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山田詠美『アニマル・ロジック』

2006-08-27 16:34:39 | ノンジャンル
 山田詠美さんの「アニマル・ロジック」をやっと読み終わりました。単行本で373ページ、本の厚さは4cmという大作です。
 主人公はヤスミンという女性で、多くの男性、女性と関わり、様々な人間模様が展開していきます。そしてこの小説の変っているところは、語り部が、ヤスミンの血液の中に住み、ヤスミンの心の中にある自由を糧にして生きている不思議な生物であることです。彼はヤスミンの行動描写、真理描写をし、物語りを組み立てて行きます。
 そして物語りの中盤になると、この生物と同種の生物がヤスミンの体に入ってきます。当初、自分のような生物は自分しかいない、と思い込んでいたこの生物は、新たに入り込んできた生物にとまどいますが、やがてそれと同居することを受け入れ、次第に自分がオスで、新たに入ってきたのがメスだということに気付きます。そして生殖器もお互いの頭のてっぺんにあることに気付き、彼女の望みに従って、生殖行為をし、体の弱った彼女は別の人間の肉体に移って行きます。
 この頃から、クラブなどで突然死する人が頻発するようになります。そして、ある日自分の息子だという生物がヤスミンの体に移って来て、父に、母が死んだこと、突然死の原因は自分たちのように血液中に住む自由を破壊して生きている悪玉生物がフンで心臓の血管を塞ぐことによるものであることを教えます。そして、しばらくしてとうとうヤスミンの血液の中にも悪玉生物が入って来て、心臓を止めようと活動を始めます。語り部の生物はフンをかき出しますが、間に合いません。そしてヤスミンは最愛の少年に看取られながら、死んで行きます。
 と、ここでは生物の話が大半を占めてしまいましたが、もちろん本文ではヤスミンとその人間関係の描写が大半を占めます。そして、この小説の大きなテーマは人種差別です。新たな登場人物が現れる度にこの問題が話題になり、ニューヨーカーはこれを常に考えて生きていることが分かります。
 大作ですが、読みごたえはあります。時間のある方、チャレンジしてみたらいかがでしょうか?