京都・ウトロ地区に市営住宅整備/在日同胞ら入居開始
土地問題乗り越え、新たな歴史刻む
60世帯、約150人の在日同胞が暮らす京都府宇治市伊勢田町のウトロ地区で、16日から、新たに整備された市営住宅第1期棟への入居が始まった。15日には、第1期棟に入居する40世帯の同胞たちを対象に入居説明会と「鍵渡し」が行われた。
長い闘いの末

新たに建設された市営住宅第1期棟。周りには、昔の家々が残っている。
昨年末に完成した市営住宅第1期棟は、鉄筋コンクリート造り5階建ての建物。2DKが20戸、3DKが20戸の計40世帯分となっており、今後は、残る20世帯向けの2期棟の整備と並行し、下水道や排水施設、道路の整備も進められる。
ウトロには、第2次世界大戦中、日本の侵略戦争遂行のため京都飛行場建設に動員された同胞たちやその子孫らが暮らしてきた。戦後、政府や企業からの補償もないままに、貧しい生活を余儀なくされた住民らに突き付けられたのは、住み慣れた土地からの「立ち退き」だった。
戦後、ウトロの土地所有者であった「日産車体」は、住民に無許可で「西日本殖産」へ土地を転売。同社は、土地の明け渡しを求め、京都地裁に提訴。最高裁は2000年、住民の立ち退きを命じた。
度重なる強制立ち退きの不安の中、住民たちは、ウトロを守るために結束、抗議活動を繰り広げるとともに、「ウトロ問題」を内外に発信し続けた。支援の輪は日本市民や各地の同胞、総聯組織、南の市民たちへと広がりを見せ、2007年10月には、ウトロと「西日本殖産」との間で土地の売買契約が締結された。同年12月には国土交通省・京都府・宇治市が「ウトロ地区住環境改善検討協議会」を立ち上げる運びとなり、今回、ウトロの住環境改善事業の一環として、市営住宅への入居が始まった。
新生活のはじまり
15日夜、入居説明会のため、府立城南勤労者福祉会館(宇治市伊勢田町)を訪れた同胞たち。新たな住居の鍵が渡されると、その顔には安堵の表情が浮かんだ。

府立城南勤労者福祉会館で行われた入居説明会と鍵渡し(15日)
「生きている間に、こんな日が来るとは思わなかった。たくさんの人々の支援に感謝している」と話すのは、入居者の金眞知子さん(69)。住み慣れたウトロの風景が失われることに、一抹の寂しさを感じながらも、「ウトロの皆で、新しい団地に移り住めることが嬉しい」と笑みを浮かべる。「苦しいときも、楽しい時も、朝鮮人同士だから、気持ちを分かちあえた。トンネに住み続けて、本当に良かった」。
同じく入居者の姜春子さん(78)は、戦時中、家族とともにウトロに移り住んだ。6人の子どもを育て、女性同盟の活動に励んだウトロでの日々を振り返り、「楽しい思い出ばかり。みんなで協力して、ウトロを守ってきたから、今日この日を迎えられた」と話す。長年住んだ自宅が解体された際には涙したが、「町がきれいに、新しく生まれ変わるのは嬉しいこと。これからもウトロとともに人生を歩んでいきたい」と語った。

新築の市営住宅の内部
総聯南山城支部の金秀煥委員長は、市営住宅が整備されたことにより、同胞たちの安全な生活環境が保障されることを歓迎しながら、「支部では、高齢の入居者たちが新たな環境に適応し、不便なく生活できるよう、サポートに徹するつもりだ。ウトロの同胞たちの絆がこれからも続くように、皆が集まれる憩いの場を提供していきたい」と語った。
(金宥羅)