昨日の続きです。
熊木との結婚を意識するようになった良子は、風俗店の店長・中村(永瀬正敏)に店を辞めたいと切り出しました。熊木に何やらよからぬものを感じ取ったのか、中村は「風俗店に勤めていたことを言えないような男なんだろう? 大丈夫か?」と心配しました。
良子は意を決して、自分は風俗で働いていることを熊木に正直に打ち明けたうえで好きだと告白しました。ところが、熊木は態度を豹変させ、実は妻とは離婚していないことを明かしました。熊木は「もっと気楽な関係でいようよ。風俗に勤めていたのならうまいんでしょ」と体の関係を求めてきました。
良子はケイにそのことを相談しましたが、実はケイもまた壮絶な人生を歩んでいることを知らされて強く衝撃を受けました。ケイはヒモのような男(前田勝)と同棲しており、その男から度々暴力を受けていたのです。ケイは男との子を身籠ったのですが、男から堕ろすよう強要され、その際に子宮頸ガンを患っていることが発覚したのです。しかもケイのガンはかなり進行していました。良子はケイを励ますように、いつかカフェを再オープンしたらその時は手伝ってほしいと声をかけました。
その帰り、良子は公営団地の自室から火の手が上がっていることに気付きました。火は消防車に消し止められ、純平も無事でしたが、この火災は純平をいじめていた同級生による放火でした。しかし、良子は火災の原因もろくに調べてもらえず、しかも団地の人々からは周囲に迷惑をかけていると責められ、団地を追い出されることとなりました。良子は「今日だけは母親だかなんだかということを忘れさせて」と純平に告げ、カバンの中に包丁を隠し持って外に出ました。
良子が向かった先は、神社で待っていた熊木の元でした。いつものように悪びれず近づいてきた熊木でしたが、次の瞬間、良子は包丁を取り出して熊木に襲い掛かりました。
良子の後をつけていた純平は近くの公衆電話から風俗店に電話をし、良子から包丁を取り上げました。それでも良子が熊木と揉み合いになっていると、純平から知らせを受けた中村とケイが駆け付けてきました。中村は熊木を殴り倒し、「あとは(中村と繋がりのある)ヤクザに任せてくれ」と告げて熊木を連行していきました。
ケイは良子と純平に牛丼をご馳走してくれました。そこに中村から電話がありました。中村はヤクザの他にも弁護士の成原とも繋がりがあり、良子の一件を揉み消してくれたうえで熊木とは“ヤクザのルール”で全てカタをつけたからもう心配はいらないと告げました。純平はケイに感謝し、ケイは「今度、純平くんをデートに誘ってもいいかな」とはにかんでみせました。
ケイがこの世を去ったのは、それから間もなくのことでした。葬式に参列した良子と純平は、中村からケイは薬を飲んでビルの屋上から転落したと伝えられました。純平は「事故ですよ。ケイさんは僕とデートする約束をしていたんですから」と自殺ではないと強調しましたが、中村はケイから預かっていた封筒を渡すと、ケイはこの封筒を預けたあと自殺したのだと語りました。封筒の中には札束が入っていました。
良子は純平を自転車の後ろに乗せ、夕暮れの中を駆け抜けていました。良子は「なんだかいつまでも夜が来ない。ずっと茜色が続いている」と語りかけ、「俺、負けそう」と弱音を吐く純平に「わたしも」と応えました。純平は良子に「大好きだ」と伝えました。
良子は義父が入所している老人ホームに掛け合い、演劇のオンライン公演をさせてほしいと頼みました。この老人ホームでは、コロナ禍でも入居者に楽しんでもらおうと音楽のミニコンサートなどがリモートで催されていました。純平もネットを通じて良子の一人芝居を観ました。良子は動物のぬいぐるみを陽一に見立て、彼に対する恨みと愛を告白する芝居を披露していました。純平は「母さん、わけがわからないよ」と呟きながらも、母の逞しい愛情をひしひしと感じ取っていました。」。
度々字幕で主人公たちの暮らしにかかる金額が示されていました。この作品も叙情的な映画でした。
石井裕也監督の2021年作品『茜色に焼かれる』をWOWOWシネマで観ました。
サイト「映画ウォッチ」の「ネタバレあらすじ」に一部加筆修正させていただくと、
