まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

愛の欠陥住宅

2015-12-20 | 北米映画 80s~90s
 「マネー・ピット」
 ニューヨークで恋人のアンナと同棲中の弁護士ウォルターは、突然アパート退去を余儀なくされる。格安で手に入れた郊外の邸宅に、二人は嬉々として引っ越すが…
 「ビッグ」や「スプラッシュ」など、80年代に幼い私をときめかせたトム・ハンクス主演作。何度も同じこと言って恐縮ですが、80年代のトムは神カッコよさ神かわいさ!現在のハンクス氏は、すっかりハリウッドの重鎮、貫禄も恰幅もある偉いオヂサンになってしまってるけど、若かりし頃のトムは別人のようにスマートなイケメン。この映画でも、若いエネルギーあふれる、でもナイーブさに胸キュンなコメディアンぶりで、往年のトム・ハンクスファンにはたまらない一本です。

 可愛いけど、母性本能くすぐる系の可愛さではなく、かなり男らしいところもトム・ハンクスの魅力。ぐいぐいヒロインをリードし、俺に任せろ!と愛の巣改築に奔走・奮闘する頼もしい姿は、まさに理想の夫。ヒロインとのスウィートなイチャイチャシーンも、トム・ハンクスみたいな恋人にあんな風に甘えたり甘えられたりしたい~と羨ましくなったり。ちょっと嫉妬深いところも、あの程度だったら素敵な恋愛のスパイスです。若い頃のトム・ハンクスに、元カレと寝たんだろ?どうなんだよ?と、ちょっとしつこく攻められてみたい。可愛いすぎるシーンはいっぱいあるのですが、いちばんキュンときたのはやっぱアンナの浮気告白にキレるシーン。告白を聞いてる時の寝ぼけ顔が、超可愛かった!可愛いといっても、僕カワイイデショ?な気色悪い男ぶりっこ系ではなく、大真面目で神経質、ちょっと悲しそうなところが、トム・ハンクス独特の可愛さです。たまに顔が、ちょっと妻夫木聡に似て見てた。

 とんでもない欠陥住宅に、ひどい目に遭いまくるトム・ハンクスが可哀想で可愛い!アホでマヌケなシーン満載で笑えます。絨毯に沈んで動けなくなるシーンと、ションベン小僧にションベンひっかけられるシーンが特にアホ可愛かった。トム・ハンクスの、キレた時の怒鳴り声も好きです。大激怒してるんだけど、すごい滑稽で笑えるんです。気分が落ち込んだ時は、トムを怒らせてみたいと思わせる独特さ、可愛さ。あと、階段が崩落してショックのあまり笑いだすトム・ハンクスの笑い声が、すごい変で笑えます。

 トム・ハンクスと降りかかる災難との死闘は、さながらアクション映画。もちろんスタントも使ってたんだろうけど、激しく柔軟に動き回る丈夫さ元気さも、今のハンクス氏にはない魅力。それにしても…あんな欠陥住宅、ありえない~!壊れたり崩れたり漏れたり爆発したりetc.手を変え品を変えウォルターとアンナに襲いかかってくる欠陥は、まるでアトラクションみたいで楽しかったけど、フツーならあんな家には一日たりとも暮らせませんよ。命がいくつあっても足りんわ。ウォルター&アンナ、よく死なずに暮らせたな~。ていうか、出ていこうと全然しなかったのが驚異でした。あの前向きさとノーテンキさ、バイタリティはまさにアメリカ人です。
 
 うますぎる話、安すぎるものには何か裏がある、すぐに飛びついてはいけない。まず疑って慎重にならねばと、あらためて思いました。ウォルターってば弁護士のくせに、迂闊すぎ!日本でも今、欠陥住宅が社会問題となってるので、笑いごとではないテーマではありました。
 ヒロインのシェリー・ロングも、ファニーフェイスでチャーミングな好演。脇役も、みんな調子がよくてノーテンキで、いかにもアメリカン。ウォルターの顧客の金持ちのガキとか、大工軍団がいい味だしてました。ラストに判明する、ウォルターに欠陥屋敷を売りつける老女(名女優のモーリン・ステイプルトン)の正体にニヤリ。よくあんな家で暮らせてたな~と不思議だったので、なるほどと納得。ウォルターとアンナの髪型や服装、携帯やネットもない環境、ダイヤル電話とかのアイテムに、80年代ノスタルジー。この映画のプロデューサーは、トム・ハンクスとのコンビ作も多いスティーヴン・スピルバーグ監督。二人の最新作「スパイ・オブ・ブリッジ」も楽しみ。

 ↑80年代のトム・ハンクスは、私の洋画初恋男。カッコカワイかったな~惜しい人を亡くしましたね…って、今もご健在だっちゅーの
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熊VS猿 ロス市警24時☆

2015-11-19 | 北米映画 80s~90s
 さっき知ったのですが…カズオ・イシグロの小説「私を離さないで」が、日本で連ドラ化!
 キャリー・マリガン主演の「わたしを離さないで」の原作でもある小説、私も大好きなんです。もし日本で映像化されるとしたら、あの役はあの人がいいんだけどな~と、いつも小説を読む時には脳内で理想妄想キャスティングを楽しんでるのですが、とりわけ「私を離さないで」はmyイメージが強く働いた作品でした。なので、発表されたドラマ化のキャストは、かなりの衝撃というか…むむむ…
 最近では吉田修一の「怒り」映画化もですが…小説や漫画が映像化されると、ファンは期待以上に不安や失望を先に抱いてしまいますよね~。自分のイメージとあまりにも乖離がありすぎると、いっそ映像化されずそっとしておいてほしかったかも…なんて思ってしまいます。そんな私の勝手な思い入れを嘲笑うような名作や秀作に仕上がってくれることを切に祈ります。

