恒例となった、水曜日の東京新聞に掲載されている、斎藤美奈子さんのコラム「本音のコラム」の第14弾。
まず、7月26日に掲載された「あの人は いま」と題されたコラム。
「その人はいう。〈一言でいまの政治状況を形容するなら「不道徳」の一語に尽きます〉
告発は続く。〈自分たちだけよければよい。勝つためには手段を選ばない。嘘をついても責任は取らず、傲慢なのに国民におもねり、テレビ映りを気にして、いかにすれば自分が誠実で有能に見えるかばかり考えている政治家たち。そして利益誘導型政治の横行〉
批判の矛先は国会にも向けられる。〈いまの日本の政治における最大の問題は、最高の言論の府であるはずの国会に議論がないことです〉
その人とは、誰あろう稲田朋美氏。引用したのは著書『私は日本を守りたい』(PHP研究所・2010年7月)の一節である。このとき彼女は野党議員。冒頭の批判は当時の民主党政権に向けられたものだった。
それから7年。自民党は政権に返り咲き、16年8月に稲田氏は防衛大臣に抜てきされ、そしていまPKOの日報隠蔽問題や数々の失言暴言で窮地に立たされている。
渦中の政治家にも彼女は容赦なかった。〈辞任ですむ問題ではありません。最低でも国民にたいする説明責任を果たし、議員辞職すべきです。いったい日本の政治はいつからこんなに堕落したのでしょうか〉
歴史はくりかえすというべきか、攻守逆転すると人はかくも変わるのか。すべてが稲田批判に見えてくる。」
また、9月20日に掲載された「Aアラート」と題されたコラム。
「8月29日に続き、9月15日早朝にも発令されたJアラート。『ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、または地下に避難してください』
北朝鮮の所業は言語道断だとしても、宇宙空間を通過するミサイルで朝っぱらから危機感を煽る政府のやり方も不愉快きわまりない。一度目は不安と戸惑い、二度目は既視感と失笑。今後もこれを続ける気だろうか。
そこへ突然のAアラート。『アベ砲発射、アベ砲発射。安倍総理大臣が臨時国会での冒頭解散を決断した模様です』
さあ、大変だ。解散砲を発射された国民は、いやおうもなく選挙戦に巻きこまれる。国会での所信表明演説も各党代表質問も聞くことなく、ただただ投票に行けと迫られる。
北朝鮮のミサイルを支持率アップに利用する一方で、なんともいまいましいのは解散総選挙を首相が『避難先』と考えていることだろう。森友学園や加計学園問題からの非難。野党の追及の矢面に立たされる国会論戦からの非難。国民の厳しい目からの避難。
思えば、2012年12月の第二次安倍政権発足以来、衆院議員は一度も任期を全うしていないのである。有権者は与党のパワーゲームの道具なのか。保身のための解散砲。国民に避難を促すJアラートよりタチが悪い」
また、9月27日に掲載された「あなたが国難」と題されたコラム。
「ツイッターでは『おまえが国難』というハッシュタグが飛びかっている。25日の記者会見で『この解散は“国難突破解散”だ』と語った首相への皮肉である。
国難って『国家存亡の危機』のことですよね。この種の大仰な言葉は好きじゃないけど、そこには通常の『国家の課題』以上の一大事の意味がこめられている。これまでだと、蒙古襲来とか黒船来航とか敗戦とか大地震とか、そのくらいの事態を指す言葉だった。
しかるに首相がでっちあげた主な解散理由は少子高齢化に対応する消費税増税の使徒変更?