「田中良子(尾野真千子)は小さなカフェを一人で切り盛りしながら、中学生になる一人息子の純平(和田庵)を女手ひとつで育ててきました。しかし、新型コロナウィルス感染拡大の影響は容赦なく良子に襲いかかり、良子はカフェを畳まざるを得なくなりました。現在では良子はホームセンター内の花屋のバイトと風俗嬢の仕事を掛け持ちしていました。
良子の夫・陽一(オダギリジョー)は7年前に、元政府高官の高齢者・有島が運転する車に撥ねられて死亡していました。ブレーキとアクセルの踏み間違えによるものでした。しかし、有島はアルツハイマーを患っていたことを理由に罪に問われず、有島側は一応賠償金を用意したのですが、良子は彼らから謝罪の言葉が一言もないことを理由に受け取りを拒否し続けてきました。
良子は純平との二人分の生活費の他にも、養父の老人ホーム入居費、そして更には陽一が浮気相手に産ませた子供の養育費までも払っており、ただでさえ苦しい家計はさらに圧迫され続けていました。それでも良子は、口癖のように「まぁ、がんばりましょう」とことあるごとに口にしてきました。
ある日、良子は陽一を轢き殺した有島が死んだことを知りました。有島は陽一とは違い、天寿を全うしての大往生でした。良子は有島の葬式に出ようとしましたが、有島の葬式は陽一の葬式の時とは比べものにならないほど盛大なものでした。良子は有島の息子・耕(鶴見辰吾)や顧問弁護士の成原(嶋田久作)によって冷たく追い払われました。純平はなぜ葬式に行ったのかと問うと、良子は自分でもわからないと言いつつあの日の事故の意味をずっと考えていると応えました。
純平は学校でいじめに遭っていました。いじめっ子たちは良子が風俗で働いていることをネタにして純平を強請り、陽一の事故ですらもからかいのネタにしていました。純平がいじめられていることを知った良子は学校に抗議しに行きましたが、純平の担任(泉澤祐希)ら学校側の対応はあまりにも杜撰なものでした。
良子がバイトをしている花屋の雇われ店長(コージ・トクダ)は、ホームセンターの上司・斉木(笠原秀幸)からコロナ禍で働き先のないお得意先の娘を雇ってくれるよう要求されました。店長は良子に何とか辞めてもらえるよう仕向け、それでも辞めない良子に言いがかりをつけて無理やり解雇しました。
生前はバンドマンだった陽一は、世の中のあらゆるものに反抗しながら生きていました。時には陽一は新興宗教に騙され、持ち金全てを寄付してしまったこともありましたが、良子はそれでも陽一のことは深く愛していました。そんな陽一の命日にはかつてのバンド仲間が集まり、宴会を開いていました。純平はこの宴会の席で、良子がかつて劇団で芝居をしていたことを知りました。
陽一のバンド仲間だった滝(芹澤興人)はかねてから良子に気があったらしく、良子に執拗に迫ってきました。そんな理不尽な日々に疲れ果てた良子の愚痴を聞いてあげているのが、風俗店の同僚・ケイ(片山友希)でした。
ケイは子供の頃から父親に性的虐待を受け続けてきました。ケイはかねてから糖尿病を患っていると語り、治療費や生活費を稼ぐために風俗で働いていることを明かしました。良子とケイの間には次第に友情が芽生え、純平もケイにほのかな想いを抱くようになっていきました。
そんなある日、良子は学校に呼び出され、以外にも純平の成績が非常に優秀であることを告げられました。塾に行く金もなく、家でも大して勉強していないはずの純平でしたが、陽一の生前の口癖だった「トップのトップを目指す」を頑なに守り続けていたのです。これは亡き父の口癖でした。
良子は純平に常日頃から生きていく上でルールを守ることの大切さを説いてきていました。良子は純平に「もうひとつルールを作ろう」と切り出し、「お金のことは心配しないこと。行けるところまで行きなさい。その代わり体だけは大切にして。危ないこともしないように」と誓わせました。
そんなある日、良子は偶然にも高校時代の同級生だった熊木直樹(大塚ヒロタ)と再会しました。熊木は自分は離婚していることを語り、良子を高級レストランでの食事に誘いました。その日から良子は度々熊木と会うようになり、いつしか熊木のことを本気で愛するようになっていきました。
(明日に続きます)
朝日新聞の記事で、『なぜ君は総理大臣になれないのか』、『香川一区』を監督されたドキュメンタリー映画監督・大島新さんが、なんと大島渚監督の息子さんであることを知りました。かなりびっくりしました。
