まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

母娘凌辱!

2018-06-17 | イタリア映画
 「ふたりの女」
 第二次世界大戦中のイタリア。未亡人のチェジラは娘のロゼッタと共に、ローマから田舎町へ疎開する。母娘はインテリ青年のミケーレと親しくなるが…
 「ひまわり」や「昨日、今日、明日」etc.数々の名作を生み出した名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督と大女優ソフィア・ローレンのコンビ作。ソフィア・ローレンはこの作品で、アカデミー賞主演女優賞を獲得しました。非英語映画でのオスカー演技賞受賞は、この映画でのソフィア・ローレンが初なんだそうです。

 チェジラとロゼッタに降りかかる悲劇を知っていたので、観るのが正直怖かったのですが、思ってたような陰鬱で陰惨な映画でなく、どちらかといえば終盤までは人情喜劇っぽかったのが意外でした。とにかく明るいイタリア人、というか、バイタリティあふれるイタリア人気質には驚かされます。空から爆弾や銃弾が降り注いでるのに、たじろいだり慌てたりせず、かなり平然としてるんですよ。私だったら、恐怖で精神に異常をきたしてるでしょう。死と隣り合わせの恐怖に慣れてしまってる、というのも戦時下特有の異常事態です。

 疎開地でのチェジラ母娘と人々との交流は、明るく元気いっぱいで、なおかつほのぼのしてます。クスっと笑えるシーンや台詞も多く、もともとは喜劇の名匠であるデ・シーカ監督らしさにあふれてました。いつ死ぬかわからない緊迫感、危機感の中にあっても、みんな絶望したりガックリまいったりせず、何とか生きよう、生き残ろうとする必死さ、たくましさは、ぬるま湯のような平和に浸っている現代人にはない力強さ。みんな食べることで頭がいっぱい、人間にとって結局いちばん大事なことは、やっぱ愛とか恋とかではなく食べること、なんですね~。食糧難、絶対に経験したくないです!不満だらけの人生でも、食べ物にだけは不自由してない私。これって幸せなことなんですよね!

 イタリア女性、特にイタリアの母ちゃんの気性の激しさって、イタリア映画ではおなじみですが。チェジラの喜怒哀楽にも圧倒されました。大したことじゃなくても鬼の形相で罵倒&威嚇するので怖いわ~。情が深すぎるのも何か重い。ロゼッタを溺愛してるチェジラですが、私がロゼッタだったらあれは鬱陶しいわ~。そんなチェジラの過保護ぶりも、ユーモラスに温かく描かれていたのですが…ローマへ戻る途中、チェジラとロゼッタに襲いかかる災厄…そんなに過激なシーンにはなってないのですが、それでも起こったことを考えると戦慄、暗澹となります。あんな目に遭うくらいなら、爆弾や銃撃で殺されたほうがまし!死よりも恐ろしい、忌まわしい恐怖と苦痛です。自分だけならまだ耐えられるかもしれないけど、愛する人が目の前で…私なら絶対に発狂するわ~。人間をケダモノにしてしまう無秩序と荒廃が恨めしい。戦争中は、イタリアだけでなく、世界各地で多くの女性たちがあのような戦禍に身も心も傷つけられたのかと思うと、平和な世に生まれ生きてることに安堵と罪悪感を覚えてしまいます。

 チェジラを熱演してオスカーを獲得したソフィア・ローレンは、当時26歳!おばさんなのに少女ぶってる綾瀬はるかとか宮崎あおいとかより年下!まさに野生の美女!迫力ありすぎで、フツーの男じゃとてもじゃないけど対峙できません。フツーっぽくきれい、可愛い、みんなに好かれたい、共感されたいな日本の女優とは、ほとんど違う生き物な女優です。おっぱいとお尻が大きいけど、ウエストはくびれてるというグラマー(死語?)の見本みたいなセクシー肢体。生命力あふれる女の色香と強靭さに圧倒されます。インテリ青年ミケーレ役は、何と!若き日のジャン・ポール・ベルモンド!イケメンではないけど、未亡人へのシャイな片想い演技が可愛かったです。彼のイタリア語は吹き替えなのかな?
コメント (5)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

育児狂気

2018-03-13 | イタリア映画
 「ハングリー・ハーツ」
 生まれた赤ん坊を常軌を逸した方法で育てようとする妻ミアに、ジュードは戸惑い不安に苛まれる。やがて事態は、思わぬ方向へ発展し…
 スターウォーズのカイロ・レン役や、高く評価された「パターソン」など、メジャー系大作のみならずアートな独立系の秀作でも人気、いま最も映画ファンに注目されている若手俳優のひとり、アダム・ドライバーの主演作。TVで放送されたSWのカイロ・レンを見て、なかなかかっこいいじゃん!誰?え?「沈黙 サイレンス」の神父?!ぜんぜん気づかんかった!なかなかのイケメンなだけでなく、なかなかの役者じゃないか。流行には乗れない私も、アダム・ドライバー人気には乗っかれそう。彼の出演作がもっと観たいな~と思ってたら、運よくこの作品と出会えました。

 この映画のアダム・ドライバーは、見た目も役もごくフツーの市井の青年で、宇宙の悪人と神父な彼しかまだ知らなかった私の目には、新鮮に映りました。一見ヤボったいけど、よく見るとイケメン。ちょっとキアヌ・リーヴスを思わせるアジアっぽさのある顔と、長身でかなりヌオ~とした巨体が特徴でしょうか。優しくデリケートな役と演技でも、甘っちょろく見えない暗さ、思いつめた張りつめた雰囲気が、何か予期せぬことを引き起こしそうな怖さ、面白さを醸していて、それが魅力となってます。アダム・ドライバーって驚いたことに、俳優になる前は軍人だったとか。赤ちゃんをあやしてる優しいパパぶりとか、ラブシーンで見せるムチムチした上半身裸とか、アダム・ドライバーのファンにとっては必見映画かも。

 心を病んだ妻の異様な言動に当惑したり、時には感情を抑えきれず激怒したりしながらも、懸命に彼女に尽くし寄り添おうとするジュードの姿が、けなげで哀れでした。そこまで狂妻を尊重しなくてもいいのでは、まず赤ちゃんの健康を最優先しようよ!と、見ていてイラっともしたが。そう、この映画、かなりイラっとする神経逆なでな、不快感も高い内容なので、アダム・ドライバー目当てな方はご注意を。育児経験のある方や育児中の方と、私のように子どもがいない者とでは、見方も感想も違ってくることでしょうか。とにかく、育児について考えさせられる映画でした。
 