首を傾げていたら、産経新聞(26日)で編集委員の阿比留瑠比氏が解説してくれていた。
〈記者会見では、むしろ消費税の使徒変更に言葉を費やしてたが、安倍首相の決断理由は一にも二にも、そこに北朝鮮問題があるからだ。わが国はまさに、戦後最大の安全保障上の危機に直面しているのである〉
すごいな。もはや完全に有事気取り。
国民の信を問うことなく秘密保護法を通し、国民の信を問うことなく集団的自衛権の一部行使を可能にする安保関連法を成功させ、国民の信を問うことなく共謀罪を含む組織犯罪処罰法を成立させた安倍政権。国難は外からやってくるとは限らないのである。先の戦争で国難を招いたのは誰だったのか思い出したほうがいい。」
いつもながら一刀両断に切って捨てる鋭い言葉には感服します。特に今回は9月20日の「Aアラート」と9月27日の「おまえが国難」は読んでいて勉強になりました。今後の斎藤さんのコラムにも注目です。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)
まず、7月26日に掲載された「あの人は いま」と題されたコラム。
「その人はいう。〈一言でいまの政治状況を形容するなら「不道徳」の一語に尽きます〉
告発は続く。〈自分たちだけよければよい。勝つためには手段を選ばない。嘘をついても責任は取らず、傲慢なのに国民におもねり、テレビ映りを気にして、いかにすれば自分が誠実で有能に見えるかばかり考えている政治家たち。そして利益誘導型政治の横行〉
批判の矛先は国会にも向けられる。〈いまの日本の政治における最大の問題は、最高の言論の府であるはずの国会に議論がないことです〉
その人とは、誰あろう稲田朋美氏。引用したのは著書『私は日本を守りたい』(PHP研究所・2010年7月)の一節である。このとき彼女は野党議員。冒頭の批判は当時の民主党政権に向けられたものだった。
それから7年。自民党は政権に返り咲き、16年8月に稲田氏は防衛大臣に抜てきされ、そしていまPKOの日報隠蔽問題や数々の失言暴言で窮地に立たされている。
渦中の政治家にも彼女は容赦なかった。〈辞任ですむ問題ではありません。最低でも国民にたいする説明責任を果たし、議員辞職すべきです。いったい日本の政治はいつからこんなに堕落したのでしょうか〉
歴史はくりかえすというべきか、攻守逆転すると人はかくも変わるのか。すべてが稲田批判に見えてくる。」
また、9月20日に掲載された「Aアラート」と題されたコラム。
「8月29日に続き、9月15日早朝にも発令されたJアラート。『ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。建物の中、または地下に避難してください』
北朝鮮の所業は言語道断だとしても、宇宙空間を通過するミサイルで朝っぱらから危機感を煽る政府のやり方も不愉快きわまりない。一度目は不安と戸惑い、二度目は既視感と失笑。今後もこれを続ける気だろうか。
そこへ突然のAアラート。『アベ砲発射、アベ砲発射。安倍総理大臣が臨時国会での冒頭解散を決断した模様です』
さあ、大変だ。解散砲を発射された国民は、いやおうもなく選挙戦に巻きこまれる。国会での所信表明演説も各党代表質問も聞くことなく、ただただ投票に行けと迫られる。
北朝鮮のミサイルを支持率アップに利用する一方で、なんともいまいましいのは解散総選挙を首相が『避難先』と考えていることだろう。森友学園や加計学園問題からの非難。野党の追及の矢面に立たされる国会論戦からの非難。国民の厳しい目からの避難。
思えば、2012年12月の第二次安倍政権発足以来、衆院議員は一度も任期を全うしていないのである。有権者は与党のパワーゲームの道具なのか。保身のための解散砲。国民に避難を促すJアラートよりタチが悪い」
また、9月27日に掲載された「あなたが国難」と題されたコラム。
「ツイッターでは『おまえが国難』というハッシュタグが飛びかっている。25日の記者会見で『この解散は“国難突破解散”だ』と語った首相への皮肉である。
国難って『国家存亡の危機』のことですよね。この種の大仰な言葉は好きじゃないけど、そこには通常の『国家の課題』以上の一大事の意味がこめられている。これまでだと、蒙古襲来とか黒船来航とか敗戦とか大地震とか、そのくらいの事態を指す言葉だった。
しかるに首相がでっちあげた主な解散理由は少子高齢化に対応する消費税増税の使徒変更?
首を傾げていたら、産経新聞(26日)で編集委員の阿比留瑠比氏が解説してくれていた。
〈記者会見では、むしろ消費税の使徒変更に言葉を費やしてたが、安倍首相の決断理由は一にも二にも、そこに北朝鮮問題があるからだ。わが国はまさに、戦後最大の安全保障上の危機に直面しているのである〉
すごいな。もはや完全に有事気取り。
国民の信を問うことなく秘密保護法を通し、国民の信を問うことなく集団的自衛権の一部行使を可能にする安保関連法を成功させ、国民の信を問うことなく共謀罪を含む組織犯罪処罰法を成立させた安倍政権。国難は外からやってくるとは限らないのである。先の戦争で国難を招いたのは誰だったのか思い出したほうがいい。」
いつもながら一刀両断に切って捨てる鋭い言葉には感服します。特に今回は9月20日の「Aアラート」と9月27日の「おまえが国難」は読んでいて勉強になりました。今後の斎藤さんのコラムにも注目です。
→Nature Life(http://www.ceres.dti.ne.jp/~m-goto)