 「L.A.コンフィデンシャル」
 50年代のロサンゼルス。マフィアの抗争が激化する中、カフェで客や従業員が虐殺される事件が起きる。元同僚を殺された刑事バドは、捜査線上に浮かんだ娼婦のリンと恋に落ちる。一方、エリート刑事のエド、ベテラン刑事のジャックもそれぞれ事件を追ううちに、恐るべき真相に近づいていくが…
 1997年のアカデミー賞助演女優賞、脚色賞を受賞するなど(「タイタニック」の対抗馬としても注目されてました)、高く評価された犯罪ドラマの傑作です。
 50年代のハリウッド、陽気で優雅な古き佳き時代…というのは表の顔で、実は血みどろで腐りきったダークタウンだったんですね。こんな街、ぜったい住みたくない!命がいくらあっても足りん!な地獄絵図に戦慄。毒と知っていても、野心や欲望が甘い蜜となって人々を惹きつけ狂わせるロサンゼルスの明と暗が、ムーディに描かれているのもこの映画の魅力です。マフィアも警察も、激烈に対立してるのかと思いきや、ズブズブな腐敗関係だったり、もう誰も信じられない世界。ちょっとでも出方を間違えたらお陀仏、な薄氷を渡るような怖さと緊張感に満ちています。マフィアの凶暴さも怖いけど、警察はマフィア以上に凶悪。拷問や偽装工作など当たり前、問答無用に容赦なく逆らう奴も怪しい奴も邪魔な奴も殺しまくり、金や出世のためには汚いことも平気。こんなお巡りさんたち、いやだ~この映画みたいな非道さは、いくら何でも今はまかり通ってないと思うけど、悪しき名残みたいな事件はたまにアメリカでは起きてますよね~…とにかく暴力的すぎるのが、ほんと怖い国アメリカ。わしなんか確実に、事件には関係ないのに巻き添え食って死ぬタイプじゃわ

 事件の謎も、複雑怪奇で面白かったです。マフィアの抗争、かと思われていた事件が、調べていくうちにだんだん深い闇に引き込まれていくような展開のスリリングさや、個性的な刑事たちのキャラがよく理解できる会話、伏線の張り方の巧さなど、さすがオスカーの脚本賞を受賞しているだけあります。エドが父親を殺した未逮捕の犯人に名付けた仇名が、事件解決につながる使われ方をしていたのが秀逸でした。でも…せっかくの深い闇っぽい真相も、ラストのほうではもうシッチャカメッチャカの大戦争に発展してしまい、真実もクソもないじゃん的な、結局皆殺しが最良の解決法だったのがちょっと…当時の人種差別も非道すぎる。出てくる黒人はみんな、差別されても仕方がないような凶悪卑劣な犯罪者ばかり。演じてる黒人俳優たち、仕事とはいえイヤだっただろうな~。
 この映画、キャストが素晴らしいです!主役のガイ・ピアースとラッセル・クロウが、若い!カッコいい!可愛い!漢(おとこ)!大熱演!

 エリート刑事エド役のガイピー、当時30歳。角度によっては大学生にも見えるほど、若くて可愛い!シャープな猿顔がええわ~眼鏡も知的かつキュート。出世のためには仲間も裏切る冷徹なガイピー、とんがっててイキがってるところも、ヤな奴というよりガムシャラに頑張ってる少年っぽくて応援したくなります。傲慢不遜でクールだけど、眼鏡のことでからかわれて心外そうな顔したり、大事な時に眼鏡かけわすれて来たり、ハニートラップにかかったり。ちょっとヌケてるところがあって、とにかく何か可愛いガイピーです。

 正義の暴力刑事バド役のラッシー、当時33歳。怖い!けど、可愛い。ろくでもない奴らはボコボコ半殺し、もしくは殺してしまう激ヤバ刑事だけど、女には異常に優しいフェミニスト、という男の剛と柔を併せもった役。憤怒に燃えてる時の目つきは、危険度MAX!キレた時の表情は、ふんがー!という漫画みたいな声が聞こえてきそうなほど。かなり病んでる上に、あのプロレスラーみたいなゴツい体格。あんな熊みたいなマル暴刑事さんに取調室へ連行されたら、やってないことでもゲロりそうです。敵に回したら怖いけど、愛されたら幸せ…かな?!女には超優しいけど、裏切ったら何するか分からない危険もあるし。娼婦に恋して彼女にZOKKON命になるラッシーは、ウブな少年のように初々しく繊細。ラブシーンの彼もスウィート&ラブリーでした。ゴリマッチョなサービス脱ぎシーンもあり。

 当時ハリウッドでは、ほぼ無名だったオーストラリア俳優のラッシー&ガイピー。彼らの起用は、かなり制作側としては賭けだったのではないでしょうか。結果は大成功でした。その後、二人は大躍進。特にラッシーは、有名女優とのスキャンダルやオスカー受賞など、立派なハリウッド☆スターになりました。ガイピーも地味ながら佳作異色作に出演し、今は素敵な熟年男優に。もっともイキがいい頃の若熊ラッシーと若猿ガイピーの、火花バチバチなガンとばし合いシーンや、ガチンコタイマンシーン(ラッシーが一方的にボコってるだけですが)が萌え~です。二人がもうちょっと早く協力してれば、あんな阿鼻叫喚なラストにならなかったでしょうけど。険悪だった熊と猿が、ついにアニマルタッグ!ラストのハードボイルド・ヒーローな二人、かなり胸キュンものです。
 クレジットのトップは、2度のオスカーに輝く名優のケヴィン・スペイシー。

 スマートで小粋なチョイワル刑事ジャック役のスペイシー氏も、なかなかカッコよかった。飄々と掴めないキャラが、彼らしい。スペイシー氏と悪徳関係なゴシップ記者役のダニー・デヴィートも、いい味出してます。二人のやりとりが、緊迫血みどろ激闘の中、コメディリリーフ的な役割を果たしてます。そして、二人に利用される売れない俳優役が、TVドラマ「メンタリスト」で人気のサイモン・ベーカー。メンタリストにハマってるmy motherが、彼の大ファンなんですよ。まだ駆け出し時代の彼、さすがに若い!クニャっとしたメロウな笑顔が可愛い。両刀使いで、ドラマの役を得るためにホモ爺と寝ることも厭わない役、ファンにはかなり切ないかも。全裸で写真撮られて逮捕される、なんてマヌケな姿が笑えるけど切ない。悲惨すぎる末路も切ないです。そういえば、サイモン・ベーカーもオージーでしたっけ?この映画、オージー率が高いのはなぜ?常に平然と高みに立ってるみたいだったスペイシー氏が、可愛い男娼のサイモン・ベーカーが殺されてショックな様子に、ちょっとニヤリ

 ほぼ紅一点、謎の娼婦リン役のキム・ベイシンガーは、この映画でアカデミー賞助演女優賞を獲得。ゴージャスかつ哀感ある存在感で、荒ぶる男たちの中で艶やかに咲く花のよう。若いラッシーとガイピーじゃ、とても太刀打ちできない貫禄のキム姐さん、いかにも怪しい悪女って感じではなく、娼婦でありながら優しい聖母みたいなところが特異で魅力的でした。 

 ↑ラッシー&ガイピー、あの頃きみは若かった~♪おじさんになった今、再共演してほしいです
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倒錯の青い闇!“どうぞぶってね”