 これロマンチックコメディ?と思ってしまった始まり方(ジュードとミアの出会い方が最悪だけど笑えた)から、恋愛や結婚に揺れる現実的な物語になって、妊娠・出産あたりからおかしな感じになっていって、育児をめぐってどんどん病んでいく壊れていく夫婦を終始淡々と、ドキュメンタリータッチな感じでカメラが追っています。いかにもサスペンス風なサイコシーンとかはありませんが、赤ちゃんが心配すぎてハラハラ、ミアが妙なことをしそうでハラハラしっぱなしです。
 大きな社会問題である育児放棄や虐待ですが。ミアの場合は、子どもを愛しすぎるあまり、大事にしすぎるあまり、外の世界は汚れてるから!と赤ちゃんを家から出さなかったり。外の食べ物は毒だから!と自家栽培のハーブや野菜しか与えなかったり。見かねたジュードがこっそり栄養のある食べ物を赤ちゃんに与えると、変なオイルを飲ませて摂取した栄養を無くしたり。医者は信用できないから!と赤ちゃんの具合が悪くても診察拒否とか、正常で健康的な赤ちゃんの発育を妨げたりするんですよ。私なんかからすると、立派な虐待としか思えませんでした。

 ヒステリーを起こしたり暴れたりするわけではなく、ジュードにも逆らったりせず従順なのですが、目を離すとすぐに超自己流育児をするミア。常にどよよ~んと暗~い顔と虚ろな目つきからして完全に病んでる。育児放棄ならぬ育児狂気。早くミアを病院に強制入院させて!と思わずにはいられませんでしたが、ひどい!鬼母!と安易に責めると、子どものいないあんたに何が解かる!と、世のお母さん方に怒られるでしょうか。ミアの育児は間違ってない、という意見もあることでしょうか。でもやっぱ、私がジュードや家族だったら、ミアの育児を尊重できそうにありません。

 なぜミアはコワレてしまったのでしょう。産後うつ?それとも、もともと精神に疾患があったでしょうか。虐待者どころか、むしろ被害者みたいな弱弱しい哀れな風情なのが、病んだ者勝ちみたいでイヤ~な感じなんですよ。福祉も警察も、ミアの味方になるのが理不尽で腹ただしかったです。ミアを尊重しすぎて事態を悪化させるジュードにもイライラ。とにかく、ミアがコワレようと、ジュードが苦しもうと、どうでもいい!赤ちゃんを助けて!衰弱させられたりモノみたいに両親の間で奪い合いされたり、赤ちゃんがいちばん可哀想でした。ミア役の、「眠れる美女」にも出ていたイタリア女優アルバ・ロルヴァルケルの、見てるほうも気が滅入りそうになるドヨヨ~ン演技がヤバすぎ。ちなみにアダム・ドライバーとアルバ・ロルヴァルケルは、この映画でそろってヴェネツィア映画祭の男優賞、女優賞を受賞しました。
 ラストは衝撃的な悲劇。もっと他に方法はたくさんあったはずだけど、ある意味手っ取り早くサッパリした決着だったようにも。夫婦にとっては最悪で最善の結末。赤ちゃんが無事だったので、ワタシ的にはハッピーエンドです。

 ↑ アダム・ドライバーの新作は、スパイク・リー監督の“Black Klansman”です。白人至上主義の人種差別集団KKKを扱った問題作みたいです
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ひと夏の痴情

2018-02-05 | イタリア映画
 「胸騒ぎのシチリア」
 声帯の手術を受けたロックスターのマリアンは、年下の恋人ポールとシチリアのパンテッレリーア島で静かな休養生活を送っていたが、突然押しかけてきた元パートナーのハリーと、その娘ペンに翻弄され、ポールとの関係にも波風が立つが…
 「君の名前で僕を呼んで」のルカ・グァダニーノ監督の2015年の作品。同じくイタリアを舞台にした恋愛映画ですが、瑞々しく甘美な青春映画だった君名僕と違って、こちらは大人の恋愛、ていうか、痴情のもつれドラマです。ヒロインが今カレと元カレとの間で揺れる想い~体じゅう感じて~♪ by ZARD な話なのですが。若い男女ならどんなシチュエーションでも、何やっても何言ってもキラキラやドキドキ、切なさで胸ムズキュン♡になるところを、中年のおじさんおばさんだとすこぶる不潔で浅ましく見えてしまいます。そもそも、ヴィジュアル的にもおっさんおばさんのラブシーンは正直キツい。いくつになっても男と女、性的な悦びに生きてる実感、にはあまり憧れません。爽やかに枯れて、男でも女でもなくなるのが個人的な理想です。幸か不幸か、それに限りなく近づいてる今日この頃の私です

 痴情をもつれさせるマリアンたちですが、愛とか恋とかいったものではなく、みんなどこか精神的に破綻していて、それに誰かを巻き込まずにはいられない危うさや不可解さが加速して、じわじわと破局へ向かう展開がスリリングではありました。お話よりも、イタリアの避暑地の美しさを堪能する映画かもしれません。君名僕は、インテリなブルジョアの優雅なヴァカンスでしたが、この映画はセレブの優雅で倦怠的な隠棲生活でした。何をするわけでもなく、ひねもすゆったりのんびりと、気ままに泳いだりドライヴしたり、外食したりセックスしたり…夏休みだから思いっきり楽しまなきゃ!なガツガツ感がないところに憧れるわ~。私もあんな風に、美しく気候のいい場所で優雅に金とヒマを持て余してみたいものです。
 パンテッレリーア島に行ってみたい!と、この映画を観たらきっと誰もが願うことでしょう。人を明るく放埓な怠け者にしてしまう太陽の陽射し、泳いだら気持ちよさそうな海、街の情緒ある狭い裏道、情熱的で開放的なお祭り、民家での手作りチーズ、山のレストランetc.イタリア政府はグァダニーノ監督を観光大臣に任命すべきでしょう。

 キャストが通好みのシブさです。マリアン役は、超個性派オスカー女優のティルダ・スウィントン。相変わらず見た目だけでインパクトあり。妖気と豪快さが彼女の魅力でしょうか。大胆すぎる熟女フルヌードや、屋外屋内問わずのファックシーンなど、お盛んだけどどこか虚無的で渇いてるといった生々しい女の業が、怖くて悲しかったです。モテモテなティルダ姐さんでしたが、彼女を抱ける男ってスゴいと思うわ。よほどの度胸がないと無理でしょう。ティルダ姐のシンプルだけど、一般人には絶対着こなせないディオールのファッションが、目に楽しかったです。

 ポール役は、大好きなベルギー男優のマティアス・スーナールツ。相変わらずのゴリマッチョ!カメラマン役なのですが、どう見ても現役プロレスラーです。肉々しい全裸を彼も惜しげもなく披露してます。デカいケツがたまらん!おじさんおばさんの情痴といっても、30代のマティアスは雰囲気も肌も水を弾く若さがまだありました。キムタクBGなど一発で、いや一睨みで瞬殺してしまいそうな凄みのあるヌオオ~っとした風貌なのですが、マティアスって怖い役より優しい役のほうが似合うんですよね~。コワモテのマティアスよりも、性悪そうで意地悪そうな中居や大泉洋のほうがよっぽど怖いよ。「君と歩く世界」や「フランス組曲」など、一見ヤバそうだけど実は優しい男役がオハコのマティアス。年上の女の世話を細やかに焼いたり、彼女のヤリたい時にはいつでもOK!だったり、常に受け身で寡黙だけど男らしい、まさに理想の恋人なマティアスが素敵でした。ウザいハリーにも我慢して文句ひとつ言わないところや、ぐっと感情を抑えてる様子も、いじましくて可愛かった。怒らせたらボコボコにされそうな怖さもあるところが、やっぱマティアスでしたが。

 ハリー役のレイフ・ファインズは、すっかりおっさんになりましたね~。かつては英国を代表する美男演技派俳優だった彼ですが、このハゲー!!とマリアンが怒鳴らないのが不思議なほどウザいおっさんを、ハイテンションにエキセントリックに熱演してました。マティアス以上にフルチンになってました。名優から怪優へと進化したファインズ氏です。ペン役は、「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」のSM娘、ダコタ・ジョンソン。おじさんおばさんを翻弄する、クールでミステリアスなペンのキャラは魅力的なのですが、地味で若さの感じられない疲労顔が、小悪魔役にそぐわず残念。もっとピチピチした美ギャル女優を起用してほしかったかも。
  
 ↑たくさん新作が待機してるマティアスですが、とりあえず近日日本公開なのはジェニファー・ローレンス主演の「レッド・スパロー」です。最近は英語圏映画の出演がほとんどなマティアスですが、フランス語を喋る彼にもまた会いたいものです
 
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桃色未亡人

2016-08-07 | イタリア映画
 「女性上位時代」
 二十歳で未亡人になったミミは、亡き夫が変態セックスを楽しんでいた隠れ家を発見する。触発されたミミは、奔放に貪欲に性の探求を始めるが…
 かつてイタリア映画が得意としてた、艶笑喜劇映画です。エロとかセクシーとかではなく、エッチな映画です。エッチって言葉、何だか懐かしくほのぼのした響きがありますよね~。セックスコメディなのですが、濡れ場はほとんどなし。卑猥さとか淫靡さとかは全然ないです。終始あっけらかんと明るい。ミミが男たちを誘惑、パックンチョしまくる、それだけ、な内容はかなりノーテンキです。それにしてもミミ、肉食すぎ!ぶっちゃけトンでもない淫乱娘なのですが、セックスもまるでスウィーツ食べてる感覚。ドロドロした性欲にかられてではなく、男を弄びたいとか傷つけたいとかいった黒い悪意とかもなく、性とはどんなものかしら?みたいな探求心しかないところが、性に潔癖な人が見ても気持ち悪くないヒロインです。私も若くて美人でお金とヒマがあったら、ミミみたいに性なる冒険してみたいものです(笑)。

 ミミ役のカトリーヌ・スパークが可愛いです。軽やかに大胆なのがいいですね~。最近のエクササイズしすぎでロボットみたいな女優と違い、ムチムチした白い柔肌が私の目にも眩しかった。脱ぎっぷりもよかったけど、全然イヤらしくないです。ノーテンキだけどおバカっぽくはなく、クールでアンニュイなところがフランス女優っぽかったです。フツーにセクシーなアメリカ女優とかだと、下品なエロコメディになっていたかも。カトリーヌ・スパーク、お嬢さま役に違和感がない。実際にも、ベルギーきっての名家出身なんだとか。道理で!

 お話そのものよりも、60年代のムードやファッション、音楽が良かったです。ミミのとっかえひっかえファッションショーが楽しい!ちょっと着る人を選ぶ個性的すぎる、でも可愛い服ばかりでした。特に好きなのは、冒頭の葬式シーンで着てた喪服。不謹慎なほどキュートでした。亡夫の隠れ家のインテリアとかも面白かった。夫が遺した変態SMフィルムも笑えた。
 ミミが最後にモーションかける医者役、ジャン・ルイ・トランティニャンが、わ、若い!男前!

 後半になってやっと登場するジャン・ルイ・トランティニャン。「男と女」と「」の中間の出演作。当時38歳ぐらい?いや~カッコいいですね~。38歳つったら、キムタクとか中居より年下ですよ~。38歳ですでにいぶし銀の渋さが。クールでシャープな男らしさがトレビアン。ちょっとガイ・ピアースに似て見えた。ガイピーをもっと神経質に硬派にした感じ?小柄なのがちょっと可愛かったり。ミミに翻弄されてるようでいて、実は彼女を手のひらの上で転がしてる、いつの間にかさりげなく自分のものにしてしまう大人の男の度量、余裕がカッコよかった!フツーならドン引きするようなことミミにされても、それが何だよ?みたいにサラっと受け止めてしまい、返ってミミをギャフンと言わせるところが爽快でした。あれじゃあ、ミミじゃなくても惚れるわ!ジャン・ルイ・トランティニャンがコメディって珍しいけど、彼自身はそんなにコメディ演技してません。いたって真面目なところが笑えて可愛いけど。ミミのお尻ペンペンしたり、ミミにお馬さんにされたり、ソフトに変態なシーンも微笑ましかったです。イタリア語だったけど、あれは吹き替えなのかしらん?
 
 ↑ジャン・ルイ・トランティニャンにはもう、こんなに大きい孫がいる!二人とも娘の故マリー・トランティニャンの父親違いの遺児。二人ともイケメン!
 左 佳作と評判だった「EDEN エデン」や、イザベル・ユペールの新作“L'avenir ”でも高く評価されたロマン・コリンカ(兄、30歳)
 右 イザベル・ユペールとナイスコンビだった「アスファルト」のジュール・ベンシェトリ (弟、19歳)
 ジュールも可愛いけど、どっちかっつーたら、ガエル・ガルシア・ベルナルにちょっと似てるロマンのほうがタイプかな♪
 ジャン・ルイ御大も、再びミヒャエル・ハネケ監督、イザベル・ユペールとの新作“Happy End”撮影中と、まだまだ孫たちには負けん!と元気!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

美しき狂王

2016-03-23 | イタリア映画
 「ルートヴィヒ 神々の黄昏」
 バイエルンの若き国王ルートヴィヒ2世は、現実逃避のように芸術や城の建築に耽溺する。彼の常軌を逸した言動や浪費を危惧する大臣たちは、ルートヴィヒを廃位へと追いやり彼を軟禁するが…
 イタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督といえば、高貴と耽美のマエストロ。ヴィスコンティ監督が描く貴族社会は、ハリウッドや韓国の成金セレブとはまったく別世界。イギリスの貴族とも、また違うんですよね~。イギリス貴族は、優美でどこか軽やかだけど、ヴィスコンティ監督のイタリアやドイツの上流社会は、退廃的で重厚。ゴージャスとかエレガンスとは違う、濃密で爛熟の美に魅せられます。庶民が想像やリサーチでこしらえたものとは違うリアリティも、実際にも貴族出身であるヴィスコンティ監督ならでは。衣装や室内インテリアとか、いかにも映画用に作ったような小道具感、セット感がなくて、細部にわたって本物っぽい。ほとんどがスタジオではなく、実際のお城で撮影したのでしょうか。美しい古城や庭園、王族や貴族たちの衣装やアクセサリーの美麗さ、ノーブルさに圧倒・魅了されます。

