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台湾映画祭⑥
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「親愛なる君へ」
ピアノ教師のジエンイーは、死んだ同性パートナーの老母シウユーと幼い息子ヨウユーと同居し、献身的に彼らの世話をしていた。病を患っていたシウユーが急死、財産を当てにしていたシウユーの次男は、ジエンイーが遺産相続人のヨウユーと養子縁組をしていたことを知ると、ジエンイーが母を殺したと警察に訴える。捜査によりジエンイーに不利な証拠が明るみとなり、ジエンイーは逮捕されてしまうが…
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ゲイの青年が死んだ恋人の家族に尽くす…という設定は、ベン・ウィショー主演の佳作「追憶と、踊りながら」と似てますが。こんなに胸が締め付けられる映画を観たのは久しぶりかも。感動したとか涙腺が緩んだとかではなく、いろいろ考えさせられて苦しくなる、重い気分になる、そんな映画でした。秀作なんだけど、こういうシビアな内容って苦手です。BLを期待して観たのですが、そんな甘い映画ではありませんでした。この世って、ほんと生きづらい…ジエンイーを見ていてため息が出ました。
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自分のことだけ考えて生きていればいい私のような孤独な人間よりも、自分よりも大切な愛する者がいる人のほうが、試練や苦難が多くて人生は優しくないようです。愛のための悲しみや苦しみ、闘いがあるからこそ人生は豊かになるともいえるけど、私はジエンイーのような人生は送りたくないです。あれが深く強く愛し愛される代償なら、私は愛を望みません。独りで寂しく穏やかに生きるほうがいいです
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ジエンイーの亡き恋人とその家族への愛が、とにかく悲痛。ここまで誰かに無償の愛を捧げることができるなんて、尊いけど怖いわ。亡き恋人の残した家族とはいえ、何の義理も義務もない赤の他人に、なぜここまで献身的に、自分を犠牲にしてまで尽くすのか。ただ人が善いだけではできない、優しさや愛情だけではない、何か重い十字架を背負ってるかのような、罪を償っている囚人のようなジエンイーが不可解でしたが、終盤になって判明する悲しすぎる事実で、すべてはジエンイーの贖罪と自罰だと理解できました。人を愛しすぎると不幸になる…
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台湾はアジアで初めて同性婚が合法となった、LGBT先進国。でも、現実にはまだまだ大きな壁や深い溝があるようです。ゲイカップルが子どもと幸せに暮らせる社会じゃないからこそ、あんな悲劇が起きてしまったわけだし。ゲイの生きづらさもだけど、老人介護や安楽死、子どもの人権など、深刻な社会問題も現実的で暗澹となってしまいました。喪失感と後悔を分かち合い、感謝と愛情を抱きながらも、ふとした瞬間に噴出する憎悪…老母のジエンイーへの複雑な想いも、悲しく痛ましかったです。でもいちばん可哀想だったのは、やっぱ幼いヨウユーです。身勝手な大人たち、非情な社会に振り回される、少年の冷ややかな寡黙さがいたいけで。決してハッピーエンドではないけど、ヨウユーの静かな強さと優しさのおかげで、未来に希望が感じられる余韻の結末でした。それにしても。あの老母の次男ムカつくわ~。老母も甥もほったらかしだったくせに、遺産が手に入らないと知ると速攻でジエンイーを陥れる卑劣さ。でも、あんな人のほうが世の中フツーにいるんですよね。ジエンイーのほうが特異です。
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ジエンイー役は、「台北に舞う雪」で記者役だったモー・ズーイー。地味イケメン。優しそうで悲しそうな顔と雰囲気が、薄幸な男の役に合ってました。静かな抑圧演技が印象的。すごい聖人だけど、独り暗い黒い懊悩に煩悶するジエンイーは、難しい役だと思います。日本のアラフォー俳優にも挑戦してほしい役。恋人とのシーンでの、不安と隣り合わせな幸せの表情も印象的でした。クスリの売人とラブホテルの浴室で、激しい全裸セックスシーンがあり。モーさん、お尻も出して頑張ってました。号泣しながらの性交が痛ましかったです。あの若い売人、ジエンイーのことを心配して助けようとしてくれる数少ない味方だったのに、結果的にはジエンイーを窮地に立たせる存在になってしまったのが皮肉で悲運。
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かなりキツい内容だけど、少な目の台詞、静かで淡々とした展開と空気感で、生々しくない味わいになっています。ジエンイーと亡き恋人との間に何があったか、シウユーの急死の謎など、現在と過去を交錯させながらドラマが紡がれ、真相が紐解かれる構成の脚本がミステリータッチで秀逸でした。ロケ地である港町・基隆の憂いある叙情、冬の山麓の厳しくも美しい風景も心に残ります。
