お松の独りイザベル・ユペール映画祭⑤
「Un barrage contre le Pacifique」
30年代のフランス領インドシナ。高潮になると塩漬けになってしまう不毛な農地を守るため、防波堤を築こうとする母を支えながらも、貧しく不便な生活に絶望している美しい兄妹ジョゼフとシュザンヌ。そんな中、大金持ちの息子ムッシュー・ジョーが、シュザンヌに恋をする。それを知った母とジョゼフは…
マルグリット・デュラスの小説「太平洋の防波堤」の映画化。あの大ヒットした「愛人 ラマン」の姉妹編?みたいな作品でしょうか。フランスの植民地インドシナ(現在のベトナム)が舞台、蠱惑的な少女とアジア人の金持ちとの恋愛話、はラマンと共通してます。思春期の少女の性愛がメインテーマだったラマンに比べると、こちらは当時のインドシナの植民地生活を描くことに重きを置いてました。入植者がみんな、必ずしも優雅で贅沢な植民地ライフを送っていたわけでないことを、母子3人の逼迫した貧苦ぶりが教えてくれます。私だったら、3日ともたんわ、あんな生活。自然環境も過酷だし、不衛生で不便、ゴハンもマズそうだし、食卓のテーブルにフツーにウジ虫みたいなのがニョロニョロしてるのなんて、耐えられない。娯楽も何もないし、フランス人に反発する現地人がいつ一揆を起こすか分からない不穏さも怖いし、まさに大自然の牢獄です。体も壊さず気も狂わず暮らしてる3人の、肉体的精神的たくましさに驚嘆。
ママンも子ども二人も、辛いけど頑張る!闘う!な必死感は全然なく、自然に対抗する防波堤を築くように、過酷で無情な運命にも抗ってはみてるけど、もうどうなってもいい、どうでもいい、みたいなヤケのヤンパチ感、無気力で虚無的だったのが興味深かったです。そのせいか、亜熱帯が舞台なのに暑苦しさや湿度が低く薄く、全体的に乾いた冷ややかな雰囲気が漂っていました。どこにいても、フランス生まれじゃなくても、ドライでニヒルなところがフランス人らしかった。
金持ちのお坊ちゃまムッシュー・ジョーへの、母子3人の態度や思惑が面白かったです。毎日退屈だし、恋やセックスにも興味あるしなシュザンヌは、処女の小娘のくせに百戦錬磨のビッチも呆れるほど、男を翻弄し手玉にとる。私の裸が見たいの?見せてあ・げ・る。でも、それ以上はNon♪な、じらしっぷりが見事でした。じらしてじらして、さりげなくオネダリして貢がせたり。結局ヤらせなかったのに、ダイヤモンドの指輪はちゃっかり受け取ってるし。ほんと小悪魔!かけひきとか計算じゃないところが、返って怖い。遊び慣れた男ほど、あーいう無垢ゆえに残酷な女に弱く、振り回されてみたいM心をソソられるのでは。女冥利につきるよな~と、シュザンヌが羨ましくなりました。「愛人 ラマン」のヒロインとカブるシュザンヌは、実際にインドシナで少女時代を過ごした原作者マルグリット・デュラス自身なのでしょうか。
野生の美青年ジョゼフの、妹シュザンヌへの意地悪で屈折した態度もイビツで色っぽかった。普段は邪険に扱ってるくせに、いざシュザンヌに男が、しかも差別対象のアジア人が近づいてくると、嫉妬したり挑発したり。ムッシュー・ジョーの目の前で、裸のジョゼフがシュザンヌを腕に抱いて踊るシーンが、どー見ても兄妹ではなく男と女。禁断っぽくてドキッ。確実に精神的には近親相姦関係。環境が環境なので、肉体的にも禁忌を犯さなかったのが返って不思議なくらい。でもあれ、美しい兄妹だからこそ成り立つ、絵になる関係。ブサイク兄妹だと、ただ不愉快で気持ち悪いだけだろうし。
ママンは現実的で、背に腹は変えられぬ、シュザンヌが玉の輿に乗れば助かる!みたいなノリ。ホントなら言語道断なアジア人との結婚にも前向き。でも、シュザンヌにその気がないことを知り、プッツン逆上するママンの冷酷な身勝手さが怖かったです。現実の前では、娘の幸せなんてどうでもいいことなんですか?!