さて、なるせゆうせい監督・脚本・総製作の2022年『君たちはまだ長いトンネルの中』に「あつぎのえいがかんkiki」で観ました。
笑いあり、涙ありの熱血社会派青春ストーリーでした。財務官僚を父に持ち、「将来、絶対に搾取する側に立つなよ。きっちり勉強し、自分で考えられる人間になるように」と教えられてきた女子高校生の主人公は、父を交通事故で失った後も、その人生哲学を貫き、アベノミクスを教える先生には公然と反駁し、進路指導室に呼ばれても、進路指導の先生に対し、論理的に戦いに挑んで勝利し、元財務官僚で自民党(映画では違う名前になっていました)のボスである政治家の脅しにも屈せず、ラストでは彼女に触発された若い自民党の政治家が、テレビの生放送で堂々と持論を展開し、仮病で教室を抜け出してきた主人公と同級生らは放送終了直後にスタンディングオベーションをするという、ハッピーエンドで、エンディングタイトルでは、自分がお世話になっている叔父と叔母が経営している料理屋を含む、今ではシャッター街になっている商店街を盛り上げるため、次々とポスターを張って行く主人公の姿が描かれていました。
主人公役の加藤小春さんは、本当の女子高生のように、溌溂としていて、しかもセクシーで、私は一目惚れしてしまいました。彼女の名前と、監督の「なるせゆうせい」という名前は、決して忘れることのない名前として、私に刻み込まれました。
結論を言うと、文句のない傑作です。おそらく今年に私が見た、あるいは見るだろう映画で、この映画はダントツ1位になると確信しております。
崔監哲浩監督の2022年作品『北風アウトサイダー』を「あつぎのえいがかんkiki」で観ました。
以下は崔監督自らが書かれたあらすじです。
「大阪市生野区には、在日朝鮮人、在日韓国人の方々が沢山住んでいる。
月日が流れ、三世四世の時代に入り、もはやそうゆうことも気にせずに生きれる時代に入りつつある。
そんな中の在日一家の物語。
生野区で長年、食堂オモニを営んできた母親の葬儀から物語が始まる。15年前に失踪した長男、ヨンギはそこに現れない。
口にこそ出さないが、ヨンギが戻ってくるかもと期待する親類たち。
次男チョロを中心に楽しく亡き母親に思いを寄せながら歌や踊りで盛大に送り出したのである。
そんな4兄妹の次男チョロは、ヨンギ失踪あとから、金家一族の主として孤軍奮闘していたのである。
オモニが残した店の借金やヨンギの実の娘を我が子として育てる葛藤など。
長女のミョンヒも身を粉にして店の再建に朝から晩まで働きずめだ。お調子者の三男ガンホも誰からも愛される男。
そんなある日突如として帰ってくるヨンギ。
変わり果てた長男の姿に困惑する兄妹達。
そう、三人の記憶では、誰より強く、誰より親孝行で学生時代から、食堂オモニで働いてた記憶しかのこってないのだ。
目の前に現れたのはあの頃のヨンギではなく、無気力で覇気のない惨めな男だった。
特にその失踪を許せなかったのは、長女ミョンヒ。晩年は痴呆症にかかっていたオモニに寄り添い介護をしオモニ食堂を守ってきた。
それでも15年ヨンギを探してきた次男チョロが、強引に食堂オモニでヨンギを働かすことをガンホ、ミョンヒに提案する。
「なんのために、オモニがここまでお店頑張ってきたんや?家族みんなが集まる場所をまっもてきたんや。オモニの願い叶えてやろうや。」
そうしてオモニ食堂で働きはじめたヨンギ。少しずつ覇気もとりもどし、一生懸命に変わろうと努力する。
そうした努力を目の当たりにして、ガンホ、ミョンヒも少しずつあの頃のように、心をひらいてくる。
それとともに、少しずつ解明されていく空白の15年間。
何故、最愛の妻サンミとの実娘ナミを残して去ったのか。
地元では、親友の清田と共に後輩たちから圧倒的に指示されながらも、その清田にさえ連絡をしなかったのか。在日としてバリバリに活動していたのに今はどういうアイデンティティなのかなど。
兄妹4四人が揃い仲良く過ごしていくと思いきや、現実の厳しさに翻弄され話は思わぬ方向へ。
愛とは何か。家族とはどんなものか。様々な人の思いがすれ違うなかで、大きな愛によってはたして家族の絆は取り戻せるのか。今、究極のヒューストンドラマが幕を開ける!!!」
とにかく素晴らしい映画です。今年のナンバー10には必ず入ると私は考えます。必見です!!
