今週の月曜日に、近所の高校の音楽教師のダリルから、いつもの伴奏バイトの依頼電話がありました。
彼と一緒にやるようになってから、かれこれもう4年経ちます。
伸び過ぎたとこだけ切った風の薄茶色のおかっぱ頭(奥さんが時々寝てる間に切るって言ってました。ほんまかな?)と、
年中臨月の太鼓腹と、しゃがれた大声と、どんどん速くなる指揮と、やや皮肉屋なのが特徴の彼。
年に2回、このクリスマスの時期と、コンクールのある6月に、また一緒にやってくれる?という電話がかかってきます。
伴奏のバイトをやるようになって6年。いろんなことがありました。
まずはお金持ちの子達が通っている私立の中学校。
なにがびっくりしたかっていうと、歌う生徒達の態度の悪さ。
立って歌うのがまずできない。いったん座ると、立つ時にグダグダ文句を言うか、二度と立とうとしない。
喉が乾いただの、トイレに行きたいだの、なんだかんだ言って練習を中断させる。
ガムをクチャクチャ噛む。歌っていない時はしゃべり続ける。なので、パート別の練習をしようにもうるさくてできない。
練習場はもう、指揮者とアシスタントの教師達の怒鳴り声が70%、30%が歌って感じで、そこに居るだけで疲れました。
それでもなんとかいい歌にして発表させたいと思う大人側は、忍の一字で生徒をなだめ、叱り、褒め、歌ってもらおうと必死。
そういう練習と本番を何回かやっているうちに、指揮者の言うことが変わってきました。
プログラムを45分消化さえしたらいいの。親なんか、自分の子供の写真が撮れたらそれで満足なんだし、曲の出来不出来なんてまるっきりどうでもいいんだから。
そんなことを言い出してからの彼女の指導は、音の強弱を始め、表情などまるでどうでも良くなり、
なにかというと、そんなんじゃ聞こえない、もっとガンガン弾いてくれなきゃ、とわたしに要求するようになりました。
しかも、テンポはどんな曲も一緒。アレグロです。45分以内で終わるように。そればかり考えているのです。
とても不本意な演奏をして拍手を受けるのは苦痛でした。
でもそのバイトは、苦しい我が家の家計を助ける大事な仕事だったので、やめたいとも言えずに悩んでいました。
たまたまコンサートを聞きに来ていたダリルが、うちでも伴奏してもらえないか、と尋ねてきました。
「あんたのピアノが気に入った。こっちではいくらもらってるの?」それが彼の第一声でした。
「1時間35ドルの契約です」
「じゃあ、うちは40分40ドル出そう。1分1ドルだ。いい条件だろ?」
その年の冬から、2つの学校の伴奏の掛け持ちになりました。
春にも同じ時期に同じようなコンサートがあり、コンクールもあり、おまけにヴァイオリンクラスのステージもあったので、
とうとう2年目の春に、あまりの忙しさに疲弊しきっていたのか、交通事故を2件、連日で起こしてしまいました。
こりゃあかん。こんなことしてたら参ってしまう。
そう観念して、丁度我慢の限界にきていた私立中学の方の伴奏を断ることにしました。
ダリルが教えている高校は、スクールオブスペシャルといって、心身のどちらかに軽い障害がある子供達が通っています。
オーディションを受けて、声質でパートを決めた子が練習にやって来るのだけれど、
この子達も、あの我がままし放題の中学生とはまた違った事情で、練習中にいろいろと問題を起こします。
ただ、彼らがいったん集中して歌うと決めた時の歌声の素晴らしさは、伴奏していても鳥肌が立つぐらいすごいのです。
音符を読める子は少ないはずなのに、毎回13曲近くの、難曲も少なくないプログラムをこなします。
もう交通事故につながるほどには疲れなくなったけれど、彼の曲決めにはいつも振り回されてストレスが溜まる一方です。
毎週月曜と木曜に練習があるのですが、なんの曲をするのか聞いても答えてくれません。
なので、結局は、渡された曲全曲を練習しておいて、なにを言われてもちゃんと弾けるようにしておかなければなりません。
いつもだいたい12,3曲なんですが、途中で却下されたり、全く知らない曲をコンサートの数日前に渡されたりします。
譜めくりを頼んでも、まともにめくってもらったことがないので諦めました。
なので、自分でめくり易いように、コピーした楽譜をアレンジしてわたし用の楽譜を作るのも仕事の1部です。
毎回、このオリジナル楽譜を見て、「すごいねコレ。こんなの見たことないよ」って褒めてくれるけど、だからって真似するアメリカンは1人もいません。
たかが伴奏、されど伴奏。
口の悪いダリルが、たま~に、「おいおまえら、まうみのピアノを耳の穴かっぽじって聞いてみろ!これが音楽ってもんだ!これが歌うってことだ!」と大声で怒鳴ったりします。
高校生達は、「おぉ~美しい!素晴らしい!惚れ惚れする!」と拍手したりぴょんぴょん跳ねたりしてダリルを茶化します。
またこれからクリスマスまで、彼らと一緒です。
近頃では、あんまりな態度を取る生徒には、わたしが直接叱ったりもします。
たまには弾くのをパタッと止めて、「もうあなた達とは一緒に音楽をやりたくない!」と叫んだりもします。
いつもは物静かなわたしが突然言うので、とても効果があります。
でも、そういう時はたいていダリルが、「まあまあ、そう言わずに」なんて言って生徒の味方をしたりします。
いっつも大げさにため息ついたり、おでこがくっつきそうなぐらいに近づいて怒鳴ったりしてるのにね。
ま、もしかしたらわたし達、いいコンビなのかもしれません![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/hiyo_s.gif)