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↑ 莫子儀、いい役者!1981年生まれの現在44歳。若く見えますね~。斎藤工とか星野源とかと同い年。チャン・チェン共演の新作「餘燼」が面白そう!現代で起きた殺人事件が、戦後台湾の黒歴史である白色テロと結びつくミステリードラマで、莫子儀は事件のカギを握る謎の男役みたいです。配信でもいいので早く観たい
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ピアノ教師のジエンイーは、死んだ同性パートナーの老母シウユーと幼い息子ヨウユーと同居し、献身的に彼らの世話をしていた。病を患っていたシウユーが急死、財産を当てにしていたシウユーの次男は、ジエンイーが遺産相続人のヨウユーと養子縁組をしていたことを知ると、ジエンイーが母を殺したと警察に訴える。捜査によりジエンイーに不利な証拠が明るみとなり、ジエンイーは逮捕されてしまうが…
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ゲイの青年が死んだ恋人の家族に尽くす…という設定は、ベン・ウィショー主演の佳作「追憶と、踊りながら」と似てますが。こんなに胸が締め付けられる映画を観たのは久しぶりかも。感動したとか涙腺が緩んだとかではなく、いろいろ考えさせられて苦しくなる、重い気分になる、そんな映画でした。秀作なんだけど、こういうシビアな内容って苦手です。BLを期待して観たのですが、そんな甘い映画ではありませんでした。この世って、ほんと生きづらい…ジエンイーを見ていてため息が出ました。
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ジエンイーの亡き恋人とその家族への愛が、とにかく悲痛。ここまで誰かに無償の愛を捧げることができるなんて、尊いけど怖いわ。亡き恋人の残した家族とはいえ、何の義理も義務もない赤の他人に、なぜここまで献身的に、自分を犠牲にしてまで尽くすのか。ただ人が善いだけではできない、優しさや愛情だけではない、何か重い十字架を背負ってるかのような、罪を償っている囚人のようなジエンイーが不可解でしたが、終盤になって判明する悲しすぎる事実で、すべてはジエンイーの贖罪と自罰だと理解できました。人を愛しすぎると不幸になる…
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台湾はアジアで初めて同性婚が合法となった、LGBT先進国。でも、現実にはまだまだ大きな壁や深い溝があるようです。ゲイカップルが子どもと幸せに暮らせる社会じゃないからこそ、あんな悲劇が起きてしまったわけだし。ゲイの生きづらさもだけど、老人介護や安楽死、子どもの人権など、深刻な社会問題も現実的で暗澹となってしまいました。喪失感と後悔を分かち合い、感謝と愛情を抱きながらも、ふとした瞬間に噴出する憎悪…老母のジエンイーへの複雑な想いも、悲しく痛ましかったです。でもいちばん可哀想だったのは、やっぱ幼いヨウユーです。身勝手な大人たち、非情な社会に振り回される、少年の冷ややかな寡黙さがいたいけで。決してハッピーエンドではないけど、ヨウユーの静かな強さと優しさのおかげで、未来に希望が感じられる余韻の結末でした。それにしても。あの老母の次男ムカつくわ~。老母も甥もほったらかしだったくせに、遺産が手に入らないと知ると速攻でジエンイーを陥れる卑劣さ。でも、あんな人のほうが世の中フツーにいるんですよね。ジエンイーのほうが特異です。
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ジエンイー役は、「台北に舞う雪」で記者役だったモー・ズーイー。地味イケメン。優しそうで悲しそうな顔と雰囲気が、薄幸な男の役に合ってました。静かな抑圧演技が印象的。すごい聖人だけど、独り暗い黒い懊悩に煩悶するジエンイーは、難しい役だと思います。日本のアラフォー俳優にも挑戦してほしい役。恋人とのシーンでの、不安と隣り合わせな幸せの表情も印象的でした。クスリの売人とラブホテルの浴室で、激しい全裸セックスシーンがあり。モーさん、お尻も出して頑張ってました。号泣しながらの性交が痛ましかったです。あの若い売人、ジエンイーのことを心配して助けようとしてくれる数少ない味方だったのに、結果的にはジエンイーを窮地に立たせる存在になってしまったのが皮肉で悲運。
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かなりキツい内容だけど、少な目の台詞、静かで淡々とした展開と空気感で、生々しくない味わいになっています。ジエンイーと亡き恋人との間に何があったか、シウユーの急死の謎など、現在と過去を交錯させながらドラマが紡がれ、真相が紐解かれる構成の脚本がミステリータッチで秀逸でした。ロケ地である港町・基隆の憂いある叙情、冬の山麓の厳しくも美しい風景も心に残ります。
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↑ 莫子儀、いい役者!1981年生まれの現在44歳。若く見えますね~。斎藤工とか星野源とかと同い年。チャン・チェン共演の新作「餘燼」が面白そう!現代で起きた殺人事件が、戦後台湾の黒歴史である白色テロと結びつくミステリードラマで、莫子儀は事件のカギを握る謎の男役みたいです。配信でもいいので早く観たい
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