 醜いもの卑しいもビンボー臭いものを完全拒否な、めくるめく耽美と退廃。ルートヴィヒが生きた世界、それはある意味SFよりもファンタジーです。現実を拒むあまり、あっちの世界の住人になっていくルートヴィヒですが。明らかにき○がい!な人ではなく、即位したばかりの頃は、すごく繊細で内気で純真、真面目な王さまって感じ。確かにあんなにピュアだと、現実的な世界では生きていけないだろうな~。ワーグナーに金ヅルにされたり、従姉のエリーザベトに翻弄されたり。純粋培養で育った汚れを知らぬ、やんごとなき貴人って、あんな風なんだろうな~。美しく甘い蜜をたたえた花には、必然的に虫が寄ってきます。最悪の害虫がワーグナー。有名な音楽家が、あんなにズルい卑しいおっさんだったとは!見事なまでの寄生虫っぷりでした。愛人のコジマとグルになってルートヴィヒにタカる姿、醜悪だけど何か笑えました。

 ルートヴィヒが精神を蝕まれていく姿を、時間をかけて描いています。4時間近くあるので、集中力のない私は一日1時間ずつ観る、という連続ドラマ方式で観ましたどうしてルートヴィヒが狂ってしまったのか、はっきりとした原因とかは明らかにしてません。突然の死も、いったい何が起こったのか不可解なまま。そういう謎めいたところも、ルートヴィヒの悲しさ、魅力です。もともと精神疾患だった?とは思われますが。呪われた家系、というのも耽美的な設定。ルートヴィヒの弟王子が可愛くて(ちょっとスカーレット・ヨハンソン似?)可哀想だった。あの発狂を目の当たりにしたら、ルートヴィヒじゃなくても不安と絶望のどん底に陥りますよ。

 ヴィスコンティ監督といえば、やはり男色も欠かせません。ルートヴィヒも、女を愛せない男色家。美青年な侍従や将校や俳優を、妖しく寵愛するシーンが腐には嬉しい。男たちの乱交パーティっぽい宴は、「地獄に堕ちた勇者ども」でもありましたね。ルートヴィヒの発狂は、この男色も関係あるのではないでしょうか。美青年を愛する時のルートヴィヒは、いつも苦悩と苦痛と恐怖に満ちていて、ちっとも幸せそうじゃなかったし。鬱屈した現実から逃避したい気持ちは解からんでもなかったが、税金を浪費するのはいただけません。私がバイエルン国民だったら、あんな国王イヤです。
 ルートヴィヒ役は、ヴィスコンティ監督の寵童だったヘルムート・バーガー。

 オーストリア人のヘルムート、ハリウッドやイギリスのイケメンとは、かなり毛色が違う美男子です。冷たくて厳めしい美貌というか。たま~に北村一輝、目の錯覚でヒロミ!に似て見えたりした鉄腕アトムみたいな髪型も印象的です。晩年のルートヴィヒを演じてる時のヘルムートのほうが、若いルートヴィヒの時よりカッコよかった。シブくて端麗な紳士っぽくて。ヴィスコンティ監督作品で魅力のすべてを出しきったのか、監督亡き後は凋落してしまったヘルムートですが、「サンローラン」など最近また映画にも出るようになってるみたいですね。本国オーストリアでは、毒舌おじさんとしてTVのバラエティで人気者らしいと聞いて、何か切なくなりました。

 ルートヴィヒが唯一愛した(あくまで精神的な愛ですが)女性、オーストリアの皇后エリーザベト役のロミー・シュナイダーの美しさ、存在感にも圧倒されます。気高く威厳がありながらも、軽やかに愛らしく小悪魔的でもある貴婦人役なんて、卓越した演技力や壮絶な女優魂があってもできない役です。宝塚の舞台でも人気のヒロインとなったエリーザベトは、女優なら誰でも憧れる役でしょう。審美眼が高く厳しいヴィスコンティ監督にも絶賛されたというロミーの大女優ぶりこそ、この映画最大の見どころ、魅力かもしれません。奇しくもロミーは、若い頃に自分を人気アイドル女優にした「プリンセス・シシー」でも、エリーザベトを演じてましたね。まさに彼女にとっては、運命の役。華やかな人生、そして悲劇的な最期も、ロミーとエリーザベトは共通していて、大女優と皇后の不思議な因縁もまた映画的です。
 イタリア語に吹き替えられてたのが、ちょっと残念でした。ハリウッド映画で舞台がドイツやフランスなのに、みんな英語を喋るのはまあ仕方ないとして、せっかくヘルムートもロミーも、そしてルートヴィヒを支える軍人役のヘルムート・グリーム(「地獄に堕ちた勇者ども」ではクールな悪役を好演してましたね)も、母国語がドイツ語なのに。彼らがドイツ語で演じたバージョンが観たかった。
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イケメン農夫に耕された女!

2015-09-16 | イタリア映画
 アイルランド⇔日本 機内映画鑑賞記⑤
 「Sei Mai Stata Sulla Luna ?」
 都会で華やかな生活を送るファッション雑誌編集者のグイアは、突然田舎にある農家を相続することに。さっさと売り飛ばすために家のある村を訪れたグイアは、諸事情で農作業を余儀なくされてしまう。はじめはウンザリしていたグイアだったが、やもめの農夫レンゾや知的障害のある従兄ピノらと関わるうちに、しだいに人生には金や地位よりも大事なものがあることに気づき始め…
 都会でバリバリ働くキャリアウーマンが、田舎暮らしや素朴な人々との触れ合いで、拝金主義・物質主義の無意味さに気づく…という内容は、ダイアン・キートン主演の「赤ちゃんはトップレディがお好き」と似ています。この映画は赤ちゃんの代わりに、知恵お○れのおじさんがヒロインの心をほだす役割を担っていました。ピノがすごくいい味出してるんですよ。見た目も言動も、ちょっとミスター・ビーンみたいで笑えます。トンチンカンだけど、たまに核心を突いたコメントしたり。微笑ましい癒し系キャラでした。

 グイアの田舎生活が、すごく羨ましかったです。私もあんな美しい明るい農村で、畑耕したり家畜の世話したりしてみたいな~。愉快で優しい人々に囲まれ、シンプル&スローライフを送ってみたい!もちろんグイアみたいに、イケメン農夫との恋という特典つきで農業は決して楽な仕事ではないとは思うけど、あんなイケメンが助けて支えて愛してくれるのなら、苦労も悦びとなることでしょう。
 イタリア人らしい、おおらかで楽天的な登場人物が、みんな個性的でチャーミング。でも、キャラが多くて、それぞれの恋愛とかも描いてたので、ちょっと散漫な群像劇っぽくなってたのが惜しい。ヒロインのグイアとイケメン農夫レンゾの恋愛も、メインのはずなのにエピソードのひとつになってたし。
 レンゾ役のラウル・ボヴァが、相変わらず濃い男前!