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彼と一緒にやるようになってから、かれこれもう4年経ちます。
伸び過ぎたとこだけ切った風の薄茶色のおかっぱ頭(奥さんが時々寝てる間に切るって言ってました。ほんまかな?)と、
年中臨月の太鼓腹と、しゃがれた大声と、どんどん速くなる指揮と、やや皮肉屋なのが特徴の彼。
年に2回、このクリスマスの時期と、コンクールのある6月に、また一緒にやってくれる?という電話がかかってきます。
伴奏のバイトをやるようになって6年。いろんなことがありました。
まずはお金持ちの子達が通っている私立の中学校。
なにがびっくりしたかっていうと、歌う生徒達の態度の悪さ。
立って歌うのがまずできない。いったん座ると、立つ時にグダグダ文句を言うか、二度と立とうとしない。
喉が乾いただの、トイレに行きたいだの、なんだかんだ言って練習を中断させる。
ガムをクチャクチャ噛む。歌っていない時はしゃべり続ける。なので、パート別の練習をしようにもうるさくてできない。
練習場はもう、指揮者とアシスタントの教師達の怒鳴り声が70%、30%が歌って感じで、そこに居るだけで疲れました。
それでもなんとかいい歌にして発表させたいと思う大人側は、忍の一字で生徒をなだめ、叱り、褒め、歌ってもらおうと必死。
そういう練習と本番を何回かやっているうちに、指揮者の言うことが変わってきました。
プログラムを45分消化さえしたらいいの。親なんか、自分の子供の写真が撮れたらそれで満足なんだし、曲の出来不出来なんてまるっきりどうでもいいんだから。
そんなことを言い出してからの彼女の指導は、音の強弱を始め、表情などまるでどうでも良くなり、
なにかというと、そんなんじゃ聞こえない、もっとガンガン弾いてくれなきゃ、とわたしに要求するようになりました。
しかも、テンポはどんな曲も一緒。アレグロです。45分以内で終わるように。そればかり考えているのです。
とても不本意な演奏をして拍手を受けるのは苦痛でした。
でもそのバイトは、苦しい我が家の家計を助ける大事な仕事だったので、やめたいとも言えずに悩んでいました。
たまたまコンサートを聞きに来ていたダリルが、うちでも伴奏してもらえないか、と尋ねてきました。
「あんたのピアノが気に入った。こっちではいくらもらってるの?」それが彼の第一声でした。
「1時間35ドルの契約です」
「じゃあ、うちは40分40ドル出そう。1分1ドルだ。いい条件だろ?」
その年の冬から、2つの学校の伴奏の掛け持ちになりました。
春にも同じ時期に同じようなコンサートがあり、コンクールもあり、おまけにヴァイオリンクラスのステージもあったので、
とうとう2年目の春に、あまりの忙しさに疲弊しきっていたのか、交通事故を2件、連日で起こしてしまいました。
こりゃあかん。こんなことしてたら参ってしまう。
そう観念して、丁度我慢の限界にきていた私立中学の方の伴奏を断ることにしました。
ダリルが教えている高校は、スクールオブスペシャルといって、心身のどちらかに軽い障害がある子供達が通っています。
オーディションを受けて、声質でパートを決めた子が練習にやって来るのだけれど、
この子達も、あの我がままし放題の中学生とはまた違った事情で、練習中にいろいろと問題を起こします。
ただ、彼らがいったん集中して歌うと決めた時の歌声の素晴らしさは、伴奏していても鳥肌が立つぐらいすごいのです。
音符を読める子は少ないはずなのに、毎回13曲近くの、難曲も少なくないプログラムをこなします。
もう交通事故につながるほどには疲れなくなったけれど、彼の曲決めにはいつも振り回されてストレスが溜まる一方です。
毎週月曜と木曜に練習があるのですが、なんの曲をするのか聞いても答えてくれません。
なので、結局は、渡された曲全曲を練習しておいて、なにを言われてもちゃんと弾けるようにしておかなければなりません。
いつもだいたい12,3曲なんですが、途中で却下されたり、全く知らない曲をコンサートの数日前に渡されたりします。
譜めくりを頼んでも、まともにめくってもらったことがないので諦めました。
なので、自分でめくり易いように、コピーした楽譜をアレンジしてわたし用の楽譜を作るのも仕事の1部です。
毎回、このオリジナル楽譜を見て、「すごいねコレ。こんなの見たことないよ」って褒めてくれるけど、だからって真似するアメリカンは1人もいません。
たかが伴奏、されど伴奏。
口の悪いダリルが、たま~に、「おいおまえら、まうみのピアノを耳の穴かっぽじって聞いてみろ!これが音楽ってもんだ!これが歌うってことだ!」と大声で怒鳴ったりします。
高校生達は、「おぉ~美しい!素晴らしい!惚れ惚れする!」と拍手したりぴょんぴょん跳ねたりしてダリルを茶化します。
またこれからクリスマスまで、彼らと一緒です。
近頃では、あんまりな態度を取る生徒には、わたしが直接叱ったりもします。
たまには弾くのをパタッと止めて、「もうあなた達とは一緒に音楽をやりたくない!」と叫んだりもします。
いつもは物静かなわたしが突然言うので、とても効果があります。
でも、そういう時はたいていダリルが、「まあまあ、そう言わずに」なんて言って生徒の味方をしたりします。
いっつも大げさにため息ついたり、おでこがくっつきそうなぐらいに近づいて怒鳴ったりしてるのにね。
ま、もしかしたらわたし達、いいコンビなのかもしれません
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