2015-06-24 | 北米映画 80s~90s
 昨夜のカープVS阪神は、壮絶な接戦の末に引き分け!両チームの選手、さぞや疲労困憊だったことでしょう。応援してるほうも、どっと疲れるゲームでしたが敗北じゃなかったのはまあよしとしますが…やっぱ勝ってほしかったな~。てか、勝てる試合だったのに…今年のセ・リーグは、最悪といっていいほどのお粗末な低レベルの戦いで、首位の巨人と最下位のカープとの間も、差がほとんどない。なので、ここで快進撃をカマせば、すぐに上位に浮上、優勝だって決して夢じゃない状況。なのに…と、今さら詮無きことですが、惜しい気持ちは拭えません。悔しさもひとしお、ため息が深く重い理由は、勝てなかったのが大瀬良くんのダメっぷりのせいだったこと…

 ああ~…中継ぎにコンバートした大瀬良くんですが…無残な不調っぷりから抜け出せないまま。彼に対する厳しい冷たい声が、胸に痛くて…去年は、カープの王子さまのようにもてはやされてたのに、今やカープのガンみたいな扱い大瀬良くんには、きっと何か悪いものが憑いてるんですよ!お祓いに行ったほうがいいかも!早く大瀬良くんが輝きを取り戻せるよう、今年の七夕はそれだけを星に願います…
 今夜の先発はノムスケ(今日26歳の誕生日!おめでと)。さあ、今夜こそ虎退治!で・も。阪神の先発は、能見さん乙女心が揺れる夜です♪
 って今、戦況どーなっとんじゃろ…怖あてチェックできんわ~

 My Favorite 80年代映画⑥
 「ブルーベルベット」
 田舎町に帰省した大学生のジェフリーは、草むらで人間の耳を発見する。事件と関わりがあると思われるクラブ歌手ドロシーに、ジェフリーは近づくが…
 「エレファントマン」やTVシリーズ「ツインピークス」などで知られる天才&変態名匠デイヴィッド・リンチ監督の作品の中では、my most favoriteです。わけがわかんない映画が多いリンチ監督作の中では、わかりやすくてストーリーが(一応)あるし。

 とにかくこの映画、出てくる連中がドイツモコイツモ変態なんですよ。変態たちが狂態痴態を競う、めくるめくアブノーマルワールドにドン引きしつつ惹きこまれてしまいます。冒頭、50年代のアメリカっぽい、明るくほのぼのしたムードと映像の中で蠢く、地中のまがまがしい虫、そして落ちている耳!隠微な変態世界への、見事ないざない方です。好奇心から事件に首を突っ込んでいくジェフリーを道案内役に、観てるほうもどんどん深い暗い沼にズルズル引きずり込まれる感覚を味わえます。

 狂った異常な話なんですけど、何か笑えるんですよ。リンチ監督も、確実にそれを狙ってたと思います。おいおい~とか、ちょ待てよ!なシーンのてんこもり。よくこんな変態キャラ思いつくな~と、リンチ監督の異才ぶりに驚嘆せずにはいられません。意味深だけど意味不明なキャラや、シュールなシーンなども、他の監督にはない独特さ。

 頭がアレな人々ばかりですが、特にアレなのがデニス・ホッパー演じる悪党フランク。わけのわからない罵詈雑言しか口にせず、触るものみな傷つける狂犬ぶりがヤバすぎます。ガス?麻薬?吸引しながら、ドロシーにマミーマミーと甘えながら変態行為、そしてボコボコに殴ったり。赤ちゃんみたいに青いベルベットをハムハムしてたり、そのイカレポンチな倒錯ぶり、凶暴な異常者ぶりが非道すぎて笑えます。こんな演技、素面でできるものなのかしらん?オスカーにノミネートされたほどのデニス・ホッパーの怪演が、とにかく強烈です。

 そして、フランク以上のド変態ドロシー役、イザベラ・ロッセリーニもスゴすぎます。もう見るからに何かコワレてる女ドロシーですが、やることも言うこともヤバすぎ!クローゼットに隠れてたジェフリーを引きずり出して、何をするのかと思えば。ジェフリーをナイフで脅して全裸にして、ハアハアとか

 フランクに殴られて陶然、ジェフリーとの情事では、ぶって!いじめて!とSM行為を強制など、ドMな変態痴女ドロシー。フツーの女優なら二の足を踏む役を、イングリッド・バーグマンの娘であるイザベラが捨て身の怪演!ハリウッド女優にはない退廃、熟れた崩れた美貌と肉体が、生々しく痛々しく不気味。あざだらけの全裸で植え込みから出てくる姿とか、その女優魂に畏怖。この映画のイザベラを見て、草葉の陰のバーグマンはどう思ったことでしょうか。私が演じたかった!と羨ましがったかも?
 好奇心のせいで悪夢を味わう主人公ジェフリー役、リンチ監督のお気に俳優だったカイル・マクラクランが可愛いイケメン!

 事件への執着ぶり、女の部屋に侵入、のぞき見など、やはり変態なジェフリーを、淡々と可愛く演じてるカイル。端正で甘いマスク、どこか掴めない謎めいた雰囲気が素敵。全裸も披露。おちりが可愛かった♪現在のカイルは、シブいおじさまになっているようです。

 ジェフリーを手伝う女子高生役、ローラ・ダーンも好演。ジェフリーとドロシーの関係を知ってショックを受けるシーンの彼女、すごい顔で怖い+笑えます。タイトルにもなった歌が効果的に使われていて、観終わった後もしばらく耳に残ります。
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Sweet Mermaid♪

2015-06-23 | 北米映画 80s~90s
 My Favorite 80年代映画⑤
 「スプラッシュ」
 ニューヨークで青果市場を営む青年アランの前に、突如現れた謎の美女。アランはマジソンと名づけた彼女と恋に落ちる。マジソンの正体は、幼い頃に海で溺れたアランを救い、恋しい彼に会うために大都会へやって来た人魚だった…

 引き続きトム・ハンクス主演作。「ビッグ」よりさらに前のトム、さらに若くて可愛い!ほんま好きやわ~この頃のトム・ハンクス。イモいけどイケメン。今とは別人な細さもスマートでカッコいい。トボけてるけど何か悲しそう、すごく繊細でガラスのハートっぽさも母性本能をくすぐります。可愛いけど気色悪い男ぶりっこではないところも好き。

 「ビッグ」のオトナコドモ演技同様、このラブコメでのロマンティック演技もチャーミングなトム・ハンクス。表情とか目つきとか動きとか、恋してるんですよほんとに。恋したら、相手のどんな変なところも美点に見えてしまう。素っ裸でNYに現れて警察のご厄介になったり、英語も話せず素性も知れず、怪音波みたいな声でTVをぶっ壊したり、どこからどう見ても考えても、フツーじゃないマジソン。でも、アランは大して気にしないんです。それどころか、そんなマジソンを可愛いとか楽しいとか思って、ますますデレデレになっちゃう。まさに恋は盲目。翻弄されることに酔ってるみたいな。こんな彼氏を困らせて悩ませて泣かせてみたい!と思わせる、恋するドM男なトム・ハンクスが好きです。

 シャイでナイーヴでドMだけど、頼りない草食男子じゃないのがいいんです。「ビッグ」のジョッシュもそうでしたが、この映画のアランも強引なまでにヒロインをガンガン引っ張っりまわし、主導権を握ってくれるんですよ。もちろん、女に不快感や不安を抱かせるようなやり方をせずに、純真に情熱的に。そういう男子、いいですよね~。そして、まだ若くてイケメンなので、美女とのラブシーンも絵になります。

 胸キュンなシーンも多く、アイススケートのシーンとラストの海のシーンが特にso sweetでした。ああ~わしも大瀬良くんと手をつないでスケートしたり、青い海で泳いでみたいのお~。ラストのアランの決断に感嘆。まさに愛のためにすべてを捨てた彼、後悔も恐れもない愛なんて、私には一生縁がないんだろうな~…

 マジソン役のダリル・ハンナも、めっちゃラブリー。陸の大都会でも物怖じせず、好奇心いっぱいで大胆不敵なことをする彼女が笑えます。水の中での演技、大変だったんだろうな~。それにしても。もし彼女みたいな美女じゃなくて、逸ノ城とか巨人の阿部とかにそっくりな人魚姫だったら、やっぱアランはあそこまでベタ惚れにならないんでしょうね

 アランの兄、ろくでもないけどいい奴なフレディ役のジョン・キャンディも好演。子どもの時と同様、大人になってもわざとコインを落として拾うフリして、女性のスカートの中をのぞくのが笑えた。スケベさが意外なところで役立つのも笑えた。ジョン・キャンディって、もう亡くなられてるんでしたっけ…哀悼…

 この映画の後も、何作もトム・ハンクス主演作を撮っているロン・ハワード監督。今では名匠っぽくなってますが、この当時はまだフレッシュな若々しい感性があって、最近の作品より断然好きです。
 人の姿を借りて来たのよBig Big Town♪雨に濡れたら私はただのマーメイド♪ビルの都会は冷たい海ね~♪カラオケに行けば必ず歌う中山美穂のヒット曲「人魚姫 Mermaid」は、明らかにこの映画をモチーフにしてますよね。
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彼の、大きくて…

2015-06-21 | 北米映画 80s~90s
 My favorite 80年代映画④
  「ビッグ」
 大きくなりたい!と願い事をした12歳の少年ジョッシュは、翌朝目覚めると大人の男に変身していた…
 二度もオスカーを受賞し、すっかり貫禄も恰幅もあるハリウッドの偉いおじさんになってしまっている現在のトム・ハンクスですが、若かりし頃のこの映画におけるトムのカッコカワイさは神!今とは別人のような、スマートで可愛いイケメンだったのです。まだ年端のいかぬ頃に初めて観たのですが、しばらくの間はトム・ハンクスが理想の男でしたわ。

 見た目は大人、心は子ども、という役を演じた男優はあまたいますが、後にも先にもトム・ハンクス以上のオトナコドモ演技はお目にかかったことありません。彼はこの映画で初めてオスカーにノミネートされたのですが、受賞しなかったのが不思議。後の受賞作「フィラデルフィア」と「フォレスト・ガンプ」よりも、こっちのほうが一世一代、二度と再現できない名演だと私は思ってます。

 オトナコドモ演技はヘタな俳優がやると、ただの不思議くん、気持ち悪いオトコブリッコ、または知的に障害があるとしか思えない、になりがちなのですが。トム・ハンクスはどれにも当てはまらない、実に絶妙なオトナコドモっぷりなんですよ。ボク可愛いでしょ?無邪気でしょ?とアピールするような笑顔よりも、トボけた真顔とか困惑顔のほうで笑いを誘う演技。目つきとか表情、動きも、こまかく繊細。これって計算してできる演技なのか~と、コドモになりきってるというよりコドモに憑依されたかのような、ちょっと怖くなるほどの入魂演技なんです。
 演技も驚異的ですが、やはり何と言ってもこの映画のトム・ハンクス、若くてイケメン!優しそうだけどちょっと哀しそうで、母性本能くすぐる系です。トボけた真顔が独特で可愛い。初登場シーンはブリーフ一丁なのですが、ガッチリムッチリした裸もセクシー。子どものパジャマは破れてたのに、パンツはそのままだったのが不思議でしたが

 トム・ハンクス可愛いカッコいい!名演!で満足満足♪な映画ですが、二度と戻れない子ども時代の大切さ、はかなさも伝わってきて、ノスタルジーに胸をキュンとさせてもくれる名作です。君も子どもに戻ろう!と誘うジョッシュにスーザンが言う『私はもうその時を生きた。一度で十分』という台詞が、今の私にはホロ苦かったです。
 スーザン役のエリザベス・パーキンスも好演。はじめはカリカリしたトンガリキャリアウーマンだったのが、だんだん柔らかく優しく変貌していく過程が素敵でした。それにしても。女って、男に惚れると弱くなるんだよね~。

 トム・ハンクスと同じぐらいの名演だったのは、ジョッシュの親友ビリーを演じてた男の子。演技うますぎ!ビリーのキャラも、子どものくせに男気があってめっちゃカッコいいんですよ。将来いい男になりそう。少年ジョッシュが、トム・ハンクスに全然似てないのがちょっと気になった。それはそうと。童貞を失ったジョッシュは、12歳に戻ってから元通りの生活、子どもの世界に以前のように適応できるのかな~と、ラストに下世話な感想を抱いてしまった私です…

 ↑この頃のトムの可愛さは、まさに神!別人のようなおじさんになってしまってる現在のハンクス氏、警察沙汰になるバカ息子がいるなど、時の流れを痛感させてくれます…
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問題のあるホテル

2015-06-14 | 北米映画 80s~90s
 My Favorite 80年代映画②
 「ホテル・ニューハンプシャー」
 高校教師のベリーは、家族とともに念願だったホテル経営を始める。次々と降りかかる不幸や災厄を、ベリー一家は明るく逞しく乗り越えていくが…
 「ガープの世界」や「サイダーハウス・ルール」などのアメリカの人気作家、ジョン・アーヴィングの小説の映画化。私も多感な年頃に、アーヴィングにハマってたんですよね~。ファンタジックなまでに波乱万丈、奇想天外なストーリーは、常に死と暴力に満ち溢れてて、悲劇や凶事がこれでもか!とばかりに起こるけど、決してお涙ちょうだいにはならない突き抜けた明るさがあって、アメリカ人のタフさとかポジティヴさに感銘を受けたものです。

 この家族ドラマもアーヴィング節が炸裂してて、とにかく珍事変事凶事いろんなことが怒涛のように起きて、ジェットコースターのように一気に走る抜ける展開なので、長い話だけどアっという間にラストにたどり着いてしまいます。

 近親相姦、同性愛、いじめ、レイプ、事故死、テロや失明、自殺など、ベリー一家には問題だらけ、不幸・悲劇の嵐。なのに、すごいあっけらかんとしてるんですよ。みんなノーテンキで元気なんです。フツーの人なら立ち直れない、トラウマになるような経験をしても、落ち込んで沈んで立ち止まったりしないんです。劇中の台詞『開いてる窓は見過ごせ』、どんなに悲しいこと辛いことがあっても生きていこう!というテーマが心に響きます。
 リアルな悲劇と不幸を描いても、どこかおとぎ話のような語り口が独特。曲芸をするクマの“メイン州”や、オナラばかりしてる犬のソローが、人間以上に生と死について考えさせる存在になっているところも、哀しいフェアリーテールっぽさを醸しています。

 とにかく、ベリー一家の強さ、明るさ、前向きさが人間離れしてて驚嘆ものです。どんなに踏みつぶされても、したたかに元気に執念深く生きる雑草のような人たちなのです。優しいけど夢中人なパパ、長男はホモ、長女と次男は愛し合ってて、次女は小人。強烈な個性のファミリーが、仲良く楽しそうに不幸や悲劇と向き合う姿が、コミカルにドラマティックに描かれています。不幸や悲劇にも、必死に涙ながらに!なんて悲壮感は微塵もなく、サラっとシレっと負けないところが笑えます。そんなベリー一家や彼らに関わる人々を演じてる俳優たちが、なかなか豪華です。

 家族の中心である長女のフラニー役、ジョディ・フォスターの貫禄ときたら!当時まだ20代前半なのに、すでに姐御、いや、親分な風格です。風貌もキャラも、まさに“漢(おとこ)”な頼もしさ。実姉と愛し合う弟、実質の主役である次男ジョン役のロブ・ロウは、まだ少年っぽさが残ってて可愛い。この映画でもよく脱いでました。パパ役のボー・ブリッジスは、弟のジェフほど男前ではありませんが、優しそうで知的な素敵おじさま。
 最も強烈で美味しい役だったのは、後半のウィーン編になって出てくる二代目“メイン州”、クマのスージー役のナスターシャ・キンスキー。

 超美女のナスターシャが、かぶりものをしてその美貌を隠してる!というところが、なかなか小粋な配役。ジョディ兄貴とレズシーンもあり。最近レズであることをカミングアウトしたジョディ兄貴、ロブ・ロウとよりもナスターシャとのラブシーンのほうがノリノリだったんだろうな
 あと、フラニーをレイプする性悪ハンサム高校生役と、ウィーンのテロリスト役の二役を演じてるマシュー・モディンもイケメン、好演。
 今は亡き名匠トニー・リチャードソン監督のユニークな演出、心に残る映像美、流麗な音楽なども素晴らしいです。
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ガンジーでさえ絞め殺したくなる女!

2015-06-11 | 北米映画 80s~90s
 My Favorite 80年代映画①
 「殺したい女」
 ランジェリー会社の社長サムは、財産目当てで結婚した妻バーバラを殺す計画を実行に移そうとするが、その矢先にバーバラは誘拐されてしまう。サムは狂喜し、身代金の支払いを拒否するが…
 この映画、大好きなんですよ!気分が落ち込んだ時とかに観たくなるんです。ハリウッドのノーテンキでエネルギッシュでオゲレツでエグいブラックコメディは、私にとって元気になれるビタミン剤なのです。
 サムとバーバラ夫妻、誘拐犯の若い夫婦、サムの愛人とそのツバメ、警察、シリアルキラーまでが入り乱れてドタバタ大騒ぎ。みんなの勘違いと思い込みが錯綜し、どんどん事態がこんがらがっていく展開が笑えます。特に笑えたのは、アホなツバメがカーセックスを殺人現場と勘違いして盗撮するシーン。娼婦とヤってる男の正体が、またまた事態をややこしくするところがナイス。あと、バーバラの愛犬。可愛いプチプードル、マフィが凶悪すぎて笑えます。マフィを始末するためにサムが放った刺客、ドーベルマンのアドルフの裏切りにも爆笑!犬2匹が驚嘆ものの名演。
 ただ単にドタバタしてるだけのコメディではなく、エゲツなくもスパイシーな台詞の数々、伏線の張り方や小道具の使い方など、脚本もよくできてるんですよ。子どもやジジババでも楽しめる系の笑いでは物足りない、毒々しくてヤバい大人向けの笑いが好きな人なら、ぜったい楽しめるコメディです。
 暴走しまくるキャラ立ちしすぎな登場人物たちを、個性的な役者たちが好演・珍演してます。

 チビ&ハゲ、セコくてズルくて冷酷なサムを、名コメディアンのダニー・デヴィトーが楽しそうに演じてます。いちばんのワルだけど、いちばん可哀想でもあるサム。見た目だけでもう出オチ的、とにかくひどい目に遭いまくるデヴィトーおじさんの、チョコマカした動きと激しい喜怒哀楽の表情が可笑しいです。
 サム&バーバラ夫妻に振り回される超お人よしの誘拐犯夫婦役、ジャッジ・ラインホルドとヘレン・スレーターの、オロオロ&あわあわ演技も珍妙です。ビバリーヒルズコップシリーズで当時人気だったラインホルドさん、結構イケメンです。背が高くてスタイルがいい!足、長っ!元スーパーガールのヘレンさんの、ダイアナ妃な髪型にノスタルジー。ラインホルドさんもヘレンさんも、最近お見かけしませんが…元気に活躍してるのでしょうか。

 サムの愛人の若いツバメ役が、後に「インディペンデンス・デイ」などで人気スターとなる前のビル・プルマン。超絶アホな役だけど、可愛いイケメンです。彼も最近、見なくなりましたね…
 そして何と言っても最強最高なのが、オバタリアンお嬢様バーバラ役のベット・ミドラー!

 超ド迫力!嵐のような大暴れが愉快痛快!こんな風に一度でいいから、いいたい放題やりたい放題に傍若無人してみたいと憧れてしまうほど。超下品で乱暴でフテブテしい言動が素敵すぎる。誘拐犯への罵詈雑言が非道すぎ、なんだけど、よくそんな言葉思いつくな~と感嘆してしまうほどのボキャブラリーの豊富さ。誘拐犯に『ガンジーでも絞め殺したくなる女』と言わしめるパワフルなモンスター妻を猛演したミドラーおばさまは、ご存知の通り大物歌手。この映画でコメディエンヌとしても大きく開花し、この後ヒット作を連発したのでした。
 下品で凶暴なバーバラですが。サムが自分を愛してると信じて疑ってなかったり。監禁中の暇つぶしに始めたダイエットに成功し、泣きながら誘拐犯に感謝したり。ある意味、誘拐犯夫婦よりお人よしなバーバラが、すごく可愛くも思えました。
 ミック・ジャガーの歌う主題歌“Ruthless People”も、ノリノリにゴキゲンな曲。オープニングのアニメも、毒々しくて好き。
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この世は愛で廻ってる

2014-11-14 | 北米映画 80s~90s
 「ガープの世界」
 シングルマザーの看護婦ジェニーに育てられたガープは、さまざまな人や出来事と出会いながら成長する。やがて作家となったガープは、幸せな家庭を築くが…
 ロビン・ウィリアムズの急死は、世界中の映画ファンに衝撃と悲しみを与えました…
 「グッドモーニング、ベトナム」や「いまを生きる」、オスカーを受賞した「グッド・ウィル・ハンティング」など、数々の佳作秀作で名演を披露してきたロビンの出演作の中で、私がとりわけ好きなのが、人気作家ジョン・アーヴィングの小説を映画化したこの作品です。
 主人公ガープの波乱に富んだ人生を通して、病める現代アメリカ社会を明るく温かく、それでいて過激にシニカルに描いた悲喜劇です。全編かなりぶっ飛んだ珍妙エピソードがテンコモリなのですが、まずガープの出生がスゴすぎます。子どもは欲しいけど結婚したくない男も要らない看護婦のジェニーが、見ず知らずの瀕死の負傷兵をレイプ?して身ごもり生んだのがガープ。こんなフツーじゃない生まれ方をしたガープが、フツーの人生を歩めるわけもなく、次々といろんな人、いろんな出来事と遭遇し、喜びや悲しみを経験。それがポップにスピーディに、ちょっとファンタジックな味わいでつづられていて楽しいです。ガープ少年の描いた絵がアニメになって動き出したり、飛行機が家に突っ込んできたり、作家になったガープの描く小説世界とか、滑稽だけどどこか悲しい、不安や不吉な翳りもうっすらとかかっている感じが、病的で歪んだ価値観や、危険で有害な情報やモノが氾濫してるアメリカで、健全に無事に生きることの困難さを伝えているようでした。同じジョン・アーヴィング原作の「ホテル・ニューハンプシャー」もそうでしたが、病んだ社会で悲劇や不幸に襲われながらも、たくましく明るく生きるアメリカ人の強さ、前向きさには感服せずにはいられません。

 ほのぼの温かい幸福と、ショッキングな不幸がめまぐるしく交錯するガープの人生は、まさに禍福は糾える縄のごとし。愛する人たちが次々と非業な死を遂げたり、人間として耐えられない悲劇にも襲われる彼ですが、同時に愛し愛された愛に恵まれているその人生は、とても豊かに思えて羨ましくなりました。愛し愛されることって、傷ついたり傷つけたり憎んだり恨んだり、しんどいことも多いけど、やはり幸せなことなんだな~とガープを見ていて思いました。私なんか、傷つくこともほとんどなく、大きな不幸も悲しみもない代わりに、大きな幸せも喜びもない無難すぎる人生。胸躍る出会いも、胸が痛む別れもない。何てつまんない、退屈でセコい人生でしょう。ある意味、そっちのほうが悲劇なんじゃないかと。
 悲劇や不幸のオンパレードなのに、お涙ちょうだいにはしておらず、悲惨な中にもどこかブラックな笑いが。ガープの妻の浮気相手の末路とか、悲惨きわまりないのに滑稽で笑えます。
 ガープ役のロビン・ウィリアムズ、まだ若くて可愛い!

 すごい優しそうで、温かそうで、それでいていつも悲しそうで。彼の強すぎる感受性が、ガープのキャラに合ってました。自分がおかしなことをするのではなく、周囲のエキセントリックな人々や珍奇な出来事に対しての躁鬱的リアクションで笑いをとっています。笑えるんだけど、ほんと悲しみがつきまとってるんですよね。そこがロビンの持ち味で魅力ではあるのだけど、いい人なのに幸せになれないという不幸体質な役がハマリすぎて、実際の悲しい最期が重なって切なくなります。不幸で悲しいけど、活き活きとしたロビンの演技に胸が痛みます。急死が、かえすがえす惜しまれます。あらためてロビン哀悼…
 この映画、ロビンが主演なのですが、彼以上の好演と存在感でほとんど主役となってしまっているのが、名女優グレン・クローズです。

 ガープのママ、ジェニー役のグレンおばさま。これが映画デビューなのだとか。昔風で言うと“飛んでる女”なジェニーを、クールかつ珍妙に演じて目立ちまくってます。世間の目や常識などどこ吹く風で、颯爽としなやかに我が道を行くジェニー、すごくカッコいい女性です。ガープへの厳しくも優しい愛情も素敵でした。作家志望のガープよりも先に、何気なく書いた自伝書がベストセラーとなってしまうジェニー、フェミニスト運動のカリスマに祭りあげられてしまう展開が笑えるのですが、自分の舌を切り落とす狂信的な女たちとか、まるでオ○ムみたいな連中が不気味な空気を流し始め、やがて起こる悲劇を予想させます。
 常にナース姿、堂々と凛としつつも、ちょっとズレてる変人ジェニーを好演したグレンおばさまは、デビュー作で早くもアカデミー助演女優賞にノミネートされました。受賞しなかったのが不思議。いかにもな大熱演ではなく、サラっと自然で爽やかながらもパンチが効いてる演技が素晴らしいです。
 ジェニーの信奉者でガープの友人となるニューハーフ役、ジョン・リスゴーの強烈なヴィジュアルと、心温まる名演も忘れがたいです。
 映画のオープニング、ビートルズの“When I 64”が流れる中、ふわふわ空に浮かぶ赤ちゃん(ガープ)が超可愛いです。
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プラハの恋

