ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

家族会議

2008年11月20日 | 家族とわたし
「やりたい事、なりたいものが分からないまま、大学に通いたくない」
Kははっきりと、最後にこう繰り返しました。

ちょっとKを連れて、彼の好きなレストランに3人で行き、家だとなかなか煮詰まらない話をしてみようか。
旦那のアイディアに賛成して、Kにはその企みを内緒にしながら誘ってみました。

木曜だったら行けるというので、今夜、『AOZORA』という、この町で1番のジャパニーズレストランに行きました。

すっかりお腹が膨れて、ワインも適量入ったところで、デザートを分けんこしながら話が始まりました。

今の大学の教師達のこと、試験の様子、寮生活を復活させる意味、専攻科目の変更などの、いつもの話から始まり、

どうして大学に行くのか、どうして大学に行ったら生活し易いと決めつけられるのか、
僕はいったい何をしたいと思っているのか、それはお金のためなのか、生きる意味のためなのか、
とにかく今はなにも分からなくなって混乱しているので、とりあえず休学させて欲しい、という、
Kの、とても真剣な、そして若者らしいナイーブな気持ちを聞くことができました。

そんなこと言わずに、大学だけは続けた方がいいよ、なんて思っていません。
1人の子供を大学に行かせるのに、どれほどのお金が必要か。
有り余っているのならともかく、どうしても行きたいから行かせて欲しいと頼まれたのならともかく。

それにしても、Kは幼い頃からおもしろいことを言う子でした。
「Kはおっきくなったらなにになりたいの?」「そうじき!(まさしく掃除機のことです)」
「おかあさん、ぼくはどうしてぼくなん?」
「なんで人って生きてるの。なんのために生きてるの」
「生きるってなんやろ?死ぬってなんやろ?」
そんなことを、ふと思い出したように聞いてくるのでした。

Kが見つけたい答は、正否ではなくて、それ自体に意味があるのかどうか、それが大切なんだと思います。
TはKとは逆に、意味よりも先に、それが機能的かどうか、役に立ちそうかどうか、それに重きを置いて決めました。
意味は後からついてくる。そんな感じで物事を選択しているように思えます。

どちらもそれぞれ、一個の立派な人格を持った大人なので、旦那もわたしも、その人がよく考えた末に決めたことを尊重したいと思っています。
ただ、尊重はするけれど、様子を見ていて、腑に落ちないことがあったり、望ましくなかったりすることが続いた場合、注意したり叱ったり、時には止めたりするかもしれません。

子供が大人になり、独り立ちするまでは、ほんとにいろいろな種類の迷いや悩みが生じます。
けれどもそれらは、ほっこりとした温かみとともに思い出すようなものが多いということを知っています。
迷ったり悩んだりしている最中は、もちろん楽しくはなく、時にはかなり辛かったりするけれど、
いつかまた思い出せる時が来る日を楽しみに、今回のKの心が決まる日を待ちたいと思います。

Kよ、この写真の頃のあんたのように、一心不乱に、がむしゃらに、希望のタンバリンをパン!と鳴らしてみなよ。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

殺してしまった

2008年11月20日 | ひとりごと


他の緑と混じって、少し分かりにくいですが、白いポットに植わった植物が見えますか?
春先の、誰もが浮き浮きと庭作りをし始める季節に、この植物に出会いました。
それまで見たことのない、鳥のくちばしのような形の、くっきりとしたオレンジ色の花をいっぱいつけていました。
見つけた時、すぐに大好きになりました。
店の人に名前を聞いても、育て方を聞いても、ごめん、知らないと言われてしまいました。
多年草ではないということだけ教えてくれました。

とても大きなサイズの植物だったので、トランクに入れるのも一苦労。
池の噴水のように盛り上がった茎と、三角形の葉っぱとオレンジ色の花は、見ているだけで心に元気をもらえました。

花の季節が終わっても、噴水状の茎と葉を見ているのが楽しく、来年まで育ててみようと思いました。

数日前から急に本格的な寒さがやってきて、そろそろ家の中に入れてあげないと、と思っていました。
けれども、とても大きくて、葉が下に垂れているので、どこに置けるだろうかと思案していました。
一昨日の夕方、心配になって様子を見てみると、なんの変わりもなく、いつものようにお日様の光を浴びて元気そうでした。
そして昨日、わたしは一日中、一歩も外に出ませんでした。

昨日の夜遅く、12時を過ぎて、ベッドの上でうとうととしかけていた時、
しもた!今夜はぐっと気温が下がってるはずやのに、あの子を中に入れてやってなかった!
なぜだか急に思い出して、居ても立っても(寝ても?)居られなくなって、上着を羽織って慌てて外に出ました。



真っ暗ではっきり見えなかったけれど、ズルズルに溶けてしまった茎が、幽霊のように力なくポットの周りに垂れ下がっているのが分かりました。
こんな無惨な変わり果てた姿になってしまって……。

ごめん、ほんまにごめん。こんなになるまで放っといてごめん。
わたしはポットごと胸に抱いて、しばらくの間謝り続けました。

ベッドに戻っても、なかなか寝付けませんでした。
眠ってからも夢をいっぱい見て、1時間ごとに目を覚ましました。

今朝起きて、もう一度元の場所につり下げて、自分のやった酷いことを写真に残しておこうと思いました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする