ウィンザー通信

アメリカ東海岸の小さな町で、米国人鍼灸師の夫&空ちゃん海ちゃんと暮らすピアノ弾き&教師の、日々の思いをつづります。

突如襲てきた不気味でどう猛な痛みの中で、救急車を呼ぶのを躊躇うてしまう米国クソったれ健康保険事情

2013年10月11日 | 米国○○事情
かすかな痛みで目がさめた。

時計を見ると、7時前やった。

痛みは右側の、背骨と脇の間ぐらいの、肝臓の後ろあたり。

今年の5月のはじめに、旦那の両親と一緒に行った韓国旅行の直前に、いきなり痛んで3日間苦しんだ場所とよう似てる。

その時も、かすかな痛みが右脇に、と思てたら、みるみるうちにイタイイタイオバケが襲ってきて、しまいには寝ることも座ることもできんようになった。

とうとうのとうとう、めちゃくちゃキツい痛み止めと睡眠のための錠剤を一錠飲んだら、うそみたいに治ってしもた。

けったいなぎっくり腰もあるもんやと思いながら、まあ治ってよかったよかったとホッとした。


え?また?

なんもしてへんのに……。

いや~な予感がして、そろそろと起きる。

すると、痛みも一気に目覚めたみたいに、あれよあれよという間に、おヘソを中心にして、腰といいお腹といい、どこもかしこも痛み出した。

あれあれ、これはなんかヤバいかも。

予感が実感になった。

なんというか、救急で駆け込んで、そのまま入院!みたいな規模の、おまけに今回は、強い吐き気もする。

これはえらいこっちゃ。

どないしょ?めんどくさいからと、昨晩はお風呂に入らんと寝てしもた。

これは多分、かなりヤバいから、診てもらう時に臭ないようにシャワーしとかな。

ハアハア言いながら、なんとか間に合うて!と神さんにお祈りしながら、大急ぎで髪の毛を洗い、体も、と思たとこで万事休す。

もう立ってもいられへん。

そのまま出てきて、くの字に折りながら体を拭き、なんとか服を着て、

ほんで、顔の産毛を剃った……ハアハア言いながら……なにしてんねんワタシ……と思いながら。

旦那が起きてきて、なかなか状況が把握できんままで突っ立ってる周りを、痛い痛いと言いながら、ただただ歩き回る。

ソファにしがみつこうが、四つん這いになろうが、くの字に折ろうが、ふらふらと歩こうが、

どうしようもない痛みと吐き気が、しつっこくつきまとう。

56年もの人生で、片手で数えるぐらいしか吐いたことのないわたしが、3回も吐いた。

吐いても、胃の中は空っぽやから、なんも出てけえへん。

それまでずっと、躊躇してた言葉が、とうとう口から出た。

救急に行く。

けど、救急車とちゃう。家の車で行く。

この間1時間半。

こんな痛うて恐い思いしながら、救急車なんか呼んだら1万円、救急で治療なんか受けたらもっとえらいことになる……と、

どうしても911にかけられへんこの国のクソったれ健康保険。

やっとのやっと、オバマケアが認められて、今月から施行されようとしてたのに、それを邪魔するクソったれティーパーティ。

病院までの車の中で、ウンウン唸りながらのたうち回り、ヨロヨロと受付に入ったら……よかった、わたしも前には2人しかいはらへん。

座ってることもできんから、待ち合いをゆらゆら歩いた。

前の2人が姿を消し、次はわたしやと思てたら、後から入ってきた人を、トリアージで優先した受付さん。

そんな殺生な……と、半ばヤケクソになって、待合室の壁に頭のてっぺんをゴリゴリ押し付けてたら、なんとなく痛みが引いてきた。

30分、40分と待ってるうちに、なんかもう、こんな痛みやったら、なんも別に救急でのうてもええわ、と思えてきた。

とうとうのとうとう、ドアが開いて、向こうから「まうみ?」と呼ばれた時、決めた。帰ろ。

家に戻った頃には、ほとんど痛みも吐き気も無くなってた。

ただ、おしっこが赤かった。

え?え?え?

なんでおしっこが赤いん?腰痛ちゃうん?膀胱なん?

旦那が言うた。

背骨のディスクかと思てたけど、ちゃうな、腎臓結石やな。

こちらではまず、専門の科で診てもらう前に、ファミリードクターに診てもらわなあかん。

いわゆる、急を有する時には、二度手間になる。

けどしゃあない。保険会社の規定に従わなあかん。

ファミリードクターに電話した。

今日の午後3時15分しか空いてません。と言う。

う~ん……今日は3時半から仕事やしなあ……と迷てると、

あなたね、そんな状態になってる体と仕事と、どっちが大事?と、叱られた。

今日の生徒に、レッスンの中止と替えのレッスン時間を伝え、病院に行く。

診断は腎臓結石。

とりあえず様子を見て、来週にまた、血液検査を受ける。

検査は尿だけ。

血液すら採らんかった。

診察をしてもらうのに30ドル。

これは、病気でも病気でなくても、とにかく診てもろたら払うお金。

それから、5日分の痛み止めの薬、これは保険が利いて1ドル60セント。

スペシャリストに診てもらう時はまた別に、50ドル払う。

これも、治療を受けようが受けまいが、そこに行って診察室に入るなら、とにかく払わなあかんお金。


さて、もうそろそろ寝なあかん。

今日は絶対パソコンはせんとこうと思たのやけど、とりあえず報告だけはしとこうと思て。

たった数時間やったけど、痛みが強烈やと、体のあちこちがボヤッとする。

旦那に、腎臓結石と痛みのための鍼を打ってもらう。

最近、ふと思てた。

こんなふうに、無事に、何事もなく、病気もせんと、毎日毎日過ごさせてもろてることは、ほんまにありがたいと。

今日本では、深刻な放射能汚染が、体に悪さをせんかと、気にしながら生きてはる人がいる。

もちろん、体に悪さをするのは、なにも放射能汚染だけとちゃう。

いろんな、体に悪いもんがある。

けども、放射線は匂いも刺激も味もせえへん、五感で感じることができん物質やから、

忘れようと思たらなんぼでも忘れられる。

考えんとこう思たらなんぼでも考えんでもいられる。

体の中も、わたしらの目には見えへん。

体の中で、わたしを守ろうとしてくれてる細胞や器官と、じわじわと傷つけようとする物質が、

音もなく、わたしが生きてる間中、闘うてる。

自分は大丈夫かなあ。

最近また、大事にしようという気がなくなってきてるんちゃうかなあ。

この指が、当たり前のように物をつかんでくれる、この足が、当たり前のように歩いてくれる、

この目が、当たり前のように周りの物を見てくれる、こういうことはほんまにありがたいことやとわかってるのに。

気功瞑想するたびに、感謝してるのに。

見えへんのをええことに、感じひんのをええことに。

悪なる日は、いつも、突然やってくる。

その時になって、取り返しのつかへんことをしたと、後悔の念と痛みにまみれて苦しまんでもええように、

もっともっとしんけんに、自分を大事にしようと思う。

こんな、クソったれな世の中の、生きて一日を無事に終えられることが奇跡みたいな毎日に、

こつこつと生きてくれてる自分を、もっともっと大事にしようと思う。