まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

カメラを止めるな

2019-11-04 | 北米映画 15~21
 「ディザスター・アーティスト」
 俳優志望の青年グレッグは、演劇クラスでトミーという奇妙な男と出会い親しくなる。俳優として成功する夢を抱いてロスに移り住む二人だったが、チャンスはめぐって来ずくすぶった生活を余儀なくされる。トミーは自ら監督と主演を務める映画を製作しようとするが…
 ジェームズ・フランコ監督&主演作です。公開当時アメリカでは好評を博し、フランコ氏はゴールデングローブ賞の主演男優賞を受賞。オスカー候補も確実視され、まさに絶好調のアゲアゲ状態だったのが一転、過去のセクハラモラハラを蒸し返され、フランコ氏はゲス野郎として糾弾され窮地に陥ってしまったのでした。「よこがお」のヒロインも真っ青な、まさに絵に描いたような一寸先は闇、好事魔多し。フランコ氏の場合は身から出た錆なのですが、あまりにも悲惨な転落ぶりには同情も禁じ得ません。大好きな俳優なので、本当に残念です。報道されたことが本当なら責められても仕方ないけど、最近の厳格すぎるポリコレは映画も世の中もつまらなくしてるな~とも思います。スターやセレブなら何をしても許される時代はとっくに終わったことに、フランコ氏はもっと早く気づいて自重すべきでした。ユルいところも彼の魅力ではあったけど。残念なことになってしまったけど、この作品でもフランコ氏は俳優として、そして監督としての才能を感じさせる仕事をしてます。彼の初監督作「ジェームズ・フランコVSエイプ」も、なかなか才気が光る珍作でした。

 後にカルト映画なったトンデモ駄作「ルーム」が、いかにして作られたかを描いているのですが、とにかく主人公のトミーが見た目もキャラも変で笑えます。エキセントリックとか不思議ちゃんといったありがちな変人ではなく、かなり痛々しいというか、笑っちゃいけないような電波系の変人なんです。言動から察するに、ちょっと発達障害のある人なのかな、とも。他人の意見はほとんど耳に入れず、ほぼ自分のことだけ。空気を読まないというか読めないアスペルガーの典型。映画監督なんて、わがまま、独りよがり、自己中心的な人ばかりだと思うけど、その暴君さをパワハラだモラハラだと騒ぎ立てることもできますが、支離滅裂すぎる演出や言動を繰り返すトミーにはそれが何となくできない、というグレッグやスタッフの困惑や狼狽が、気まずい笑いを誘う。初監督作もそうでしたが、フランコ氏はイタい電波系コメディが好きみたいですね。私も好きです。ラストのプレミア上映、失笑と嘲笑が巻き起こる「ルーム」の全貌もイタすぎ、でもそれがしだいに喝采に変わっていく展開。本人は必死なのに、はたから見ると滑稽になってしまうことって、すごく皮肉。それが爽快な笑いになってるところが秀逸でした。

 天才とき◯がいは紙一重と言われてますが、純真とおバカも紙一重。トミーやグレッグ、そして「ルーム」のスタッフ&キャスト全員、何かが抜け落ちてるようなピュアな人たちばかりで、大丈夫?!と心配になりつつもほのぼのと温かい気持ちにさせてくれます。フツーならすぐに時間と労力の無駄と気づくはずなのに、傑作になると信じて悪条件にも悪環境にもめげず、一生懸命に真面目に明るく仕事に励む彼らが、見ていてとても羨ましくなりました。ひとつのことに無心に命を賭けるって、すごく崇高だな~と。ハリウッドでは、コネも実力もない凡人はまさに底辺人間扱い。それでも一寸の虫にも五分の魂とばかりの奮闘は、あきらめ人生を送ってる私の心に刺さりました。
 トミーとグレッグの友情も、イタいけど微笑ましく心温まるものでした。見た目といいキャラといい、フツーなら絶対関わりたくないと思うトミーに、常に優しく明るく忍耐強く、無茶ぶりされても怒ったり逆らったりもしない、底抜けに善人なグレッグってまさに天使だった。トミーはそんなグレッグに明らかに友だち以上の感情を抱いてるのが、笑えないほど痛々しかったです。BL映画としても面白かったです。

 まるで宅八郎な髪型といい、電波な言動といい、ジェームズ・フランコがトミー役をキモさ炸裂で珍演してるのですが、ふとした瞬間に見せる愁いに満ちた表情とか、やっぱ男前であることは隠せてませんでした。すごいゴリマッチョなフルチン姿も披露。喋り方と声も珍妙で、イタい奇人をキモ可愛く演じてます。グレッグ役は、ジェームズ・フランコの実弟デイヴ・フランコ。何となく似てるけど、そっくり兄弟!でなない。知らない人が見たら、兄弟とは気づかないかも。デイヴは兄ちゃんに比べると、すごく明るく健康的な感じ。ヒゲ顔が可愛くてカッコよかった。
 スタッフの一人で、フランコ氏の盟友セス・グリーンも出演してます。その他、シャロン・ストーン、メラニー・グリフィス、ザック・エフロン、「ウェディングバトル アウトな男たち」で共演したブライアン・クランストンなど、チョイ役のゲスト出演者が豪華でした。それにしても。トミーっていったい何者だったのでしょうか。素性といい謎の大金持ちぶりといい、正体を謎のままにして終わったのも巧い演出だったけど、やっぱ気になります。

 ↑業界から抹殺されたのかと思いきや、以前と変わらずじゃんじゃか働いてるみたいで安堵!
コメント
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