まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

悪魔のクローン計画!

2023-08-11 | 北米映画 60s~70s
 「ブラジルから来た少年」
 ナチハンターのアメリカ人青年バリーは南米パラグアイで、アウシュヴィッツ収容所で非道な人体実験を行っていた医師メンゲレを目撃する。バリーは著名なナチハンターのリーバーマンにそのことを報告した直後、ナチ残党によって殺害されてしまう。世界9か国に住む94人の65歳前後の公務員を殺す、という不可解な計画を実行し始めるメンゲレを追うリーバーマンは、やがて恐るべき真相にたどり着くことに…

 秀作とか佳作とかでない、どちらかと言えば珍作・怪作なのですが、面白かったです!ナチスドイツの犯した罪業を糾弾するシリアスなドラマかと思いきや、ぜんぜん違いました。ヒトラーやメンゲレなど実在の人物たちが登場しますが、お話はまったくのフィクションです。文字通りのサイエンスフィクション。クローン人間というタブーが描かれていて、当時としてはなかなかに時代を先どった映画なのでは。当時はそんなんありえんわと嗤えたでしょうけど、医学や科学が発達しすぎた現代に生きる私たちは、映画の中だけと一笑に付すことはできません。北朝鮮あたりでは、同じようなことやってそうですよ。将軍さまの影武者用クローンとか。

 94人の65歳前後の公務員の男たちを抹殺、という謎のミッションが各国で遂行されるのですが。観客だけでなく下っ端ナチ党員でさえ何で?と疑問を抱かずにいられない頓狂な計画の目的の全容が、だんだん見えてくる展開と構成がスリリングでした。壮大かつクレイジーすぎる計画!あんなことを本気で実現させようと粉骨砕身とか、ほんとナチスって頭おかしい集団!でも彼らは大真面目なんですよね。そこが怖い。特にメンゲレが完全にイカレたマッドドクターとして描かれていて、その言動や非道な人体実験などほとんどホラーでした。

 悪魔の人体実験もヤバすぎるけど、戦後もナチ支持者がたくさんいたことも恐怖。今でもネオナチとか堂々と活動してますよね。ナチスじゃないアメリカ人の白人のおじさんがメンゲレに、ユダヤ人より黒人が敵!とか言ってけど。非道な人種差別はナチスだけじゃないよな~と、あらためて暗澹となりました。
 メンゲレ役はグレゴリー・ペック、リーバーマン役はローレンス・オリヴィエ、アメリカとイギリスの名優がW主演。

 ↑ 撮影の合間、ペック氏にお茶をいれてあげるオリヴィエ卿、まさにイギリス人って感じですね☕
 ハリウッドの良心なイメージのグレゴリー・ペックが、まさかの極悪人、ていうか、き〇がい役!こんな役、よく引き受けたな~。その威風堂々としたマッドな怪演は、なかなか楽しそうでもありました。英国最高の俳優と讃えられたローレンス・オリヴィエは、威厳ある美老人だけどひょうひょうとした頑固爺さんっぷりが可愛かったです。当時のオリヴィエ卿は病身で、撮影が大変だったとか。そんな老体にムチ打って、ラストはペック氏と血みどろの死闘!ほとんど老人虐待な壮絶さでした。名優二人が顔を合わせて演技対決するのは、このラスト数分だけです。
 バリー役は後に「ポリスアカデミー」シリーズで人気者になったスティーヴ・グッデンバーグ。物語のカギを握るクローン少年が、不気味な存在感。ラストシーンで彼が残す余韻が、不吉で不穏です。スウェーデンでの殺人シーンがインパクトあった。あのロケ地はどこ?
 
コメント (2)
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