 ラウル、久々に見ましたが、ちょっとシブくなって熟年男の魅力も。畑よりも女に種を蒔くほうが似合う♂フェロモンも不変。ムチムチガッチリしたカラダもエロい。元水泳選手だった若い頃の肉体美は、さすがにもう崩れてますが、その崩れには年相応の熟年男の色気があって素敵。熟年熟年っつっても、ラウルってキムタクと同い年ぐらいなんですよね~。都会の伊達男も悪くないけど、田舎の農夫役もなかなか似合ってたラウル。でも、コメディなのに演技はフツーに二枚目、ていうか、かなりデクノボウっぽいんですよ。もうちょっとコミカルな、トボけたりアホなことしたり言ったりする演技、してほしかったかも。そんなに出ずっぱりじゃないのも、ちょっと物足りませんでした。レンゾの息子が、めっちゃ賢くて笑えた。父親に恋愛や人生のアドバイスや説教をするところなど、息子が父親の兄のようでした。末頼もしい、いや、末恐ろしい子どもでした。

 グイア役のリズ・ソラーリは、スタイル抜群のモデル系美人、だけど美人すぎない、ちょっとキャメロン・ディアスっぽい魅力があって好感。彼女のファッションも目に楽しかったです。おしゃれな服でアタフタ農作業してるのが笑えた。ラスト、パリでのハッピーエンドもスウィートな後味を残してくれます。それにしても。ラブコメって、美男+美女、イケメン+可愛い女がマストなジャンルですよね~。この映画も、レンゾが男前でグイアが美女じゃなければ、100%成り立たない内容でしたし。

 ↑ラウルって、ちょっとブラッドリー・クーパーに似て見えることが…濃くなったブラパ、みたいな。私だけ?
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

幽霊館に住むイケメン

2015-08-07 | イタリア映画
 「異人たちの棲む館」
 俳優になることを夢見ているパン職人のピエトロは、ローマにある古い屋敷に引っ越す。そこには、戦時中に謎の死を遂げた舞台俳優たちの幽霊が棲んでいた…
 イタリアンイケメン、エリオ・ジェルマーノ目当てで観たのですが、思いのほか愉快で心あたたまるコメディでした。
 幽霊に振り回される主人公…というのは、古今東西の映画やドラマでよくある設定で、この映画もそれほど飛びぬけた斬新さはないのですが、幽霊よりも主人公のピエトロのほうがヤバい、というのがこの映画の面白いところでしょうか。

 ピエトロくん、はじめはちょっとシャイなフツーのイケメン、かと思ってたのですが。乙女なしぐさや表情が可愛すぎる!もしかして?…やっぱゲイでした(笑)。恋人を招待するために、越してきたばかりの新居をイソイソ磨き上げたり、手料理をウキウキこしらえたり。やって来た彼氏(も、イケメン)の前で、ドキドキときめいてる様子が、これまたso cute!しかし…男は彼氏などではなく、俺につきまとうのはやめろ!と抗議に来たストーカー被害者だったそう、ピエトロくんは危ないストーカー男だったのです純真すぎる人って、あんな風に思い込みが激しくなっちゃうものなのでしょうか。相手にとっては迷惑この上ないけど、ピエトロくんみたいな可愛いストーカーは、何か応援したくなります

 で、こっぴどくフラれて傷心のピエトロを励まし慰めてくれたのは、屋敷に棲みついてる劇団ゴースト。ピエトロが彼らを怖がったりウザがったりしてたのはちょっとの間だけで、すぐに意気投合して和気藹々な同居生活。俳優志望のピエトロに演技指導してくれたり、ゴーストたちはみんな楽しくていい人ばかり。ふとっちょの少年が特にいい味だしてました。周囲の人間よりもゴーストに気を許して馴染んじゃってるピエトロ、やっぱ変な子です。

 ゴーストはピエトロ以外の人間には見えないので、周囲の目にはゴーストと触れ合ってるピエトロは、独りでわけのわかならいことをしているイカレ男にしか映らない、精神科医のところへ連れて行かれ、妄想幻聴の精神疾患扱いされるのが笑えました。実際にも、私たちには見えないものと対話してる人って、たまにいますよね。ピエトロみたいな場合もあるから、異常者扱いしてはいけません

 好きな男には失恋したピエトロですが、イケメン幽霊詩人とロマンティックな感じになったり、ピエトロのことが好きっぽい優しい男前さんが近所にいたり、男運は決して悪そうじゃなかったので安心。ストレートもゲイも、やっぱイケメンは得ですね。臆病でシャイな小動物っぽいキャラは女たちの母性本能もくすぐり、彼女たちに優しくしてもらえるピエトロ。もうちょっと彼が現実的でズルい性格だったら、男も女も手玉にとってオイシい人生を歩めそう。

 ピエトロの家で、優雅にのんきに過ごしてる幽霊さんたちですが。実は戦時中に悲劇的な最期を遂げて、成仏できずにさまよってるという事情にしんみり。自分たちが幽霊であるという自覚がなくて、いかにも幽霊みたいな特殊能力(宙を飛んだり何に変身したりといった)もないところが、ファンタジー苦手な私には好感がもてました。舞台衣装のままというゴージャスさも、幽霊らしからぬ華やかさが。
 ピエトロ役のエリオ・ジェルマーノが、めっちゃ可愛い!