2014-10-28 | 北米映画 80s~90s
 「存在の耐えられない軽さ」
 1968年のチェコスロヴァキア・プラハ。優秀な脳外科医のトマシュは、画家のサビーナや不特定多数の女性との情事を楽しんでいた。出張で赴いた田舎町で、トマシュはテレーザという娘と出会う。突然部屋に転がりこんできたテレーザに戸惑いながらも、トマシュはしだいに純真なテレーザを愛するように。サビーナをはじめ他の女との関係も続けるトマシュを、テレーザは理解できず苦悩する。そんな中、ソ連のプラハへの武力侵攻が勃発し…
 私が3回も映画館に足を運んだ唯一の映画です。多感な年頃だった私の心の琴線に、その美しく刺激的な恋愛ドラマはとてつもなく触れました。

 テレーザを愛しながらも、女遊びをやめないトマシュ。たいていの男は、愛がなくても女とセックスできる、愛がないからこそセックスが愉しめる、ということをトマシュが幼い私に教えてくれました。潔癖で真面目な女性からしたら、とんでもないヤリチン、軽薄な浮気者、はたまた異常性欲者にも映ってしまうかもしれないトマシュ。確かに、トマシュみたいな男を愛したら大変だろうな~とは思います。だからこそ、私にとってはすごく魅力的な男なんですよね~。あんなに美しくて優しくて知的でエリートな男が、インポみたいな堅物だったらトホホですよ。自分の魅力を理解してて、無駄にしてないトマシュってカッコいい。トマシュって、ちょっと源氏物語の光源氏とカブるんですよね。女とヤリまくりながらも、ぜんぜん下劣にも卑俗にもならない。女に身を投げさせる誘惑も、軽やかで優しい。心の痛みや苦しみは与えられても、トマシュを愛した女たちは決して不幸ではない。むしろ女として、人間として豊かになれてる。放蕩をやめないのは、暗い生い立ちとか女への愛憎とかのせい…みたいな、心の闇チックな暗さや悲しみなどがないところも、トマシュの美点です。単にすべての女が好き、愛することができる、みたいな軽やかさ、懐の深さが素敵なんです。実際、いろんな女とヤるトマシュですが、許容範囲広すぎ~と驚嘆してしまうほど、いつでもだれとでもOKなラブマシーンぶりなのです。エッチで情緒不安定な女たちへの注射のつもり?さすがお医者さん、と笑えるほど。

 花から花へと自由にフワフワしてるようで、ソ連の圧力や脅迫にも屈しない硬派で骨太な男でもあり、すべてを犠牲にしてテレーザを愛し抜くようになる(亡命先のスイスから、テレーザを追って危険なプハラへ戻るトマシュに感動!)潔い男でもあるトマシュ。こんな男、私なんか絶対に関わることのない世界の住人なんだろうな~と、残念だったり安心もしたり。この映画にハマってた頃、よく見る野良猫を勝手にトマシュと名付けて呼んでました。

 主人公のトマシュを完全にのみ込み、文字通り食ってしまってるのが、テレーザです。この娘、ほんとスゴいんですよ~。まさに猪突猛進爆弾娘。おぼこな田舎娘、処女のくせに、優しく声をかけてきただけのトマシュを追って家出、彼の部屋に押しかけて、ほとんど彼をレイプ。その行動力、情熱にトマシュだけでなく観てるほうも圧倒されます。その後も、予測不可能な言動でトマシュを困惑させ翻弄するテレーザですが、そうすればするほど、トマシュはグイグイと彼女に惹かれていき、いつしか彼女なしでは生きていけない愛の奴隷になってしまうのです。ちょっと犬っぽいというか、俺がついてないと(飼ってやらないと)ダメな女(犬)だから、と男の父性本能をくすぐる頼りない危なっかしいキャラと見た目は、マネしようにもできない天然さ。計算高い悪女なんかよりも、テレーザみたいな天然不思議ちゃんのほうが怖い…と、幼い私は女性観もあらたにしました。
 トマシュのセフレ?サビーナが、すごくカッコいいです。あーいう自由な女に憧れます。トマシュとは生き方や考え方が近い、同志みたいな愛で結ばれているのが素敵でした。彼女がもし男だったら、トマシュとは大親友になってたことでしょう。サビーナのアーティストなファッションがオシャレでした。

 トマシュ役は、若き日のダニエル・デイ・ルイス。オスカーに輝いた作品の彼も素晴らしいけど、ワタシ的にはこの映画こそDDLの最高作なのです。とにかくカッコいいです。他の俳優だと、ただのヤリチン男になってしまうだろうトマシュが、まるで優雅な貴公子に見えたのはDDLだからでしょう。若い頃から、世界最高級の香り高き俳優だったのです。声が好きなんですよね~。すごい美声!トマシュのキメ台詞『服を脱いで』DDLのあの美声で言われたら、催眠術にかかったように女なら(男でも)誰でも言いなりになりそう(笑)。静かな優しい微笑も素敵ですが、たまに見せる歯が見えるほど大笑いする笑顔が可愛い!

 テレーザ役のジュリエット・ビノシュが、とにかく圧巻の存在感と演技。あのダニエル・デイ・ルイスが食われてるもん。スゴい女優が現れたな~と、当時は無名に近かったJBさんを見て驚嘆したものです。後にフランスの大竹しのぶと呼ばれるようになったJBさん、ヤボったい可愛さとか、憑依的な演技とか、確かに大竹しのぶとカブります。テレーザ役も、たとえば宮崎あおいとか蒼井優とかが演じたら、ほんと不愉快なだけのブリッコカマトト女になってただろうな~。若かりし頃のJBさんは、瑞々しいフレッシュさ、純朴な愛らしさがありつつ、リアルな生々しさ、大胆さで圧倒的な女優魂を見せつけてます。やはりタダモノではありません。JBさん、当時はまだ英語が下手だったせいで、テレーザ役のオーディションに落ちたんだとか。再度チャンスがめぐってきて役を獲得しただけあって、力と熱の入れようがハンパじゃないです。後に国際女優として大成する彼女の原点、とも言える作品です。