現実的だけど、どこか狂ってるコワレてるママン役が、イザベル・ユペールです。
明らかにどっかおかしい、ヘン、なんだけど、全然そんな風には見えない。誰よりも理知的で冷静沈着。でも、歪みや狂気がサラっと垣間見える…そんなヒロインをやらせれば、イザベル・ユペールは世界一ですよね~。ユペりん、ほぼ無表情なんですけど、怒りや虚しさ、悲しみが伝わってくるんですよ。表情だけでなく、後ろ姿の細い肩だけでも感情が分かるのです。いや、喜怒哀楽よりも、心が空っぽな“無”って演技で表現できるんだ~と、演技派きどりや大根を見慣れた目には、いつもながらユペりんの演技レベルは高すぎます。暑苦しい大熱演じゃないところが、ほんと素晴らしいです。原住民に囲まれた彼女の、亜熱帯までも冷ややかな砂漠のようにしてしまう存在感と、クールでエレガントな気高さは、まさに孤高の女王って風情。薄化粧とシンプルな衣裳が、還暦の彼女をすごく可愛らしくしていました。
ミーハー的には、ジョゼフ役のボーギャルソン、ギャスパー・ウリエルこそ、この映画最大の見どころでしょう。
かつてのカッコカワいい紅顔の美少年ウリ坊も、すっかり野郎っぽいギャス男になっちゃったな~。ほとんど裸か半裸なギャス男、スギちゃんも平伏すワイルドだぜぇ~(死語?)ぶりです。半裸衣裳、ほんとスギちゃんみたいで笑えます。どんだけ鍛えてるんだよ!なマッチョぶりも、磨きがかかってました。胸板の厚さ、二の腕の太さときたら!なかなか堂に入った野生児ぶりでした。気性が激しく傲慢で屈折してるジョゼフを、セクシーに演じてたギャス男です。瞳は優しいけど、口もとが何か卑猥なところも彼の魅力ですね。相変わらずのノシノシしたイカつい歩き方もトレビアン。
打算的で意地悪なフランス人母子に翻弄されるムッシュー・ジョーも、なかなかイケメンでした。ちょっとエグザイルのアキラ似?あんなカッコよくて優しい、しかも大金持ちの若い男なら、結婚してくれなくても喜んで付き合うけどな~私だったら
↑ギャス男といえば、イヴ・サンローランを演じてる新作の日本公開が待ち遠しい!別作品でサンローランを演じてるピエール・ニネくんとの、華麗なるイケメン対決の勝敗はいかに?!
「Un barrage contre le Pacifique」
30年代のフランス領インドシナ。高潮になると塩漬けになってしまう不毛な農地を守るため、防波堤を築こうとする母を支えながらも、貧しく不便な生活に絶望している美しい兄妹ジョゼフとシュザンヌ。そんな中、大金持ちの息子ムッシュー・ジョーが、シュザンヌに恋をする。それを知った母とジョゼフは…
マルグリット・デュラスの小説「太平洋の防波堤」の映画化。あの大ヒットした「愛人 ラマン」の姉妹編?みたいな作品でしょうか。フランスの植民地インドシナ(現在のベトナム)が舞台、蠱惑的な少女とアジア人の金持ちとの恋愛話、はラマンと共通してます。思春期の少女の性愛がメインテーマだったラマンに比べると、こちらは当時のインドシナの植民地生活を描くことに重きを置いてました。入植者がみんな、必ずしも優雅で贅沢な植民地ライフを送っていたわけでないことを、母子3人の逼迫した貧苦ぶりが教えてくれます。私だったら、3日ともたんわ、あんな生活。自然環境も過酷だし、不衛生で不便、ゴハンもマズそうだし、食卓のテーブルにフツーにウジ虫みたいなのがニョロニョロしてるのなんて、耐えられない。娯楽も何もないし、フランス人に反発する現地人がいつ一揆を起こすか分からない不穏さも怖いし、まさに大自然の牢獄です。体も壊さず気も狂わず暮らしてる3人の、肉体的精神的たくましさに驚嘆。
ママンも子ども二人も、辛いけど頑張る!闘う!な必死感は全然なく、自然に対抗する防波堤を築くように、過酷で無情な運命にも抗ってはみてるけど、もうどうなってもいい、どうでもいい、みたいなヤケのヤンパチ感、無気力で虚無的だったのが興味深かったです。そのせいか、亜熱帯が舞台なのに暑苦しさや湿度が低く薄く、全体的に乾いた冷ややかな雰囲気が漂っていました。どこにいても、フランス生まれじゃなくても、ドライでニヒルなところがフランス人らしかった。
