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蓮實重彦・黒沢清・青山真治『映画長話』その1

2012-11-01 05:40:00 | ノンジャンル
 昨日は群馬県のわたらせ渓谷鉄道のトロッコ列車に乗りに、日帰りで行ってきました。出発駅の桐生では、幕末以来の生糸の産地ということで、「このまち浪漫 桐生 ものづくりの舞台 Fashion Week」と銘打って、「第17回 桐生ファッションウィーク」が催されていました。桐生駅の周辺で様々なイベントが展開されていて、特に今週の11月3日にはいろんなイベントが楽しめるようでした。駅のおみやげ屋さんでパンフレットがもらえるので、近所の方は行かれたらいかかでしょうか? 詳しくは「ファッションタウン桐生推進協議会(桐生商工会議内)」(連絡先は0277-45-1201)にお問い合わせください。また今回のわたらせ渓谷鉄道では、思いがけない出会いがありました。これについては、後日改めてご報告させていただきます。

 さて、蓮實重彦・黒沢清・青山真治、3氏による対談本『映画長話』('11年刊行)を読みました。青山さんの発案で、'08年4月21日午後3時から開始された対談は、その後も3ヶ月に1度のペースで都心の場所を点々として行なわれ、計9回(最後の万田邦敏さんも加えた特別篇も加えると10回)、つまり2年間続けられ、その結果生まれたのが本書とのことです。
 この本を読んでいてまず感じたことは、蓮實先生が東大教養学部で行なっていた映画ゼミの質と、立教大学で行なわれていた映画ゼミの質がまったく異なっていたことへの驚き(というか“やっぱりそうだったか”という感慨)でした。立教ではパロディアス・ユニティを主戦場として8ミリ映画を作り始めていた生徒が参加していたのに比べ、東大教養学部においては、「加藤泰監督の『炎のごとく』は、つまらなかった」と公言する生徒までいるという体たらくぶりで、先生は最初からあまりやる気がなかったのでは、と改めて感じました。(まあ、しかし、そのゼミのおかげで私は蓮實先生と一時“関係”を持てましたし、高橋洋くんとも知り合うことができたのですが‥‥。)蓮實先生は立教のゼミでフライシャーの映画に反応してくれた生徒がいたことで、今の自分がいるとまでおっしゃり、先生が黒沢清さんらを手放しに褒めちぎることの謎の一端が見えたような気もしました。(もちろん、私は黒沢さんの映画を“つまらない”などとは、微塵も感じてはいません。)当時の(そして今でもそうですが)蓮實先生は、先生の著書の名前通り、“煽動装置”として働かれていて、私たちが無性に見たくなる映画の名前をここでも次々と紹介されていました。
 それは、例えば、レオス・カラックスの『メルド』のラストにおけるショットに次ぐショット、同じ理由での青山さんの『赤ずきん』(“舞台となる自動車工場では、ヒロインがいつも半開きのブラインドをくぐって下から入っていくじゃないですか。そのブラインドをルー・カステルが閉めて出てゆくのですが、無人のショットでブラインドがぴたりと閉まる瞬間をやや時間をおいてから最後に見せている。あの一連のシーン、ほんとに感動しました。あれが活劇というものじゃないでしょうか。それからヒロインが川船の舳先で寝ているところ、あそこは厳しい叙情派青山がビンビン光っていた。”(以上、蓮實先生、談))、『コッポラの胡蝶の夢』(“最後に二人が岩場で波をかぶるシーン、あれは素晴らしかった。こんなこと若い人しかできないと思ったら、70歳のおじいさんがやってる。あの歳で、ほぼ10年ぶりの作品をビデオを使い、しかもハリウッドを遠く離れてルーマニアにこもって撮っている。”(以上、蓮實先生、談))、ジャック・ベッケルの『最後の切り札』(めちゃくちゃ面白いらしい無国籍映画)、ルノワールの『十字路の夜』(これを見たいという欲望は淀川さんの話を聞いた時から、既に綿々と続いているのですが‥‥)、ジャック・グレミヨンの『曳き船』(フォードの『果てなき船路』を想起させる船が登場するとのこと。“(主人公らが)住んでいる変な家の欄干、あんなのフランスにない。(装置はアレクサンドル・トローネル。)それから、なんでひと気のない白い砂浜が急にあそこで出てくるのか。(中略)あれ、ほとんどマキノの『阿波の踊子』の砂浜じゃないですか。久方ぶりに出会った二人を、しかも一緒になってはいけない二人をぽつんと、大ロングで、白い浜で撮るわけですよ。あれは感動しますよね。『曳き船』とつながるでしょう”(蓮實先生、談)、‥‥(明日へ続きます)

→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/