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成瀬巳喜男監督『乱れる』

2014-06-04 09:06:00 | ノンジャンル
 成瀬巳喜男監督・共同製作の'64年作品『乱れる』をスカパーの日本映画専門チャンネルで再見しました。
 戦時中、18歳で酒屋にお嫁に来たレイコ(高峰秀子)は、半年の結婚生活の後、戦争で夫を失い、戦火で店も失いますが、自力で店を再建し、18年が経とうとしています。近所にはスーパーができ、その宣伝カーが毎日のように商店街の中までも通り、客も奪われていきます。義理の弟のコウジ(加山雄三)は、大学を出た後、就職しますが、転勤が決まって半年で会社を辞め、毎日商店街の店主らと麻雀に明け暮れています。
 ある日、レイコの義理の妹でコウジの姉の久子(草笛光子)がやって来て、レイコの義理の母と共に、レイコに縁談を持ちかけますが、レイコは再婚するつもりなど毛頭無いと言います。久子の夫は、店をスーパーにする話をコウジに持ちかけ、レイコに給料を払い、これまでと同じように店の雑用をしてもらおうと提案しますが、コウジはレイコが重役にならなければ嫌だと言います。
 しばらくして、店にコウジを訪ねて若い女(浜美枝)がやって来て、昨晩コウジが忘れていったという腕時計をレイコに渡します。レイコはその女を喫茶店に誘って話を聞くと、女はコウジ以外にも肉体関係を持つ男が複数いることを告白します。レイコはコウジが転勤を断って地元にいることを選んだのは、この女のせいだと考え、コウジにこの女と別れてほしいと言いますが、コウジは自分はレイコと別れたくなかったので会社を辞めたと言い、レイコに言い寄ります。レイコは困ると言って、コウジの気持ちを受け入れようとしません。
 やがて店の将来を見切った使用人が辞めてしまい、代わりにコウジが店の配達を手伝うようになります。ある日、レイコはコウジを寺の境内に呼び出し、このところ息苦しくて仕方がないと言い、お願いがあるので決してそれに反対しないでほしい、反対するのなら死ぬと言い、そのお願いについては明日話すと言います。
 翌日、久子とその妹のタカコ(白川由美)はレイコに呼び出され、その2人と義母とコウジの前で、レイコは、自分の将来とコウジのことについて話し始めます。レイコは店をスーパーにして、コウジがやがてそのスーパーの社長になることに賛成だと言い、考えてみれば自分が店の再建に費やしてきた18年間は自分の犠牲の上に成り立っていたと思うとして、今好きな人がいるので、この店を出て、自分の人生をやり直したいと言います。嘘だと言うコウジ。レイコはとりあえず今日故郷に帰ると言うと、久子とタカコは自分たちが追い出したように思われるのは嫌だと言って、早々にその場を立ち去ります。
 義母に見送られるレイコ。列車の席に付き、風景を眺めていると、やがてコウジが現れ、故郷まで送っていくと言います。立っていたコウジは、レイコの方を向いて微笑み、離れた席に座っても微笑み続け、やがて根負けしたレイコが微笑み返すと、コウジは席を徐々にレイコに近づけ、最後にはレイコと向かい合って座ります。夜になり、眠ったらと言うレイコに、眠くないと言うコウジ。やがてコウジは眠ってしまいますが、その寝姿を見ていたレイコは涙を流し始めます。それに気づき、どうしたの?と訊くコウジ。レイコは「次の駅で降りましょう」と言って、温泉宿に泊まることにします。「明日になったら一番の列車でお母さんのところに帰るのよ」と言うレイコに対し、コウジは「もう帰らない。この宿の下足番をしてもいいから、姉さんのそばにいる」と言い、レイコを抱きしめます。レイコもそれに応じますが、コウジがキスしようとすると、「やっぱりダメ!」と言って泣き崩れ、コウジは宿を出ていきます。後を追いかけるレイコ。
 レイコが酒場に電話するとコウジが出ますが、今夜は女の子と一緒に泊まる契約をしたと言ってコウジは電話を切ります。心配で取り乱すレイコ。
 翌朝、温泉町に死体が運び込まれます。その死体がコウジだと気づいて目を剥くレイコ。宿を飛び出したレイコは「お連れさんが崖から落ちた」と言われ、運ばれる死体を追って走り出しますが、やがて足を止めます。レイコの絶望的な顔を写して、映画は終わります。

 あまりにも悲惨なラストシーンに唖然としました。高峰秀子さんの名演が光る映画だと思います。

 →「Nature Life」(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto/