再び歯止めかかった朝鮮半島の平和…それでも平壌の日常は続く
韓国が知らなかった北朝鮮
特集:平壌の春


今月初めから北朝鮮を訪問して取材中の「統一TV」のチン・チョンギュ代表が、「平壌(ピョンヤン)の現在」を切り取った写真と文を送ってきた。朝鮮半島に緊張の影が頭をもたげ始めたが、だからこそ、平壌の人々の日常と考えを理解する必要がある。チン代表が平壌で「電子メール」で文と写真をソウルに直接送ってきたのも、北朝鮮の変化を感じさせる。
今日も平壌市内の取材を終えて、宿泊先でしばらく休んでから夕食を食べに出かけた。普段あまり考えずに通り過ぎていた光が目を引く。2017年秋から平均2カ月に一度の割合で北朝鮮を取材している筆者の目にも、最近平壌の夜は以前よりむしろ明るくなった。到底解けない疑問だ。2019年5月、平壌市民の言う通り、「これまで地球上で類を見ない、それこそ水も漏らさぬ世界的な制裁」の中でも、平壌市内に自動車が減るどころか、さらに増えたように見える。商店の品物も、北朝鮮住民のいう「朝鮮商品」であふれており、停電もほとんどない。不思議に思って会う人々に質問を投げかけてみた。金鉄柱師範大学政治社会学部のチョン・ギプン教授(63)は「我々はこれまで、米国から制裁を受けなかったことがない。以前から私たちは自らの力で生きていく準備を地道に進めてきた」と答えた。

昨年6月、朝米首脳会談のために、シンガポールを訪れた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は「平壌市の夜景を強盛国家の首都らしく、恍惚かつ珍しいものにすべきだ」と述べた。都市の夜景は住民たちに自負心を感じさせ、対外的には各種制裁にもかかわらず成し遂げた経済的成果を、一目で示すという点を念頭に置いた発言と見られる。金正恩委員長の執権後、北朝鮮は煕川(ヒチョン)や白頭山(ペクトゥサン)英雄青年、清川江(チョンチョンガン)などの水力発電所を完工し、国際制裁によって絶対的に不足している重油の代わりに石炭を使うよう既存の発電施設を大々的に改善補修する一方、太陽光の利用を奨励するなど、電力供給の改善のため多くの努力を傾けたという。2012年以降に建設された平壌市内の倉田(チャンジョン)通りや未来科学者通り、黎明(ヨミョン)通りなどに並ぶ超高層ビルを、夜遠くから見ると星屑が落ちたようだ。

牡丹峰(モランボン)で平壌市内の夜景を見下ろす。大同江(テドンガン)を横切る玉流橋と青流橋、主体思想塔の前を行き来するキラキラした虹号遊覧船や人民大学習堂前の金日成(キム・イルソン)広場、LED照明ショーを繰り広げる柳京ホテル、大同江(テドンガン)川辺の街路灯が調和をなして華麗な夜の風景が作られる。

凱旋門近くにある凱旋青年公園は、夕方以降活気を帯びる平壌の夜文化の中心地となった。色とりどりに照明が灯されたアトラクションや照明噴水、原色の岩と木、商店が立ち並び、人々の歓声と笑いが絶えない。友達と遊園地を訪れたキム・ソングァン氏(22・平壌西城区域)は急降下塔(ジャイロドロップ)に乗って悲鳴をあげる友達の姿を手電話(スマートフォン)で撮影していた。彼は「制裁は心配していない。水と空気さえあれば数十年以上持ちこたえられるよう、自立経済を完成したと聞いた」と話した。


最近、平壌市内の夜景の名所は柳京ホテルだ。105階建て330メートルの高さのホテルはまだ開場前だが、建物外壁全体がスクリーンとなり、毎日夜10万個以上のLED照明を灯している。昨年4月、太陽節を記念し初めて夜間に照明ショーを始めたが、ピラミッド型の建物の頂上には、人共旗(北朝鮮の国旗)が形象化され、平壌市内どこでも見ることができる。照明ショーは、北朝鮮の歴史を様々なアニメーションで表現し、「主体思想」や「3大革命」、「技術革命」、「一心団結」、「自力更生」、「最後勝利」などのスローガンが原色の背景の上で点滅した。核武力の完成を宣言した後、これからは経済発展に総力を傾けるという強い意志を示しているようだ。



和解に向かっているかのように見えた朝米関係が、再び力比べの様相を帯びている。北朝鮮は平和と安全は強力な物理的力で保障されるというメッセージを対内外に送っており、米国は過去のように敵対的ではないが、全世界の北朝鮮制裁を強化し、北朝鮮が米国式非核化を受け入れることを求めている。さらに複雑さがになるような「朝鮮半島平和への道」の険しさのためか、今日歩く平壌の夜の街はずっしりと重い意味に迫ってくる。