 いつも困ったような泣きそうな顔してるのが、もう萌えMAX!さりげなく、それでいてゲイであることがバレバレな仕草とか、キャマキャマしさもなくナヨナヨしてないけど乙女な演技は、なかなかのクオリティの高さ。さすがカンヌ映画祭で男優賞を獲っただけあって(イクメンの奮闘を熱演した「我らの生活」)、ルックスがいいだけの俳優ではありません。オカマとゲイは違うのです。いつもウルウルしていてる黒目がちな瞳が美しい!「ドゥー・ユー・ライク・ヒッチコック?」でも思ったけど、エリオって何となく妻夫木聡と雰囲気が似てる?男のフェロモンはあるけど、雄臭くはないところとか。背がそんなに高くないところとか。この映画が日本でリメイクされるとしたら、ピエトロ役はブッキー以外に考えられません。イタリア男なのに、あんまし体毛が濃くなさそうなエリオは、日本人の女子にはとっつきやすいイケメンではないでしょうか。パン職人さん、カフェ店員の制服も似合ってて可愛かった。

 劇団ゴーストの面々だけでなく、人間側の脇役もみんないい味だしてました。特にピエトロの従姉。めっちゃ面倒見のいいオチャメな人で、あんな姉ちゃんいたらいいな~と思わせるキャラでした。姉ちゃんとデキちゃう精神科医さんも笑えた。ローマの街角とかカフェも趣あって、行ってみたいな~と思いました。

 ↑エリオ・ジェルマーノ、1980年生まれの現在35歳。有名な詩人を演じた“Il giovane favoloso”が、今年のイタリア映画祭で上映され好評を博しました。一般公開が待たれます!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

愛は眠らない

2014-07-21 | イタリア映画
 暑中お見舞い申し上げます
 ここ広島でも、梅雨が明けました~いよいよ夏本番です今年こそ、何だか乗り越えられそうにない悪寒、じゃない、予感がします。と毎年言いつつ、生き恥さらしながら長生きをしている私です♪
 世間では夏休みという楽しそうなものが始まってるみたいですが、あっしにはかかわりのないことでござんす。今日は海の日だったとか。ウミはウミでも、私はeveryday 膿のような日々です。
 夏といえば、夜に怖いホラー映画を見るのも一興ですね。でも私、ホラー怖くないんですよねえ。私にとって、ホラー映画の殺人鬼やモンスターよりも怖いのは、ヤバい女イタい女。その頂点に君臨する激ヤバ女王さまといえば、やはりイザベル・ユペールをおいて他にありません。彼女の冷徹さ酷薄さには、いつもゾゾっとさせらっぱなし。クールダウンにはもってこい。そこで、熱帯夜を涼しく過ごすため、イザベル・ユペール映画祭とシャレこむことにしました~♪日本未公開作品も含めた、新作旧作をピックアップおつきあいいただければ、マンモスうれPのりPです♪

 お松の独りイザベル・ユペール映画祭①
 「眠れる美女」
 17年間植物人間状態の女性エリアーナの安楽死をめぐり、イタリアでは激しい論争と抗議の嵐が渦巻いていた。そんな中、妻の生命維持装置をはずした政治家、愛娘が植物状態の大女優、患者が昏睡したまま目覚めない医師の3人も、エリアーナの運命を固唾をのんで見守っていたが…
 イタリアの名匠、マルコ・ベロッキオの作品。イタリアで実際に起きた社会問題にインスパイアされて作られた映画だそうです。
 安楽死、人間の尊厳…難しい問題ですよね~。私なんかからすると…植物人間になってまで生き永らえたくないし、植物人間じゃなくても、ボケて寝たきりとか、耐えがたい治らない肉体的苦痛とか、生きることに絶望的な状態だったら、安楽死がどれほど自分にも家族にも救いになるだろう、と思ってしまうのですが…愛する人が植物人間になったら、もちろんどんなことをしても回復させたい、死なせたくないとは願うでしょうけど、起きるあてのない奇跡を待つ苦しみと疲れに、耐えられそうにありません。醒めることのない眠りについた人も、いっそ死んだほうが楽で幸せ、なんて考えは、自分本位すぎるのでしょうか?私も今のうちに、脳死になった場合のこともちゃんと家族と話し合って、もしもの時は誰も身勝手な判断を下したと謗られたり自責することがないようにしておかねば♪
 この映画は、どちらかといえば安楽死を、人間の尊厳ある死として肯定的にとらえてる?反対している人たちをかなり異常に描いてるから、そう感じられたのでしょうか。安楽死への反対抗議デモと、夫や息子を無視して眠れる娘に執着する大女優の、常軌を逸した狂気的とも冷酷とも身勝手とも言える姿には、それでいいのか?!それが正しいのか?!と疑問を抱かされました。エリアーナや娘を思いやりることよりも、自分の信念を強硬に貫こうとしているように見えたから。これって、死刑の存置廃止問題にも似てる。死刑反対の人権派の方々って、特に光市の母子殺人事件の裁判なんか、被告人の人生を守るということよりも、国家に逆らうために躍起になってる風だったから…

 安楽死反対の民衆と大女優が敬虔なキリスト教徒だったことも、いろいろ考えさせてくれました。宗教、やっぱ怖いな~と。無宗教な私なんかから見たら、何でそこまで!?と戦慄してしまうほど。敬虔なのは悪いことではなく、むしろ美しいなあ、立派だなあ、と尊敬しますが、狂信的なのはいけません。デモとか、暴力じゃん。大女優の言動も、夫や息子にとっては精神的暴力。自分の信仰心のためには、人を傷つけてもいいの?まったく優しさや救いを感じさせない、宗教き○がいを非難・批判している映画のようにも思えました。
 安楽死や人間の尊厳について、深く考えさせられたい方には、おすすめな映画ですが。内容も暗くて救いがないし、政治家、大女優、医師の3組の物語が同時進行される構成も、意外な形で3つはつながっていた!なんて斬新でトリッキーな面白さもありません。イタリア、アナーキーな国だな!とか、ベルルスコーニ氏が真面目な顔してる!とか、ヘンな感心はしてしまいましたが。
 苦悩する政治家役は、イタリアきっての名優トニ・セルヴィッオ。シブくて濃ゆい熟年おじさま。タダモノじゃないオーラびんびん放ってます。フツーのおじさん役とか、できないのでは?今年のアカデミー賞外国語映画賞を受賞した「追憶のローマ」にも主演してますね。
 大女優役は、フランスから招かれたイザベル・ユペール。

 キャリアを捨て、娘につきっきりな母親を、ユペりんが冷ややかに演じてます。まさに冷酷な聖女。ほんとなら、優しく哀しい慈母、岩崎宏美の歌が聞こえてくるはずの聖母なのに…その表情、態度は、彼女を愛する者を傷つけ、絶望へと追いやる。夫などまったく眼中になし。大女優の母を崇拝し、自分も俳優になりたいと願ってる息子に対する、あの無関心さ冷淡さ!非道い!宗教にすがる姿も、静かに狂ってる怖さが。