金持ちのお坊ちゃまムッシュー・ジョーへの、母子3人の態度や思惑が面白かったです。毎日退屈だし、恋やセックスにも興味あるしなシュザンヌは、処女の小娘のくせに百戦錬磨のビッチも呆れるほど、男を翻弄し手玉にとる。私の裸が見たいの?見せてあ・げ・る。でも、それ以上はNon♪な、じらしっぷりが見事でした。じらしてじらして、さりげなくオネダリして貢がせたり。結局ヤらせなかったのに、ダイヤモンドの指輪はちゃっかり受け取ってるし。ほんと小悪魔!かけひきとか計算じゃないところが、返って怖い。遊び慣れた男ほど、あーいう無垢ゆえに残酷な女に弱く、振り回されてみたいM心をソソられるのでは。女冥利につきるよな~と、シュザンヌが羨ましくなりました。「愛人 ラマン」のヒロインとカブるシュザンヌは、実際にインドシナで少女時代を過ごした原作者マルグリット・デュラス自身なのでしょうか。
野生の美青年ジョゼフの、妹シュザンヌへの意地悪で屈折した態度もイビツで色っぽかった。普段は邪険に扱ってるくせに、いざシュザンヌに男が、しかも差別対象のアジア人が近づいてくると、嫉妬したり挑発したり。ムッシュー・ジョーの目の前で、裸のジョゼフがシュザンヌを腕に抱いて踊るシーンが、どー見ても兄妹ではなく男と女。禁断っぽくてドキッ。確実に精神的には近親相姦関係。環境が環境なので、肉体的にも禁忌を犯さなかったのが返って不思議なくらい。でもあれ、美しい兄妹だからこそ成り立つ、絵になる関係。ブサイク兄妹だと、ただ不愉快で気持ち悪いだけだろうし。
ママンは現実的で、背に腹は変えられぬ、シュザンヌが玉の輿に乗れば助かる!みたいなノリ。ホントなら言語道断なアジア人との結婚にも前向き。でも、シュザンヌにその気がないことを知り、プッツン逆上するママンの冷酷な身勝手さが怖かったです。現実の前では、娘の幸せなんてどうでもいいことなんですか?!
現実的だけど、どこか狂ってるコワレてるママン役が、イザベル・ユペールです。
明らかにどっかおかしい、ヘン、なんだけど、全然そんな風には見えない。誰よりも理知的で冷静沈着。でも、歪みや狂気がサラっと垣間見える…そんなヒロインをやらせれば、イザベル・ユペールは世界一ですよね~。ユペりん、ほぼ無表情なんですけど、怒りや虚しさ、悲しみが伝わってくるんですよ。表情だけでなく、後ろ姿の細い肩だけでも感情が分かるのです。いや、喜怒哀楽よりも、心が空っぽな“無”って演技で表現できるんだ~と、演技派きどりや大根を見慣れた目には、いつもながらユペりんの演技レベルは高すぎます。暑苦しい大熱演じゃないところが、ほんと素晴らしいです。原住民に囲まれた彼女の、亜熱帯までも冷ややかな砂漠のようにしてしまう存在感と、クールでエレガントな気高さは、まさに孤高の女王って風情。薄化粧とシンプルな衣裳が、還暦の彼女をすごく可愛らしくしていました。
ミーハー的には、ジョゼフ役のボーギャルソン、ギャスパー・ウリエルこそ、この映画最大の見どころでしょう。
かつてのカッコカワいい紅顔の美少年ウリ坊も、すっかり野郎っぽいギャス男になっちゃったな~。ほとんど裸か半裸なギャス男、スギちゃんも平伏すワイルドだぜぇ~(死語?)ぶりです。半裸衣裳、ほんとスギちゃんみたいで笑えます。どんだけ鍛えてるんだよ!なマッチョぶりも、磨きがかかってました。胸板の厚さ、二の腕の太さときたら!なかなか堂に入った野生児ぶりでした。気性が激しく傲慢で屈折してるジョゼフを、セクシーに演じてたギャス男です。瞳は優しいけど、口もとが何か卑猥なところも彼の魅力ですね。相変わらずのノシノシしたイカつい歩き方もトレビアン。
打算的で意地悪なフランス人母子に翻弄されるムッシュー・ジョーも、なかなかイケメンでした。ちょっとエグザイルのアキラ似?あんなカッコよくて優しい、しかも大金持ちの若い男なら、結婚してくれなくても喜んで付き合うけどな~私だったら
↑ギャス男といえば、イヴ・サンローランを演じてる新作の日本公開が待ち遠しい!別作品でサンローランを演じてるピエール・ニネくんとの、華麗なるイケメン対決の勝敗はいかに?!