昨日の続きです。
しかし、さくらから告白された町田くんは、実はさくらはまだ氷室に想いが残っていることに気がついていました。しかし、その氷室は猪原にすっかり惚れ込んでしまい、町田くんに猪原と引き合わせてくれるよう頼みました。
その頃、吉高はやりたくもない人気女優の不倫現場を追わされており、相変わらずスクープを追うよう命じる編集長・日野(佐藤浩市)の方針に堪えかねていました。吉高は妻・葵(戸田恵梨香)から転職を勧められました。
翌日、町田くんは猪原に一緒に帰ろうと誘いました。猪原は町田くんが自分に好意を寄せているのではと期待しましたが、町田くんの口から発せられたのは氷室の件でした。がっかりした猪原はバスを降りてしまい、たまたま居合わせた吉高は町田くんに、どうしてこんなにも人に優しいのか尋ねてみました。
「好きな人に悲しい顔させてしまった」と悔やむ町田くんの姿に、吉高は、町田くんは偽善者ではなく真の善人だと確信しました。
いよいよ百香が産気づき、町田くんは病院へ急ぎました。途中で町田くんは猪原と遭遇、彼女にこの河川敷で待っててと告げて病院へ向かいました。やがて百香は男の赤ん坊を出産、すっかり赤ん坊のことで頭が一杯だった町田くんは、ようやく猪原を待たせていたことに気づきましたが、もう河川敷に猪原の姿はありませんでした。
町田くんは百香の出産のために一時帰国してきたあゆたに、自分の気持ちについて相談してみたところ、あゆたは「分からないことがあるから、この世はすばらしい」と答えました。
ようやく猪原への気持ちが“恋”だと確信した町田くんは猪原の元へ向かいますが、猪原は「誰かを大切にするってことは、誰かを傷つけるってことよ」と突き放してしまいます。猪原のロンドン留学が決まったのはそれから間もなくのことでした。
猪原が旅立つ日、さくらと寄りを戻した氷室は町田くんに礼を言いました。二人の姿を見た町田くんは猪原に会いに行こうと決意、町田くんの気持ちを知った西野が自転車を貸してくれました。町田くんは今まで自分が親切にしてきた人々に背中を押されて走り出しました。
その頃、空港行きの電車に乗っていた猪原は、乗り合わせていた吉高からある原稿を受け取りました。『町田くんの世界』と題されたその原稿は、「この世界は絶望で溢れている。しかし、町田くんの見る世界は美しいに違いない」と綴られていました。
猪原を追っていた町田くんは、途中で先日のように風船を飛ばしてしまった子供のために、木に引っ掛かった風船を取ろうと試み、誤って風船ごと空高く舞い上がってしまいます。車窓から空を飛ぶ町田くんを見た猪原は電車を降り、ジャンプして町田くんの体に抱きつきました。
その光景を町田くんの家族、氷室とさくら、吉高たちが見守っていました。町田くんと猪原はプールに落ち、町田くんは「今は猪原さんしか見えない。君が好きだ」と愛を告げました。猪原も町田くんの愛を受け入れました。」
今まで観た石井裕也監督作品の中では、さわやかな青春映画となっており、一番好感が持てました。