明日のお昼過ぎにここを出発して、ペンシルバニアの山の中にある旦那の実家に行きます。
毎年なら、最後のあがきをイヴの朝にやっているのだけど、明日は裁判があるのでそれができません。なんちゅう理由なんじゃ~
!
なので、今夜が山場。これからプレゼントのラッピングに取りかかります
。
ちっちゃな物からおっきな物まで、形もいびつな物から四角い箱までいろいろ、大きさに合わせてペーパーを切り、包んでいきます。
どうせビリビリに破られるのだから、いい加減にクルクルッと包めばいいものを、それができない日本人のわたし……。
今夜の仕事帰りの道すがら、3年前の丁度同じ日に起こった出来事を鮮明に思い出して苦笑い。
あれはほんとに、小さいながらもかなり強烈なインパクトのある出来事でした。
もう少し足りなかったプレゼントを買いに、ここから15分ほど車で行った所にあるモールに出かけ、モントクレアの町中に入って間なしのことでした。
もともと人ごみは大の苦手なわたし。その年は、伴奏バイトの仕事がギリギリの22日まであり、すでに精根尽き果てていたので、
その最後の買い物を終えて車の中に入った時には朦朧状態。少し呼吸を整えてから運転を始めたのを覚えています。
やっと町に戻ってきて、山側から下って家につながるグローブストリートがもうすぐそこという時、一旦停止の表示がある通りを危うく無視しそうになりました。
車体半分はすでに停止線を超えていましたが、とりあえず止まり、それからまた車を発進させました。
その時、左側から車のライトが見えたけれど、急ブレーキの音も聞こえなかったので、良かった、事故にならなくて、と思いながら坂道を下りました。
ちっちゃな声で「Sorry!」と言ったけれど、そんな声がその車のドライバーに聞こえるはずがありません。
グローブストリートを右折して、あとは直線の道を10分も走れば家に着きます。
やれやれ、クリスマス前にここまで疲れてしまって、明日からの旦那の家族との数日がどうなるのかなあ、などと思いながら運転していました。
グローブストリートに入ってすぐに、なんだか変だと気づきました。
後ろの車とわたしの車との車間距離が異常に短いのです。
はじめは、わたしがぼんやりとした頭で運転していたので、スピードが遅過ぎたのかなと思いました。
それで速度メーターを確認してみたら、その道の指定速度を少し超えた、誰もが走っている速度でした。
後ろの人もクリスマスショッピングで疲れ果てていて、一刻も早く家に帰りたいのかなあと思い、少しスピードを上げてみました。
指定速度よりも10マイルぐらいは超えても大丈夫、だと思う。これが一般ドライバーの常識です。極たまには5マイル超えで捕まることもありますが……。
なので、その道は35マイルが指定だったので、45マイルギリギリまで上げてみました。
なのに、その車は、まるで磁石にでも引かれているかのように、わたしが少しでもブレーキを踏むと即座にぶつかってしまうぐらいの近さでついてきます。
ルームミラーで相手の顔を見ようとしても、街灯の少ない道なので、影のような輪郭しか見えません。
とにかく、とても恐くなりました。異常者?それともただの嫌がらせ?
信号が運良く青ばかりだったので、わたしはひたすら前に進み続けました。
家のある通りは大通りからは少し離れています。そして、クレセントという名の通り、弓のように曲がっています。
そこまで来れば大丈夫、まさかここまで同じ道を走らないだろうと思いながら、というより願いながら車を左折させました。
すると、なんてことでしょう
その車も、なんのためらいもなく、わたしの後をついてくるじゃありませんか
もうほんとに恐くなって、これは絶対に普通じゃない!とパニックになりました。
幸いにして家がすぐ近くにあったので、ドライブウェイに車を入れてミラーでチェックしてみると、さすがにそこまではついて来れなかったのか、もうその車の姿はありませんでした。
まったく、なんて日だろう。くたくたに疲れている上に、こんな恐い目にも遭って……などとブツブツ心の中で愚痴りながらトランクから荷物を出していると、
いきなり暗闇の中から怒鳴り声が聞こえてきました。
「おい、おまえ、いったいどういうつもりなんだ!おまえは人殺しか!あんな乱暴な運転をして、おまえみたいな人間がいるから人が死ぬんだ!」
すごい剣幕のその声の主がどんどん近づいてきました。
わたしは唖然として、トランクの横に立ち尽くしたまま、防犯用の外灯に照らされた彼の顔を見ていました。
「わたしは乱暴な運転なんかしていません」それだけ言うのがやっとでした。
「あれが乱暴でなくて何が乱暴なんだ!一旦停止では止まらない。道を人殺しのスピードで走る。どこが乱暴じゃないんだ!」
そこであっと気がつきました。あの時、一旦停止と交差する道の左側にいた車の運転手だ。
「一旦停止をちゃんとしなかったことはごめんなさい、謝ります。でも、どうして制限速度を超えて走ったかというと、それはあなたが追い立てたからです」
「バカを言え!俺はそんなことは一切していない。おまえの無茶苦茶な運転を監視していただけだ!」
彼はどんどん興奮してきて、同時にぐんぐんわたしに近づいてきます。何を言っても無駄だと思いました。
「どうしたの?」
二階に住む大家さんのジムが、外の騒ぎに気がついて、二階の窓から顔を出してくれました。
わたしはホッとして、とりあえず事情を簡単に説明しました。その間もその男性はギャアギャアわめいていました。
「警察を呼んであげるから」
そうジムが言うと、その男性はなにやら捨て台詞をわたしに吐いて、タタッと姿を消してしまいました。
あれからというもの、一旦停止だけは必ずきちんと止まるようにしています。
そして、この時期になって疲れてくると、必ず思い出します。やれやれ……
。
みなさん、わたしのような目に遭わないためにも(まあ、ふつ~遭わないと思うけど……)、交通規則はきちんと守りましょうね
。