を済ませたために、さまざまなグルメを楽しむにはちょっと腹がくちいという状態というところ。まあそれはこの次の楽しみということで。
・・・一応、試合のレポートも。
私の座ったエリアはカープファンが多い中でところどころバファローズファンも見られるという、両チームのファンが混在したエリア。試合中交互に歓声があがる。
この試合の始球式は、宮崎県の東国原知事。カープのキャンプ地が宮崎は日南ということで、地元のPRも兼ねてのこと。そりゃそうと、宮崎県といえばカープの他に西武、巨人、ソフトバンクもキャンプを張っている。いつしか、西武ドームでも始球式を務めた試合を観戦したことがあり、県の顔としていろんな球団を幅広くPRする知事の姿勢にうなずける。
先発は広島が斉藤、オリックスが平野佳。序盤は両チームともランナーを出すものの拙攻で得点に至らず、ファンからもイライラする声があがる。
その雰囲気を打破したのが、今年日本球界に復帰したマクレーン。4回、打球一閃、狭く造られているレフトスタンドの「場外」へと飛んでいった。かつて、西武でカブレラ(現オリックス)とともに「ツイン・バズーカ」を襲名したこともある大砲。この前の登板で完封した平野から得点を挙げる。私の後ろに座っていた子どもが「オレ、生でホームラン初めて観たよ!」と、友達同士で喜んでいたのが印象的だった。私が初めて生で観たホームランは、一体誰のものだったかな・・・。
オリックスも直後の5回表にフェルナンデスのタイムリーで同点とするものの、その裏、投手の斉藤のヒットを足がかりにチャンスを作ったカープが、3番に定着した赤松、5番喜田剛、そしてマクレーンのタイムリーで一挙5点を奪う。この試合の前まで打線が湿り勝ちだったカープファンとしては大喜びである。
6対1となったところで、交流戦好調のホームチームと、この試合の前まで4連敗のチームでは勝敗が決まったようなものである。後は球場の雰囲気を楽しむことに。カープの側は代打で緒方孝市、石井啄朗の両ベテランが登場したし、林、横山、シュルツ、最後はセーブがつかない展開ながら永川も登場というサービス。途中で照明も点灯されたし、とにかくいろんなものを見せてもらう展開だった。
一方のバファローズ打線はもう何もすることがなく、フェルナンデスの打席のときに「新幹線にブチ当てろ!」とコールするのが精一杯。その打球も、新幹線やその手前を走る在来線・広島貨物ターミナルに飛ぶどころか、ボテボテの内野ゴロ・・・。
最後は永川が3人で押さえ、試合終了。まあこの日は球場の雰囲気を楽しみに来たと割り切って、サバサバしたもので球場を後にする。広島駅までの道は人で埋め尽くされている。「広島って、こがいにぎょうさん人間がおったんじゃろうか?」と話す人も。
せっかくなので夕食をと、向かったのは駅ビル「アッセ」にあるお好み焼「麗ちゃん」。広島を訪ねた際によく入るお好み焼屋。
ここでもビールは我慢し、肉玉にいか天のトッピングをほおばる。お好み焼屋と居酒屋が並ぶこの一角、野球観戦の出で立ちの人たちも多く立ち寄り、帰宅前のしばしの憩いを楽しむようだ。
さてこれから尼崎まで(ノンストップで)4時間の道のり。日付が変わるまでに帰宅できるかな・・・・(結局サービスエリアの休憩もあり、日付を少し回ってしまった)。
建設前はすったもんだあった新球場。初年度の日曜日のデーゲームということもあるのだろうが、客の入りも上々だったし、ファンからも支持されているようだった(少なくとも、広島駅から徒歩10分の道のりを「不便」とあからさまに感じていたような客はいなかったと思う)。これから、広島の新たな観光名所として多くの客を集めることだろう。
そのフィーバーに後押しされ、今季がんばっているのがカープ。貧打と言われながら守りの野球ができており、前評判の高かった阪神、中日が今ひとつなだけに、今年はクライマックスシリーズへの躍進も期待できる。「今年こそカープ対オリックスの日本シリーズを!」と願うのだが、オリックスがなすすべなくこのていたらくでは・・・・。
ベンチから身を乗り出して采配をふるっている大石監督の姿もどこか寂しげであった。
それはさておき、また訪れてみたい球場だし、多くの人に訪れて楽しんでほしい球場である。今度は、ぜひ球場内のグルメも楽しんでみたいものだ。もちろん、「カープ対バファローズの日本シリーズをこの球場で観る」という憧れは、まだ捨てていない・・・・。