 娘に献身的に自己犠牲的に尽くし、篤い信仰心で自分を律しているようですが…どうも彼女、そんな“哀しみの聖女”を、憑かれたように演じてるみたいなんですよね。憑依型の女優の自己催眠っぽさ、というか。寝たきりの娘のケアは、ぜんぶ使用人がやってくれてるので、介護地獄な日々ではない。彼女自身は、ただもう身も世もなく、そして優雅に祈ってるだけ。お金とヒマがあるんだなあと、介護してる方々からしたら羨ましいやら呆れるやら、なのでは。鏡の前を通るたびに自分の顔を一瞬見るところや、息子が眠っている娘を罵倒するのこっそり聞いてる時の、何だか熱狂的なファンの賞賛を浴びてるような満足げな表情とか、マクベス夫人の台詞を口にする寝言とか…やっぱ根っからの女優というか、娘を愛してるのでも、息子を愛してないのでもなく、ひょっとしたら愛憎の対象は演技だけ、骨の髄まで女優な女なのかな。女優とそうじゃない時の境界線がなくなってしまったのでしょうか。女優の狂気、業の深さが興味深かったです。
 大げさな動きや表情はいっさいしないけど、怖い!非道い!とゾっとしてしまうところが、さすがイザベル・ユペール。あの冷たく虚ろな瞳だけでも、フツーの女優には不可能な神技。彼女のエレガントな身のこなしやファッションも、まさに大女優の気高さと貫禄です。息子が母の若い頃の映画をTVで観ているシーンがあるのですが、そこで使われてる若かりし頃のユペりんの映像が印象的。可愛い!けど、牛を殺して血を飲む時代劇の令嬢役?!いったいどんな映画なんだよ!と気になった。イタリア語で演技してるユペりん、旦那さまが確かイタリア人なので、イタリア語も堪能なのでしょうか。
 大女優の息子役、ブレンノ・プラシドが、なかなかのイケメン!

 ちょっと若い頃のジョニー・デップ+ジェームズ・フランコっぽい?少年役なのに、男の色気が。母への憧れと、振り返ってもらえない悲しさ、痛みに満ちた瞳と表情に、胸キュンです。あんなイケメン息子、私ならほっとかないけどなあ。ママには棄てられた子犬状態でしたが、パパには別人のように超キツいのが笑えた。母と同じ俳優である父に向って、パパは演技ヘタだから!とか、大根役者!とか、だらしない男!とか、バカにしまくり。妻はあんなだし、息子はキツいし、娘は寝たきりだし、あのパパがいちばん可哀想だった。医師役の、ベロッキオ監督の実の息子であるピエール・ジョルジョ・ベロッキオも、なかなか男前でした。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

恍惚の吸血

2014-07-14 | イタリア映画
 夏のせいにしたい…でも、悪いのは私の脳みそ♪
 こないだ、市営バスに携帯を置き忘れてしまいました。バス会社に問い合わせたら、幸い見つかって自宅近くのバス停を通るバスの運転手さんに言づけてくれて、すぐに返ってはきたのですが。ヘンな人に拾われてめんどくさいことにならず、ホっと安堵はしましたが。精神的な疲労感は、ハンパなかったです。
 昨夜は、部屋でお茶をこぼしてしまいました。しかも、お茶の直後には花瓶もひっくり返してしまった。しかも、よりによって描いたばかりの似顔絵の上に!!他にもこぼすスペースは、いっぱいあるのに!何で何で何で~!ちょっと前は、カバンの小ポケットの中に入れてた詰め替え用ファブリーズがこぼれて、普段持ち歩かないのに何でかポケットに入れてたノートパソコンのワイファイがファブリーズの海に浮かび、壊れてしまった!
 ひとに話すと笑ってくれますが、私は全然笑えないんですよ~。怖いです。ドヂなんて可愛いレベルじゃないですよね。物忘れも非道いし、もう痴呆の域ですわ。配偶者よりも、介護者求ム☆

 「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」
 19世紀末のルーマニア、ペンシルバニア。パスブルグという小さな村に、村の名士ドラキュラ伯爵に司書として雇われた青年ジョナサンがやって来る。遅れて村に到着したジョナサンの妻ミナは、不可解な村の雰囲気と夫の失踪に動揺する。すべてはミナを狙うドラキュラ伯爵の罠だった…
 「サスペリア」などイタリアンホラーの巨匠、ダリオ・アルジェント監督の最新作。え~?!何これ?!と、観てる最中も観終わった後も、ぽか~んとなってしまった。まあ、珍品と言えなくもないけど…怖い怪奇ものではなく、ヘンテコなおバカ映画です。大真面目に作ったのか、それとも確信犯的に珍妙にしたのか。ダリオ先生にしか分からない、その不思議なノリはすごく印象的でした。
 何だか、キャラの動きとか立場とか、展開もまとまりがなくバラバラ、いうか、かなりいい加減な感じなんですよ。ジョナサンとかルーシーとか、メインキャラがほとんど使い捨て扱いだし。編集と脚本に問題あり。でも、そんなことはダリオ先生にはどうでもよかったのかも。とにかく、大好きな要素をこれでもか!と投入して満足♪なダリオ先生の、悦に入った顔が目に浮かびます。

 ダリオ先生の大好きなもの、それは鮮血と虫。吸血鬼ものなので、流血シーンは当然避けられません。しかし、必要以上に血まみれなんですよ。血を吸うシーン以外にも、ドバドバ血が飛びまくり。ドラキュラものというより、人間が残酷に殺されまくるホラースプラッターものみたいです。血も、真紅すぎてペンキみたい。全然リアルじゃないのが笑えます。フツーに殺されず、いちいち凝った殺害シーンには、ダリオ先生の鮮血の美学を感じます。鮮血と並び、虫も人間以上にフューチャーされてます。蛆虫とかハエとかゴキブリとか、小さい不快虫がウジャウジャってのが、ほんと好きなんですねダリオ先生。これは笑いを狙ってるんですよね?!な形で、ある虫が現れます。巨大化して、人間に襲いかかってきます。何であの虫なの?!まったくもってイミフですが、あのシーンは確実にプっと笑えますよ!
 その巨大化した虫もそうでしたが、CGの異様なまでのチープさも、この映画の特徴です。ハリウッドの最先端CGを見慣れてる目には、驚異的なまでの稚拙さ。わざとなのかなあ。あんなチープなCGって、なかなか見られませんよ。特殊効果系は安っぽいけど、ロケとかセットには結構金かけてます。コスチュームも美しかったです。
 昔、子どもの頃に夜中TVで放送してたドラキュラものは、怖いけどどこかクラシカルで格調高い雰囲気だったけど、このホラードラキュラはケバケバしくて、かなりオゲレツです。冒頭のエロシーンなど、バカな若者がエッチしてる最中にジェイソンに惨殺される13日の金曜日なノリだし。若い男のほうは、なかなかイケメンで、いいカラダしてました。
 国際的なキャストの顔ぶれは、なかなか興味深く魅力的です。
 ドラキュラ伯爵役は、ドイツからトーマス・クレッチマン