 サビーナ役のレナ・オリンもチャーミングな好演。こうだクミなど目じゃないほどのエロカッコよさ。挑発的でクールな演技は、同性受けしそう。レナ・オリンとジュリエット・ビノシュが、屈折した感情を吐き出すように互いのヌードを撮り合うシーンが、レズっぽくて妖しい。ハリウッドの有名女優ではなく、ヨーロッパの実力派女優を起用したのも、この映画の勝因と言えましょう。後年二人は、「ショコラ」で再共演してますね。二人ともすっかりおばさんになってて、感慨深いものがありました…
 美しいプラハの街並みも見どころのひとつ。実際はプラハでロケできず、別の国で撮影したらしいけど。私が数年前にチェコに行ったのは、この映画の影響によるところが大きいです。透明感ある冷涼な映像、流麗な音楽も素晴らしいです。

 有名な“プラハの春”も描かれてます。パニック映画さながらな迫力と緊張感あり。ほんとにあんなことがあったんですね~。街に戦車ですよロシア(当時はソ連)怖い~。ほんと、今も昔もおそロシア!
 あと、犬好きの方は必見!トマシュとテレーザが我が子のように慈しむ愛犬カレニンが、超可愛い!カレニンとのお別れのシーンが泣けます。子豚のメフィストもいい味だしてます。
 3時間近い大作ですが、集中力が皆無な私でもダレずに観ることができました。何だか夢を見ていたかのような、はかなく遠い余韻を残すラストも好きです。
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熟女の姦計!

2014-09-21 | 北米映画 80s~90s
 「危険な関係」
 18世紀のフランス。社交界を牛耳るメルトイユ侯爵夫人は、若く美しいセシルと婚約した愛人への復讐として、女たらしのヴァルモン子爵にセシルの処女を奪わせようと企む。ヴァルモンは貞淑なトゥールベル夫人をなびかせようと躍起になっていたが…
 有名なラクロの原作は、これまで各国で何度も映画化されていますが、今のところ最高傑作はこのハリウッド版ではないでしょうか。後に「クィーン」なども高く評価された、イギリスの俊英スティーヴン・フリアーズ監督の作品。
 この映画、とにもかくにもメルトイユ侯爵夫人役のグレン・クローズが強烈すぎます。

 「危険な情事」そしてこの「危険な関係」。危険シリーズ?で2年連続アカデミー主演女優賞にノミネートされたグレン・クローズは、メリル・ストリープと並ぶアメリカ屈指の名女優。「ガープの世界」や「ナチュラル」での好演も忘れがたい彼女は、美女ではないけど賢くタフで優しいアメリカ女性といったイメージでしたが、恐怖のストーカー女アレックスをセンセーショナルに激演した「危険な情事」で映画ファンの度肝を抜いた後、この華やかにインモラルなコスチュームプレイで再び恐ろしい女を怪演し、女優としての力量と奥の深さを実証したのでした。

 メルトイユ夫人は、ある意味「危険な情事」のアレックスより怖い女。アレックスには、まだ相手を一途に思いつめる愛がありましたが、メルトイユ夫人には愛など一片もありません。他人を操り弄び、彼らが傷つき苦しみ堕ちて汚れる姿を見て悦びを味わう悪女。なんでこんなに性悪になれるんだろうと、人が善いだけの私なんかからすると、悪い意味で羨ましくなるほどの外道、鬼畜っぷり。とにかく、メルトイユ夫人が言葉巧みに、偽善に満ちた笑顔で人々を愚弄する手練手管が、痛快なほど悪辣で笑えます。

 内心では相手を嘲笑いながらも、表面的には観音さまのごとく優しげな微笑の白々しさ。そして、悪だくみしてる時のゾっとするよな酷薄な魔女顔。激情ぷっつん女のアレックスには警戒や反撃もできるけど、冷酷非情で狡猾な鬼女メルトイユ夫人には、知らぬ間に寝首をかかれてしまいます。まさに他人の不幸は蜜の味、その甘味を糧にして生きる毒婦。常に自分が魅力的であることを確信するために、権力を握って他人より優位に立つために、罠や策謀を糸のように張り巡らせる蜘蛛女。女の陰湿さ冷酷さの権化のような妖婦を毒々しく、かつクールに理知的に演じてるグレンおばさまに圧倒され、魅了されるばかりです。とんでもない悪女なのに、何かカッコいいんですよね~。この人がこう言うんだから間違いないだろう、と思わせる説得力のある姉御肌、貫禄が素敵。その懐の深さに包まれたいという魔魅にあふれてるのです。セコい性悪女とは格が違う、カリスマ的大物感ある悪女なのです。まさに大女優の威厳と風格。CMタレントのお遊戯を見慣れた目には、いささかドギツいグレンおばさまです。共感とか同情とかをいっさい拒みながらも、中年女の悲哀もにじませてるところがいい。

 ヴァルモン子爵役のジョン・マルコヴィッチがなあ~。彼は間違いなく名優で、細やかな絶妙な演技を披露しているのですが、いかんせんルックスが…あんな見るからに胡散くさいブサイクなおっさんに、何で美女たちがよろめくのか納得できなかった。演技が巧いだけじゃダメな役ってのもあるのです。まあ、あえて彼が演じたのも、意表を突いて面白いとは思うけれども。ヴァルモンは、少々演技がヘタでも、セクシーな美男俳優にやってほしかった、というのが私の正直な感想。
 清らかで憂いある美貌のミシェル・ファイファー(トゥールベル夫人役)と、デビューしたばかりの頃の初々しいウマ・サーマン(セシル役)が、この映画の花となってます。そして、セシルに恋する青年ダンスニー役、これまた駆け出し時代の若きキアヌ・リーヴスが可愛い!すごい大根ですが

 アカデミー賞の脚色賞を受賞しただけあり、メルトイユ夫人やヴァルモンの伯母様がのたまう、人生や恋愛に関する含蓄ある台詞が素晴らしいです。貴族たちの贅を尽くした華やかな衣装やインテリアも目に楽しく、オスカーの衣装賞、美術賞獲得も納得の見事さです。
 それにしても。恋愛ゲームにうつつを抜かす貴族たち、もっと他にすることなかったのでしょうか。そのヒマ人っぷりに呆れます。人間、ヒマと金がありすぎたらロクなことならないんですね~
 日本で映画化されるとしたら、理想的なキャストは?メルトイユ夫人役は、40代の頃の京マチ子とかピッタリそうですが。ならヴァルモンは市川雷蔵?うう~ん、いいかも!現代なら誰がいいかなあ。ドラマ「華麗なる一族」の悪女役がよかった鈴木京香とかよさげ。ヴァルモンは意外性(いや、結構ハマるかも?)で向井理。トゥールベル夫人は壇れい、セシルは思いつかん、ダンスニーは池松壮亮。舞台は平安時代か、大正時代の貴族社会。このメンツで映画化してほしいわ~。
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