 トーマスも老けたけど、やっぱカッコいいですね。クールだけど優しそうなところが素敵。血まみれで目も歯もムキまくりな形相が多かったけど、あまり怖くも不気味にも見えなかった。ヒロインのミナに対する紳士的な態度とか、悲しい過去語りしている表情とか、枯れた大人の男の魅力が。ドラキュラ伯爵の衣装が、トーマスのオハコ役であるナチの将校っぽく見えたのは私だけ?トーマスって、ちょっとだけ井浦新に似てる?ARATAをゴツく爽やかにした感じ? 
 ドラキュラ城にやってくる若い司書ジョナサン役は、スペインからウナクス・ウガルデ。久々に彼を見ましたが、やっぱちょっとだけガエルに似てますね。ヴァンパイヤハンター、ヴァン・ヘルシング役は、オランダからルドガー・ハウアー。彼も久々に見ましたが、すっかり爺さんになりましたね。終わり近くになって登場して、サクサクと悪者をブっ殺す展開は、あっさりすぎるというか、かなり強引。町長の娘ルーシー役は、ダリオ先生の愛娘アーシア・アルジェント。トーマスより、彼女のほうが怖いです。まったく必然性のない完熟ヌードも披露。トーマスとアーシアさんは、ダリオ先生の怪作「スタンダール・シンドローム」でも共演してましたね。変態強姦魔役だったあの映画のトーマスは、めっちゃセクシーだったなあ。ミナ役のイタリア女優マルタ・ガスティーニが、清楚で可憐で美しかったです。

 ↑リーアム・ニーソンとはガチで兄弟役ができるトーマスですが、井浦新にも最近似て見えるんですよね~
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

血祭り!魔女学校

2014-05-16 | イタリア映画
 ♪宮島さんの神主が おみくじ引いて申すには 
 今日もカープは勝ーち勝ーち勝ーち勝ち

 やったー!!今日もカープが勝ちました~大瀬良くーん!!君やっぱスゲーよ!カッコよすぎ!!抱いてー!!
 とまあ、カープの勝敗に一喜一憂な毎日を過ごしておりますカープのおかげで幸せな反面、カープのせいで憂鬱なことも…
 最近、上司ふたりとのコミュニケーションに困惑してます…
 上司その① 正男編
 40代後半のバツイチ部長は、金正男クリソツ。自分でも自覚してて、ネタにしてるほど。いい人なのですが、最近しんどい人と化してます。それというのも、何かというと私のところに来て、カープ語りをするのです。それはいい。私だって熱烈なカープファンですから、カープの話題はウェルカムです。でも、正男ったらファンとは思えないほど超ネガティヴなことしか言わないのです。負ければカープもうダメ、終わった宣言。勝っても勝ち方がマズい、あの選手は過大評価されすぎてる、大したことない、ゴミ選手、産廃レベル、とかクソミソに貶めるのです。はじめは、見切るの早いですよ~とか、温かい目で見守りましょうよ~とか、細かすぎますよ~とか、そういう見方もあるんですね~とか、彼はやればデキる子ですよ~とか、笑って聞き流してたのですが…毎日毎日、仕事中にもそばに来てカープの批判、いや、悪口を滔々とのたまう正男に、これは新手のイヤガラセなのだろうか?ひょっとして遠回しな肩たたき?!と、ノイローゼ寸前な私なのです。いいかげんにしてほしいけど、羊のようにおとなしく従順な私は、ウルサイ!あっち行け!なんて絶対言えない。今日も朝イチでとっ捕まってしまい、絶対優勝無理無理無理無理!もうダメダメダメ!と、30分ぐらい強制傾聴。ああ~しんどい~どうしたらいいでしょうか…

 「サスペリア」
 ドイツにあるバレエ学校に入学したスージーは、校内で次々と起こる陰惨で怪奇な事件の背後に、邪悪な魔女崇拝が存在していると気付くが…
 “決して、ひとりでは見ないでください”という公開当時の宣伝キャッチフレーズは、ドリフのコントやギャグ漫画でも使われたほど有名ですよね。日本でも大ヒットしたという、イタリアンホラーの巨匠ダリオ・アルジェント監督の代表作。小さい頃、TVで観た記憶があるものの、かなり曖昧。スカパー放送で、あらためて観ることができました。
 私、悲しいかなホラー映画が全然怖くないんですよね~エグい惨殺シーンとかウゲゲとは思うけど、だいたい笑いながら観ちゃったりしてます貞子とか、ワタシ的にはほとんどギャグです。この古典的ホラー映画も、もちろん独りで観ましたし、予想通り笑いながら観てしまいました。さすがに何もかもが古めかしく、昔の映画だな~という印象が強いです。でも、その時代を感じるムードとノリが、返って新鮮でもありました。
 話じたいは、他愛もないというか、昔なかよしで連載されてた松本洋子先生のオカルト漫画っぽいです。確か、松本先生の作品の中に、似たような話あったよなあ。無害ファンタジーな某魔法学校よりも、私はオドロオドロしいオカルト魔女学校のほうが好きかも♪お話よりも、当時は斬新でショッキングだった(今は違った意味で斬新ですが)演出と映像こそが、この映画の見どころです。かなりインパクトあります。
 まず、BGMが強烈です。一度聴いたら、しばらく耳に残ります。要所要所で入る、Witch(魔女)!という声とか、なかなか印象的に使われてます。そして、アルジェント監督の才気がほとばしる怪奇シーンと殺人シーン。凝ってるというか、何だか楽しんでやってるような過剰演出が、恐怖よりも笑いを誘います。

 血まみれ首つり!落ちてきた窓ガラスが刺さって惨死!盲導犬に首食いちぎられ死!屋根からボトボト落ちてくる蛆虫!などなど。ウゲゲなんだけど、リアルじゃないので怖くないです。血とか、首に食いつく犬とか、どう見ても偽物で、何だか微笑ましささえ感じます。ただ殺すだけでなく、テンションの高いめくるめくような舞踏調で演出されているのも楽しいです。
 
 そして、毒々しくも鮮やかな色彩が強烈な映像。赤や青の光が何だか、安いストリップ劇場のスポットライトみたいです。ケバい色彩は、ちょっとペドロ・アルモドバル監督作品を思い出させましたが、アルモ姐さんのケバさは熱と湿気があるけど、ダリオ先生のケバさは冷たく乾いています。
 とまあ、演出と映像がユニークなので、ストーリーの細かいところは気にならない、ていうか、気にしないほうがいい映画です。でもやっぱ、???な謎が多いんですよね。冒頭、あの腕が毛むくじゃらだった殺人者の正体とか。暗闇の中、窓の外に一瞬あらわれた目とか。魔女の親玉とか…
 ヒロイン、スージー役のジェシカ・ハーパーが、可憐で清楚で可愛かったです。見た目と違って、声が何か熟女のようにシブかったけど。往年の名女優アリダ・ヴァリが、厳格な女教師役。いかにも魔女って感じで怖いです。ちなみに、この映画のリメイク化が進められていたそうですが、諸事情で頓挫したみたいです。イザベル・ユペールが女教師役を演じる予定だったらしいので、とても残念!
 ダリオ先生の最新作、「ダリオ・アルジェントのドラキュラ」早く観たいな~。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする